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2014年1月27日 (月)
国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源
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ダロン アセモグル,ジェイムズ A ロビンソン / 早川書房 / 2013-06-21
国家はなぜ衰退するのか(下):権力・繁栄・貧困の起源
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ダロン アセモグル,ジェイムズ A ロビンソン / 早川書房 / 2013-06-21
今月はずーっとこの本にかかりきりであった。世界中を飛び回る長大な内容だが、主張は意外にシンプルで、要するに、多元的な権力構造を持つ政治システムがないと国家はいずれ衰退しちゃうよ、でもそういうシステムを持てるかどうかは歴史と運に左右されるよ... ということなのではないかと思う。
パスタでたどるイタリア史 (岩波ジュニア新書)
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池上 俊一 / 岩波書店 / 2011-11-18
年末年始の息抜きに読んだ本。とはいえ、著者名が示すように(「身体の中世」を書いた本物の歴史家である)、ただのパスタについての蘊蓄本ではない。
イタリア各地のパスタのお国自慢を切り口に、統一国家としてのイタリアの形成について触れる章が非常に面白かった。地方ごとの名産料理なるものの生成は国家統一と裏表の関係にある、ということらしい。なるほどねー。
孤独な日銀 (講談社現代新書)
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白川 浩道 / 講談社 / 2014-01-17
金融政策の話なんてテンで理解できないので、しかたなくこういう本を読んで、分かった気になろうとしているわけである。元日銀マンが、組織としての日本銀行について書いた本。
それはそれで面白かったのだけれど、日本をどうするかという話と、日銀という組織をどう守るかという話が、なんだかごっちゃにされているような気がして... どう捉えたらいいのか、よくわからない。
ところで、新聞などに「量的質的金融緩和」というような言葉が踊っていて、なにかが量的でありかつ質的であるっていったいどういうことを指しているのかなあ、と不思議に思っていたのだけれど、ひょっとするとあれって、「超!もンのすっっごい緩和っ!!」というような意味なのだろうか。参るなあ。
ノンフィクション(2011-) - 読了:「国家はなぜ衰退するのか」「パスタでたどるイタリア史」「孤独な日銀」
インド夫婦茶碗 (19) (ぶんか社コミックス)
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流水 りんこ / ぶんか社 / 2014-01-10
長期連載のエッセイコミック。子育てネタからはもう卒業します、と前巻で宣言されていたような記憶があるんだけど、本巻ではいよいよ「インド夫婦茶碗 老い老い編」というタイトルになっている...
月影ベイベ 2 (フラワーコミックスアルファ)
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小玉 ユキ / 小学館 / 2013-12-10
青春ですよ!青春! と机を叩いて苛立ちを発散しながら、無理矢理読み終えた。
コミックス(2011-) - 読了:「インド夫婦茶碗」「月影ベイベ」
Wickham, H. (submitted) Tidy data. Journal of Statistical Software.
reshape, reshape2, ggplot2, plyr, RStudioなどで知られるR界の怪人(?) Wickhamさんが最近書いたドラフト。先日リリースされた爆速集計パッケージ(dplyr)の使い方を覚えようと思ってwebを眺めてたら、まあ最初にこれを読んでくれよとの仰せなので、はぁそうですか、と真面目に目を通したのである。でもこれ、dplyrとはあんまり関係ないんじゃないですかね...
著者の考えるところの標準的なデータ形式、すなわちtidy dataについて説明する内容であった。tidy dataとは、変数が列で、オブザベーションが行で、データベースでいうところの正規化されたテーブルを指す概念。ある対象についての時系列が横に並んでいるようなやつは、従ってtidyではない (時間という変数が列になってないから)。はいはい...
論文:データ解析(-2014) - 読了:Wickham (submitted) きれいなデータとはなんぞや
2014年1月12日 (日)
正月休みに本棚を眺めてて、これはちょっとまずいんじゃないか、買い込んだ本を読み終えることなく俺は死んでいくんじゃないか... と気が付いたのである。優先順位をつけなければならない。どうしても読みたい本、読んでいるはずなのに読んでいない本から読まなければ。明日失明するつもりで。
というわけで、「実をいうとこの本を読んでなかった」シリーズ、第一弾。
日経BPクラシックス プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神
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マックス・ウェーバー / 日経BP社 / 2010-01-21
プロ倫っていうんですかね。こんなの学生の時分に読んでいて然るべき、このトシ過ぎて読んでるのはいかがなものか... という引け目を感じるが、いやいや、この年齢だからこそ面白い、ということだって起きるはずだ。それにですね、今調べたところによれば、この本書いたときヴェーバーさんは四十歳ですよ。若造が読んでも仕方あるまい?
