2008年2月26日 (火)
自分探しが止まらない (ソフトバンク新書)
[a]
速水 健朗 / ソフトバンククリエイティブ / 2008-02-16
売れてるそうなので,一応目を通しておこうかと。
ノンフィクション(-2010) - 読了:02/26 (NF)
Kish, L. (1992) Weighting for unequal Pi. Journal of Official Statistics, 8(2), 183-200.
こないだ読んだASAの大会発表を論文化したもの。こないだ仕事で読んだ。
それにしても,標本ウェイト関連の文献はたいてい平均や比についてのみ取り扱っていて,analytical な統計量(回帰係数とか)についての議論がなかなか見当たらない。たまに見つけても,やたら難しくて歯が立たない。参るなあ。。。こんな勉強に時間を取られていても仕方ないのに。
論文:データ解析(-2014) - 読了:02/26まで (A)
2008年2月24日 (日)
チェーホフ・ユモレスカ
[a]
アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ / 新潮社 / 2006-07-28
幕末の大奥―天璋院と薩摩藩 (岩波新書)
[a]
畑 尚子 / 岩波書店 / 2007-12-20
適当に読み飛ばしてしまった。残念。
エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ
[a]
ジョン パーキンス / 東洋経済新報社 / 2007-12-14
70年代に民間のコンサルタントとして開発援助に関わっていたが,実は途上国を負債漬けにし巨大企業の食い物にするという米政府機関の密命を帯びていたのだ,という人の告白本。その真偽のほどはよくわからないんだけど,若き日にインドネシアに派遣され,ものすごく楽観的な経済予測を立てろという上からの圧力に迎合して出世する,なあんていうあたりは,いかにもありそうな話で面白かった。
ノンフィクション(-2010) - 読了:02/24まで (NF)
シグルイ 10 (チャンピオンREDコミックス)
[a]
山口 貴由 / 秋田書店 / 2008-02-20
これは面白い。。。
配達あかずきん ─ 成風堂書店事件メモ (1) (ウィングス・コミックス)
[a]
久世 番子,大崎 梢 / 新書館 / 2008-02-22
書店勤務の経験を綴って人気を呼んだマンガ家さんが,原作付きで描いたストーリーマンガ。こんな心優しい美人揃いの本屋さんがあったら,要らん本買っちゃいますね。
機動旅団八福神 7巻 (BEAM COMIX)
[a]
福島 聡 / エンターブレイン / 2008-02-25
不思議な少年(6) (モーニング KC)
[a]
山下 和美 / 講談社 / 2008-02-22
蟲師(9) (アフタヌーンKC)
[a]
漆原 友紀 / 講談社 / 2008-02-22
もやしもん(6) (イブニングKC)
[a]
石川 雅之 / 講談社 / 2008-02-22
2008年2月19日 (火)
ヤクザ、わが兄弟
[a]
ヤコブ・ラズ / 作品社 / 2007-12-01
「ヤクザの文化人類学」という本がある。イスラエル人の文化人類学者がテキヤの組織に深く入り込んで行ったフィールドワークをまとめた,大変に面白い本だが,ひょっとするとヤクザの世界に関心がある人にとってはつまらないかもしれない。この本の面白さは,扱っている題材というより,それを通して日本を透視する視点の置き方や,参与観察者の立場の難しさを巡る内省にあると思う。いま手元にある岩波現代文庫版をぱらぱらめくってみると,何年か前に読んだとき,こんな一節に感銘を受けたのを思い出す。
「ひるがえってヤクザに関する私の研究について考えてみると,『他者の他者』と対話することが私自身の主要な目的であったと認めざるをえない。言い換えれば,私はヤクザと対話をしたかったのであり,ある意味では『研究』は目的というよりはそのための手段でもあったのだ。その意味では科学は道具であり,『調査研究者』はただの役にすぎず,科学的用語はこの対話の背景用の語彙にすぎない。通常は日本の裏側,影の面とされるものを研究するように私を駆り立てたのは,日本の文化を,またそれを通して私自身の文化を理解する可能性を広げ,それによってディスクールの世界全体を拡大したいという願いだった。」
。。。うーん,格好良いですね。
