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2011年12月 6日 (火)
Seetharaman, P.B., et.al. (2005) Models of multi-category choice behavior. Marketing Letters, 16(3/4), 239-254.
複数カテゴリ商品の選択モデルについて、9人が連名で書いているレビュー論文。いやあ、これをもっと早く見つけていればよかったのだが。検索ワードがわからなかったせいで、ずいぶん遠回りをした。
関心あるところをメモ:
- 複数カテゴリの購買生起モデルは、多変量プロビットでManchanda et al.(1999,Marketing Sci.), Chib et al.(2002 Advances in Econometrics), 多変量ロジットでRussell & Peterson (2000, J. Retailing)がある。購買タイミングのモデルは、まず多変量ハザードで Chintagunta & Haldar(1998,JMR) があり、多変量ハザードでは2つのタイミングの間の負の相関をモデル化できないので (なんでだろう?)、多変量比例ハザードや多変量加法リスクモデルを使う試みもある(聞くのも面倒だから試みないでほしい...)。こういうのとは別に、セット販売の選択モデル(bundle choice model)という流れもある由。コンジョイントの交互作用効果として推定したり、ネステッド・ロジットとか多項プロビットとかを使ったりする。
- 複数カテゴリのブランド選択モデルは、多項プロビットでKim et al.(1999, J. Retailing), Ainslie & Rossi (1998, Marketing Sci.)がある。よくわからないが、前者はカテゴリごとに多項プロビットモデルを推定してからカテゴリ間でモデルパラメータの相関を出しており(ケチはなにを買うときもケチなのか、というような話であろう)、いっぽう後者は同時推定しているらしい。さらにSeetharaman et al.(1999, JMR)は世帯の状態依存性をモデルに入れている。変わり種はIyengar et al.(2003, Quant. Marketing & Econ.)で、消費者のあるカテゴリについての購買から他のカテゴリの購買を予測するモデルを作っている由。
- 複数カテゴリの購買生起とブランド選択の両方を扱うモデルとしては,Manchanda et al. (1999)のように各カテゴリでブランド選択モデルをつくりその誤差項に相関を持たせるタイプのものと,バスケットの効用最大化問題として捉えるモデルがある。
- 共通のブランドがある複数カテゴリ間でブランド選好の相関を調べるという流れもあって、こちらはまずただのポアソン分布でRussell & Kamakura (1997, J. Retailing)。多項ロジットで Erdem(1998,JMR), Erdem & Winer (1999, J. Econometrics), Erdem(2002, JMR)。あるカテゴリでのブランド販促が他のカテゴリでの当該ブランド購買に与える影響がわかったりするんだそうな。楽しそうだなあ。いっぽう、多くのカテゴリでのブランド選択から「PB好き」などという選好の個人差を抽出するタイプの研究もあり、たとえば多項ロジットと因子分析を組み合わせたSingh et al. (2005, JMR)がある。また実験研究でDhar & Simonson (1999, JMR)というのが、あるカテゴリで目標と資源のトレードオフがあると、同じ買い物での別のカテゴリの購買ではどんな属性に注目するか、というようなことを調べている由。エピソードを提示したのち選択課題、というパラダイムらしい。話題が面白いわりに手続きが伝統的だから、心理学専攻の修論とかによさそうですね。
- カテゴリ購買生起とブランド選択だけでもう十分に複雑な話なのに、さらに購買量まで扱おうというエライ方々もいる由。いくつかworking paperが挙げられていたが、そのなかのSong & Chintagunta というのは2007年にJMRに載っている模様。
ほかに店舗選択のモデルもちょっとレビューされていたが、そっちはあまり関心ないので省略。
論文:マーケティング - 読了:Seetharaman, et al. (2005) 複数カテゴリの選択モデルレビュー