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2015年8月13日 (木)
Barnett, L., & Seth, A.K. (2015) Granger causality for state space model. Physical Review. E, Statistical, Nonlinear, and Soft Matter Physics. 91(4).
みなさん、グレンジャー因果性はVARモデルの専売特許だと思っていませんか(はい、そう思ってます)。ブブーッ、そうではありません(へー、そうなんですか)。状態空間モデルからグレンジャー因果性を求めるやりかたを示しましょう(はあ、そうですか)。という論文。なにかの気の迷いで読んだ。
以下の状態空間モデルを考える。
状態方程式 $x_{t+1} = A x_t + u_t$
測定方程式 $y_t = C x_t + v_t$
$u_t, v_t$は平均0のホワイトノイズ過程で、共分散行列はそれぞれ$Q$と$R$、$u_t$と$v_t$の共分散行列は$S$とする。$x_t, y_t$は弱定常とする。そのとき$A$の固有値の絶対値の最大値は1より小さくなる。$R$は正定値行列だと仮定する[あれ?ホワイトノイズなんだから$Q$と$R$は当然正定値行列なのでは?]。この$y_t$は定常なARMAモデルで表せるし、定常なARMAモデルはこの状態空間モデルで表せる。
以下、$y^{-}_{t-1} \equiv [ y^T_{t-1} \ \ y^T_{t-2} \ \ \ldots ]^T$と略記します[時点$t$からみた過去データってことっすね]。また、イノベーションを$\epsilon_t \equiv y_t - E (y_t | y^{-}_{t-1})$と表します。イノベーションの共分散行列を$\Sigma$と書きます。
グレンジャー因果性について。
$y_t$を次の3つの下位過程に分解できるとする。
$y_t = [ y^T_{1t} \ \ y^T_{2t} \ \ y^T_{3t} ]^T$
$y_t$から$y_{2t}$を削ったやつを$y^R_t$、そのイノベーションを$\epsilon^R_t$と書こう。
$y_{3t}$の下での$y_{2t}$から$y_{1t}$へのグレンジャー因果性とは、$E(y_{1t} | y^{-}_{t-1})$と$E(y_{1t} | y^{R-}_{t-1})$のちがいだ、といえる。グレンジャー因果性は$y_{2t}$を削ったことによって$\Sigma_{11}$が大きくなった程度、すなわち
$F_{y_2 \to y_1 | y_3} \equiv \ln \frac{|\Sigma^R_{11}|}{|\Sigma_{11}|} $
と定義できる。
さて... この論文では、この$F_{y_2 \to y_1 | y_3}$を状態空間モデルのパラメータから求める式が導出されるんだけど、そのプロセスと導出された式については省略。だって時間領域じゃなくて周波数領域の話になるんだもん。難しくてわかんないんだもん。読む気なくしたんだもん。
後半はシミュレーション。2変量AR(1)過程のデータを生成し、ARMAモデルと状態空間モデルをあてはめ、それぞれからグレンジャー因果性を求める。状態空間モデルから求めたほうが、バイアスが小さくなり検定力が上がるんだってさ。
... ふうん。
生まれながらの文科系、宿命的なパッケージユーザとしては、状態空間モデルのパッケージにグレンジャー因果性を求める機能がついてたらいいな、と思うのが関の山である。ついてたらいいな。
こういう話はさらに拡張できて、共和分過程でも、誤差分散に不等性があるモデルでも、パラメータが時変するモデルでも、非線形な状態空間モデルでも、グレンジャー因果について推論することができるでしょう、とのこと。ふうん。
論文:データ解析(2015-) - 読了;Barnett & Seth (2015) 状態空間モデルにだってグレンジャー因果性はあります