その文化人類学者の先生がこんどは小説を書いたと知り,前著もちょっとパセティックな文章だったから,さもありなん,と思った。早速読んでみたところ,内容は「ヤクザの文化人類学」とかなり重なっていて,主人公の学者ヤコブ・ラズが私淑する大川親分のモデルは著者のインフォーマントであった関東神農同志会のA親分,詩を愛するヤクザ・ユキの原型は巣鴨の屋台の主人ベンであろうと推測できる。
意外なほどに読ませる小説なので驚いた。学者の手すさびとはとても思えない。なんといっても,異邦人の目からみたヤクザ世界のディテールが面白いし,心情描写を排した乾いた文体も良い。ひょっとすると,翻訳がすごく良いのかも知れない。これ,ハヤカワミステリ文庫にでも入れれば,きっと売れると思うんだけどなあ。。。
さよなら絶望先生(12) (講談社コミックス)
[a]
久米田 康治 / 講談社 / 2008-02-15
2008年2月17日 (日)
話はちがうけど (なにからだ?),このブログはamazonのアフィリエイトにはいっていて,誰かがリンクをクリックしてamazon.co.jpに飛びそこでお買い物すると,何を買おうが数パーセントの紹介料が俺のもとに落ちるという悪辣な仕組みである。おかげさまで開設以来,実に数百円にも及ぶ莫大な臨時収入を得ている次第である。大変だ,青色申告とかしなきゃ。
最近はとんとお買いあげがなくて,淋しい思いをしていたのだが,今月に入っていきなり,「Q&Aで知る統計データ解析 第2版」,ならびになぜかコーヒーミルをお買いあげ下さった方が現れた。
誰かがそれらを買ったということはわかるのだが,それが誰なのかはわからない仕組みである。どなたかわからないのでお礼のいいようがないのですが,ありがとうございました。ちなみにコーヒーミルは,少々高くても蓋が付いているやつを買ったほうが良いと思うのだが,まあ他人の買い物だからどうでもいいや。
なお,これまでのお買いあげの最高額は「メタファー研究の最前線」8000円なりであった。どなたか全く存じませんが,紹介料240円,家計の足しにさせていただいておりますです。
フリーペーパーの衝撃 (集英社新書 424B)
[a]
稲垣 太郎 / 集英社 / 2008-01-17
ノンフィクション(-2010) - 読了:02/17まで (NF)
占領と改革―シリーズ日本近現代史〈7〉 (岩波新書)
[a]
雨宮 昭一 / 岩波書店 / 2008-01-22
敗戦以前と以後の,政治思潮と社会体制の共通性を強調する内容であった。ふうん。
舞姫(テレプシコーラ) (4) (MFコミックス―ダ・ヴィンチシリーズ)
[a]
山岸 凉子 / メディアファクトリー / 2003-06-23
舞姫 5―テレプシコーラ (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
[a]
山岸 凉子 / メディアファクトリー / 2003-12-22
舞姫(テレプシコーラ) (6) (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
[a]
山岸 凉子 / メディアファクトリー / 2004-08-23
舞姫 7―テレプシコーラ (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
[a]
山岸 凉子 / メディアファクトリー / 2005-03-23
舞姫(テレプシコーラ) (8) (MFコミックス―ダ・ヴィンチシリーズ)
[a]
山岸 凉子 / メディアファクトリー / 2005-11-22
舞姫 9―テレプシコーラ (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
[a]
山岸 凉子 / メディアファクトリー / 2006-07-22
舞姫 10―テレプシコーラ (MFコミックス)
[a]
山岸 凉子 / メディアファクトリー / 2007-01-23
少女マンガは苦手なのだが,さすがに一時代を画した作家はちがう。。。これを途中まで読んでやめるのは難しい。
ヴィリ (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
[a]
山岸凉子 / メディアファクトリー / 2007-10-23
味をしめて買い込んだ新作。これはなんというか,ちょっと面白可笑しいです。
一般企業の末席に名を連ねて地道にお勤めしている身の上だが,なにしろぼんやり文献を読んでいたりするもので,事情を知らない他の部署の人に「いったいどういう仕事をしてるんだこいつは」と不思議がられたりする始末である。というわけで,別に大した仕事はしていないのだが,今週はそれなりにバタバタ忙しくて,ちょっぴりこたえた。朝から晩まで共分散構造分析のことばかり考えていると,mplusのシンタクスを夢に見るくらいでは済まなくなってきて,定食屋でぼんやり箸をつけていた焼魚と付け合わせの油揚げの両方に焦げ目がついているのをみつけて,ああどうしよう,2変数の背後に「焼き過ぎ」因子があるとみなそうか,それとも誤差に相関があると考えようか,なんて思ってしまったりする。我ながらあほらしい。