で、「やっぱしさっぱり頭に入らなかった」という落ちを覚悟しながら読んでみたのだが、これが意外にも面白い。ヴェーバーくんの文章は、論旨が整理されているとはいいがたいが、着想がユニークである。2章1節でプロテスタントのいろんな教派を比較するあたりはちょっとダレルが、なかなか読ませる文章を書く男だ。次回作にも期待したい。でも注が長すぎるのはどうかと思うよ。
何様だ。どうもすみません。まあ冗談は置いといて、どこが面白かったかと振り返るに、この本で「檻」と表現されているものが、2014年の極東に生きる私たちの社会を切開して見せたものであるようにも思われるからだ。
ピューリタンたちは職業人であろうと欲した。しかしわたしたちは職業人でなければならないのである。かつては修道院の小さな房のうちで行われていた禁欲が、現世の職業生活のうちに持ち込まれ、世俗内的な倫理を支配するようになった。そしてこの禁欲は、自動的で機械的な生産を可能にする技術的および経済的な条件と結びついて、近代的な経済秩序のあの強力な宇宙を構築するために貢献したのである。このコスモスは今や、直接に経済的な営利活動に携わる人々だけでなく、その機構のうちに生まれてくるすべての個人の生活のスタイルを、圧倒的な威力によって決定しているのである。そして化石燃料の最後の一塊が燃え尽きるまで、今後も決定し続けるだろう。
哲学・思想(2011-) - 読了:「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」
<中東>の考え方 (講談社現代新書)
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酒井 啓子 / 講談社 / 2010-05-19
仕事と全然関係ない本を、突如として読みたくなったため。突如として、じゃないか。いつもか。
ノンフィクション(2011-) - 読了:「<中東>の考え方」
乙嫁語り 6巻 (ビームコミックス)
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森 薫 / KADOKAWA/エンターブレイン / 2014-01-14
ちょっとどうかしてるんじゃないか、というくらいに精密で美麗な絵柄。いまこの人のマンガを読まないのは損だとさえ思う...
銀の匙 Silver Spoon 10 (少年サンデーコミックス)
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荒川 弘 / 小学館 / 2014-01-08
コミックス(2011-) - 読了: 「乙嫁語り」「銀の匙」
2014年1月11日 (土)
Wehrens, R., Buydens, L.M.C. (2007) Self- and Super-ornizing Maps in R: The kohonen Package. Journal of Statistical Software, 21(5).
自己組織化マップのRパッケージはいくつかあるけど、そのうちkohonenパッケージについての紹介。ざざざーっと目を通しただけ。パッケージを使う前にこういうのをめくらないと、なんだか落ち着かないのである。気が小さいというか、なんというか。
このパッケージには、ふつうの教師なし学習の関数 som(), 教師あり学習のxyf(), bdk()があるけど、結局これらは複数の層のマッピングを同時に行う supersom() の特殊ケースなのだそうだ。さらにsupersom()は欠損値も扱える由。へー。
論文:データ解析(-2014) - 読了: Wehrens & Buydens (2007) kohonenパッケージ
2014年1月 5日 (日)
シェイクスピア全集 (〔26〕) (白水Uブックス (26))
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ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
こ・れ・は・ひ・ど・い。これまでに読んだシェイクスピア大先生の戯曲のなかで、「終わりよければすべてよし」に並んで、圧倒的なまでに出来が悪い。よくもこんな作品が残ったものだ。シェイクスピアさんもきっと雲の上で、「うわぁごめん!アレはなかったことにして!」と顔を覆って笑っておられるに違いない。
「紙上の教会」と日本近代――無教会キリスト教の歴史社会学
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赤江 達也 / 岩波書店 / 2013-06-27
序章からなんだか肩に力が入っている感じで、ひょっとして若い研究者の博士論文かな、と思ったら、まさにその通りであった。ともあれ、面白い本であった。
内村鑑三以降の無教会キリスト教の歴史を、特に雑誌メディアとの関わり(著者のいう「紙上の教会」)に注目して辿る。前半は内村、後半は矢内原忠雄らが中心人物となる。
本の主旨もさることながら、とても面白かったのは、内村の不敬事件のくだり。教育勅語への敬礼を雄々しくも敢然と拒否したのだとばかり思っていたのだが、実際にはそういう話ではなくて、そもそももっと堅い信念を持つキリスト教徒の教員は仮病で休んでいたし、内村鑑三は迷った末ちょっと頭を下げてみせ、その頭の下げ方が十分でないという指弾を受けたのである。
