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2015年1月 4日 (日)
Ealen, J., Dewitte, S., & Warlop, L. (2013) Situated embodied cognition: Monitoring orientation cues affects product evaluation and choice. Journal of Consumer Psychology, 23(4), 424-433.
たとえば洗剤のボトルの取り手は、ラベルを正面にして右側についている。たいていの人は右利きで、右利きの人は向かって右側に取っ手がついているほうが使いやすいと感じるからだ(運動流暢性効果)。この効果はなぜ生じるのか、という論文。要するに、運動流暢性効果のモデレータとなる変数を示しましょうという研究である。第一著者の博論である由。
実験1では、実は運動流暢性効果はとことん右利きの人(rigid right-handers)ではなく、場合によっては左手も使うような中途半端な右利きの人(flexible right-hanbers)のほうで強い、ということを示す。実験2では、中途半端な右利きさんに課題の反応キーを左手で押させると、取っ手が左側についている製品のほうが好きになっちゃう、ということを示す。つまり、運動流暢性効果はそんなに自動的過程ではなく、その場その場での製品使用動作の心的シミュレーションから生じているんじゃないかという話だ。
この研究の白眉は実験3で、並行して数字列の記名課題をやらせると、中途半端な右利きさんの運動流暢性効果がやはり消失する。つまり、彼らが取っ手が右についているボトルのほうを好むのは、それなりに認知資源を費やして取っ手の向きを監視しているからなのだ。いやあ、これは面白いなあ。
もっとも著者は自動的過程の存在を否定しているわけではなくて、実験3で出ているちょっと説明しにくい結果 (とことん右利きの人は並行課題条件で逆に運動流暢性効果が出る)について、もしかすると彼らはふだん別の製品特徴(色とか)で選好を形成していて、そのプロセスが阻害されると過去の使用経験が自動的に活性化するのかも... なんてことを云うておられる。このへんはちょっとわかりにくいスペキュレーションだけど、ま、自動的過程も制御的過程も効いている、というのがホントのとこなんでしょうね。
仕事の都合でバババーッとめくったなかの一本なんだけど、面白い研究であった。マーケティングの文脈でこういう研究している方、日本にはいないのかしらん。
論文:心理 - 読了:Ealen, Dewitte, & Warlop (2013) 洗剤のボトルの取っ手が右側についているほうが使いやすそうに見えるのはなぜだ