別に趣味でも学術研究でもないので,ちょっとリフレッシュしたいとは思うのだが,いざ休みの日になってしまうと,もう布団から出られない。もし布団への愛を競うスポーツがあったら,県大会くらいは優勝できると思う。気分転換といっても,せいぜい布団にうつぶせになったまま文庫本をめくる程度である。「小僧の神様・城の崎にて」新潮文庫版は税別438円。なんという安上がりな趣味。なんというつまらない男。
志賀直哉の短編集はこうして時折手に取るのだが,一編一編が時に腑に落ちたり,時にまったく理解できなかったりして,なかなか読み終わらない。特に女性との関係を扱ったものは,当時の価値観を理解できていないせいか,俺の経験不足のせいか,いまいちぴんとこないことが多い。
この人の「小僧の神様」はとても有名な小説で,俺も中学生の頃に読んだ覚えがある。ブルジョアの男が抱くささやかな困惑と,小僧さんの素直な驚きの対比に,生意気にも「ああ上手いなあ」と感じたものだが,しかし最後に突然作者が登場し,当初予定していた結末は「小僧に対し少し惨酷な気がして来た」。。。と述べるくだりは,いったいなぜ残酷なのかしらん,と首を捻った。いま読み返してみると,とても腑に落ちる。なるほど,それは確かに残酷です。その意味が分からなかった俺は,やはり子どもだったなあ,と思う。
いっぽう,名文と名高い「城の崎にて」は,中学生の頃にもよく分からなかったし(「蜂とか鼠とかイモリとかが死ぬ話じゃん」),恥ずかしながら今もよくわからない(「せっかくのご当地小説なのに,こんな陰気な内容じゃ観光資源にはならないなあ」)。
ひょっとすると,このまま年老いていき,ふと「城の崎にて」を読み返し,ああ若い頃は分からなかったが,これは素晴らしい小説だ。。。なんて思う日が来るのだろうか。それが小説の面白いところではあるのだけれど,正直言って,ちょっとうんざりする面もある。もういいって,人生の深みなんて知りたくないって。俺はただ布団のなかで過ごしたいだけなのに。
2008年2月11日 (月)
情報戦争―9・11以降のアメリカにおけるプロパガンダ
[a]
ナンシー スノー / 岩波書店 / 2004-11-02
ノンフィクション(-2010) - 読了:02/11まで (NF)
東京裁判 (講談社現代新書)
[a]
日暮 吉延 / 講談社 / 2008-01-18
舞姫 1―テレプシコーラ (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
[a]
山岸 凉子 / メディアファクトリー / 2001-06
舞姫(テレプシコーラ) (2) (MFコミックス―ダ・ヴィンチシリーズ)
[a]
山岸 凉子 / メディアファクトリー / 2001-12
舞姫(テレプシコーラ) (3) (MFコミックス―ダ・ヴィンチシリーズ)
[a]
山岸 凉子 / メディアファクトリー / 2002-10-23
2008年2月10日 (日)
昭和天皇 (岩波新書)
[a]
原 武史 / 岩波書店 / 2008-01-22
昭和天皇の,特に祭祀を司る王としての側面に焦点を当てた本。面白かった。ビックス「昭和天皇」を読んでいたときにも思ったのだけど,税金払っているわりには,我々は天皇について案外なにも知らないものだ。
貞明皇太后(昭和天皇の母)は大変に宮中祭祀を重視しており,第二次大戦の戦況悪化とともにますます神懸かり,天皇はそれに反発しながらも引きずられていったのだそうだ。天皇の自然科学者としての側面と祭祀への熱意とはいっけん矛盾するようだが,著者によれば,生物学者が宗教に関心を持つのは珍しい事ではない由。
昭和天皇独白録では,講和を目指した理由として,伊勢神宮・熱田神宮が米軍の制圧下におかれたら三種の神器が守れなくなると思ったから,と述べられている箇所がある(臣民を救う,なんていうのは二の次である。もちろんそういうものであろう)。戦後すぐに伊勢神宮に参拝した際の皇后の記録には,参拝して「親しく事のなりゆきをわびさせられ」。。。というくだりがあるのだそうだ。昭和天皇は戦争について,結局は誰にも謝罪しなかったといわれているが,ご先祖に対してはまた違ったんですね。
心理学やデータ解析の本は,仮に読んでもここには書かないのだが(たいてい部分的に読むだけで読み通していない,という事情もある),一度に2冊もめくった記念に:
