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2009年4月22日 (水)

Crompton, J.L., Duray, N.A.(1986) An Investigation of the relative efficacy of four alternative approaches to importance-performance analysis. Journal of the Academy of Marketing Science. 13(4), 69-80.
 先月読んだ論文。飛行機の中で目を通し,内容のなさにうんざりし,コピーを宿のくずかごに捨ててしまった。そのせいで,ここに書くのを忘れていた。
 あるサービスだか製品だかに複数の属性があるとき,横軸に各属性のパフォーマンス,縦軸に各属性の重要性をとった散布図を描くことがある。重要なのに弱い属性,つまり左上に位置する属性にリソースを注ぎましょう,という話になる。別に決まった名前があるわけではないと思うが,マーケティング系の論文ではImportance-Performance Chartと呼ばれることが多いようだ。この縦座標をどうやって求めればよいでしょうか,という論文。要するに相対的重要度の研究である。
 テキサスについて28個のイメージを挙げ(「食べ物が安い」とか),それぞれについてあてはまりと重要度を聴取した実調査データを使い,縦軸座標を次の4通りのやりかたで求めてI-P Chartを描く。(1)重要度評定の平均。(2)重要度評定の中央値。(3)「ある属性の重要度の中央値とその属性のパフォーマンスとのあいだの相関係数の絶対値の順位」と「重要度の中央値の順位」を足した値。(4)上の方法で,相関係数のかわりに順位相関係数をつかったもの。で,チャートを比べて,ちがったのちがわないの。。。というのが結論。
 そもそも(3)(4)の求め方が何度読んでもよく理解できないので,偉そうなことはいえないのだが,この論文はナイよなあ。。。たった一件の実データを使ってチャートを見比べ,良く似ているナア,だけどここがちがうナア,などというのはせいぜい感想のたぐいであって,実証的議論とはいいがたい。これっていったいどういう雑誌なんだろう? Impact Factorが1.49(2005)というから,紀要のようなものではないと思うのだが。
 著者らは(1)(2)と(3)(4)をそれぞれself-statedとstatisticalと呼んでいるが,いずれにせよ主観的重要度評定に基づいた指標だ。ふつう統計的重要性といえば,調査で重要度を聴取するのではなく,各属性のパフォーマンスと全体的パフォーマンスとの関係の強さを統計的に導出することを指すと思う。で,意味を持つ問いかけは,主観的重要度と統計的重要度のどっちがいいかではなく,どういうときにどっちがいいか,であろう。

論文:調査方法論 - 読了:Crompton & Duray (1986) 重要度-パフォーマンスマップをいろんな描き方で描いてみた

Hayduk, L.A., Glaser, D.N.(2000) Jiving the four-step, waltzing around factor analysis, and other serious fun. Strucural Equation Modeling. 7(1), 1-35.
 SEMNETメーリングリストでの議論を基にした論文。長い長い論文だったが,書き方がカジュアルというか冗長なので,読むのは案外ラクだった。
 題名にあるfour-stepというのは,あるSEMのモデルをつくるとき,(1)EFAモデル, (2)CFAモデル, (3)SEMモデルの順に制約をかけながら進んでいくやり方のこと。CFAモデルの適合度が低かったら測定部分の問題,SEMモデルの適合度が低かったら構造部分の問題,つまりこのやり方なら測定と構造を分離して検証できることになる。この考え方を著者らは徹底的に批判するが,その最大のポイントは,因子数が正しいかどうかは誰にもわからない,という点。
 four-stepはいわれているほど正しくないよ,という論文であって,four-stepよりも良い方法があるよという論文ではなかった。それはいいとしても,いったんfour-step擁護者の主張をすごく拡大解釈しておいて,やおらそれを叩くというあたりが,なんだか筋の悪い議論に思えて仕方がない。適合度指標だけで正しい因子数を求めることが出来ると思っている人が,ほんとにいるんだろうか?

