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2015年8月13日 (木)
早川和彦(2014) 高次元時系列データ分析の最近の展開. 日本統計学会誌, 43(2), 275-292.
本数がすっごく多い多変量時系列データの分析手法について、経済時系列分析の観点からのレビュー。
細かいところ難しくてよくわかんないんだけど、自分なりに勉強になりましたです。
初歩的な疑問なのだけど、著者のおっしゃる「ファクターモデル」って、発達心理学だとかマーケティングだとかでたまに出てくる「動的因子分析」とどういう関係にあるのだろう。
えーと、わたくしの拙い理解によれば、世間で動的因子分析と呼ばれるものには次の2種類の定式化がある。
- ホワイトノイズ因子得点モデル(WNFSモデル)。ショック・モデルともいう。測定ベクトル $x_t$について
$x_t = \sum_{s=0}^S \Lambda_s f_{t-s} + e_t$ - 直接自己回帰因子得点モデル(DAFSモデル)。プロセスモデルともいう。ごくふつうの因子分析モデル
$x_t = \Lambda_0 f_t + e_t$
を考え、さらに$f_t$についての時系列モデルを考えるやつ。
さて、著者によれば、ファクターモデルには2種類ある。
- 静学的ファクターモデル。時点$t$における変数$i$の測定値について
$x_{it} = \lambda'_i F_t + e_{it}$
$\lambda_i, F_t$はサイズ$r \times 1$。$F_t$は静学的でもいいし、$A(L)F_t = u_t$というように動学的でもよい。ただし$A(L)$はラグ多項式で$u_t$はiid。$e_{it}$と$e_{jt}$のあいだに相関を設けない場合をstrict factor model, 弱い相関を許す場合をapproximate factor modelという。 - 動学的ファクターモデル。
$x_{it} = \lambda'_i(L) f_t + e_{it}$
$\lambda_i(L)$は$\lambda_{i0}, \lambda_{i1}, \ldots, \lambda_{is}$(それぞれサイズ$q \times 1$)からなるラグ多項式。$f_t$はサイズ$q \times 1$で、$f_t = C(L) \epsilon_t$という動学構造を持つ。ただし$C(L)$はラグ多項式で$\epsilon_t$はiid。
... うーむ。
著者のいう静学的ファクターモデルって、因子負荷$\lambda_i$にラグがはいっていないから、きっとDAFSモデルに近いんだろうな。しかしDAFSモデルは因子得点について自己回帰構造を考えるけど、静学的ファクターモデルはそうでない場合を含むのであろう。
著者のいう動学的ファクターモデルはWNFSモデルに近いのかな、と思ったけど、WNFSモデルは因子得点がホワイトノイズ過程だと考えるのに対し、動学的ファクターモデルはたとえば因子得点が自己回帰するようなのも含むのだろう。
要するに、分類のしかたがちょっとちがうんだろうな。
論文:データ解析(2015-) - 読了:早川 (2014) 高次元時系列データ分析手法レビュー