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2011年10月11日 (火)

Bookcover シェイクスピア全集 (〔29〕) (白水Uブックス (29)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
なんとなく知っているつもりの話であったが,このたび読んでみて意外だったのは,かの有名な夫人よりもむしろマクベスの人間像であった。マクベスは幻影と不眠に苦しみながらも,自らの運命を自ら支配しようとする,ロビンソン・クルーソーなみの近代人であるように思われる。こういう話だったのか。

Bookcover 江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間 (日本カルト映画全集) [a]
/ ワイズ出版 / 1995-05
仮にも映画が好きですなどと自称しておきながら,石井輝男「恐怖奇形人間」('69)をこれまで未見のままに済ませていた不明を深く恥じる次第である。その昔は大井町や自由が丘の映画館で始終かかっていたのであまり有り難みがなく,かえって見そびれていたのである。先日の新文芸座の岡田茂回顧上映でようやく観賞し,噂を上回るあまりのラストシーンに打ちのめされ,場内が明るくなってもしばらく席から立てなかった。だって,もう,可笑しくて可笑しくて。「どかーん」「お母さーん」はないだろう,と。
 この本は映画の脚本,脚本家と監督のインタビュー,当時のいくつかの批評記事など,そして原作の一つである乱歩「パノラマ島奇譚」をまとめたもの。
 それにしても,土方巽は偉大な人だったのだなあ。この映画を見終わって心に残るのは,やはりこの舞踏家の異様な身振りである。どんな陳腐な台詞を吐いても,この人だけは常人に思えない。

フィクション - 読了:「マクベス」「恐怖奇形人間」

Bookcover 満州事変――政策の形成過程 (岩波現代文庫) [a]
緒方 貞子 / 岩波書店 / 2011-08-19
緒方貞子さんはもともと政治学専攻だったのだそうで,この本は著者の博士論文に基づく66年刊「満州事変と政策の形成過程」の文庫化。というと随分堅苦しく聞こえるが,俺のような素人にとってもわかりやすく,かつ面白く読める本であった。
 多少そのせいで損することがあっても,やはり組織の意思決定というものには透明性がないといけないなあ,と痛感した。謀略はろくな結果を生まないようだ。

日本近現代史 - 読了:「満州事変」

2011年10月10日 (月)

Bookcover 虐待の家-「鬼母」と呼ばれた女たち(中公文庫) [a]
佐藤 万作子 / 中央公論新社 / 2011-06-23
2003年に岸和田で起きた児童虐待事件についてのルポルタージュ。
文庫版の補章で取り上げられている親子再統合の問題が,なんというか,勉強になった。児相の権限が強化され,強制的な親子分離が可能になっても,それで万事解決というわけではない,親子再統合を視野に入れて考える必要がある由。なるほど。

Bookcover 次世代インターネットの経済学 (岩波新書) [a]
依田 高典 / 岩波書店 / 2011-05-21

Bookcover ポルノ雑誌の昭和史 (ちくま新書) [a]
川本 耕次 / 筑摩書房 / 2011-10-05
かつては知る人ぞ知る写真家にして官能作家,いまではブロガーとして有名な著者が,自らが編集者として関わった自販機雑誌を中心に,70-80年代のエロ雑誌について回顧した本。この人が書かなかったら記録に残らなかったにちがいない内容である。
 裏表紙の近影で著者の顔をはじめてみたのだけれど,いかにも一癖ありそうなふてぶてしいお姿で(失礼),ちょっと嬉しかった。そういう人を思い浮かべていたのです。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「次世代インターネットの経済学」「虐待の家」「ポルノ雑誌の昭和史」

Bookcover 医学と仮説――原因と結果の科学を考える (岩波科学ライブラリー) [a]
津田 敏秀 / 岩波書店 / 2011-09-16
疫学の先生が書いた「私の考える科学哲学」に,疫学の基礎概念についての紹介をちょっと付け加えた本。前者は,いわゆる実験室実験原理主義に対する批判が柱になっている。
 こ,この本は,ええとその,どうなんだろうか... 少なくとも,俺が院生の頃に読んだクワインの「経験主義の二つのドグマ」と,この先生のお読みになったクワインとはかなりちがうようだ。実験批判の議論も,科学全般の話と医学の話とが混在しているので,ちょっとその,混乱するというか,なんというか。
 でもまあ,学者としてできあがっちゃった人が,自分の専門領域を軽々と越境し,自由な主張の羽を広げ自由な空にバタバタと飛び立っていくのを,誰も止められないですよね。

