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2007年12月29日 (土)

Bookcover 僕の小規模な生活(1) (KCデラックス モーニング) [a]
福満 しげゆき / 講談社 / 2007-12-21
この人の自叙マンガ「僕の小規模な失敗」について,当時誰かが「この情けなさは金がとれる!」と評していて,言い得て妙だと笑ってしまった。その後この人は全国紙の書評欄で絶賛され,メジャー誌で複数の連載を持つ売れっ子になった。こうなってしまうと,肝心の情けなさも半減し,ひょっとしたらつまんなくなっちゃうんじゃないかなあ,と思っていた。
 この本はモーニング連載をまとめたもので,前作よりますます面白くなっていることに驚かされる。これが才能というものなんだろうなあ。
 都営住宅の隣室の老人が姿を見せなくなり,ベランダからのぞき込むと窓が開きっぱなしになっていて,玄関ドアの郵便受けからは異臭とともに小バエが出てくる。これは孤独死ではないかと気を揉んで,ベランダ経由で忍び込もうかとあれこれメンタル・シミュレーションを繰り返し,思い迷ったあげく警察に匿名で通報する(もちろん氏名を尋ねられ,答えないわけにもいかなくなる)。何人もの警官が押し寄せ大事になってしまい,これでもし何事もなかったらどうしようかと惑乱し,思わず隣室に向かって手をあわせ「頼む!死んでいてくれ!」 爆笑してしまったが,よく考えてみると,こういうちょっとした可笑しさは我々の日常の中に溢れているものだ。しかしそれをこのように形にするには,やはりある種の才能が必要なのだと思う。
Bookcover GUNSLINGER GIRL 9 (電撃コミックス) [a]
相田 裕 / メディアワークス / 2007-11-27

Bookcover EDEN(17) (アフタヌーンKC) [a]
遠藤 浩輝 / 講談社 / 2007-12-21

Bookcover 団地ともお 11 (ビッグコミックス) [a]
小田 扉 / 小学館 / 2007-12

ここんところ柄にもなく忙しくて,マンガしか読めないありさまだった。なんだかなあ。

コミックス(-2010) - 読了:12/29まで (C)

2007年12月22日 (土)

Bookcover エニグマ奇襲指令 (ハヤカワ文庫 NV 234) [a]
マイケル・バー・ゾウハー / 早川書房 / 1980-09
帯で丸谷才一が褒めていたので,つい買ってしまった。77年のスパイ冒険小説。ナチスのV2ロケット完成に危機感を抱いた英情報部は,変装の達人である伝説的大泥棒を獄から放ちパリに潜入させ,独軍のエニグマ暗号機を盗み出させようとするが...その敵役の独軍将校は文化を愛する好漢で,復讐のため陰謀に身を投じたユダヤ人美女への愛に苦悩し...とかなんとかそういう感じ。最後にアッと驚けといわんばかりのどんでん返しがあるところも含め,なんというか,クラシカルな娯楽小説であった。
 こういう小説は,小金持ちが居心地のよい居間のソファーでブランデーグラス片手に読むと似合うんじゃないかと思う。貧乏人が人混みに揉まれながら吊革にぶら下がって読む本ではないね。だんだん馬鹿馬鹿しくなってくる。

フィクション - 読了:11/22まで (F)

Bookcover 篦棒な人々ー戦後サブカルチャー偉人伝 (河出文庫 た 24-1) [a]
竹熊 健太郎 / 河出書房新社 / 2007-12-04
「クイック・ジャパン」誌でのロング・インタビューをまとめたもの。

Bookcover ケネディ―「神話」と実像 (中公新書) [a]
土田 宏 / 中央公論新社 / 2007-11
J.F.ケネディの大統領就任演説は歴史的名演説として有名だが(「国が諸君のために何をしてくれるのかを問うのではなく...」という奴),ケネディはその一ヶ月前からスピーチライターに指示を出し,原稿を繰り返し推敲し何度も音読し,就任式の朝も風呂の中で大声で練習していたそうだ。なるほど,そういうものか。

ノンフィクション(-2010) - 読了:12/22まで (NF)

Bookcover おいピータン!!(10) (ワイドKC Kiss) [a]
伊藤 理佐 / 講談社 / 2007-12-13

Bookcover トロイメライ [a]
島田 虎之介 / 青林工藝舎 / 2007-07

Bookcover さよなら絶望先生(11) (講談社コミックス) [a]
久米田 康治 / 講談社 / 2007-12-17

Bookcover 未来町内会(3) (講談社コミックス) [a]
野中 英次 / 講談社 / 2007-12-17

Bookcover 新吼えろペン 9 (サンデーGXコミックス) [a]
島本 和彦 / 小学館 / 2007-12

コミックス(-2010) - 読了:12/22まで (C)

