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2012年5月23日 (水)

American Marketing Association (eds.) (2005) AMA Core Marketing Knowledge: Segmentation. American Marketing Association.
 数年前に社内研修資料を作る際に入手して、そのまま読まずに放置していたもの。これ、たぶんAMAがトレーニング用教材としてwebで配っていたものと思うのだが(もしかすると有料で)、このたび探してみても全然みつからない。万物が流れゆくこの社会においては、7年前の資料なんてもう誰も見向きもしないということだろうか。よくわからん。
 マーケターとリサーチャー向けの、セグメンテーションについての全9章からなる解説、全78頁。各章はおそらくAMAの雑誌 (Marketing Researchとか) に掲載された記事の再録などだと思う。各章の内容をメモ:

"Principles of Market Segmentation" (W.D. Neal) ... セグメンテーションの4要件、アプリオリ vs ポストホック、ベース変数のいろいろ、構築時の注意点、分類手法のいろいろ。

"Beyond Segmentation" (M.E.Raynor & H.S.Weinberg) ... あるセグメントから他のセグメントに進出するときになにに気をつけないといけないか。NicheとFootholdはちがう。云々。飛ばし読み。

"Defining Your Target Audience" (クレジットなし) ... ターゲット消費者のことをよく知りましょう。云々。飛ばし読み。

"Segmenting the Sales Force" (T. Grapentine) ... STPの考え方で営業スタッフを管理する、という話。組織コミットメントとか成績とかで分類して、面接とか調査とかやって、採用試験やら研修やらに生かす。云々。飛ばし読み。

"Identifying and Reaching Influencers" (P.M.Rand) ... クチコミの重要性は増している;インフルエンサーは大事だ;インフルエンサーはこんな人が多いという調査結果の紹介(結婚してて子供がいる由。ホンマカイナ); インフルエンサー("Bee")の周りにはアルファと呼ばれる消費者がいて情報を媒介している;メーカーも対インフルエンサー対策を始めている;云々。なんというか、そのー、時の流れを感じますね。

"Maladies of Marketing Segmentation" (T.Grapentine & R.Boomgaarden) ... この章は大変面白かった。読み手をメーカーの調査部門に絞って書いているからだと思う。
 著者いわく、セグメンテーションがうまくいかない理由は主に4つある。

  1. ターゲットセグメントとのコミュニケーションがうまくいかない。
    • →対策(1): ターゲットセグメントをデモグラ変数で特徴づけられないのはごくありふれた話だ。まず定性調査やっとけ。創造的になれ。
    • →対策(2): データベース上でターゲットセグメントを同定できないのもよくある話だ。プロジェクトを始める前に、ターゲットセグメントについてのマーケターの期待を理解し、期待値を下げておけ。新規顧客対象の簡単な調査を続けてデータを貯めて、ターゲットをデータベース上で判別できるような仕組みを時間をかけてつくる、というのも手だ。
  2. マネジメントの組織構造が柔軟性を欠いている。短期的・戦術的なインプリケーションを得るためのセグメンテーションならいいけど(タグラインを変えなさいとか)、長期的・戦略的なセグメンテーションは往々にして既存の組織構造を脅かすものだ。
    • →対策(1): 調査部門は組織構造を変えられないが、社内クライアントを教育することはできる。頑張れ。さらにいえば、戦略レベルのセグメンテーションより、個別の製品について戦術レベルのセグメンテーションをやったほうが生産的だぞ。(いやあ、身も蓋もないなあ)
    • →対策(2): 販売部門とマーケ部門の政治的な押したり引いたりは、うまくいえば健康的で実り豊かだが、リサーチャーにとっては時として地雷原である。たとえば、販売主導の会社で、リサーチャーが「最近の消費者は販売店にあまり影響を受けないようです」という知見を得てしまったとして、販売チャネル向けの広告費や販促費を減らしましょうなどというリコメンデーションを出すのは、相当な抵抗を受ける。できることはただ一つ、プロジェクトを始める前に上級管理職を味方につけておけ。それが無理なら、調査の焦点をもっと狭くしておけ。
  3. マーケッターがターゲットを絞れない。いろんなセグメントに売りたがる。
    • →対策:STPという考え方を教育しろ。(いやはや)
  4. マーケッターに経験が足りない。セグメンテーションしたいと言っておきながら、そのあとでどうしたらいいのかわからない。
    • →対策:事前にマーケターの経験と本気度を瀬踏みしろ。もし足りなさそうな場合には、自分がこれから先生役をするだけの能力があるかどうか考えろ。

 というわけで、セグメンテーションに際しての調査部門の心構えは次の4つ。

  1. 社内クライアントのコンサルタントになりなさい。まずはこんな風に問いなさい:「もし調査の結果、顧客へのコミュニケーションを変えないといけないとわかったら、どうしますか?」
  2. 上級管理職の「チャンピオン」を探しなさい。
  3. セグメンテーション調査にはコストがかかるということを率直に伝えなさい。
  4. ノーということを学びなさい。時には戦略的セグメンテーションを避け、戦術的でアプリオリなセグメンテーションで済ませなさい。

 。。。はっはっは。調べてみたら、著者は自営のコンサルタントで、この章はMarketing Research誌の2003年の記事だった。

”Refining the Research Microscope" (T.Grapentine & M.Klupp) ... セグメンテーションができたとして、各セグメントの中心的なメンバーをどうやって同定するか、という話。
 中心的メンバーを決めたくなる理由は3つある。

  1. 結局のところ、どんなセグメンテーションだってセグメント内部に異質性を抱え込んでいるわけで、中心的メンバーと周辺的メンバーの間には重要なちがいがあるだろうし、マーケティングミクスを最適化するためにはその違いが重要になるだろうから。
  2. 面接とかしたくなるから。
  3. ターゲットセグメントの中心的メンバーにおけるブランドロイヤリティを調べたいから。

 中心的メンバーを決めるためには、まずは所属セグメントについてのフィッシャー判別関数を求めなさい。SPSSは各対象者について、セグメント所属確率とかセグメント重心に対するマハラノビス距離の二乗とかを出してくれます。云々。急にデータ解析初歩コースみたいな話になるので、ちょっと笑ってしまった。著者は経験豊かな実務家らしいが、統計家ではなさそうだ。

"Better Than Sex: Identifying within-gender differences creates more targeted segmentation" (Q.Chen, et al.) ... 項目数の少ない gender尺度を作りましたという話。パス。

"Guided Selling" (L.B.Arthur) ... インターネット時代のマーケティングは、顧客に紐をつけて引っ張ってきて販売に渡すのが仕事じゃなくて、顧客に価値ある情報を与え教育して販売プロセスに導いてやるのが仕事だと考えねばならない。これからのマーケターは、販売部門と手を取り合って、顧客の声をもっと聴かなきゃならない。これがguided sellingという新しい考え方なのだっ。とかなんとか。斜め読み。

論文:マーケティング - 読了: AMA編 (2005) セグメンテーション教室

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