Q&Aで知る統計データ解析―DOs and DON’Ts (心理学セミナーテキストライブラリ)
[a]
繁桝 算男,森 敏昭,柳井 晴夫 / サイエンス社 / 2008-02
この本はデータ解析の日本語の解説書には珍しく,(専門家でも初心者でもなく)中級者を対象にした大変に貴重な本で,困ったときにどれだけ助けられたかわからない。おかげで日々めくりにめくり読みに読み,もう言い回しさえ覚えてしまった箇所があるくらいだ。その名著の,なんと第二版が出版された。やっぱし売れてたんだろうなあ。
布団に寝転がって改訂箇所をチェックしたが,新しい項目が増えていたり,わかりにくかった箇所が書き換えられていたり,ますますパワーアップされている。修士一年あたりでこの本を読む奴がいるかと思うと,実に妬ましいことだ。
それにしても,こうして端から目を通していくと,知らない話やまだよく理解できていない話題が多くて,だんだん暗い暗い気分になる。もう別に研究者ってわけじゃないけど,でも勤務時間中はstatisticianでございって顔をしているんであって。。。もうどうしたものかと。。。
Statistics Hacks ―統計の基本と世界を測るテクニック
[a]
Bruce Frey / オライリー・ジャパン / 2007-12-26
すっかり落ち込んで,ついでに買ったこの本をぼんやりめくっていたら,こっちはほとんど知っている話ばかりで,おかげでなんだか元気が出た。まあこんな風に面白可笑しく書く能力があるわけじゃないけどね。
いま流行のlife hacks本の体裁をとっているけれど,要するに統計学の入門書に毛が生えたような内容である。変にやさしく書かれているので,真面目に勉強したい人には向かないし,でもやっぱり「楽しくてしかたがない」という内容でもないので,初心者向け勧誘書とも言いがたい。ちょっと中途半端な感じだ。
書き手に心理・教育系の人がいるせいで,テストの話なんかが出てくるところが可笑しい。しまいには単語の連想強度表や,トヴァツキーのリンダ問題なんかが登場する始末である。うーん,まあstatisticsといえなくもないか。
2008年2月 7日 (木)
暗流―米中日外交三国志
[a]
秋田 浩之 / 日本経済新聞出版社 / 2008-01
これからの日本が歩む方向として,(1)日米同盟の堅持・強化, (2)対米依存を減らし日中接近を目指す,(3)防衛力を増強して自力防衛を目指す,(4)非武装中立を目指す,の4つ(ないし,その組み合わせ)が考えられる。しかしそのどれを選ぶかを好きに決められるわけではなく,大国の動向にあわせ,やむを得ずどれかに適応せざるを得ないのだ,とのことであった。シビアだなー。
新左翼とは何だったのか (幻冬舎新書)
[a]
荒 岱介 / 幻冬舎 / 2008-01
著者はブント系の新左翼セクトのリーダーだった人で,いまは環境活動家である由。なんというか,昔話にもヒトゴト感があふれていて拍子抜けだったが,当事者というのは案外そういうものかもしれない。
ノンフィクション(-2010) - 読了:02/07まで (NF)
大奥 (第2巻) (JETS COMICS (4302))
[a]
よしなが ふみ / 白泉社 / 2006-11-29
大奥 第3巻 (ジェッツコミックス)
[a]
よしなが ふみ / 白泉社 / 2007-12-20
性役割が逆転している架空の江戸時代。奢侈に耽る大奥(全員男性)の改革に着手した八代将軍吉宗(女性)は,将軍家の秘められた過去に驚愕する。なんと,春日局は女性だったのだ! そこで舞台は寛永年間に移り,正史には残らない男たちの涙を描き出す。という。。。
こう書いているとなにがなんだかわからなくなってくるが,とにかく大変に面白い。奇妙な設定の下,いけしゃあしゃあとベタベタな物語を展開してみせるのだが,その背後には性役割についてのラディカルな問題意識があるように思う。将軍吉宗が,なぜ自分の公的な名前は男性であるのか,そうでないと間が抜けた感じがするのはなぜだろうか,と自省するところなど,実に渋い。著者はBL系の売れっ子マンガ家なので,これまで手が出なかったのだが(美男子の裸体など見たくないです),これはすごい,もっと早く気が付くべきであった。
2008年2月 3日 (日)
愚者と愚者 (上) 野蛮な飢えた神々の叛乱
[a]
打海 文三 / 角川書店 / 2006-09-26
愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ
[a]
打海 文三 / 角川書店 / 2006-09-26
「裸者と裸者」の続編。残念だけど,前作のほうが出来が良いと思った。著者は三部作を構想していたのだそうだ。
