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2013年11月11日 (月)
シェイクスピア: 言語・欲望・貨幣 (平凡社ライブラリー)
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テリー・イーグルトン / 平凡社 / 2013-01-12
私でさえ名前を知っている高名なマルクス主義批評家が、シェイクスピアをこれでもかこれでもかと深読みしまくる、知的冒険の書。そうかぁ、リア王のコーデリアは構造主義言語学を深く理解していたのだなあ、などと思わず説得されたりなんかして...
一番面白かったのは「トロイラスとクレシダ」を読み解くくだりであった。「トロイラスとクレシダ」は落ちのはっきりしない不思議な悲劇なのだけれど、確かに、トロイラスの絶望は、物事の価値に対するトロイラスの捉え方のなかに、最初から胚胎していたのかもしれない...
哲学・思想(2011-) - 読了:「シェイクスピア 言語・欲望・貨幣」
シェイクスピア全集 (〔14〕) (白水Uブックス (14))
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ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
松岡訳で読んで、あまりに不愉快な作品であったため、念のために小田島訳でも読んで、やはり大変に不愉快な作品であることを確認した。奴らに法の精神というものはないのかね(そりゃ、まあ、近代的な意味での法の精神はないんだろうけど)。ポーシャはもちろんのこと、シャイロック以外の全員に天誅を下すべきだと思う。
ミッドナイト・ブルー―ロス・マクドナルド傑作集 (創元推理文庫)
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ロス マクドナルド / 東京創元社 / 1977-05
ハードボイルドの巨匠ロス・マクドナルドの初期短編集。うーん。100年後にも小説が読まれていたとして、そのとききっとチャンドラーは読ま継がれていると思うんだけど、ロス・マク先生はどうでしょうか。
刑事マルティン・ベック 笑う警官 (角川文庫)
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マイ・シューヴァル,ペール・ヴァールー / 角川書店 / 2013-09-25
70年代北欧ミステリの代表作。この「刑事マルティン・ベック」シリーズ、10巻も続いた人気の群像劇シリーズだっただそうで、これから新訳を出していく予定なのだそうだ。へー。
フィクション - 読了: 「ヴェニスの商人」「ミッドナイト・ブルー」「笑う警官」
カタロニア讃歌 (岩波文庫)
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ジョージ オーウェル / 岩波書店 / 1992-05-18
オーウェルはスペイン共和政末期の大混乱に翻弄される。短い内容なのだが、読み終えるまでにとても時間がかかった。
連続講義・デフレと経済政策 アベノミクスの経済分析
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池尾 和人 / 日経BP社 / 2013-07-11
サラリーマンのための現代経済学入門、という感じの本。私のような経済音痴のためにわざわざ講義形式にしてくださっているのだと思うけど、それでも残念ながらちょっと理解できないところがあった(45度線分析のところとか)。でもそれは私がこの種の話にとことん向いていないからで、きっと良書なのだろうと思う。それなりに勉強になったような気がいたします。
民主党政権 失敗の検証 - 日本政治は何を活かすか (中公新書)
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日本再建イニシアティブ / 中央公論新社 / 2013-09-21
大坂の非人: 乞食・四天王寺・転びキリシタン (ちくま新書)
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塚田 孝 / 筑摩書房 / 2013-10-07
ダルマの民俗学―陰陽五行から解く (岩波新書)
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吉野 裕子 / 岩波書店 / 1995-02-20
ダルマさんについての本というより、陰陽思想から読み解く日本の習俗、という感じの内容であった。
ミケランジェロ (中公新書)
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木下 長宏 / 中央公論新社 / 2013-09-21
関東連合:六本木アウトローの正体 (ちくま新書)