2007年12月 9日 (日)

Bookcover ついていったら、だまされる (よりみちパン!セ 30) [a]
多田 文明 / 理論社 / 2007-11-22
この理論社「よりみちパンセ」シリーズは,いったい誰に読んでもらおうと思って作っているのだろうか。俺が中学生なら,書き手が読み手に「きみたち」と呼びかけるような本は,きっと鳥肌ものだったと思うのだが。これでいいのかしらん? まあ,その道のプロである理論社の編集者が作っているんだから,きっとこれでいいんだろうけどさ。

ノンフィクション(-2010) - 読了:12/09まで (NF)

Bookcover 中国戦線はどう描かれたか―従軍記を読む [a]
荒井 とみよ / 岩波書店 / 2007-05-11
林芙美子を中心に,従軍作家の文章について論じた本。著者はもう退官した先生らしくて,本のスタイルは研究書というよりエッセイに近い。軍部のチアリーダーと化した林芙美子に対して,しかし複雑な共感を隠さないところが興味深かった。
 最終章はまさにエッセイという感じの内容で,朝日新聞の投稿歌壇のとある常連さんの作品に心惹かれ,その人が従軍の記憶を歌った投稿作を日々メモし続けたあげく,ついに新聞社を通じてその人(佐藤文夫さんという人)に連絡をとってしまうのである。その作例:「帰還してやさしかりしは久里浜の砂なり老いて踏みにゆきたり」

日本近現代史 - 読了:12/09まで (CH)

Bookcoverぼく、オタリーマン。[a]
よしたに / 中経出版 / 2007-03-15
個人ブログの単行本化。売れているらしい。ふうん。

Bookcover 刑務所の前 第3集 (ビッグコミックススペシャル) [a]
花輪 和一 / 小学館 / 2007-11-30
著者お得意の中世怪奇絵巻と,著者が銃刀法違反で捕まるまでの経緯が並行して描かれるという,実にアバンギャルドな構成のマンガ,その最終巻。護送車の中で警官に,この経験をマンガに描けばいいよ,と云われる場面があるのだが,ほんとかしらん。案外そういう雰囲気なのか。

Bookcover 駅から5分 1 (クイーンズコミックス) [a]
くらもち ふさこ / 集英社 / 2007-11-19

コミックス(-2010) - 読了:12/09まで (C)

2007年12月 5日 (水)

Kish, L. (1990). "Weighting: Why, When and How?" Proceedings of the Section on Survey Research Methods, American Statistical Association, 121-130.
ここんところ,全訳しかねない勢いで読んでいた論文(いや待て,これは査読論文でさえないぞ。なぜこんなに時間をかけているんだ?)。ASAのwebページで公開されていた。
市場調査の会社に拾って頂いたところ,もう親の仇かっていうくらいにデータをウェイティングするので驚いた。そのわりには,ウェイティングについてのまとまった解説がなかなか見当たらないので困っていたのである。市場調査分野の日本語の解説に至っては,ことごとくレベルが低すぎて,実務上の疑問にさっぱり答えてくれない。たとえば,事後層化ウェイトが極端に大きくなってしまったらどうするか。そもそも,なにをもって極端に大きいというべきか。誰か答えられるだろうか? 日本語で解説しているのをみたことがないぞ。
ひとくちに調査データのウェイトつき集計といっても,その内実は実に多様である。Kishによれば,ウェイトを使う理由は7種類あるんだそうである(層への非比例配分,フレームの不備,無回答,統計的調整,標本結合,コントロール用統計表をつかった調整,非確率標本の確率標本への調整)。やれやれ,やっと頭が整理できた。

論文:データ解析(-2014) - 読了:12/05まで (a)