なるほど、とかえって感銘を受けた。このように、誠実であるが故に中途半端な姿、そして事件を乗り越えて自分の道を進んでいく姿にこそ、学ぶべきものが多いように思う。
日本近現代史 - 読了:「『紙上の教会』と日本近代-無教会キリスト教の歴史社会学」
原因を推論する -- 政治分析方法論のすゝめ
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久米 郁男 / 有斐閣 / 2013-11-13
政治学者が因果推論の方法論をエッセイ風に語る本。大竹文雄「経済学的思考のセンス」の政治学版といった感じである。政治学の面白いところがつまみぐいできるんじゃないかしら、と思って手に取った。アタリでした。楽しく読了。
いくつかメモ:
- マッキンゼーの人が昔書いた「エクセレント・カンパニー」という有名な本があるけど(読んでませんが)、その本の著者は後に「データねつ造して書きました」と告白しておられる由。へー。
- 誰かをあまり強く批判するタイプの本ではないのだけれど、中小企業論の中沢孝夫という方の本についてはかなりはっきりと批判している。「強い企業」の見聞録を読むくらいなら、ローゼンツワイグの「なぜビジネス書は間違うのか」を読みなはれ、とのこと。
- 無作為割り当て実験の例として紹介されていた著者らの実験。ネット調査で、最初にスーパーマーケットなどの写真を見せてから自由貿易の是非について質問すると、最初に工場の写真を見せていた場合に比べて、保護主義的な回答が減ったのだそうだ。それぞれ「消費者としての自分」「生産者としての自分」をプライムしたからだ、という説明らしい。へえ-。面白いなあ。
- 著者は科学的推論について基本的にポパー流の反証主義の立場に立っていて、主要仮説/補助仮説といった話題はほんの数行触れられる程度。そういうものか。
- シングル・ケース研究におけるLeast likely case methodの例としてあげられている研究が面白かった。冷戦期の米ソ軍縮交渉で、科学者のようなtransnationalな行為主体が大きな役割を果たしていた、という指摘があるそうだ(軍事交渉においてさえ非国家アクターの役割が大きい、という意味で国際協調主義を支持するleast likely caseになっている)。Matthew Evangelista という人の"Unarmed Forces" という本が挙げられている。邦訳はなさそう。
- 「社会科学のリサーチ・デザイン」という有名な本があって、かつて論争を呼んだらしいが(「社会科学の方法論争」という本になっている)、著者のまとめによればその論争とは、現象を説明する一般原則の発見に重きを置くか、現象が生じるプロセス自体に関心を持ち、対象を限定した中範囲の理論を目指すか、という対立なのだそうだ。へー。いつかきちんと読まなきゃと思って積んではいるが、どうも大変面倒くさそうな本で。。。
- こういう本を書く政治学者の方は、きっと現実の政治へのコミットを嫌うんだろうなあ、と想像しつつ読んでいたのだが、最終章で日本の政治学の話になって、そうした話題が登場した。政治改革という価値判断に基づく啓蒙主義的な政治学と、経験的・実証的な政治学とは、これまで対立と行き違いを繰り返してきた、とのこと。民主党のブレーンであった山口二郎さんについても頁が割かれている(素人目に文字面だけ読めば、案外に好意的)。現実の政治に対して規範的立場をとるなとか、政策提言するなというわけではないけど、規範的判断と実証的分析とは独立な知的営為なのだ、とのこと。
ガルブレイスを読む (岩波現代文庫)
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中村 達也 / 岩波書店 / 2012-08-18
数年前に「ゆたかな社会」を読んで、読んでいる最中はとても面白かったんだけど、読み終わったら結局どういう話だったのかわからなくなってしまい、自分の頭の悪さにうんざりしたのであった。
その仇討ちのつもりで読んだ本。著書をもう一冊読むとしたら「新しい産業国家」がよさそうだが、いずれにせよ体系を構築するタイプの研究者ではなく、むしろ「異議申し立て」型の学者であった由。なるほど。
章のあいまにコラム風に、ガルブレイス先生の名台詞集が挿入されていて、これがやたらに面白い。サムエルソンは「経済学者でない人たちはガルブレイスを重要視しすぎ、同じ分野の我々は彼を軽く扱いすぎる」と評したそうだが、たしかに先生の警句はあまりに面白すぎるのである。たとえばこんな台詞。
少なくとも経済学者にとって市場が魅力的に感じられる理由の大半は、市場がすべての事柄を単純化するようにみえるからにほかならない。こみ入った真理よりも秩序だった誤謬のほうがよいのだ。
忠臣蔵 もう一つの歴史感覚 (講談社学術文庫)
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渡辺 保 / 講談社 / 2013-11-12
年末年始の息抜きに読んだ本。著者は高名な歌舞伎批評家で、私自身は歌舞伎には全然関心ないんだけど、この先生の文章はなんとなく味わい深いのである。
たとえばこんな箇所。「古今いろは評林」という江戸時代の研究書にあるという、仮名手本忠臣蔵についての評言を引いて、
「恋なくて恋の情を含みて」というのは名言だと思う。恋はもとより相手があって成り立つ。おかるには早野勘平がいて、おかるの恋は成り立っているが、実は勘平が死んだあとの七段目でもおかるは、恋をしている女の「恋の情」があざやかなのである。だから実際のラブ・シーンはないのに、あたかも恋があったような感じが見ているものにするのである。
