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2018年5月25日 (金)
水野将樹 (2003) 心理学研究における「信頼」概念についての展望. 東京大学教育学研究科紀要, 43, 185-195.
仕事の都合で目を通した。えーっと、信頼ってのは測定の信頼性とか推定の信頼区間とかの話じゃなくて、日常用語でいうところの信頼、trustのことね。
修論のまとめだと思うんだけど、とにかくレビューというのは助かります。
いくつかメモ:
- 信頼概念を整理した先行研究:山岸「信頼の構造」、天貝「信頼感の発達心理学」。
- 信頼概念についての著者の整理は、まずは(A)個人内特性としての信頼、(B)関係特性としての信頼、の2つにわけるというもの。Aをさらに3つにわける。(A1)期待としての信頼。一番多い。ロッターとか、囚人のジレンマを使った実験研究とか。(A2)信念としての信頼。発達・臨床系の研究が多い由。(A3)「信頼概念についての検討があまり十分でない」研究。
- Bの例としては、個別の関係における信頼感の尺度研究があるのだそうだ。Cynthia & Walter(1982 JPSP), Rempel, Holmes, & Zenna (1985 JPSP)というのがある由。特性としての信頼と比べると因子構造が違うのだそうだ。へー、面白いなあと思ったが、恋愛関係とかについての研究らしい。
- パーソナリティの個人内特性としての側面と関係性としての側面の両方を扱った研究として、ギリガン「もうひとつの声」が挙げられている。へえー。この本、読んでみたいと思っていたのだが、意外な文脈での登場である。
...職場における信頼関係についての研究っていっぱいありそうな気がするけど、ああいうのはみんなBに分類されるのかしらん。そうしてみるとBもずいぶん幅がありそうだなあ。
論文:心理 - 読了:水野(2003) 心理学における「信頼」概念レビュー