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久田将義 / 筑摩書房 / 2013-09-05
不格好経営―チームDeNAの挑戦
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南場 智子 / 日本経済新聞出版社 / 2013-06-11
ノンフィクション(2011-) - 読了:「連続講義・デフレと経済政策」「民主党政権 失敗の検証」「大阪の非人」「ダルマの民俗学」「ミケランジェロ」「関東連合」「カタロニア讃歌」「不格好経営」
青春しょんぼりクラブ 1 (プリンセスコミックス)
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アサダ ニッキ / 秋田書店 / 2011-07-15
青春しょんぼりクラブ 2 (プリンセスコミックス)
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アサダ ニッキ / 秋田書店 / 2011-12-16
青春しょんぼりクラブ 3 (プリンセスコミックス)
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アサダ ニッキ / 秋田書店 / 2012-05-16
青春しょんぼりクラブ 4 (プリンセスコミックス)
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アサダ ニッキ / 秋田書店 / 2012-11-16
青春しょんぼりクラブ(5) (プリンセス・コミックス) (プリンセスコミックス)
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アサダニッキ / 秋田書店 / 2013-04-16
青春しょんぼりクラブ 6 (プリンセスコミックス)
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アサダ ニッキ / 秋田書店 / 2013-08-16
秋田書店「月刊プリンセス」連載、高校生たちのごくごくたわいない恋愛コメディ。ほんとうに深刻な葛藤や対立は登場せず、ごくごく平穏に日常が進むところが、なんというか、現代的なのかもしれない。
なにかの拍子でたまたま手に取ったら、脇役の委員長さんが可愛らしくて、ついつい読み進めてしまったのだけれど、既刊を読み終えて、俺こんなのも読めるようになったんだ、とびっくり。高校生の恋愛模様なんて焼却炉にくべてしまえばいいと思っているのだけれど。どんどん許容範囲が広くなるなあ。
とりあえず地球が滅びる前に 4 (フラワーコミックスアルファ)
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ねむ ようこ / 小学館 / 2013-10-10
このマンガも、「県大会で優勝しないと人類滅亡」という極端な設定もの下、女子高生たちのごく平凡な青春を丁寧に描くという不思議な作品であった。4巻で終わるとはちょっと意外であった(さすがに設定が突拍子もなさ過ぎたのかしらん)。
銀の匙 Silver Spoon 8 (少年サンデーコミックス)
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荒川 弘 / 小学館 / 2013-07-11
銀の匙 Silver Spoon 9 (少年サンデーコミックス)
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荒川 弘 / 小学館 / 2013-10-18
言わずと知れた人気作品。農業高校の青春を描く。
この作品にしても、読者の年齢は結構高いのではないかと思う。こうしてみると、ストーリーマンガってのはやはり青春期を描くのに向いたメディアなのかなあ。
暗殺教室 6 (ジャンプコミックス)
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松井 優征 / 集英社 / 2013-10-04
近年の週刊少年ジャンプの大ヒット作。
コミックス(2011-) - 読了:「青春しょんぼりクラブ」「とりあえず地球が滅びる前に」「銀の匙」「暗殺教室」
大東京トイボックス (10) (バーズコミックス)
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うめ / 幻冬舎 / 2013-09-24
大東京トイボックスSP (バーズコミックス)
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うめ / 幻冬舎 / 2013-09-24
講談社モーニング誌での打ち切りにも負けず、幻冬舎に籍を移して続いた長期連載、ついにフィナーレ。連載開始時から強く心惹かれていたのだけれど、当初の比較的単純なストーリーが複線的な群像劇に変貌してどんどん面白くなっていくという、稀な成功作であった。
