elsur.jpn.org >

« 読了:Chow, Ho, Hamaker, Dolan (2010) SEMと状態空間モデルのどこが同じでどこが違うか | メイン | 覚え書き: Cross-classifiedデータのランダム二値項目IRTモデルをMplusで表現する »

2019年1月18日 (金)

 cross-classifiedマルチレベルモデルについて大急ぎで勉強する必要が生じ、よく引用されている参考書である
Raudenbush, S.W., Bryk, A. (2002) Hierarchical Linear Models: Applications and Data Analysis Methods. Second Edition.
を急遽注文し、12章だけ読んだ。さぞや難しかろうと覚悟していたのだが、意外にもわかりやすい内容であった。
 若くてやる気のある学生のみなさんに私がひとつだけ勝てるとしたら、このように、高めの本をためらいなくバカスカ買っちゃうということだけなのである... 悲しい...

 以下はそのメモ。

 本章ではデータが階層的ではあるんだけどきれいな階層になっていなくて、複数のユニットにcross-classifyされているようなデータについて扱う。子供が地域と学校に属しているとか、子供が中学と高校に属しているとか、従業員を職業と産業で分類するとか。
 なお、子供がある学校に属していて、学校の中で実験群か統制群のどちらかに割り当てられている、というような場合と、構造は似ているけど全然違う。「子どもが地域と学校に属している」場合、分析者は結果をいろんな地域・学校に一般化したいと思っているので、地域と学校はランダム効果である。「子どもが学校と実験条件に属している」場合、いろんな地域に一般化したいとは思うが「実験条件の母集団」というのはないので、学校はランダム効果で実験条件は固定効果となり、実験条件をlevel-1変数にとったtwo-levelとなる。

 以下、子ども$i$, 地域$j$, 学校$k$に属する子ども$i$の到達度を$Y_{ijk}$とする。

 まずunconditonalなモデル(予測子のないモデル)について。
 withinモデルは
 $Y_{ijk} = \pi_{0jk} + e_{ijk}$
 $e_{ijk} \sim N(0, \sigma^2)$
 betweenモデルは
 $\pi_{0jk} = \theta_0 + b_{00j} + c_{00k} + d_{0jk}$
 $b_{00j} \sim N(0, \tau_{b00})$
 $c_{00k} \sim N(0, \tau_{c00})$
 $d_{00j} \sim N(0, \tau_{d00})$
 $b_{00j}$は地域$j$の効果, $c_{00k}$は学校$k$の効果, $d_{0jk}$は学校と地域の交互作用効果。セル(学校x地域)のサイズが小さい時は交互作用効果の推定は無理。
 このモデルはこう書き換えられる。
 $Y_{ijk} = \theta_0 + b_{00j} + c_{00k} + d_{0jk} + e_{ijk}$
要するに二元配置分散分析である。

 分散が$\sigma^2, \tau_{b00}, \tau_{c00}, \tau_{d00}$に分解されたので、ユニット内相関係数も3種類定義できることになる[...メモ省略]

 ではconditionalなモデルについて。
 地域特性を$W_j$, 学校特性を$X_k$とする。話を単純にするため、どちらも1変数、固定効果、2水準(実験群と 統制群)とする。個人特性を$a_{ijk}$とする。話を単純にするため、1変数2水準(男と女)とする。
 withinモデルは
 $Y_{ijk} = \pi_{0jk} + \pi_{1jk} a_{ijk} + e_{ijk}$
 $e_{ijk} \sim N(0, \sigma^2)$
 さて、betweenモデルは...

 まずは簡単に、地域の予測子の効果も学校の予測子の効果も固定と考えよう。以下、$\pi_{0jk}$と$\pi_{1jk}$を一発で書くために、$p=0,1$とする。
 $\pi_{pij} = \theta_p + b_{p0j} + \gamma_p W_j + c_{p0k} + \beta_p X_k + d_{pjk}$

 このモデルだと、地域の効果は全学校で共通、学校の効果は全地域で共通である。
 これを緩和すると
 $\pi_{pij} = \theta_p + b_{p0j} + (\gamma_p + c_{p1k}) W_j + c_{p0k} + (\beta_p + b_{p1j}) X_k + d_{pjk}$
地域特性と学校特性の交互作用をいれると
 $\pi_{pij} = \theta_p + b_{p0j} + (\gamma_p + c_{p1k}) W_j + c_{p0k} + (\beta_p + b_{p1j}) X_k + \delta_p X_k W_j + d_{pjk}$

 実際には、理論と照らし合わせて、もうちょっと簡略にしないといけないわけで...
 ここからは実例の紹介。

 実例1, 子どもの達成に地域と学校がどう効くか研究。
 withinモデルは
 $Y_{ijk} = \pi_{0jk} + \pi_{1jk} a_{ijk} + e_{ijk}$
 $e_{ijk} \sim N(0, \sigma^2)$
 betweenでは主効果だけ考えた。
 $\pi_{0jk} = \theta_0 + b_{00j} + c_{00k}$
 $b_{00j} \sim N(0, \tau_{b00})$
 $c_{00k} \sim N(0, \tau_{c00})$
 このモデルを推定して級内相関を求めると...[略]

 予測子をいれてみます。withinレベルで、入学前の言語能力VRQと読み到達度Reading, 父親の職業DADOCCと教育DADED, 母親の教育MOMEDと働いているかDADUNEMP, 性別SEX。地域特性は、社会的剥奪レベルDEPRIVATION。ただし、学校によって違ってくるかもしれないので
 $\pi_{0jk} = \theta_0 + (\gamma_{01} + c_{01k})DEPRIVATION_j + b_{00j} + c_{00k} $
とし、$(c_{00k}, c_{01k})'$の分散共分散を3つすべて推定した。で、カイ二乗検定で「$c_{01k}$の分散も$c_{00k}$との共分散も0」という帰無仮説が棄却されなかったので、$c_{01k}$を取っ払った。[←なるほど...]

 実例2はめんどくさいので読み飛ばした。

 勉強になりましたです...
 実例1で、地域特性の効果が学校によって違うってのをモデル化しているけど($(\gamma_{01} + c_{01k})W_j$という項をいれる。なるほどねえ)、こういうのMplusだとどうやって指定するんだろう?

 そうか、私がいまやりたいのは
 $Y_{ijk} = \theta_0 + b_{00j} + b_{01j} c_{00k} + e_{ijk}$
というモデルだということに気が付いた。うーむ、こういうのはMplusだとどうなるんだ???

雑記:データ解析 - 覚え書き:cross-classifiedなマルチレベルモデル

rebuilt: 2020年11月16日 22:53
validate this page