床下仙人 (祥伝社文庫)
[a]
原 宏一 / 祥伝社 / 2001-01
昔の赤川次郎みたいな感じの短編集。ふうん。。。
中野本町の家 (住まい学大系)
[a]
後藤 暢子,後藤 文子,後藤 幸子 / 住まいの図書館出版局 / 1998-01
数年前に現代建築の写真集で,気鋭の建築家の代表作と目されているという有名な住宅の写真を見て,こりゃあさぞや住みにくかろう,と吹きだしてしまった。それはU字型の開口部を直線で閉じたような形をした平屋で(つまり中庭はコンクリの壁で完全に囲われてしまっている),建物の内部は白い曲面の壁に包まれた幻想的なチューブ状で,窓などというものはなく,床からぼっかりとフットライトが突き出ている,という。。。こんな美術館の渡り廊下みたいな家で暮らしてやろうというのは,いったいどういう奇特な人だろうか,と不思議に思った。きっと週に一回くらいは,照明器具に足の小指をぶつけて泣く羽目になるにちがいない。
そのU字型の住宅の施主にインタビューした本があるというので,ずっと気にかかっていた。このたび区立図書館で取り寄せてもらった。一日で読了し,あまりに面白いのでさらに読み返した。これが絶版なんて,もったいない。
施主である音楽学者の女性は,旦那さんに先立たれ,残された二人の娘と共に暮らすための家を建てるべく弟に設計を依頼するのだが,幸か不幸かその弟が新進気鋭の建築家(つまり伊東豊雄)であったばかりに,その姉の心の有り様を掬い取ったとてつもない家が建ってしまうわけである。その家で育ち,いまは家を出て暮らしている長女がインタビューに答え,家に対する愛憎半ばする感情を,あの家は墓のようだと形容するくだりがあって,衝撃的である。
いろいろなことを考えさせられる,とても面白い本だったけれど,俺の頭が悪いせいか,ついついシニカルに捉えてしまう。母と二人の娘が,家が自分に与えた影響について真剣に言葉を選びながら語るのだが(そのへんの世間話とはレベルが異なる。なにしろ三人ともものすごいインテリなのである),思うに,いったんある環境で育ってしまったが最後,もし違う環境が与えられていたら私はどうなっていただろうか。。。という問いには,実証的な意味がほとんどなくなってしまう。あんな家で成長するということは,確かに人格形成に大きな影響を与えるのかもしれないし,案外そうでもないのかもしれない。どう思うかは本人の自己概念しだいであって,だからこの本を読んで「ああ住宅というものは人に大きな影響を与えるものだなあ」と考える人がいるとしたら,いやそれはちょっとちがうだろう,と思う。あとになって振り返るんだったら,なんとでもいえますって。
家を設計するということが,なにかすごく高邁で精神的な営みであるような話になってきちゃうのも,ちょっとついていけない。昔D.ノーマンのデザイン論の本を読んでいて,いや先生なにもデザインの良し悪しは使いやすさだけで決まるものではないでしょう,そもそも人工物に使いやすさという性質があらかじめ備わっているわけではないでしょう,これでは心理学帝国主義じゃないですか,と反発した覚えがある。いっぽう建築家の難しい話を読んでいると,いや先生それはそれとして使いやすさも大事でしょう,誰がどうみたって使いにくい建物ってのはありうるし,そんなの平気でたてちゃうのは建築家のわがままでしょう,とちょうど逆向きの感想を持ってしまう。「中野本町の家」を取り壊すに至る経緯はいろいろあっただろうけど,要するにものすごーく住みにくかったんとちがいますか,と。
別の種類の疑問もある。建築に関心のあるひとは,きっとあの建築の意味,この建築の意味について考えるのだろうけれども,俺はたいして関心がないもので,有名な建築家が設計した家と,俺が育ち暮らし一生を終えるであろう無味乾燥なアパートとの違いに気をとられてしまう。要するに,そんなの金持ちの道楽とちがうんか,と。
ノンフィクション(-2010) - 読了:02/03まで (NF)
バトルガール (リュウコミックス)
[a]
伊藤 明弘 / 徳間書店 / 2008-01-19
昔のマンガの復刊。90年代初頭のOVAのコミカライズだそうだ。絵柄が生硬でものすごく読みにくい。プロのマンガ家は一朝一夕になれるものではないということですね。
大奥 (第1巻) (JETS COMICS (4301))
[a]
よしなが ふみ / 白泉社 / 2005-09-29
これは面白い。。。
闇金ウシジマくん 10 (ビッグコミックス)
[a]
真鍋 昌平 / 小学館 / 2008-01-30
ラブやん(9) (アフタヌーンKC)
[a]
田丸 浩史 / 講談社 / 2008-01-23
生活 1
[a]
福満 しげゆき / 青林工藝舎 / 2008-01