敗走記(1)関ヶ原~大阪「島津の退き口」を辿る (イブニングKC)
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しま たけひと / 講談社 / 2013-09-20
食い詰めて転職寸前の売れない漫画家が、関ヶ原から大阪までの島津軍の敗走ルートに沿って道を延々と歩くというエッセイ風の描写に、島津軍の物語が重なる、という構成。現代のほうは一人称視点で、エッセイマンガとして描かれているはずなのに、ときどき主人公が知らないはずのエピソードが顔を出したりして、ちょっと混乱する。好みが分かれるんじゃないかと思う。
87CLOCKERS 4 (ヤングジャンプコミックス)
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二ノ宮 知子 / 集英社 / 2013-11-08
女子攻兵 4 (BUNCH COMICS)
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松本 次郎 / 新潮社 / 2013-11-09
えーと、この世界では兵士たちがなぜか女子高生型の巨大兵器に搭乗し、日々狂気に侵されながら血みどろの消耗戦を戦っているのである。「地獄の黙示録」のような話になるのかと思いきや、本巻の後半からは主人公の、これまた救いのない過去の話になり... どう捉えたらわからないのだが、とにかく気になる奇妙な作品。
さよならソルシエ 2 (フラワーコミックスアルファ)
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穂積 / 小学館 / 2013-11-08
評判になったデビュー作「式の前日」もそうだったんだけど、きっとお好きな人にはもうたまらないだろうと思う。でも、私は、ちょっと... 男はイケメンに生まれると心まで美しくなるのかしらん、なんて思ってしまう。
コミックス(2011-) - 読了:「大東京トイボックス」「敗走記」「87Clockers」「女子攻兵」「さよならソルシエ」
エニデヴィ1 (ビームコミックス)
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白浜鴎 / エンターブレイン / 2013-06-15
百鬼夜行抄 22 (Nemuki+コミックス)
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今 市子 / 朝日新聞出版 / 2013-10-08
純潔のマリア (3) (アフタヌーン)
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石川 雅之 / 講談社 / 2013-10-07
百年戦争後のフランスを舞台に、きわめて人間臭い魔女たちが活躍する面白い作品、完結巻。著者はとても魅力的な漫画家だけど、顔の描き分けはあまり上手くなくて、だから2巻の段階で筋がわからなくなってしまっていた。今回1巻から読み返して、なるほどこういう話だったか、と感心。
戦乱の悲惨を止めることから身近な幸せの追求へと関心を移した主人公の選択は、この物語としてはハッピーエンドなのだけれど、どこか苦く重い印象を残す。
東京喰種トーキョーグール 9 (ヤングジャンプコミックス)
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石田 スイ / 集英社 / 2013-10-18
社会の闇に潜む食人鬼たちを、食人鬼たちの側から描いた作品。究極的に社会から排除される運命にあるマイノリティの物語として、興味深く読んでいたのだけれど、どうやら少年誌的なアクションに進んでいくようだ。
3月のライオン 9 (ジェッツコミックス)
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羽海野 チカ / 白泉社 / 2013-09-27
現代日本のマンガを代表する傑作。いや、もう、すごいです...
イムリ 14 (ビームコミックス)
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三宅乱丈 / エンターブレイン / 2013-09-26
コミックス(2011-) - 読了:「エニデヴィ」「3月のライオン」「純潔のマリア」「百鬼夜行抄」「東京喰種」「イムリ」
めしばな刑事タチバナ 10 (トクマコミックス)
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坂戸 佐兵衛 / 徳間書店 / 2013-09-30
鋼鉄奇士シュヴァリオン 2 (ビームコミックス)
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嵐田佐和子 / エンターブレイン / 2013-10-15
