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2015年1月 5日 (月)
外川拓、八島明朗 (2014) 解釈レベル理論を用いた消費者行動研究の系譜と課題. 消費者行動研究, 20(2), 65-94.
消費者行動論の学会で発表を拝聴していると、二、三本に一本くらいの割合で解釈レベルという概念が登場し、これはいったいなんだろうと呆れていた。火元は社会心理、JPSPの論文である(Liberman & Trope, 1998)。
正直言ってあまり関心が持てなかったのだが(私が院生の頃にもそういう流行概念があったような気がします)、勉強のつもりで日本の研究者による最近のレビューを読んでみたら、これが意外に面白くって... とても勉強になりましたです。
いくつかメモ:
- 心理的距離の変化に伴う選好の逆転について、解釈レベル理論(CLT)の観点から説明したのが Trope & Liberman (2000, JPSP)だが、選好逆転自体の説明自体はそれまでにもあった:(1)二重過程理論による説明。たとえばELM。(2)時間割引率による説明。指数割引とか、双曲割引とか。
- 著者らによれば、消費者行動論におけるCLTの理論的意義は以下の通り。(1)時間経過による選好逆転と多様な製品属性との関係を説明する枠組みを提供した(←なるほど)。(2)心理的距離という概念はいろんな状況に適用できる。(3)他の理論に対するモデレータを提供する。
- 最近では、解釈レベルの効果じゃなくて、解釈レベルが別の因果関係のモデレータになっているというような研究が増えている由。たとえば、選択課題の難しさについてのメタ認知と、自分の選択に対する自信との関係が、解釈レベルが高い人では難しいほうが自信ありになり(難しさが投資とみなされるから)、低い人では簡単なほうが自信ありになる(難しさがコストとみなされるから)、という研究がある由 (Tsai & McGill, 2012 JCR)。面白いなあ。
- Yang, Ringberg, Mao & Peracchio (2011, JCR) : まず被験者をマインドセットを{創造型/思考型}に操作。次にBIFで解釈レベルを測定。で、広告を提示し、購入意向をとる。結果: 創造型では、高次解釈レベルの人にhow視点の訴求、低次の人にwhy視点の訴求が効く。CLTの通常の予想とは逆になるわけである。「マインドセットが創造型の場合、人は既存の枠組みやパターンを打ち破ろうとするから」とのこと。うわー、これ、超面白い。肝心かなめの法則性がマインドセットの操作ごときで破られてしまうのだとしたら、みんなが有難がっているCLTって一体なんなのか。
論文:心理 - 読了:外川・八島 (2014) 消費者行動論における解釈レベル理論レビュー