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2019年1月 6日 (日)
昨年暮れ、学会発表のための分析をやっててわけがわからなくなり、頭を整理するために、Mplusユーザーズ・マニュアル9章(complex survey dataの階層モデリング)の事例40個を全部読んだ。そのときにとったメモ。
事例9.30-9.40はAR(1)構造がはいって難しさもさらにグレードアップするのだが、当面使う予定がないので(←言い訳)、メモも省略している。
- TYPE=TWOLEVELで、WITHINレベルでもBETWEENレベルでも x が y に刺さっているとき、データとしてxのクラスタ別平均 xm をつくっておいて、 MODELで
とする手と、単に%WITHIN%
y ON X;
%BETWEEN%
y ON xm;
とする手がある。前者の場合はDATAでWITHIN=x; BETWEEN=xm;と宣言すること。いっぽう後者の場合、xはWITHINレベルの潜在変数とBETWEENレベルの潜在変数に分解されていることになる。階層回帰モデルの一般的アプローチではないけれど、xmの信頼性が低いときに後者がお勧め。[←これを読んで、むしろ前者がアリだということに驚いた。個票があるのに標本平均をデータにするなんて邪道という気がするが、クラスタのサイズが十分に大きければ構わんってことか...] なお、後者のモデルにおけるBETWEENレベルの係数とWITHINレベルの係数の差を、Raudenbush & Bryk (2002)は「文脈効果」と呼んでいる[←どういう意味だろう?](事例9.1)%WITHIN%
y ON x;
%BETWEEN%
y on x; - TYPE=RANDOMのときの縦棒("|")の左はランダム回帰係数の名前を表すが、TYPE=TWOLEVEL RANDOMで%WITHIN%での指定だったらそのランダム回帰係数はBETWEENレベルの変数になりますわね。ところがアスタリスクをつけると(「s* | y on x」という風に)、これはWITHINでも分散を持つようになる。[←これはほんとに、いままでぜんっぜん知らなかった。こういうことがあるからMplusは怖い...] (事例9.14)
- TWOLEVEL RANDOMでは、
というようなモデルを組める。logvはyの残差分散の対数を表す。[そうそう、これも謎の機能で... ESTIMATOR=BAYESが登場してから追加された機能だと思う。理屈はわかるけど、どういうときに使えばいいのかがいまいちわからない。係数がクラスタによって違うモデルをつくりたいというのはわかるけど、残差分散がクラスタによって違うモデルをつくりたいってことはあるのか...あるか... そうか...] (事例9.28)%WITHIN%
logv | y;
%BETWEEN%
logv on w;
ところで、Mplusは結構長く使っているはずなのだが、それでも「えええ、そんなことができるの」と呆れたモデルがあったので、呆れついでにメモしておく。事例9.26。変数はu(カテゴリカル)、subject, itemの3つ、subjectとitemがクラスタのCROSSCLASSIFIED RANDOMモデル(THREELEVEL RANDOMではないという点に注意)。
%WITHIN%
%BETWEEN subject%
s | f BY u; f@1; u@0;
%BETWEEN item%
u; [u$1]; s; [s];
つまり、subjectレベルではuは分散1の潜在変数fに残差無しで規定されていて、その負荷というかプロビット回帰係数がsである(uをテスト項目の正誤とすると、fは対象者の能力、sは項目の識別性のようなものであろう)。uはitemレベルで切片が動き、残差分散も動く。さらにsも、subjectのなかでは動かないけどitemレベルで動く。ええええ... そういうのを組みたくなる動機はわかるけど、まさかほんとに組めるとは。 sはsubjectレベルで定義されているからitemレベルではモデル化できないかと思った。CROSSCLASSIFIEDモデルおそるべし。
いやあ、やっぱり使っているソフトのマニュアルは読むべきだ... 読むべきものが多すぎて辛い...
Mplusについては、Muthen一家の手によるものを含め、多種多様なレベルの解説が手に入るのだが、CROSSCLASSIFIEDモデルについてのまとまった解説は見当たらない。どこかにないかしらん。
2019/01/20追記: 事例9.26のコードについて誤解していたことにあとで気が付いた。CROSSCLASSIFIEDおそるべし。
雑記:データ解析 - 覚え書き: Mplusがご提供する階層モデリングのための謎機能たち