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2007年10月 7日 (日)

Bookcover 樹影譚 (文春文庫) [a]
丸谷 才一 / 文藝春秋 / 1991-07-10
表題作ほか2編を収録。
 「樹影譚」はとても面白い小説で,読み終えてあまりの鮮やかさに呆れ,もういちど読み直した。難しくいうとメタフィクションってんですかね,そういう技巧を凝らした構成なのだが,俺はむしろ,良くできた落語みたいな話だと思った。主人公の作家が足下を攫われて混沌に落ち込んでいく,その落ちに持っていくために,すでにマクラからして計算されているのである。

Bookcover パンドラ・アイランド〈上〉 (徳間文庫) [a]
大沢 在昌 / 徳間書店 / 2007-10
Bookcover パンドラ・アイランド 下 (徳間文庫 お 2-9) [a]
大沢 在昌 / 徳間書店 / 2007-10
この小説はゲームに似ている。よく知らないけど,画面の下に文字が出てきて,ときどき選択肢が出てくる奴。「私は一匹狼の元刑事だ。このたび離島に保安官として赴任した」→クリック→「海辺を酔っぱらった老人が歩いている」→話しかけるをクリック→『お前は島の財産を狙っておるのか』→クリック→「老人はなにを云おうとしているのだろうか?」→ホテルに戻るをクリック→初日終了,という感じ。主人公が受け身で,回想場面がなくて,人物設定が平板だから,こういうことになるのだろう。連載されたメディアの特性に影響されているのかもしれない(スポーツ紙連載)。でもその限りにおいては面白いし,良質な娯楽小説だと思う。

 大学から足を洗って2年半になるが,ここのところ立て続けに,かつてお世話になった人たちに会う機会があった。奇妙なもので,そういうことがあるたびに,なんだか精神的に混乱してしまい,立ち直るのに時間がかかる。俺はいったいどこにいて何をしておるのか,と途方に暮れてしまう。
 そんなことがあった帰り,本屋でなるべく肩の凝らなそうな文庫本を探し,大沢在昌のなるべく長い小説を選んで,喫茶店で一気読みした。そういうときにうまいこと面白い小説に当たるのは,人生の救いといえるだろう。世の中の小説がみんなドストエフスキーでは困る,ということが,最近だんだんわかってきた。

フィクション - 読了:10/11 (F)

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