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2019年8月 3日 (土)

古田和久(2018) 出身階層の資本構造と高校生の進路選択. 社会学評論, 69(1), 21-36.
 仕事の都合で読んだ。
 進路選択の実証研究なんだけど、効いてる変数がなにか重回帰に叩き込んで調べましょうというタイプの論文とはちょっと違っていて、経済資本・文化資本・社会関係資本からなる多次元的社会階層を想定する。そうですブルデューです。ひいいい...

 データは2012年のネット調査で、対照は全国の高2とその母親、801ペア。ひとり親家庭は除外。[へえ、ネットパネルってありなんだ。こういう方面の方々は標本にこだわるもんかと思ってた...]
 社会階層の変数は、両親の職業・学歴、世帯年収、預貯金、文化的所有財。[あれれ?社会関係資本はどこに行っちゃったの?]
 共変量は、生徒の性別、母親年齢[あれ?父親は?]、学校タイプ(普通科かどうかと偏差値の高低)。
 目的変数は高校生と母親それぞれの進路希望(多項選択)。
 
 ブルデューだからMCAをやるのがお約束だろうと思ってたのだが、この論文では社会階層の変数でLCAをかける。これには先行研究があるんだそうで、Savege, Martinという人が挙げられている。へー。
 BICであたりをつけて、クラスのサイズと解釈をみて5クラス解を選択。市場調査会社のリサーチャーなみに結構強気な深読みをしてて、ちょっと心配になっちゃったけど、(1)経済・文化資本の両方が豊富なクラス、(2)文化資本が優勢なクラス、(3)中間、(4)経済資本が優勢なクラス、(5)両方が少ないクラス、となった由。

 で、潜在クラスと進路希望のクロスをとったところ、(1)(2)のあいだで進路希望は似ていて、(2)と(3)の間で(2)の大学進学率が高かった。つまり文化資本があれば経済資本はあんまし効かない。云々。
 共変量をいれる。目的変数として進路希望を追加教育年数に変換した値を使い、子供の希望と親の希望それぞれについて重回帰[まじか? なぜ多項選択モデルを使わない...なぜ目的変数を多変量にして一発でモデリングしない...]。子供の性別、母親年齢はもちろん、学校タイプをコントロールしても社会階層はなお効いた由。[面白いっすね。でもそれって、単に学校タイプのカテゴリが粗いからじゃないの?]

 というわけで、家族の階層は多次元的だった[いわく「資本構成によっても分化している」。この分野に独特な言い回しだ]。進路希望は資本総量だけでなく資本構成によっても差があった。大学進学希望においては文化資本のほうが相対的に効く。云々。

 正直、分析アプローチはかなり不思議な感じだったけど、それは私がこの分野に疎いからでありましょう... 勉強になりましたですー。

論文:教育 - 読了:古田(2018) 高2の進路希望に社会階層はどう効くか

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