Bookcover 啓蒙主義 (ヨーロッパ史入門) [a]
ロイ ポーター / 岩波書店 / 2004-12-21
薄い本なのに,時間がかかってしまった。歴史音痴の俺にも面白い本であった。印象に残った箇所をいくつか抜き書き(長くなりそうだ...):
「啓蒙の改革がいつも計画通りいったとは限らない。同じように,本当の意味での改良の功労者がいつも啓蒙主義の人々であったとは限らない。奴隷制度の場合がそうだ。植民地のプランテーションにおいて展開する奴隷制度を,すべてのフィロゾーフ[啓蒙主義者のこと]が嘆き悲しんだ。[...]ところが,大英帝国においてまず奴隷貿易,ついて奴隷制度そのものの廃止まで達成する運動を指導したのは,英国国教会の福音派とクウェーカー教徒だった。トマス・ジェファソンは啓蒙主義の申し子であり,人権の提唱者であり,アメリカ第三代の大統領にもなるが,生涯,奴隷所有者だった。いつの場合も,原則と実践,心構えと行動との間の関係は入り組んでいる」
「理念が社会よりも先を走るということはけっしてない。[...]社会のダイナミズムや,人口の増大や,生産活動などを分析する大胆で新しい啓蒙主義の人間科学は,19世紀になれば実証主義の『陰鬱な科学』と化し,統治する側が,資本主義的な生産関係はなぜ不易であり不可避であるのか,貧困は貧者自身の責任であるのはなぜかを説こうとするさいに,イデオロギー上の理想的な材料を提供することになる。コンディヤックやエルヴェシウスの挑戦的な心理学は,人間とは可能性を孕む存在だとするものだった。それが,学校であれば児童,職場であれば成人の間で従順さや規律を確保することに易々と利用されることになる。現在から自由である『人間機械』というヴィジョンも,かつては刺激的なものだった。それが,機械の時代における工場の現場での陰鬱な現実となり,のちには行動主義心理学の条件づけにもなる」
「たしかに啓蒙主義は人間を過去から解放することには貢献した。とはいえ,あらたに束縛の条件が作られるのを予防するまでにはいたらなかったのである。現代の都市化された工業社会が直面する諸問題。啓蒙主義はまさしくその産婆だったのであり,[ ...それを解決しようと努力している] 私たちは,フィロゾーフが創造した社会分析の技術,ヒューマニズム的な価値観,科学の専門知識にかなりの程度まで依存している。このように,今日もなお私たちは啓蒙主義の申し子なのである」

ノンフィクション(-2010) - 読了:12/05まで (F)

2007年12月 2日 (日)

Bookcover トヨタ 世界一の光と影 [a]
岡 清彦 / いそっぷ社 / 2007-12
著者は赤旗の記者。よく調べている。
 先日読んだ本と同様,内容の半分が正社員の過労死の話で,こういうところでも期間工は顧みられないのかと不満なのだが,これは要するに,読み手のニーズの問題なのかもしれない。

Bookcover アメリカン・コミュニティ―国家と個人が交差する場所 [a]
渡辺 靖 / 新潮社 / 2007-11
アメリカ専門の文化人類学者が,9つのコミュニティを短期訪問して紹介した本。ディズニーがつくった町,刑務所の町,LAのゲーテッド・コミュニティ,ボストンのダウンタウン,などなど。これはとても面白い本だった。
 「現代のアメリカにおける個人主義について考えるとき[...]民主主義と平等化の帰結というよりは,むしろ,社会統合の困難さの帰結としての側面がより強いように思える。トクヴィルは自発的結社を「公」と「私」を仲介(ないし緩衝)する中間組織と位置づけた。自発的結社のそうした機能については私も認めるが,今日の自発的結社には,個人の孤立ないし浮遊への反動としての側面がますます看過できなくなっている印象をうける。」 なるほど。日本で地域再生が唱えられるときも,この二つの側面があるのかもね。

 日曜日の昼下がり,ぼんやりとアクセスログの集計を眺めていて気が付いたのだが(暗い人生だなあ),(1)出版社が自社出版物の書名を検索ワードにしてこのブログにたどり着いているケースが,最近かなり増えている。新刊の評判を調べているのであろう。大変だなあ。(2)同業他社様からのアクセスがなぜか急増している。。。なにか目立つことでもしたかしらん。すみませんすみません,隅のほうで大人しくしてますんで,どうか見逃して下さい。

ノンフィクション(-2010) - 読了:12/02まで (NF)

Bookcover デトロイト・メタル・シティ 4 (ジェッツコミックス) [a]
若杉 公徳 / 白泉社 / 2007-11-29

Bookcover PLUTO 5 (ビッグコミックス) [a]
浦沢 直樹 / 小学館 / 2007-11-30

Bookcover わたしたちの好きなもの (BEAM COMIX) [a]
安永 知澄/河井 克夫/上野 顕太郎/しりあがり 寿 / エンターブレイン / 2007-09-25

コミックス(-2010) - 読了:12/02まで(C)

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