論文:データ解析(-2014) - 読了:04/22まで (A)

Bookcover 故郷 (岩波文庫) [a]
パヴェーゼ / 岩波書店 / 2003-06-14
この短い小説は,何年か前に読みはじめ,途中で挫折した。いったいどういう話なのかわからなくて,途方に暮れてしまったのである。今回最初から読み直し,前に挫折したあたりを通過したところでようやく,なあんだこれは小難しい哲学小説ではないのね,と気がついた。なぜかわからないが,気づかないうちにそういう予断に縛られていた。サスペンス小説だと思っていれば,もっと気楽に読めたのに。
 あとで調べたら,パヴェーゼというイタリアの作家はアメリカ文学の影響を強く受けていて,この作品もジェイムズ・ケインのハードボイルド小説「郵便配達は二度ベルを鳴らす」との類似性が指摘されているのだそうだ。

フィクション - 読了:04/22まで (F)

Bookcover 諸子百家―儒家・墨家・道家・法家・兵家 (中公新書) [a]
湯浅 邦弘 / 中央公論新社 / 2009-03

Bookcover 人物ノンフィクション〈1〉一九六〇年代の肖像―後藤正治ノンフィクション集 (岩波現代文庫) [a]
後藤 正治 / 岩波書店 / 2009-04-16

Bookcover 雇用はなぜ壊れたのか―会社の論理vs.労働者の論理 (ちくま新書) [a]
大内 伸哉 / 筑摩書房 / 2009-04

本当はマーケティング関係の本を何冊か,読みかけのまま持ち歩いているし,講義準備のための心理学系の本もあるし。。。にもかかわらず,ついついこういう全然無関係な本を読んでしまうのである。

ノンフィクション(-2010) - 読了:04/22まで (NF)

Bookcover 湯けむりスナイパー 第1巻 (マンサンコミックス) [a]
ひじかた 憂峰 / 実業之日本社 / 1999-06
Bookcover 湯けむりスナイパー 第2巻 (マンサンコミックス) [a]
ひじかた 憂峰 / 実業之日本社 / 1999-12
Bookcover 湯けむりスナイパー 第3巻 (マンサンコミックス) [a]
ひじかた 憂峰 / 実業之日本社 / 2000-03
Bookcover 湯けむりスナイパー 第4巻 (マンサンコミックス) [a]
ひじかた 憂峰 / 実業之日本社 / 2000-06
Bookcover 湯けむりスナイパー 第5巻 (マンサンコミックス) [a]
ひじかた 憂峰 / 実業之日本社 / 2000-10
 映画や漫画のタイトルを目にしただけで電光に撃たれたような衝撃を受けた,という経験が二度あって,一度目は,俳優・エッセイストとして知られる伊丹十三の初監督作品の題名が「お葬式」だと知ったとき(当時としては実に画期的なタイトルだったのだ)。そして二度目が,このマンガのタイトルを目にしたときである。「湯けむりスナイパー」...ああ,なんと独創的な組み合わせだろうか。
 題名だけでおなかいっぱいになってしまって,わざわざ注文して読んでみようという気にはなれなかったのだが,このたび書店で発見。「週刊漫画サンデー」で平成10年から連載していたらしい。
 過去を捨て,秘境の温泉旅館で働く無口な男が主人公。タイトル通り,彼はかつて殺し屋であったという極端な設定だが,物語はこの男を視点人物にしたささやかな人情噺である。大したことは起こらないのに,ひとつひとつのエピソードが鮮やかで,これはただごとではないなあ,という感じ。調べてみたら,原作者のひじかた某とは大ベテラン・狩撫麻礼の変名だそうだ。なるほど。

Bookcover それでも町は廻っている 2 (ヤングキングコミックス) [a]
石黒 正数 / 少年画報社 / 2006-10-26
Bookcover それでも町は廻っている 3 (ヤングキングコミックス) [a]
石黒 正数 / 少年画報社 / 2007-08-03

Bookcover 暁星記(8) <完> (モーニング KC) [a]
菅原 雅雪 / 講談社 / 2008-10-23
壮大な設定のSF作品,ついに最終巻。このマンガ,中盤で雑誌連載がストップし,以後は単行本書き下ろしでの発表となっていた。よけいな詮索だけど,執筆中の収入って,いったいどうなっていたのかしらん。

コミックス(-2010) - 読了:04/22まで (C)

2009年4月 5日 (日)

