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2019年8月 5日 (月)

 知人と世間話していて、そういえば最近「なんなら」という言葉の使い方が変わってきていると思うんだけど... という話になった。うまくいえないんだけど、「もしお望みなら」というような意味合いじゃなくて、なんというか、「あえて強い言い方をすれば」というような意味で使ったりしない?と。
 世情にまるきり疎いわけじゃないのよ、ごらん俺のこの鋭いアンテナを、とちょっぴり誇るような気持ちもあったんだけど、さきほど検索してみたら、「なんなら」の意味の変化はとっくに話題になっているようで、NHK放送文化研究所が先月付でコラムを公開しているのを発見した。なあんだ、気がついているのは俺だけじゃなかったのか。そりゃそうだよな。

島田泰子 (2018) 副詞「なんなら」の新用法 -なんなら論文一本書けるくらい違う-. 二松学舎大学論集, 61, 1-23.
 上のコラムに載っていた紀要論文。

 著者によれば、「なんなら」の従来の用例は次の5つに分類できる。

で、著者の分析によれば、
 I. 何(あなたの意向)が何(OK)なら
 II. 何(状況的な前提)が何(許す)なら
という条件節的構造の前半を省略し、後半を「何」に置き換えて、行為への言及を和らげ聞き手の意向への尊重を含意するのが、「なんなら」の旧来の意味用法だ、とのこと。動作主が話し手ならa, 聞き手ならbかcになり、aとcの両方にまたがるのがd。eは後述する新用法の萌芽的観察ではないか、とのこと。へー。

 いっぽう新用例として、著者は収集した28個の用例を示す。たとえばつばきファクトリー(アイドルグループとかかな?)の歌詞「なんなら歴史変えちまうくらいのセンセーションを起こそう」。そうそう!それそれ!こういう使い方、最近見かけますよね!

 著者の分析によれば、新用法は次の3つの意味の組み合わせとして理解できる由:

(ア)は(事態ではなくて)話し手の言表態度に関わる用法、(イ)は事態に関わる叙述の累加、(ウ)は時間の進行に従った事態のエスカレート、をそれぞれ示している。旧用法とちがい、必ずしも配慮表現ではない。

 なるほどねー。学んだところで実生活上で良いことは特にないけれど、ちょっとすっきりいたしました。学問の徳といえよう。

 なお、手元の広辞苑第七版によれば(せっかく買ったんだから使わなきゃ...)

なん・なら【何なら】(副詞的に)①事によったら、都合次第では。膝栗毛「-少々は銭を出しても乗るこたアいやだ」②お望みなら。入用なら。「-お持ち帰り下さい」③気に入らなければ。わるければ。浮世風呂「大束が-この下に小束もありやす」「この品が-、別のもあります」

とのこと。①の用法がぴんとこないなあ...

論文:その他 - 読了:島田(2018) 最近の「なんなら」

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