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2019年7月10日 (水)

高田敦史, 田中洋(2016) 自動車業界におけるラグジュアリーブランド戦略. マーケティングジャーナル, 36(3), 52-70.
 レクサスのケーススタディ。第一著者はレクサスのブランドマネジメント部長を経て独立された方で、いわばレクサスの「中の人」であろう。第二著者はいわずとしれた、ブランド論の著名な研究者。

 いわく。
 現代のラグジュアリーブランドは、プレステージを低下させることなく認知と売上を高めるという矛盾した課題を達成するため、伝統的なラグジュアリー戦略(高価格・高コスト・生産投資抑制・流通の限定)と現代的ビジネスを両立させなけばならない。Duboisという人はこれを「ラグジュアリーブランドのパラドクス」と呼んでおる。
 さてラグジュアリーブランドとは...[定義についての議論。メモは省略するけど、やっぱりKapfere & Bastien (2009)「ラグジュアリー戦略」を読むのがよさそう]
 カプフェレらの見方によれば、レクサスは機能価値を超えた神話を持っていないからラグジュアリーブランドじゃない。でもレクサスってベンツ, BMWと競合して短期間で成功しましたよね。というわけで、レクサスの位置づけについて考えます。

 1989年のUSにおける導入について。レクサスは、機能性重視の世代といわれるベビーブーマー世代の高級車購入者層をターゲットにした。高品質、キャデラック・リンカーンとベンツ・BMWの中間あたりの価格設定(ほぼ値引きなし)、ディーラーを新規募集し、サービス業のノウハウを取り入れて徹底的に指導。おかげさまで成功した。
 2005年の日本導入について。新規ディーラーというわけではなくて既存のトヨタ系販社が扱ったんだけど、店舗デザインを細かく規定しスタッフを教育、値引きなし・受注生産。

 本題に戻ると、ラグジュアリーブランドの特徴のうち、レクサスは高品質と文化(クラフトマンシップとか)はあてはまるが、あとはあんまりあてはまらない。歴史はないし希少性はないし富を象徴しているわけでもない。
 これは伝統的ラグジュアリーブランドとは異なる新しい位置づけ、いわば「スマートラグジュアリー」ではないか。その特徴は高品質とホスピタリティだ。
 云々。

論文:マーケティング - 読了:高田・田中(2016) レクサスはラグジュアリーブランドだったのか?

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