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2015年1月16日 (金)

Jostmann, N.B., Lakens, D., Schubert, T.W. (2009) Weight as an embodiment of importance. Psychological Science, 20(9), 1169-1174.
 対象者に持たせるクリップボードの重さが対象者の回答に影響する、という身体化認知の実験。著者所属は、Jostmannがアムステルダム大、Lakensがユトレヒト大、Schuberがポルトガルの難しくて読めないどこか。

 ほぼ同じアイデアの実験が、有名な2010年のScience論文の研究1と2になっている。そっちの著者はAckerman(MIT Sloan)、Nocera(Harvard), Bargh(Yale)。不思議に思ってAckermanのほうをよく見たら、注にいわく、Jostmannらとは独立に行っていた由。
 もっとも結果指標のほうはちょっと違っていて、Ackermanらが「この履歴書を書いた人の真剣さ」評価や「自分の評価の正確さ」評価をみているのに対して、この論文では判断の整合性とか評定の極化というあたりをみている。クリップボードが重いと判断の重要性の知覚が促進され、より精緻化した思考となるだろう、という理屈。

 全実験で、被験者は立ってクリップボードを持ち回答する。要因はクリップボードの重さ、被験者間操作。重いクリップボードは約1kg、軽いのは600g強、だそうです。Ackermanでは重いほうは2kgもあったから、こちらのほうが人道的な実験であるといえよう。
 実験1. 学生40名。6種類の通貨の金額についてユーロに換算させる質問(例, 100日本円は何ユーロでしょう?)。0ユーロから20ユーロまでの数直線に印をつけさせる。で、その額をもらったらどのくらい満足かを7件法で訊く(変な質問だなあ)。結果: 重いほうが評定額が高い。満足度は変わらない(つまりユーロを安く感じたわけではない)。
 実験2. カネは実体があるからいけねえや、もっと抽象的な奴でいきましょうぜ。というわけで、学生40名。短いシナリオを読ませる。海外留学のための奨学金の額について学生が意見をいう機会を大学の委員会が拒否したという話。で、委員会が学生の声を聴くのはどのくらい重要でしょうか、と7件法で聴取。結果: クリップボードが重いほうが評定値が高い。
 実験3. 学生48人。大学のある街(アムステルダム)の市長の経歴を読ませ、彼のいろんな属性について7件法回答。で、アムステルダムはどのくらいgreatな街か、どのくらいアムステルダム暮らしをエンジョイしているか、を7件法回答。結果: 市長の項目群と市の二項目をそれぞれ平均し合成指標をつくる。重いクリップボードでのみ、市長への態度が市への態度と相関する。
 実験4. 40名。いま工事中の地下鉄建設の是非についてのいろんな意見を提示して、それぞれに対して賛否を7件法回答。うち3つが強い論点、3つが弱い論点。で、自分の地下鉄への賛否についての確信度を7件法評定、最後に賛否を評定(賛成派とまだ決めてない人が多い)。結果: 強い論点のほうが賛成寄りなんだけど、交互作用があって、クリップボードが重いほうが差が大きくなる。また、クリップボードが重いほうが自分の賛否への確信度が高くなる。

 うううむ。。。市長への評価と市の評価の相関が上がったこと、論点への賛否評定が両極化したことをもって思考の精緻化の証拠とするのは、どうなのかしらん? ちょっと弱いような気がするんだけど。精緻化をもっと直接に示す指標がありそうなものだけどなあ。議論の説得性ではAckermanらのほうに軍配が上がると思う。
 著者らも最後に触れているけど、逆に重要性概念のプライミングが重さの知覚を引き起こす、という知見があれば強いと思う。なるほど、Krishna(2011)の言うとおりだ。

 年末からこの種の論文ばかり読み漁っているので、特にイントロの部分を読むのは飽きてきたのだけど、この論文でちょっと面白かったのは、weightとpotencyに言語的な関係があるというくだりで先行研究としてOsgood, Suci &Tannenbaum(1967)を挙げているところ。ああ懐かしのSD法。なんでもつながっているもんだなあ。

論文:心理 - 読了:Jostmann, Lakens, & Schubert (2009) クリップボードが重いと... (オランダ編)