データ解析 - 読了:「医学と仮説」

Bookcover ハルコの晴れの日(1) (まんがタイムコミックス) [a]
星里 もちる / 芳文社 / 2011-10-07
純情で惚れっぽい派遣社員の女の子が,派遣先で毎回失恋するというコメディ。

Bookcover アゲイン!!(1) (KCデラックス 週刊少年マガジン) [a]
久保 ミツロウ / 講談社 / 2011-09-16
若者のコミュニケーション不全感を題材にしたコメディ「モテキ」を大ヒットさせた著者の新作。孤独な3年間を過ごした高校生が,卒業式の日に三年前の入学式にタイムスリップする。ちょっと面白い設定だ。

Bookcover めしばな刑事タチバナ 3 [カップ焼きそば選手権] (トクマコミックス) [a]
坂戸 佐兵衛 / 徳間書店 / 2011-10-08
「週刊アサヒ芸能」連載のBC級グルメ情報マンガ。低価格外食チェーン店のウンチクからインスタント食品のウンチクにシフト。よく取材してるなあ。

Bookcover 上を向いて歩こう! [a]
のぶみ / 講談社 / 2011-07-30
震災直後の石巻でのボランティア体験記。

Bookcover 純潔のマリア(2) (アフタヌーンKC) [a]
石川 雅之 / 講談社 / 2011-10-07

コミックス(2011-) - 読了:「ハルコの晴れの日」「アゲイン!!」「めしばな刑事タチバナ」「純潔のマリア」「上を向いて歩こう!」

2011年10月 4日 (火)

Bookcover 美しい夏 (岩波文庫) [a]
パヴェーゼ / 岩波書店 / 2006-10-17
素晴らしい小説ですっかり引き込まれているんだけど,あまりに引き込まれてしまい,登場人物の悲劇につきあうのが辛くなり,頁を開く気にならない,ということがたまにある。この本がそうであった。
 このままだと読みかけのまま夏が終わってしまうと思い,会社の近所にある小さな神社の軒下に腰を下ろし,時々白い雲を見上げて深呼吸しながら一気に読み終えた。いやあ,しんどい物語であった。あの馬鹿みたいに青い空,しばらく忘れられそうにない。

Bookcover シェイクスピア全集21 アントニーとクレオパトラ (ちくま文庫) [a]
W. シェイクスピア / 筑摩書房 / 2011-08-09
アントニーとクレオパトラは,愛と不信の間を振り子のように揺れながら,手を取り合うようにして破滅へと進んでいく。細かいところはよくわからないが(なにせ長い戯曲なのだ),理解できる範囲では面白かった。
 そういえば,この本にもこんな印象深い台詞が出てくる。目前に迫る死を悟りつつあるアントニーが従僕に語る場面。「どうかするとある雲が龍に見えてきたりする,ひとつの霧のかたまりが雲かライオンのようだったり,塔のある城塞,空に張り出す絶頂の頂,峰が二股に別れた山,木々の生い茂る青い岬などに見え,それが下界に向かってうなずき,大気の流れによって人の目をあざむく。お前も見たことがあるだろう? あれは夜の闇の到来を告げる華麗な野外劇だ」「はい,陛下」「いま馬だったものが,そう思う間もなくちぎれ雲にまぎれておぼろになってしまう。水に注がれた水のように」「そうですね,陛下」 「いいやつだな,エーロス,いまお前の将軍はちょうどそういうものなのだ。俺はいまアントニーだが,目に見えるこの形を保つことはできないのだよ」

Bookcover 絆回廊 新宿鮫Ⅹ [a]
大沢在昌 / 光文社 / 2011-06-03
「新宿署の鮫島ダ」(←ぜひ舘ひろしのモゴモゴした声で)でおなじみの人気シリーズ,5年ぶりの新刊。このたびは大鹿マロイを思わせる大男が新宿にやって参ります。
 俺はあまり良い読者ではないもので,このシリーズの最近の数作については全く印象にないのだが,この作品は久々の傑作だと思った。