これはおかるが勘平の死という現実を知らなかったからではない。おかる自身が恋をする女であり、おかるそのものが恋に生きる女だったからである。相手もいないのに恋する女なぞ世の中にいようがないが、つねに自分の体のうちに恋を持ち、恋に生きている女というのはいるだろう。おかるは、きびしい道徳の下の理想像だから、勘平一人との恋に生きたけれども、本当は師直が看破したように、恋の小間使いなのである。これは決して淫奔というのではない。そこがいわくいいがたく、むずかしいところであるが、恋に生きる、その恋を心にしている女の正体である。
こういう文章を読んで、20代の朧な記憶を振り返り、そういうことであったか、と感慨にふけったりして... 人生の先達の言葉は味読に値するなあ。などと思いながら読んだ。
で、いま気がついたんだけど、この本の初版は81年。数えてみたら、当時の著者はいまの私と同年代だ。あいたたた。。。
ノンフィクション(2011-) - 読了:「ガルブレイスを読む」「忠臣蔵」
2013年はほんとに本を読まない一年であった。記録を整理してはっきりしたのだが、記録のある2005年以来、最低の冊数である。もちろんたくさん読めばいいってものでもないだろうけど、悲しいことだ。今年はもうすこしまじめに本を読みたい。
ついでにいえば、最低だったのはコミックスを除いた読了書点数であって、いっぽうコミックスのほうは、2005年以来ぶっちぎりの最高記録であった(246冊)。うーん、これはいいことなのか、どうなのか... 日本が誇るマンガ文化は、残念ながらろうそくの火が消える寸前の最後の爛熟を迎えていると思うので、ここで読んでおかないのは損だ、という気もするし。
というわけで、年末年始に読んだマンガ。
花と落雷 1 (マーガレットコミックス)
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渡辺 カナ / 集英社 / 2013-01-25
花と落雷 2 (マーガレットコミックス)
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渡辺 カナ / 集英社 / 2013-05-24
集英社の新人、これが初単行本とのこと。ほんとですか。好みのタイプのマンガではないけれど、隙のない秀作であった。
とりぱん(15) (ワイドKC モーニング)
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とりの なん子 / 講談社 / 2013-10-23
内なる仮面 (小学館文庫―イアラ短編シリーズ)
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楳図 かずお / 小学館 / 2002-07
ZUCCA×ZUCA(6) (KCデラックス モーニング)
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はるな 檸檬 / 講談社 / 2013-12-20
進撃の巨人(12) (講談社コミックス)
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諫山 創 / 講談社 / 2013-12-09
漫喫漫玉日記 四コマ便 (ビームコミックス)
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桜 玉吉 / エンターブレイン / 2013-12-24
大砲とスタンプ(3) (モーニング KC)
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速水 螺旋人 / 講談社 / 2013-12-20
それでも町は廻っている 12 (ヤングキングコミックス)
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石黒 正数 / 少年画報社 / 2013-12-26
暗殺教室 7 (ジャンプコミックス)
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松井 優征 / 集英社 / 2013-12-27
ブッダ (第2巻) (潮ビジュアル文庫)
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手塚 治虫 / 潮出版社 / 1992-12-01
ブッダ (第1巻) (潮ビジュアル文庫)
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手塚 治虫 / 潮出版社 / 1992-12-01
ワカコ酒 2 (ゼノンコミックス)
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新久千映 / 徳間書店 / 2013-12-20
コミックス(2011-) - 読了:「ワカコ酒」「ブッダ」「暗殺教室」「それでも町は廻っている」「大砲とスタンプ」「進撃の巨人」「とりぱん」「内なる仮面」「ZUCCAxZUCA」「花と落雷」「漫喫漫玉日記 四コマ便」
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