ゴレンジャー風の正義の戦隊が、無事悪の組織を倒して解散し、おのおの市民生活に戻ったんだけど、アカレンジャーに相当するリーダー格の青年だけは変身がとけず、定職も持てず金もなく... というコメディ。設定はすごく面白いと思うんだけど...
ジゼル・アラン 4 (ビームコミックス)
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笠井スイ / エンターブレイン / 2013-10-15
失踪日記2 アル中病棟
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吾妻ひでお / イースト・プレス / 2013-10-06
大変な評判を呼んだ「失踪日記」のそのあとを描く体験記。最後に大ゴマになるところで、これがプロか、と息を呑んだ。
重版出来! 2 (ビッグコミックス)
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松田 奈緒子 / 小学館 / 2013-09-30
ちいさこべえ 2 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
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望月 ミネタロウ / 小学館 / 2013-09-30
山本周五郎「ちいさこべ」の漫画化、二巻目。ついつい原作を読み直してしまった。
コミックス(2011-) - 読了:「めしばな刑事タチバナ」「鋼鉄奇士シュバリオン」「ジゼル・アラン」「アル中病棟」「重版出来」「ちいさこべ」
未読の本も既読の本も窓際に山積みになっているので、少しは整理すべく、まず既読コミックスの記録から。
毎日かあさん10 わんこギャル編
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西原 理恵子 / 毎日新聞社 / 2013-10-11
鴨の水かき 1巻 (ビームコミックス)
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空木哲生 / エンターブレイン / 2013-10-15
弱小デザイン事務所の汗と涙をコミカルに描く、って... こういうマンガ、すごく多いなあ。これはこれで面白いけど、なぜわざわざ独自性を出すのが難しいテーマを選ぶんだろうか。
大奥 10 (ジェッツコミックス)
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よしながふみ / 白泉社 / 2013-10-28
この作品の世界では、田沼意次は女、平賀源内も女。実在の人物の性別を変えている分、没入するのが難しくなりそうだが、なぜかまったく気にならない。これが物語の強度というものであろうか。
アイアムアヒーロー 13 (ビッグコミックス)
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花沢 健吾 / 小学館 / 2013-10-30
ギャグにもほどがある (ビームコミックス)
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上野顕太郎 / エンターブレイン / 2013-10-25
蜜の島(1) (モーニング KC)
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小池 ノクト / 講談社 / 2013-08-23
敗戦直後の離島を舞台にしたサスペンス。その時代らしさを演出するのは難しいのだろうと思うけど、キャラクターがなんだかやたらに現代的。そもそもそういうことはあんまり気にしていないのかもしれない。いずれにしろ、面白いのかどうか、まだよくわからない。。。
コミックス(2011-) - 読了:「毎日かあさん」「鴨の水かき」「大奥」「アイアムアヒーロー」「ギャグにもほどがある」「蜜の島」
2013年11月10日 (日)
Rust, R.T, Inman, J.J., Jia, J., Zahorik, A. (1999) What you don't know about customer-perceived quality: The role of customer expectation distributions. Marketing Science, 18, 1, 1999.
ちょっと顧客満足関連の調べ物をしていて、資料の綴りを引っ張り出したら、この論文を半年くらい前にファイリングしているのを発見。「必ず読むこと」というタグがついている。困ったことに、なんでそう思ったのかさっぱり思い出せないんだけど、自分に義理立てして目を通した。
