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2017年1月 4日 (水)
年末年始で読んだ本。
欧州複合危機 - 苦悶するEU、揺れる世界 (中公新書)
[a]
遠藤 乾 / 中央公論新社 / 2016-10-19
ダメモトで読んでみたんだけど、私のようなど素人にもわかりやすく、興味深い内容であった。
著者の先生いわく、このたびの難民危機に対する反応を指して、EUの理念は地に堕ちたと人はいうけれど、もともとEUは移民の流入に対し警戒的であった。弁護するわけじゃないけど、一度入境した人に対してはできるだけEU市民に近い扱いを心掛けていた、ということにも目を向けないといけない。
ポスト・ナチスの人権時代にあって移民に直面する国家のほとんどは、それがリベラルでありつづける以上、アイデンティティのありかを自由と平等を重んずるリベラリズムに求めざるを得ないという一見奇妙な状況が現出しつつある。たとえば、ジハード主義的な価値観と対峙する際、[...] 当該国のナショナルな価値として持ち出されるのは、ジェンダーの平等や同性愛の認知といった、いたって普遍的なリベラルな価値である。こうした傾向は[...]当該国のアイデンティティをリベラルに再定位するのである。
デモクラシーは、原理的にも歴史的にも一定の領域と構成員を前提としている。[...]寛容なデモクラシーは、それ自体領域とメンバーシップの安定を要請する。とくにメンバーシップが移民の時代にあって領域より流動化しやすいなか、それは自身の寛容さを守るため、メンバーシップを管理する(つまり一定の不寛容さを示す)という倒錯した必要が生じることになる。
上の引用箇所で、ヨプケ「軽いシティズンシップ」(岩波書店)という本が紹介されていた。忘れないうちにメモ。
ホッブズ――リヴァイアサンの哲学者 (岩波新書)
[a]
田中 浩 / 岩波書店 / 2016-02-20
贖罪のヨーロッパ - 中世修道院の祈りと書物 (中公新書)
[a]
佐藤 彰一 / 中央公論新社 / 2016-11-16
消えゆく「限界大学」:私立大学定員割れの構造
[a]
小川 洋 / 白水社 / 2016-12-28
私恨を晴らすタイプの本ではなくて、データに基づく真面目な本なんだけど、弱小私大の経営陣・教員の悲惨な実像について縷々語るくだり(5章)で、記述がやたらに生き生きとしてくる...
ノンフィクション(2011-) - 読了:「欧州複合危機」「ホッブズ」「贖罪のヨーロッパ」「消えゆく限界大学」