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2018年10月 3日 (水)
調査法の研究で有名なKrosnickさんが、97年にリッカート尺度項目の段階数(5件法とか7件法とか)についてレビューしている。助かるけれど、手元のPDFが汚すぎて困っている(本買えよって話ですけど...)。
引用している論文について何とか解読したので、リストを作っておく。
出典は:
Krosnick, J.A., & Fabrigar, L.R. (1997) Designing rating scales for effective measurement in surveys. in L. Lyberg, et al. (Eds.), Survey Measurement & Process Quality. Wiley.
この章の3節「尺度点の数」のみメモする。なお、途中でちょっと話が逸れてマグニチュード尺度の研究も紹介されているんだけど、そこは省略する(あんまし使わんほうがいいというのが著者の評価)。
信頼性
概して、両極尺度では7件法ぐらいが良い模様。
- Bendig(1954 J.App.Psych.): 両極。信頼性と段階数の間に関連性なし
- Komorita & Graham (1965 Edu.Psych.Measurement): 両極。2件法より6件法で信頼性が高い
- Masters(1974 J.Edu.Measurement): 両極。2~7件法を調べた。4件法の信頼性が高い
- Birkett(1986 Conf.): 両極。2,6,14件法を調べた。6件法の信頼性が高い
- Alwin & Krosnick (1991 Sociol.Method&Res.): 両極。縦断での信頼性。7,9件法がそれ未満よりも信頼性が高い
単極尺度では5~7件法ぐらいが良い模様。
- Bendig (1953 J.App.Psych.): 単極。信頼性と段階数の間に関連性なし
- Matell & Jacoby (1971 Edu.Psych.Measurement): 単極。信頼性と段階数の間に関連性なし
- Jacoby & Matell (1971 JMR): 単極。縦断での信頼性。3~19件法を調べた。7-8件法が良い。
- McKelvie (1978 BritishJ.Psych.): 単極。7,11件法より5件法が良い
- Peterson (1985 Report): 単極。信頼性と段階数の間に関連性なし
- Watson (1988 JPSP): 単極。2件法より4件法が良い
妥当性
連続変数をx件法に変換したときになにがおきるかというシミュレーションによれば、段階数を増やしたほうがデータの歪みが減る、でも5~7件以上に増やしてもあまり意味がない。
- Green & Rao (1970 J.Mktg.)
- Martin (1973 JMR): 反例 [どんな反例なのかわからない]
- Martin (1978 JMR): 反例 [同上]
- Lehmann & Hulbert (1972 JMR)
- Ramsay (1973 Psychometrika)
相関的な妥当性研究でも同様。
- Matell & Jakoby (1971 Edu.Psych.Measurement): 7~8件法で高い
- Smith & Peterson (1985 Conf.): 反例[どんな反例なのかわからない]
- Rosenston et al.(1986 POQ) 3件法より5件法のほうが予測的妥当性が高い
回答に文脈が及ぼす効果の研究によれば、段階数を増やしたほうが文脈の効果が小さいが、7件法ぐらいから上ではあまり減らない。
- Wedell & Parducci (1988 JPSP)
- Wedell et al.(1990 JPSP)
個人内・個人間変動は、7~9件法くらいまで増やしたほうがうまく捉えられる。
- Bendig & Hughes (1953 JEP)
- Bendig (1954b J.Edu.Psych.)
- Garner (1960 Psych.Rev.)
- McCrae (1970a Perceptual Psychophysics)
- McCrae (1970b Psych.Bull.)
- Mattel & Jacoby (1972 J.App.Psych.): 4~19件法のあいだで、使用段階数はあまりかわらない。7件法より増やしても情報は増えない
中央の点[「どちらでもない」みたいなやつね]
Krosnick (1991 App.Cog.Psych.) いわく、回答者はsatisficeしようとするとき、どう回答したら良いかを示唆する手掛かりを探すだろう。中央の点はその手がかりのひとつになる。よって、中央の点を設けると、satisficingが起きやすくかもしれない。
実証研究をみると... 中央の反応が認められていない時、対象者が自発的に中央に反応することは少ないが[←??? どういう状況の話なんだろうか]、中央の点を与えれば、そこに反応する人は多い。
- Kalton et al.(1980 The Statistician)
- Schuman & Presser (1981 書籍)
- Bishop (1987 POQ)
- Ayudiya & McClendon (1990 POQ)
- Narayan & Krosnick (1996 POQ): 認知スキルが低いと中央に反応しやすい
また、個人的に重要でないトピックでは中央に反応しやすい:
- Stember & Hyman (1949-1950 Int.J.Opinion&Attitude): 反例
- Schuman & Presser (1981)
- Krosnick & Schuman (1988 JPSP)
信頼性への効果ははっきりしない。
- Jacoby & Mattel (1971): 信頼性への効果はよくわからない
- Matell & Jacoby (1971): 信頼性への効果はよくわからない
- Masters (1974 J.Edu.Measurement): 信頼性への効果はよくわからない
- Andrew(1984 POQ): 中央の点があると信頼性が低い
- Alwin & Krosnick (1991): 中央の点があると信頼性が低い
妥当性への効果もよくわからない。
- Stember & Hyman (1949-1950): 中央の点があるとインタビュアー・バイアスが低い
- Kalton et al.(1980): 相関的妥当性への効果はない
- Schman & Presser (1981): 中央の点があると相関的妥当性が高い
使いやすさ
- Ghiselli (1939): 2件法より4件法のほうが完了率が高い
- Smith & Peterson (1985): 3~7件法で完了率に差なし
- Mattel & Jacoby (1972): 13件法あたりよりも増やすと時間がかかるようになる
まとめ。一般に5~7件法がよろしかろう。中央の点を作るべきかどうかはよくわからないが、概念的に中央の点があったほうがいいような点のときには作ったほうがいいだろう。いずれにせよsatisficing対策は別の形でやんないといけない。
... いやー、90年代の研究がAyudiya & McClendon (1990 POQ)のほかにはKrosnickの奴しかないのには、ちょっと引いちゃいました。著者が見落としてるんじゃなくて、ほんとにないんだろうと思う。どれだけ枯れた話題なんだか。
雑記 - 覚え書き:調査におけるX件法尺度のXをどうするか研究レビュー by Krosnick(1997)