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2014年7月 8日 (火)

Fowler, J.H., Christakis, N.A. (2008) Dynamic spread of happiness in a large social network: Longitudinal analysis over 20 years in the Framingham Heart Study. BMJ, 337.
 このたび、Facebookの中の人がやっていた実験が倫理的批判を浴びてニュースになった。好奇心でその論文を眺めていたら、感情感染のフィールド研究をいくつか挙げる中で、フラミンガムでの研究というのに言及していて、正直、目を疑った。それって、現代医学にその名を轟かせるフラミンガム・コホートのことか。マジか。
 マジでした。フラミンガム研究(1940年代から続く大規模地域コホート研究)のデータを用いた社会ネットワーク分析。著者らの名前をよく見たら、この先生方、Petty & Cacioppoのあのカシオポと孤独感の研究してた人たちだ(←芸能人みたいな言い方だなあ。チャゲアンド飛鳥のアスカ、みたいな)。

 フラミンガム子孫コホート(フラミンガム研究の第二世代コホート)の対象者をegoと呼ぶ。手書きの管理シートに、それぞれの家族、近隣住民、同僚、友人などが記載されているそうで、ここに登場した人をalterと呼ぶ(あるegoがほかの人のalterになることもある)。フラミンガム研究全体で、12067名のegoとalterのネットワークを構築できた由。住所はフラミンガム市に限らない。で、1983年から幸福感を聴取しているので、83年から2003年まで追跡できた4739人のegoとそのalterを分析対象とする。幸福感はCES-Dからとってきた4項目で、ここから1因子を得る。
 ネットワークを調べると、幸せ(不幸せ)な人は幸せ(不幸せ)な人とつながっている傾向がある(3次のつながりまで効果がある)。幸せな人は中心性が高い。云々。

 いま、ネットワーク上でつながっている2人の幸福感のあいだに関連性があったとして、その理由は3つ考えられる。(1)induction. 一方の幸せが他方の幸せを引き起こした。(2)homophily. 幸せな奴は幸せな奴とつながりやすい。(3)confounding. つながっている二人は同時に同じことを経験する(景気後退とか)。
 そこで、ある調査時点におけるegoの幸福感を従属変数にしたGEE回帰モデルを組み、そこに本人の前時点での幸福感、alterの同時点での幸福感、デモグラ情報etc. を投入するだけでなく、alterの前時点での幸福感も投入する(homophilyの効果を分離するため)。また、alterのタイプを投入して、友達の方向性に注目する。もしconfoundingだったら、「alterはegoの友達だが逆は真ならず」だった場合とその逆だった場合で差が出ないはずだ、とかなんとか。詳細は付録を読めとのこと。
 その結果: alterが幸せだとegoも幸せである。特にnearby mutual friendが幸せだと最強で、next door neighbourがこれに続く。同僚の幸せは効かない(ははは)。nearby ego-perceived friendが幸せである効果のほうが、nearby alter-perceived friendが幸せである効果よりも大きい(クラスの人気者が幸せだったら、彼ないし彼女を勝手に友達だと思っている教室の隅の目立たない人も幸せになるが、逆はそれほどでもないってことですね)。物理的な距離の効果、時間差のパターン、SESの類似性が効かないところなどをみるに、これは幸せの感染であると考えられる。とかなんとか、いろいろ分析しているけど、面倒なので省略。

 うーん... 著者らはこれを明確に、幸福の社会的感染として捉えているのだが、分析のロジックになにかもやもやした印象が残り、正直、いまいち納得できなかった。付録を含め、丁寧に熟読しなければならない論文だと思う。残念ながら読みませんけど。
 それにしても、フラミンガム・コホートでこういうデータも取っていたとは知らなかった。日本には久山町研究という超有名なコホートがあるけど、社会的ネットワークに関するデータはとっているのかなあ。

論文:心理 - 読了:Fowler & Christakis (2008) 幸福の感染 in フラミンガム・コホート

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