Bookcover 警察署長〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) [a]
スチュアート ウッズ / 早川書房 / 1987-03
Bookcover 警察署長〈下〉 (ハヤカワ文庫NV) [a]
スチュアート ウッズ / 早川書房 / 1987-03
1920年代から60年代までのアメリカ南部の田舎町を舞台にした大河警察小説。原著は81年刊で,話の展開がちょっと古くさいんだけど,警察小説の古典といわれるだけのことはある,面白い小説であった。
 この小説は,邦訳が出たとき(84年)に絶賛する書評をみかけ,以来ずーっと読みたいと思っていたのだが,当時は本を買う金がなかったのである(そりゃそうだ,高校生だもんな)。87年に文庫化されていたようなのだが,気がつかなかった。先日本屋で,復刊された文庫本が平積みされているのをみつけ,なんだかタイムスリップしたような気分になった。ずっと気にしていた本をついに読んでしまったので,なんだか寂しいような気もする。

Bookcover 暗愚なる覇者〈上巻〉―小説・巨大生保 (新潮文庫) [a]
高杉 良 / 新潮社 / 2009-03-28
Bookcover 暗愚なる覇者〈下巻〉―小説・巨大生保 (新潮文庫) [a]
高杉 良 / 新潮社 / 2009-03-28
いちおうはサラリーマンのハシクレとして日々を過ごしているわけだが,なにせ業界参入がつい最近だもんで,基本的な立ち居振る舞いにいまいち自信が持てない。名刺ってどうやって渡すんだ? 敬語ってどのくらい必要なの? こんな事でいいのか,いやだめなんだろうなあ。。。という漠然とした不安が,本屋さんの店先で,時に奇行として火を噴いてしまうのである。自己啓発本買っちゃったり,ベタベタな企業小説を買っちゃったり。
 主人公は巨大生保のエース級社員で,下には人望厚く上には直言を辞さない。ニューヨーク勤務時は,社長の公私混同や幹部たちの隠微な権力闘争を目にし義憤に駆られる(そして社長の愛人と寝る)。下町の支部長に飛ばされ,職員を使い捨てるノルマ営業に怒りを抱きつつ,部下の人心を掌握し奇跡的業績を挙げる(そして成績トップのセールスレディと寝る)。要するに,話の枠組みはマンガ「課長島耕作」と同じである。
 クダラナイ,と切り捨ててはいけないんだろうな。この本のポイントは小説としての良し悪しではなく,小説の形式をとって日本生命の暗部を告発しているというところなのであろう。でも残念ながら,日生の経営がどんなに腐敗していようが,俺は別にどうでもいいです。。。ううむ,やっぱり俺はビジネスマンって柄じゃあないなあ。

フィクション - 読了:04/05まで (F)

Bookcover NTTの深謀 [a]
日経コミュニケーション 編 / 日経BP社 / 2009-03-05
Bookcover NTTの自縛 [a]
宗像 誠之 / 日経BP社 / 2008-01-31
Bookcover 2010年NTT解体―知られざる通信戦争の真実 [a]
/ 日経BP社 / 2006-12-14
この3冊は借りて読んだ。

Bookcover コカ・コーラに挑んだ男―「人生なにが起こるかわからない」 [a]
谷田 利景 / ワック / 2008-12
仕事の足しになるかもしれないと思って読んだ本。ポッカコーポレーションの創業者の自叙伝。高度成長とともに歩んだ人の自伝として面白く読んだが,うーん,仕事の足しには,あんまりならなかったかも。
いま手元にないのでうろ覚えだが,市場調査のデータに頼ってはいけない,それは所詮調査屋の視点にすぎない,というようなくだりがあった。そうなんですよね。わかってはいるんですけどね。

Bookcover ものつくり敗戦―「匠の呪縛」が日本を衰退させる (日経プレミアシリーズ) [a]
木村 英紀 / 日本経済新聞出版社 / 2009-03
著者は制御工学の先生。暗黙知に基づく「ものつくり」神話に縛られ,普遍的システム思考を軽視しているせいで,日本はだめになっちゃうよ,という内容。偉い人の警世の書,という感じの内容であった。