世の中には顧客満足が大事だっていう人がいっぱいいるが(Fornellとか)、実際には満足している顧客があっさり離脱したりするじゃんか、というシビアな突っ込みもある(Reichheldとか)。これにどう答えるかという点がひとつの課題となっていると思うのだけれど、著者らの戦略は、それは知覚品質についての顧客の確信度 (知覚リスクの低さ) について考えてないからだ、というもの。前に読んだChandrashekaran, Kristin, & Tax (2007) と似た路線である。
あるブランドの平均的な品質をQとする。Qについての顧客の知識は、平均 \mu, 分散 \tau^2 の正規分布 \pi (Q) で表現できるものとする。 顧客が知覚する品質を X とする。Xは平均 Q, 分散 \sigma^2 の正規分布に従うと仮定する。
顧客が X の実現値 x_t を受け取り、\pi (Q) をベイズ更新すると考える。スケールを\sigma-2 + \tau^2 = 1とし、「案外よかった」程度を\delta_t = x_t - \mu と書くことにして、\pi (Q) の事後分布は平均 \mu + \delta_t \tau^2, 分散 \sigma^2 \tau^2 の正規分布になり、x_{t+1} の予測分布は同じ平均で分散 \sigma^2 + \sigma^2 \tau^2 の正規分布になる由。導出過程は追いかけてないけど、仰ることは信じますよ、先生。
xの効用関数 U(x)は二階微分可能で単調増加でconcaveであると仮定する(上に凸ってことね)。xの予測分布をp(x)として期待効用は V = \int U(x) p(x) dxだが、もし効用関数が指数関数だったら V = \alpha_1 + \alpha_2 \mu - \alpha_3 \sigma^2 となる由 (ふうん。Jia & Dyer, 1996, Mgmt.Sci. というのが引用されている)。当該ブランドの選択確率は多項ロジットモデルに従うものとする。
このモデルから以下の命題が導出される由。
- 選んだ選択肢が期待を上回ったら、それを選択する確率は増す。
- (A) 選好されていた選択肢が選択されたとき、それが期待通りだったら、それを選択する確率は増す。(B)選好されていなかった選択肢が選択され、それが期待通りだったら、それを選択する確率は増す。(※話の都合上AとBに分けてある)
- 合理的な消費者ならば、値段が同じで期待される品質が低いほうの選択肢を選ぶことがある。(予測分布の分散が小さいほうを選んでリスク回避することがあるから)
- 品質が期待よりも低いということがわかったせいで、その選択肢の選択確率が増すことがある。(同上)
- 品質が期待よりも高かった時より、期待よりも低かったときのほうが、選好の変化は大きい。(効用関数がconcaveだから)
- 品質が期待とちがっていたせいで生じる選好の変化は、経験のない顧客で大きい。
で、実験を2つ。
■実験1. 製品を選ぶ→品質がフィードバックされる、という繰り返しをシミュレートする。被験者は学生160名。
- まず "経験3"。「あなたは最近カメラを買いました。そのカメラのバッテリーは特別なタイプのもので、ブランドが3つあります。それぞれのブランドの製品を3つづつ使ってみたら、持ち時間はこの表のようになりました。」 ここで表は固定。たとえばブランド1は、72時間, 59時間, 67時間である。「では、あなたが次にそれぞれのブランドを選ぶ確率は? それぞれのブランドのバッテリーの期待される持ち時間は? (\mu) 。それぞれのブランドのバッテリーの持ち時間は、95%の確率で○時間から○時間まで持ちます、さあその範囲は? (知覚された分散 \sigma^2)」 。
- "経験4"。「さて、あなたはなにか事情があってブランド X を買いました(Xはランダム)。使ってみたら、持ち時間はコレコレでした。では、あなたが次にそれぞれのブランドを選ぶ確率は? ... ありがとうございました。なお残りの2ブランドの持ち時間はコレコレとコレコレでした」 ここでコレコレのところが操作される(D_1)。その水準は、どのブランドも{期待より10時間長い、期待ぴったり、期待より1時間短い、3時間短い、10時間短い} の5水準。
- 短い妨害課題。
- "経験6"。各製品について2つづつ結果を追加する。これも固定。たとえばブランド1は74時間、57時間。で、\muと\sigma^2を再聴取。
- "経験7"。「さて、あなたは今度はブランド Y を買いました(第4実験とは異なるブランド)。使ってみたら持ち時間はコレコレでした」以下、経験4と同じく、コレコレを制御し(D_2)、選択確率を聴取する。
- 短い妨害課題。
- "経験10”。各製品について結果を3つづつ追加。\mu, \sigma^2, 選択確率を聴取。
えーっと... 提示刺激は被験者の反応とは無関係に固定されており、その意味では意外に単純な実験だ(被験者はどう思っているのだろう?)。要約すると、測定するのは、経験3で選択確率と予想品質、経験4で選択確率(1ブランドのみ)、経験6で予想品質、経験7で選択確率(1ブランドのみ)、経験10で選択確率と予想品質。要因は、経験4の品質(D_1, 5水準)と経験7の品質(D_2, 5水準)、ともに被験者間で動かしている。
