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2018年6月20日 (水)
仕事の都合で小地域推定 (SAE) の勉強をしているんだけど、Rのパッケージが多すぎて困っている。別に使い分けたいわけじゃないんだけど、「もっといいパッケージがあるのでは...」という疑念が頭からは離れないのである。精神衛生に悪い。
現時点でのパッケージを調べてみたので、メモしておく。
CRAN Task ViewsにOfficial Statisticsというのがあり、そこのSAEの項目には、SAEに特化したパッケージとして次の3つが挙げられている。
- rsaeパッケージ。Task Viewsによれば、「基本的なユニット・レベルSAEモデル(nested error回帰モデル)のパラメータをMLないしロバストMLにより推定。MSE推定値、パラメトリック・ブートストラップなどによる、地域ごとの平均のロバストな予測を提供する。カテゴリカル独立変数は扱えない」とのこと。最終更新は2014/02。
- hbsaeパッケージ。「基本地域ないしユニット・レベルモデルに基づくSAEを計算。制約付きML法、階層ベイズ法を用いる。補足情報として、カテゴリカル変数から得られるカウント、ならびに連続的人口情報から得られる平均を使うことができる」。最終更新は2012/09。
- JoSAEパッケージ。「GREGによる点推定・分散推定、ユニットレベルのEBLUP推定量をドメインレベルで提供」とかなんとか(云ってる意味がよくわからん)。これは基本的には後述するnlmeパッケージのラッパーである由。最終更新は2018/05。
Task Viewsに載っていないパッケージとして、見つけたのは以下。といっても、googleで検索しただけだけど。
- saeパッケージ。SAEについての教科書 Rao & Molina (2015) で紹介されているのがこれである。開発者による解説もある(いま気が付いたけど、開発者のひとりがMolinaさんなのだ)。最終更新2018/06(おお、先週だ...)。
- saeRobustパッケージ。説明によれば、「通常使われているSAEモデルのロバストな代替手法を提供。BLUP予測と線形混合モデルに基づく。ランダム効果に時空間的相関があるエリアレベルモデルが利用可能」とのこと。最終更新2018/03。
- maSAEパッケージ。「MandallazのモデルによるSAE」という謎のパッケージである。Mandallazという人の論文を読まんといかんらしい。最終更新2016/08。
- BayesSAEパッケージ。ベイズなんでしょうね。最終更新2018/04。
- saeryパッケージ。時間効果のはいった地域レベルのEBLUP。最終更新2014/09。
- sae2パッケージ。時系列地域レベルモデル。最終更新2015/01。
- emdiパッケージというのもある。「地域非累積指標の推定・評価・マッピング」とのことで、よくわかんないんだけどこれもSAEのパッケージなのではなかろうか。最終更新2018/04。
- saeSimパッケージ。saeRobustと同じ人が開発している。これは推定のパッケージというよりシミュレーションの面倒をみるパッケージらしい。Task ViewsにもMicrosimulationのパッケージとして載っている。
- ほかにmmeパッケージというのがあったんだけど、先月CRANから消えた模様。
なお、SAEに特化したパッケージではなく、一般的な混合モデル・階層モデルのパッケージを使うという手もあろう。Task ViewsにはSAEの項目の下に、nlmeパッケージとlme4パッケージがあがっているが、別に他のパッケージでもいいのではなかろうか。久保先生のページでは、正規分布の混合モデルのパッケージとしてnlme, lme4が挙げられているほか、一般化混合モデルのパッケージとしてglmmML, MCMCglmmがお勧めされている。
雑記:データ解析 - 覚え書き:小地域推定のためのRパッケージ