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2010年6月29日 (火)
杯気分!肴姫 一杯目 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)
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入江 喜和 / エンターブレイン / 2010-05-24
杯気分!肴姫 二杯目 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)
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入江 喜和 / エンターブレイン / 2010-05-24
杯気分!肴姫 三杯目 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)
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入江 喜和 / エンターブレイン / 2010-06-25
90年から93年にかけて講談社「モーニング」誌で連載された,入江喜和さんのデビュー作。単行本は長く入手できない状況が続いており,業を煮やした俺は大枚はたいてオンデマンド版で入手してしまったのだった。なのに,このたび復刊本が出るとまたイソイソと買ってしまったりして。。。
入江喜和さんは下町の平凡な人々の生活だけを描き続けているマンガ家で,お世辞にも売れっ子とは言い難いが,この人のマンガにはなにか天才的なきらめきのようなものがあり,何度読んでも飽きない。絵柄の魅力もさることながら,台詞がほんとに生き生きとしているのである。エルモア・レナードのようなタイプの,非常にリアリティのある台詞で物語を引っ張っていくタイプの作家を指して「耳の良い作家」と呼ぶのだと聞いたことがあるが,この人はさしずめ「耳の良いマンガ家」ということになろう。このデビュー作だと後半からが素晴らしい。このたび読み返して改めて感銘を受けたので,ついつい結末近くの名場面を書き写してしまう次第。
主人公は下町の小料理屋の若きおかみさんで,ぶっきらぼうだが心優しい医者(群ちゃん)と相思う仲になるが,無医村に赴任する男と自分の店との間で心揺れた末,ついには店を選ぶ。で,鞄ひとつで旅立つ男の前に仕事着の着物姿で現れ,涙を隠して二カッと微笑んでみせる。「見送りなら来なくていいっつったろ!オレァそーいうベタベタしたのはキライだって」「そこまで!そこまでよ ねっ 駅の近くまで行くだけだから」「いらん!大通りで車ひろって上野まで行くから」「あっ じゃ明治通りまで タクシー乗り場ンとこ いいでしょ? ねっ早足で歩くから いい天気だし散歩がてらにサ」「...勝手にしろっ」「うん」
二人歩き始めると,うしろから自転車の老人が「よォ!お出かけー?」「うん! ちょっとそこまで」「い~い天気だねェ デートだな」「そーよん」別のおばさんが「アラッ こないだはごっそさんねェ」「い~え~ こっちこそもらいっぱなしで」。。。という調子で歩いているうちに,ふたりはタクシー乗り場に着く。「サ ここから ちょいと先生」「... ほんとにいい天気だ 駅まで歩いてみるか」 駅とは東向島駅のこと。
ふたたび歩きながら「なんかピンとこないのよねェ東向島って あたしなんかがちっちゃい頃は玉の井って駅名だったから おとうちゃんとかオジちゃんなんか未だにそー言ってるもん 玉の井だとどーしても戦前の赤線地帯ってイメージだからよくないんだって ヘンよねェ 駅の名前なんか変わったってこの街もあたしらもかわんないのにサ」「しかしなかなか粋ではあるな 玉の井の女と別れてきたっつーのは」「まー時代がかってますことね~え」とけらけら笑う女の後ろ姿に,男がふと真顔になって「やっぱりおまえはそのカッコしているときが一番いいな」 二人は立ち止まる。「オレァ女の着るもんなんぞどーでもいいと思ってる方だけど おまえはそれが一番似合う」 そっぽを向いて「はじめて店で見たとき 「いい女だな」っつったろ? アレ冗談じゃねえぞ」 女はあわてたように俯いて,「群ちゃん!」 手提げから包みを取り出し「これ電車の中で食べて! おむすびとだし巻き... あたし作ったの」「またおめェはこーいうことをする...」「わかってるって ヤなんでしょベタベタするのは」 一拍おいて「ここで帰るわ」
そこは駅前商店街の手前の横断歩道のあたり。ふたりは笑って別れる。「かみしめて食うよ おカミさん」 背中を向けて歩み去りながら,おにぎりを掲げて振ってみせる男に,女が涙を溜めて「じゃあね!」と声をかける。
。。。書き写してみて確信したけど,これ,いちいち声に出して確かめないと書けない台詞ですね。
乙嫁語り 2巻 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)
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森 薫 / エンターブレイン / 2010-06-15
パラノイアックなまでの執拗な描き込み。一コマ一コマのあまりの美しさにめまいがする。。。
あとがきマンガに戯画化された著者が登場し,「そういえばときどき思うのですが,晴れた昼間にひとりで馬の足やら刺繍やらを描いているとこうふつふつと。。。」「ふつふつと。。。」 目を輝かせて机に向かう著者の顔がアップになって 「私いま,生きてる!」 笑ってしまった。さもありなん。
午前3時の無法地帯 (1) (Feelコミックス)
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ねむ ようこ / 祥伝社 / 2008-12-08
午前3時の無法地帯2 (Feelコミックス)
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ねむ ようこ / 祥伝社 / 2009-04-08
中小企業で働きはじめた若い女性を主人公に据えた青春ストーリー。安野モヨコ「働きマン」を女性誌向けにしたような感じ。これが著者のデビュー作だそうだが,すでに練達の域である。
それにしても,こういうマンガ読んでいると,いやあ恋愛って面倒だなあ,と思えてならない。もう20代に戻らなくてよいかと思うとほんとにうれしい。
ヴィンランド・サガ(9) (アフタヌーンKC)
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幸村 誠 / 講談社 / 2010-06-23
アオイホノオ 4 (少年サンデーコミックススペシャル)
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島本 和彦 / 小学館 / 2010-06-11
路地恋花 1 (アフタヌーンKC)
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麻生 みこと / 講談社 / 2010-02-05
前夜祭 (モーニング KC)
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小田 扉 / 講談社 / 2009-03-23
それではさっそくBuonappetito! (ワイドKC Kiss)
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ヤマザキ マリ / 講談社 / 2008-08-11
イタリア家族 風林火山 (ぶんか社コミックス)
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ヤマザキ マリ / ぶんか社 / 2010-06-25
ベントラーベントラー(2) (アフタヌーンKC)
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野村 亮馬 / 講談社 / 2009-10-23
サムライ・ノングラータ
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矢作 俊彦,谷口 ジロー / フリースタイル / 2009-10-20
レッド(4) (KCデラックス イブニング )
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山本 直樹 / 講談社 / 2010-06-23
コミックス(-2010) - 読了:「杯気分!肴姫」ほか