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2017年9月15日 (金)

Bowman, D.A,, McMahan, R.P. (2007) Virtual reality: How much immersion is enough?, Computer, 40(7), 36-43.
 仕事の都合で読んだ(なんというか、節操のない仕事だ...)。掲載誌はIEEEの一般向け機関誌みたいな奴だと思う。結構引用されている(Google様的には366件)。
 眠くてふらふらになりつつメモをとったので、中身には自信がない。

 いわく。
 これまでVR研究者は没入的なVRに取り組んできた。ユーザは驚いてくれる。でも実用事例は少ない。コストに見合う価値はあったのだろうか。

 没入的VRの成功例として、恐怖症の治療、軍の訓練、エンタメが挙げられる。それらはすべて、仮想環境が提供する経験が現実的であることが鍵だった。言い換えると、それらはすべて、ユーザがある環境のなかにいると感じるということが重要であるような事例であった。逆にいうと、そういうのに注目していたからこそ実用事例が少ないままなのではないか。

 別の戦略について考えてみよう。没入性から得られるベネフィットは他にないのか。そもそも没入性というのは単一の構成概念なのか。
 たとえば、石油・ガス産業のために、地価の油井のパスを視覚化するシステムをつくるとしよう。この場合、別に「自分が地下にいる」と感じさせる必要はない。視覚化はあまり現実的では困る。むしろ適度に抽象的なほうがよい。Gruchallaらはデスクトップディスプレイと没入型プロジェクタを比較し、後者のほうがパフォーマンスが上がることを示している。たぶん空間理解が促進されたのだろう。では没入型プロジェクタのどんな要素が空間理解を促進したのか。視野の広さか、頭部運動のトラッキングか。それがわかれば、もっと簡単なシステムで十分だということになるかもしれない。

 上に挙げたような研究は数が少ない。たくさんの問いが残されている。同じようなベネフィットを実現してくれる課題や応用がほかにもあるのではないか。没入性のどのような要素が利点をもたらすのか。もっと低レベルな没入性でも十分なのではないか...
 複数の要因について効果を検証する実験が望ましい。最初にGruchallaのような実践的研究をやり、次に要因を分解していくというやり方もできる。

 [ここで著者らの実験紹介...]
 いくつかの実験を通じてわかったことを挙げる。

 まとめ。
 実践的にはふたつの目標がある。没入的VRを成功させるという目標と、高価なVRシステムなしで済ませるという目標である。このふたつは別に矛盾していない。没入性というものを連続的なものとして捉え、どんなレベルの没入性がなにを生み出すかを考えればよい。
 云々。

 本文よか、途中で挿入されている解説コラムのほうが役に立った。
 没入性(immersion)とはVRシステムが提供する感覚的fidelityの客観的レベルのこと。presenceとはVRシステムに対する主観的・心理学的な反応のこと。
 没入性の要素としては、同時にみることができる視野の広さ、ユーザを取り囲む視野の広さ、ディスプレイのサイズ、解像度、立体視、ヘッドトラッキングによるレンダリング、リアルな光線、フレームレート、リフレッシュレート、などがある。提示しているモデル自体のリアルさをここに含めていないのは、課題によって必要性が異なるから。
 この定義でいうと、相互作用のリアルさは没入性とは別の問題。むしろ、(入力装置による)相互作用と(ディスプレイによる)没入性がループしていると考えるべきだ。云々。

 VRの没入性がユーザの行動に与える効果の研究として、Meehan et al.(2002 Proc.ACM Siggraph)というのが挙げられていた。

論文:心理 - 読了:Bowman & McMahan (2007) ヴァーチャル・リアリティってのは視覚的没入性が高ければ高いほどよいというものでもないだろう

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