« 読了;Barnett & Seth (2015) 状態空間モデルにだってグレンジャー因果性はあります | メイン | 読了:早川 (2014) 高次元時系列データ分析手法レビュー »
2015年8月13日 (木)
Brandt, P.T., Freeman, J.R. (2006) Advances in Bayesian time series modeling and the study of politics: Theory testing, forecasting, and policy analysis. Political Analysis, 14 (1): 1-36.
第一著者はRのMSBVARパッケージの開発者。政治学におけるベイジアン時系列モデリングの進展にそれほど関心があるわけじゃないんだけど(すいません)、パッケージを使う前の儀式のようなものである。
第一部、レビュー。多変量時系列モデルによる政治学理論の検証と政策分析を、3つの領域について概観する。そもそも多変量時系列モデルについてよく知らない人は、この論文を読む前に勉強するように。[って、ほんとにそう書いてある。つれないなあ]
その一、innovation accounting。ある時系列におけるあるショックがほかの時系列に及ぼす影響を特定すること[←へええ。「イノベーション会計」と訳すらしい]。そのためにはインパルス応答を調べるわけだけど、理論検証という観点からは信頼区間が重要になる。しかし、残念ながら政治学ではあまり信頼区間を用いないし、求めるのも大変[いろいろ細かい議論があるけどパス]。最近ではSims & Zha (1999 Econometrica) が良い方法を提案している。
その二、予測による理論検証。VARモデルは過適合しちゃうことが少なくない。80年代にこれに対処するためにいろいろな信念をいれたベイジアンVARモデルが構築され、いわゆるミネソタ事前分布として知られている[←はああ?と思ったが、ミネソタ大関係者によるベイジアンVARモデル構築の有名な手法があるらしい。知らんがな]。しかしマクロ経済についての実質的信念とは整合しない点があって、Sims-Zha事前分布というのが提案されてて、どうのこうの。
ベイジアン時系列モデルは非定常性に強い。Sims-Zha事前分布はこの点でも優れていて、どうのこうの。
なお、以下の点に注意。(1)予測の正確さの評価方法はいろいろある。(2)Sims-Zha事前分布のハイパーパラメータがマクロ経済現象に基づき用意されており、「参照事前分布」として知られている。こういうのを政治学でも作りたいものだ。(3)ベイジアンでも理論的な構造を取り入れることが大事。
その三、反事実分析による理論検証。条件つき予測によって、ある変数が生じるためにはどんな条件が必要かを調べるのだ、とかなんとか。こういう分析が現実的かという点については議論がある[←ルーカス批判みたいなもの?]。でも反論もあって、云々、云々。
第二部、ベイジアンVARモデルの技術的詳細。正直、推定量の導出から難しくなって全くわけわかんなくなり、断念。
第三部、事例。読めばわかりそうだけど、力尽きたのでパス。
というわけで、全体の数分の一しか読めてないけど、記録の都合上、読了にしておく。まあいいさ、儀式だしね!
残念だけど、私にはちょっと難しすぎる論文であった。政治学だと思って舐めてました。というか、ベイジアンVARだけじゃなくて、政治学の研究について知っていないとわからん論文であった。
論文:データ解析(2015-) - 読了:Brandt & Freeman (2006) ベイジアンVARモデリング in 政治学