Bookcover ドキュメント アメリカの金権政治 (岩波新書) [a]
軽部 謙介 / 岩波書店 / 2009-03-19

Bookcover 新聞・TVが消える日 (集英社新書) [a]
猪熊 建夫 / 集英社 / 2009-02

Bookcover 日本の仏像―飛鳥・白鳳・天平の祈りと美 (中公新書) [a]
長岡 龍作 / 中央公論新社 / 2009-03
しばらく前の休みの日,花粉の嵐を踏み越えて,世田谷美術館「平泉 特別展」を観てきた。四天王の立像をほれぼれと眺めていて,ふと気がついたのだが,考えてみたら,四天王っていったいなにしている仏様なんですかね。
 で,ちょうど出たばかりのこの本を読んでみた。ええと,四天王のみなさまはもともと衆生の行状を記録している神様で(だから広目天は手に巻物を持っておられる),さらに8世紀頃からは,お釈迦様への誓いを破っている奴を見つけて罰を下す神様ということにもなったのだそうだ(故に持国天は怒っておられる)。へえー。などなどと,面白い読み物であった。ああ,心和むなあ。こういう本ばかり読んで暮らせたらいいのだけれど。

Bookcover エセー〈1〉 [a]
/ 白水社 / 2005-10
昨年から中公クラシックス版の「エセー」を読み始めたのだが,2巻の冒頭あたりで挫折した。新訳本で再チャレンジ。こっちのほうが読みやすい。
 モンテーニュの文章はまとまりがなく,どこに進んでいくのかわからないところが楽しい。先月,ひょんなことから夜行列車で長旅をすることになり,狭い寝台にうつぶせに寝転がってこの本を読みふけった。忘れられないひとときであった。

ノンフィクション(-2010) - 読了:04/05まで (NF)

Bookcover 決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫) [a]
半藤 一利 / 文藝春秋 / 2006-07
玉音放送のあった8月15日の未明,阿南陸相は官邸の廊下で切腹するが,なかなか絶命しない。その最中,官邸の別室で,中佐たちが次のように囁きあっていたのだそうだ。「俺はいまここに大臣の印鑑を預かっている。やろうと思えば...全軍蹶起を大臣命令でだせるのだ」「ニセの大臣命令などすぐばれる。それに,そんなことをしても大臣がはたして喜ばれるだろうか」「いまのは冗談だよ」
なるほど,混乱のさなかにこそ,その人の心の奥底があらわになるものなのだろう。

日本近現代史 - 読了:04/05まで (CH)

Bookcover 昭和のこども~こんな親でも子は育つ! ~ (2) (ぶんか社コミックス) [a]
流水 りんこ / ぶんか社 / 2009-03-30
Bookcover インド夫婦茶碗 (12) (ぶんか社コミックス) [a]
流水 りんこ / ぶんか社 / 2009-03-30
この著者にいったいいくら貢いだことだろう。この人の身辺雑記マンガをずーっと読み続けてきたので,なんというか,面白かろうがそうでなかろうが,買わずに済ませられなくなってきているのである。

Bookcover 伊藤潤二の猫日記 よん&むー (ワイドKC ) [a]
伊藤 潤二 / 講談社 / 2009-03-13
ホラーマンガ家がホラーマンガの絵柄で描くほのぼの猫エッセイマンガ。コンセプトは面白いと思った。

Bookcover とろける鉄工所(2) (イブニングKC) [a]
野村 宗弘 / 講談社 / 2009-03-23
鉄工所を舞台にしたコメディ,二巻目。厳しい話題を明るく笑い飛ばすところが魅力的である。

Bookcover 聖☆おにいさん(3) (モーニング KC) [a]
中村 光 / 講談社 / 2009-03-23

Bookcover シグルイ 12 (チャンピオンREDコミックス) [a]
山口 貴由 / 秋田書店 / 2009-03-19

Bookcover テレプシコーラ 第2部 第2巻 (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ) [a]
山岸凉子 / メディアファクトリー / 2009-03-29

Bookcover 闇金ウシジマくん 14 (ビッグコミックス) [a]
真鍋 昌平 / 小学館 / 2009-03-30

Bookcover サイン会はいかが?‾成風堂書店事件メモ 2 (WINGS COMICS―成風堂書店事件メモ) [a]
久世 番子,大崎 梢 / 新書館 / 2009-03-25

Bookcover デトロイト・メタル・シティ 7 (ジェッツコミックス) [a]
若杉 公徳 / 白泉社 / 2009-02-13

コミックス(-2010) - 読了:04/05まで (C)

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