分析方法についてきちんとした説明がなくて参った。10分ほど考え込んだが、推測するにこういう分析だ。おそらく、経験6でも各ブランドの選択確率を聴取しているのだろう(本文中に記載がないが)。で、個々の被験者について、(1)経験4で聴取した選択確率から、経験3での同ブランドの選択確率を引いた値、(2)経験7での選択確率から経験6での同ブランドの選択確率を引いた値、の2個を求める。これを(被験者を無視して)縦に積み、計320個。それらを5水準に分け、それぞれの水準内で検定する(ANOVAではない)。その検定とは、なんと、母平均=0 を棄却する t 検定。うーん... そんな分析でいいのかと不安なのだが、そういう細かいことを気にしていると、この分野では偉くなれないんでしょうね、きっと。
まあいいや、結果だ。
- 品質が予想を上回ると選択確率は増す(命題1を支持)。
- 品質が予想と同じだった場合、それを選好していたときも、していなかったときも、ともに選択確率は増す(命題2A, 2Bを支持)。
- 品質が予想をちょっぴり下回った場合、選択確率はちょっと増えたけど、有意ではなかった(命題4は不支持)。
- 品質が予想を10時間下回った場合、選択確率はどーんと減り、その幅は品質が予想を10時間上回った場合よりも大きかった(命題5を支持)。
- 前述の効用関数を想定し、経験10での選択を説明する多項ロジットモデルを組んだら、\sigma^2 の係数は有意に負だった(命題3を支持)。
- 制御要因と{経験4/経験6} の2要因ANOVAでは、経験4のほうが選択確率の変化が大きい(命題6を支持)。
■実験2. 被験者は学生220名。「キャンパスのちかくにコーヒーショップができました」と教示し、過去の店舗利用における知覚品質のチャートを示す(ははは)。知覚品質は100件法で表示(Boulding, Kalra, Staelin, & Zeitham, 1993, JMRというのが引用されている)。で、その店の知覚品質を聴取(たぶんチャートは隠して、次回利用時の品質を予想させるのだと思う)。次に、新たにその店舗を利用した際の知覚品質を示して、予想を更新させる。で、知覚品質、disconfirmationの主観的な大きさ、再利用意向など、いろいろ聴取。
要因は2つ。
- 更新前の利用経験、2水準。低経験条件では、「あなたはその店を何回か利用しています」と教示し、過去3回分のチャートを見せる。高経験条件では、「過去一か月間毎日利用しています」と教示し、過去20回分のチャートを見せる。どちらのチャートでも、平均は83点, SDは5.5点。
- 更新時に提示する知覚品質(2水準)。ゼロ条件では83点、ネガティブ条件では72点。
結果は... 更新後の知覚品質についてのANCOVA。投入するのは、更新前の予想品質、更新前の利用経験、更新時の知覚品質、更新時の主観的disconfirmation(これ、いれちゃうんだ...?)。予想品質は、ネガティブ条件のほうが大きく更新され(そりゃそうだ)、低経験のほうが大きく更新される。交互作用もあって、低経験条件のほうがゼロ/ネガティブ間の差が大きい。再利用意向についてもちょっと分析していて、Baron&Kenny流のやり方で調べたところ、disconfirmationの影響は知覚品質の更新に媒介されていた、とかなんとか。
実務家向けの示唆:
- 「顧客の期待を超えることが必要だ」とはいえない。実験1でみたように、経験は知覚リスクを減らすから、期待に合致しているだけで選好は高まるし、ひょっとしたら期待をちょっぴり下回っていてもOKかも。
- 「低品質を予想している顧客が実際に低品質であることを確認したら、そのブランドへの選好は下がる」とはいえない。実験2ではゼロ条件での予想更新はほぼゼロだったし、実験1ではわずかに正だった。これも、経験が知覚リスクを減らすからだと説明できる。
- 「同じ値段なら顧客は品質が高いと予想されるほうを選ぶ」とはいえない。知覚リスクが高いと選好は下がるから。
- 「経営者は常にロイヤル顧客に焦点を当てるべきだ」とはいえない。ロイヤル顧客は知覚品質が予想を下回ってもすぐには離脱しないから。
- CSと知覚品質の調査の際には経験の量を調べておくこと。また、品質のばらつきについての知覚も調べておくとよい。
- 新製品の上市の際にはトライアルを促進して知覚リスクを低くするとよい (いまさらそんなことアドバイスされても...)
- 期待を上回ることの影響より期待を下回ることの影響のほうが大きいんだから、まずは不満をなくすことに焦点を当てるべし。
品質研究者向けの示唆:
- 知覚品質を上げるだけでなく、知覚リスクを減らさねばならん。
- 伝統的なCSモデルと異なり、期待に沿うだけで選好は高まる。
- 期待を下回ることの悪影響は過去経験の量によって緩和される。
うーん、よくわからない...
