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2019年5月17日 (金)

Karlog, A.D., Sivalumaran, B., Marathe, R.R. (2017) The ad-format strategy effect on comparative advertising effectiveness. European J. Marketing, 51(1), 99-122.

 いわく。
 従来の比較広告の実証研究はたいてい、首位ブランドとその競合の2ブランドの、明示的な比較広告に注目していた。でもたいていの比較広告はたくさんの競合と比較している。また、競合の名前を挙げない間接的比較広告も多い。つまり、比較方略(首位 vs マルチブランド)と比較形式(直接 vs 間接)の2軸があるわけだ。
 [読み進めて分かったのだが、ここで言っている間接的比較広告とは、特定の競合を伏字で示すような比較広告のこと。「売上ナンバーワン!」というような広告のことではない]

 というわけで、この研究の問いは二つ。
 (1)比較方略の効果は比較形式のタイプに付随して決まるのか。つまり、競合の名前を出すべきかどうかは、首位比較方略とマルチブランド比較方略の間で異なるのか。
 (2)比較方略と比較形式の関係は新製品と既存製品で異なるか。

 仮説構築。[ここが冗長で、結構わかりにくいんだけど...]
 競合広告は受け手の注意を引き、メッセージ処理の動機付けを高めるが、メッセージの信頼性は下がる。これは、説得戦術が公平・適切でないと感じられたとき、消費者は広告主がその戦術を使った理由を勘ぐるので、メッセージに対して懐疑的になるからだと説明できる。
 特定の競合との直接比較は注意喚起戦術のようにみえてネガティブな反応を引き起こすだろう。いっぽう複数の競合との直接比較は消費者の事前知識を活性化し、ELMでいうところの中心的ルートの情報処理をひきおこす、合理的思考を促進し懐疑心は下がるだろう。
 いっぽう間接比較だと、まず伏字がどのブランドのことを指しているのかを考えないといけないので、中心的ルートの情報処理の動機づけが下がってしまい懐疑心が生じるだろう。
 [とかなんとか... だらだら書いてあってほんとにめんどくさい]

 実験。
 粉末洗剤(Utility寄りのカテゴリ)とスマートフォン(Hedonic寄りのカテゴリ)に注目する [カテゴリを決めるまでの予備調査について延々書いてあるんだけど省略]。
 4つの実験にわける。いずれにおいても、目的変数は、広告主の操作意図の知覚(懐疑的態度の指標)、広告への態度。共変量は、比較ブランドの仕様経験、製品知識、年齢などの個人特性。

 実験1。洗剤の既存製品。
 ブランドはAriel。
 架空広告を見せ質問紙に回答させる。要因は広告の比較方略(2)x比較形式(2)、どちらも被験者間。首位比較条件では首位ブランドのSurfとの比較、マルチブランド比較条件ではSurfなど3ブランドとの比較。直接比較では競合ブランド名を呈示、間接比較では"X", "Y", "Z"とする(フォントは実際の競合と同じので)。
 被験者はインドの学生、n=362。間接比較の場合、競合の名前を当てられなかった対象者は分析から除外した[←これだと、カテゴリ知識のバイアスがかかるのではなかろうか?]
 結果。操作意図と広告態度を目的変数、2要因と共変量を説明変数にしたMANCOVAで、要因間交互作用が有意。首位比較では間接比較のほうが操作意図が低く知覚され、広告への態度が高くなった。マルチブランド比較では逆に、直接比較のほうが操作意図が低く知覚され広告への態度が高くなった。

 実験2は洗剤の新製品。[略]
 実験3、4はスマホ。[略]

 考察。マルチブランド比較方略では直接形式が、首位比較方略では間接形式が、それぞれ効率的であった。仮説は支持された。[以下、細かい議論が延々あるけど省略]

 限界。新製品では広告への態度じゃなくてブランドへの態度を目的変数にしたほうがよかったかも。云々。

 ... 書き方がかなり冗長なのでいらいらしたが、先行研究レビューが勉強になりました。メモしておくと、

論文:マーケティング - 読了:Kalro, Sivakumaran, Marathe (2017) 比較広告において競合はひとつがよいか複数がよいか、名前は出すのが良いか伏せるのが良いか

rebuilt: 2020年11月16日 22:53
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