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2017年1月 4日 (水)
シェイクスピア全集24 ヘンリー四世 全二部
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シェイクスピア / 筑摩書房 / 2013-04-10
以前に小田島訳で読んでいたのだけど(ブログを検索してみると2011年だ)、このたび松岡訳で再読。
ヘンリー四世といえば不肖の王子ハルとほら吹きフォルスタッフである。以前戯曲を読んだときは、フォルスタッフの魅力にただ打ちのめされるだけだったが、このたび付き合いで舞台を観て(鵜山仁演出)、遊蕩のハル王子がなにを考えておるかという点が、はじめて腑に落ちるような気がした。もちろん、いろんな解釈がありうるんだろうけど...
思うに、ハルくんは自分が何者なのか、なにをしたいのか、よくわかってないし、わかりたくないんじゃないですかね。一部三幕で父王に叱責されたハルは、心を改めますと誓い、ホットスパーと闘いますと宣言するけれど、そういう自分の言葉を自分でも信じきれないんじゃなかろうか。ついでにいうと、父王もまた、最期まで息子を信じてないんじゃないんじゃないかと思う。それでも死の間際、父は息子を許すのだけけれど。
そう考えると、最後にフォルスタッフを冷たくあしらうくだりも、思ったほどには哀しい場面ではないような気がしてくる。人はいつか、自分が何者かを知り、状況の軛のなかで生きなければならない。もしかすると、遊蕩の師・フォルスタッフにも、その結末はうすうす分かっていたのかもしれない。
フィクション - 読了:「ヘンリー四世」