最初に華麗なモデル構築が行われるんだけど、意外にも、そのモデルで実験結果を定量的にシミュレートしてみせるタイプの論文ではない。話の組み立てはこうだ。(1)顧客経験による選好形成を説明するモデルをつくる。品質についての知識の変化を確率分布のベイズ更新として表現するところが新しい。(2)そのモデルから定性的な仮説を引き出す。(3)実験で仮説を支持する。
その限りにおいて筋は通っている。でも、モデルから引き出した定性的仮説は、そのモデルからでないと引き出せない仮説なのか、という点がどうもよくわからない。「いっけんよさそうな新製品だけど、ひょっとしたらいまいちかもしれないから選びにくい」という事態は容易に想像できる。著者らは引用してないけど、ブランド論の文脈にだって、ブランドってのはシグナリングだ、ブランド・エクイティってのは結局知覚リスクの減少だ、という見方があるらしい(Erdem & Swait, 1998)。つまり、知覚リスクという概念自体には新味がないはずだ。だったら、信念の分布のベイズ更新というアイデアを持ち出さなくても、この仮説は導出できたのではないか((1)がなくても(2)は手に入るのではないか)。いいかえれば、著者らの知見は著者らのモデルを支持する証拠になっているのか、どうか((3)が(2)を支持しているからといって、(1)を支持しているといえるのかどうか)。
ひょっとするとこの疑問は、私の知識不足と関係しているのかもしれない。
たとえば、まず「知覚品質が期待を上回ったとき、その時に限り選好が向上する」と主張するような有力な先行モデルを名指しで紹介し、次にそれが(2)の仮説と矛盾することを指摘し、(2)を支持する知見を示して先行モデルを血祭りにあげる、という筋ならば大いに納得する。ところが、礼儀正しいんだか面倒くさいんだか知らないが、その仮想敵の名前を著者らは挙げてくれない。
ひょっとするとこの分野の研究者のかたは、たとえば「ああFornellが仮想敵なのね」とか、そういう風に勝手に読み込むのかもしれない(Fornellのモデルが仮想敵になりうるのかどうか知らないけど)。でも私には、そのような先行モデルがこれまでにあったのかどうかがわからない。だから、これって性質の悪い藁人形論法なんじゃないか、実は誰も反対しない仮説群を支持して見せただけなんじゃないかと疑うわけである。
別の言い方をすれば、素人だからって舐められてるんじゃないか、と警戒しているのである。このように、素人は素人でなかなか気苦労が絶えないのであります。
論文:マーケティング - 読了: Rust, Inman, Jia, & Zahorik (1999) きみたちは知覚品質の真実について知らない
2013年11月 5日 (火)
Asparouhov, T., Muthen, B. (2013) Multiple-group factor analysis alignment. Mplus Web Notes, 18. www.statmodel.com.
ここしばらく、仕事方面でちょっと珍しいくらいのドタバタが続いていて、休みになるとてきめんに体調を崩すものだから、急ぐ用事のない論文など読んでいる暇はほとんどなかったし、めくっても端から忘れてしまった。ようやく少しだけ一息ついたので、リハビリのつもりで目を通した論文。やれやれ。
SEMソフトウェアMplusの最新バージョンに搭載された、多群モデルでのalignmentオプションについての解説。いまのところMplusの資料扱いだが、Structural Equation Modeling誌に受理されている由。
どういう話かというと... PISAやTIMSSや、世界XXヶ国調査なあんていうような、群の数がすごく多い多群データに対する確認的因子分析では、教科書的に尤度比検定でちまちま測定不変を確かめたり等価制約を緩和したりすんの、現実的じゃないでしょ? もっと便利な方法を考えたから使ってね、という趣旨。
1因子の多群因子分析モデルについて考える。群 $g$ に属する 対象者 $i$ の 項目 $p$ における値を $y_{ipg}$ とする。因子得点を $\eta$, 負荷を$\lambda$, 切片を$\nu$で表記して、
$y_{ipg} = \nu_{pg} + \lambda_{pg} \eta_{ig} + \varepsilon_{ipg}$
まず、いわゆるconfigural model、すなわち切片 $\nu_{pg}$ と負荷 $\lambda_{pg}$を群ごとに自由推定するモデルについて推定する(M0と呼ぶ)。識別の都合上、因子平均 $\alpha_g$を0, 因子分散 $\psi_g$を1とするのが通常のお約束である。推定された切片を$\nu_{pg, 0}$, 負荷を$\lambda_{pg, 0}$とする。
さて、$\alpha_g=0, \psi_g=1$としたけれども、これらをどう変えようが、切片と負荷を
$\nu_{pg,1} = \nu_{pg,0} - \alpha_g ( \lambda_{pg,0} / \sqrt{\psi_g} )$