フィクション - 読了:「美しい夏」「アントニーとクレオパトラ」「新宿鮫 絆回廊」

二ヶ月ほど前から延々と持ち歩いている本が,しかしまだ読み終わらない。さすがにだんだん疲れてきた。以下は息抜きに浮気した本。

Bookcover デザインの教科書 (講談社現代新書) [a]
柏木 博 / 講談社 / 2011-09-16
デザイン論入門,という感じの本。セルトーという人の本,面白そうだ。

Bookcover 知識の社会史―知と情報はいかにして商品化したか [a]
ピーター バーク / 新曜社 / 2004-08
社会制度としての知識をめぐる歴史。「アルファベット順に並べる」という考え方は歴史的には決して古くなく,定着までに時間がかかったのだそうだ。ふうん。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「デザインの教科書」「知識の社会史」

ビジネス書は手に取っても全部は読まないことが多いのだが。。。

Bookcover 外食産業の顧客価値 「ストレス・オフ」ビジネス サービス数値化の基準 [a]
右田 圭司 / 東京書籍 / 2010-12-08
題名に惹かれて中をろくに見ずに買い,すぐに読み始め,数十頁ぶん目を通したところで,こ,これはまるで「成功した実業家が年を取ってから一念発起して大学院に入り,思いの丈を綴った文章をそのまま修士論文にしてしまったもの」を読んでいるような気分だ,と驚愕した。で,あとがきをみたら,果たしてそのとおりであった。
 ここで止めたら話の種にもならないと思い,最後までめくった。なんというか,世の中いろんなことがありますね。

Bookcover フレッシュネスバーガー手づくり創業記 (アスペクト文庫 B 9-1) [a]
栗原 幹雄 / アスペクト / 2011-09-20
もちろん成功者の自慢話なんだけど,意外に面白い本であった。住宅メーカー出身で「ほっかほっか亭」創業に参画し長く店舗開発を手がけた役員が,すっかり軌道にのった会社の会議漬けの毎日に飽き飽きし,なぜか奥さんと二人でこだわりのハンバーガー屋を開店してしまう。しかし蛇の道は蛇,開店の段階ですでにチェーン展開をもくろんでいたというから,さすがである。
 奥付を見ると,この本,2008年刊「面白いことをとことんやれば『起業』は必ずうまくいく」を改題・文庫化したものである由。こっちの題名のほうが絶対いいですね。

Bookcover 日本一のクレーマー地帯で働く日本一の支配人―怒鳴られたら、やさしさを一つでも多く返すんです!― [a]
三輪 康子 / ダイヤモンド社 / 2011-07-15
しばらく前に目を通したのだが,記録するのを忘れていた。新宿東横インの支配人が荒廃したホテルを建て直した体験を綴った細腕繁盛記。

マーケティング - 読了:「外食産業の顧客価値」「フレッシュネスバーガー手づくり創業記」「日本一のクレーマー地帯で働く日本一の支配人」

Bookcover 草子ブックガイド(1) (モーニング KC) [a]
玉川 重機 / 講談社 / 2011-09-23
本好きの女子中学生を主人公に,彼女の読む小説の紹介を織り交ぜた心温まる物語。絵柄が大変に美しい。話はちょっとベタついた感じだが,お好きな人にはたまらないだろう。
 いま調べたら,この人,大昔に講談社で「ハヤ子サケ道をいく 」というマンガを連載していた人ではないか。その後長くマンガから離れていた由。あの頃は絵が不安定だという印象があったけれど。

Bookcover 岳 15 (ビッグコミックス) [a]
石塚 真一 / 小学館 / 2011-09-30
著者はなにかの場所で,冗談めかして「山のマンガはもう飽きた」と云っていたそうだが,多少は本音の部分もあるのではないかと思う。長期連載というのは大変なんだろうなあ。

Bookcover あたしンち 17巻 [a]
けらえいこ / メディアファクトリー / 2011-09-21

Bookcover アイアムアヒーロー 7 (ビッグコミックス) [a]
花沢 健吾 / 小学館 / 2011-09-30

コミックス(2011-) - 読了:「あたしんち」「草子ブックガイド」「岳」「アイアムアヒーロー」

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