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2016年9月17日 (土)
ウォレンドルフ, M., アポストローバ=ブロッサム, E. (2001) マーケティング・リサーチは創造性の源とはならない. Diamondハーバード・ビジネス・レビュー, 2001年6月号, 138-140.
題名に惹かれ、原稿の役に立つかと思って取り寄せたんだけど...
たった3ページの短い記事。恥を忍んで申し上げるけれど、私にはよく理解できない内容であった。冒頭部でいきなり「ポストモダン時代の消費行動には『衝動』的な面があり、ある意味、境界なく融合された自我の発露といえる」と言われて... えっ??? はい? ??
理解できた範囲で言うとこういう内容。
コマールとメラミドという画家が「国民の選択展」というプロジェクトをやった。これは各国の消費者に「何を描いてほしいか」等々とリサーチし、その結果に基づいてアートを制作するという企画であった。その目標は、マーケティング調査の結果に基づいて描かれた芸術作品に疑問を喚起することであった。
「我々は、ポストモダンの文化産業への批評を通じて、個人的な体験と芸術的な創造性に関する洞察から、マーケティング・リサーチから出された数字の信憑性に異議を捉えられるはずだ」。
賛否以前の問題として、著者らのいいたいことがつかめない。文章の脈絡がわからないのだ。本文と題名との整合性も乏しい(たぶん編集の方も題名をつけるのに困惑したのだろう)。これはなにかもっと長い文章から切り取ったものなのだろうか? まさか、翻訳が絶望的にまずいとか?
それにしても、この記事、いろいろ謎が多い。
記事の末尾に、「参考文献」としてギー・ドゥボール「スペクタクルの社会」、ならびにポストモダンマーケティング関係らしき文献が何本か挙げられているが、本文との対応がなく、なぜこれらが参考文献なのかわからない。もっと長い文章を切り詰めているんじゃないかと疑う所以である。
日本人の方の論文で、この著者らの記事が本家HBRの同年同月号に載っているかのように引用しているのをみつけたが、HBRのデータベースを調べてみてもそんな記事は見当たらない。これは本家HBRからの転載記事ではないようなのだ。上記論文の著者の方は、ついついこの記事の英語原文を読んだかのように引用してしまったのではないかと思う。
著者らは実在する。第一著者はたしかにアリゾナ大学の教授だ。CVをみると、2001年に"Post-modern Production and Consumption of Art"という記事がダイヤモンドHBRに日本語で掲載された、という記載があり、この記事と頁が一致する。元となる英語記事についての記載はない。
CVによれば、著者らは2000年のACR年次大会で"The Role of Marketing Research in Consumer-Market Relationships: A case study of `The People’s Choice’ exhibit by Komar and Melamid"という発表を行っている。題名からして、たぶんこの発表がこの記事の基なのだろう。残念ながらACRのproceedingには載っておらず、内容は確認できない。
論文:マーケティング - 読了:ウォレンドルフ, アポストローバ=ブロッサム (2001) マーケティング・リサーチは創造性の源とはならない(という主旨なのかどうかよくわからない)