$\lambda_{pg,1} = \lambda_{pg,0} / \sqrt{\psi_g}$
とすれば、そのモデルはM0と同じ尤度を持つ。そりゃそうだ。
そこで! 群間の測定変動の大きさを表現する関数を考え、これを最小化する $\lambda$と$\nu$をみつけましょう、というのがalignmentアプローチ。な・る・ほ・ど-。論文でも触れているけど、これ、因子の回転の話とよく似ている。回転の場合は解釈しやすさを目指して因子負荷を変えていくけれど、ここでは群間の測定不変を目指して因子分散と因子平均を変えていくわけである。
最小化する損失関数は、
$F = \sum_p \sum_{g1 \lt g2} \omega_{g1, g2} f(\lambda{pg_1,1} - \lambda{pg_2,1}) + \sum_p \sum_{g1 \lt g2} \omega_{g1, g2} f(\nu{pg_1,1} - \nu{pg_2,1}) $
つまり、「ある項目に注目し、ある2群のペアについて、負荷の差と切片の差を求めなさい。それぞれを関数 $f$ で変換しなさい。それにそのペア特有な重みを掛けなさい。これを全項目、全ペアで足しあげなさい」という関数である。重みをつけるのは群サイズがちがうかもしれないからで、$\omega_{g1, g2}$は群サイズの積の平方根とする。
ここで関数 $f(x)$ のことを component loss function (CLF) という由。微分する都合で $f(x) = \sqrt{\sqrt{ x^2 + \epsilon}}$ とするけど($\epsilon$はすごく小さな定数)、気持ちとしては $f(x) = \sqrt{ |x| }$ である。平方根をとっているのは、「たくさんの項目でパラメータがそれなりに群間で類似させたい」というより、「少数の項目は大きくずれてかまわないから、たいていの項目を群間でぴったり揃えたい」からである由。識別の都合上、各群の因子分散の積を1とする。因子平均は、最初の群を0に固定するか (FIXED), 全部自由推定する(FREE)。
以上をベイズ推定する。ベイジアンでないと解けないというわけじゃないけど、そっちのほうが柔軟だから、という理由らしい。なおベイジアンといっても、M0のときは正直に無情報事前分布を使う手と(configural method)、M0の段階で事前分布に強い群間相関を入れちゃう手がある(BSEM method)。
論文後半は、シミュレーションを3つ、実データへの適用をひとつ。FREEとFIXEDのどっちがいいか、とかなんとか(どうも一概にはいえないらしい)。面倒なので読み飛ばした。
結論:
- 群の数が多いときに便利。
- 探索的方法であるととらえることもできる。ちょうどEFAのあとでCFAをやるように、この方法のあとで多群のCFAに移るがよろし。
- この方法の対抗馬は、群をクラスタに見立ててランダム切片とランダム負荷を導入したマルチレベルモデルだが、こっちのほうが気が利いている、というテクニカル・ペーパーを別途書いたので読むように。もっとも、群の数が100を超えるくらいに多かったり、測定不変のパターンが明確でない場合には不利だけど。
- 限界: 多因子モデルに拡張することはできるが、cross-loadingは許されない。共変量つきのCFAモデルもだめ。いまのところ変数は連続か二値でないとだめ(このへん、だんだんMplusの実装の説明になっているような気が...)。
- 今後の課題: Exploratory SEM(ESEM)への拡張、パラメータのバイアスの性質についてのさらなる検討。それから、この方法が前提にしている「データにはなんらかのほぼ測定不変なパターンがあるはずや」(なぜか関西弁)という想定が破られていないかどうかを調べる方法の開発。たとえば、実は測定不変な指標のほうがごく少ないという場合でも、この方法では一番シンプルで一番測定不変っぽいモデルが示唆されてしまう、という問題があるわけだ。
いやあ、素晴らしい。こいつは便利そうだ。マルチ・カントリー調査データの分析で測定不変の問題に直面するたびに、まさにこういう風な、たとえば「10ヶ国を通してみたときこの項目は抜いたほうがいいっすね」といえるような探索的手法があるといいなあと思っていたのである。そういうニーズを抱えていたのが自分だけでなかったとわかって、とてもうれしい。そりゃそうだよね! ちまちま制約緩和なんて、やってらんないよね!
cross-loadingが許されないというところがちょっとつらいが、自分の仕事に直接に役に立ちそうな手法であった。さっそく試させて頂こう。いやあ、ありがたい、ありがたい。
論文:データ解析(-2014) - 読了: Asparouhov & Muthen (2013) たくさんの群を通じて測定不変な因子分析モデルを手っ取り早くつくる新手法
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