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2010年6月29日 (火)

「もう忙しくて忙しくて」などと口にする奴にロクな奴はいないのだが(いや,これは本当です),ここんとこ訳がわからないくらい忙しくて忙しくて。。。すっかり消耗しました。ストレス発散に買い込んだ本だけが,部屋にどんどん貯まっていく。

Bookcover 腐った翼―JAL消滅への60年 [a]
森 功 / 幻冬舎 / 2010-06

Bookcover 残念な人の思考法(日経プレミアシリーズ) [a]
山崎将志 / 日本経済新聞出版社 / 2010-04-09
申し訳ないけど,30分で読了。

Bookcover 人口負荷社会(日経プレミアシリーズ) [a]
小峰 隆夫 / 日本経済新聞出版社 / 2010-06-09

Bookcover 民間軍事会社の内幕 (ちくま文庫 す 19-1) [a]
菅原 出 / 筑摩書房 / 2010-06-09
ジャーナリスト向けセキュリティ訓練に参加した体験談が面白かった。ゲリラ役のスタッフに拉致され殺されそうになるなど,そこまでやるか,という本格的な演習である。

Bookcover オウムを生きて―元信者たちの地下鉄サリン事件から15年 [a]
青木 由美子 / サイゾー / 2010-03-11

Bookcover 使い捨てられる若者たち―アメリカのフリーターと学生アルバイト [a]
スチュアート タノック / 岩波書店 / 2006-03-15
アメリカの若年非正規労働者の調査報告。博士論文が元になっているそうだ。解説にある「21世紀の「ハマータウンの野郎ども」だ」という誉め言葉は,さすがにちょっと大げさな感じがするが,面白い本ではあった。

Bookcover 日本とは何か 日本の歴史〈00〉 [a]
網野 善彦 / 講談社 / 2000-10-24
2000年の刊行時に買った本。たぶん再読。先週ようやく仕事が一段落し,その反動もあって,ただいまちょっとした網野先生ブームなのである。仕事に関係のない本は胸和むぞ。

ノンフィクション(-2010) - 読了:「日本とは何か」ほか

Bookcover 杯気分!肴姫 一杯目 (ビームコミックス) (BEAM COMIX) [a]
入江 喜和 / エンターブレイン / 2010-05-24
Bookcover 杯気分!肴姫 二杯目 (ビームコミックス) (BEAM COMIX) [a]
入江 喜和 / エンターブレイン / 2010-05-24
Bookcover 杯気分!肴姫 三杯目 (ビームコミックス) (BEAM COMIX) [a]
入江 喜和 / エンターブレイン / 2010-06-25
90年から93年にかけて講談社「モーニング」誌で連載された,入江喜和さんのデビュー作。単行本は長く入手できない状況が続いており,業を煮やした俺は大枚はたいてオンデマンド版で入手してしまったのだった。なのに,このたび復刊本が出るとまたイソイソと買ってしまったりして。。。
 入江喜和さんは下町の平凡な人々の生活だけを描き続けているマンガ家で,お世辞にも売れっ子とは言い難いが,この人のマンガにはなにか天才的なきらめきのようなものがあり,何度読んでも飽きない。絵柄の魅力もさることながら,台詞がほんとに生き生きとしているのである。エルモア・レナードのようなタイプの,非常にリアリティのある台詞で物語を引っ張っていくタイプの作家を指して「耳の良い作家」と呼ぶのだと聞いたことがあるが,この人はさしずめ「耳の良いマンガ家」ということになろう。このデビュー作だと後半からが素晴らしい。このたび読み返して改めて感銘を受けたので,ついつい結末近くの名場面を書き写してしまう次第。

 主人公は下町の小料理屋の若きおかみさんで,ぶっきらぼうだが心優しい医者(群ちゃん)と相思う仲になるが,無医村に赴任する男と自分の店との間で心揺れた末,ついには店を選ぶ。で,鞄ひとつで旅立つ男の前に仕事着の着物姿で現れ,涙を隠して二カッと微笑んでみせる。「見送りなら来なくていいっつったろ!オレァそーいうベタベタしたのはキライだって」「そこまで!そこまでよ ねっ 駅の近くまで行くだけだから」「いらん!大通りで車ひろって上野まで行くから」「あっ じゃ明治通りまで タクシー乗り場ンとこ いいでしょ? ねっ早足で歩くから いい天気だし散歩がてらにサ」「...勝手にしろっ」「うん」
 二人歩き始めると,うしろから自転車の老人が「よォ!お出かけー?」「うん! ちょっとそこまで」「い~い天気だねェ デートだな」「そーよん」別のおばさんが「アラッ こないだはごっそさんねェ」「い~え~ こっちこそもらいっぱなしで」。。。という調子で歩いているうちに,ふたりはタクシー乗り場に着く。「サ ここから ちょいと先生」「... ほんとにいい天気だ 駅まで歩いてみるか」 駅とは東向島駅のこと。
 ふたたび歩きながら「なんかピンとこないのよねェ東向島って あたしなんかがちっちゃい頃は玉の井って駅名だったから おとうちゃんとかオジちゃんなんか未だにそー言ってるもん 玉の井だとどーしても戦前の赤線地帯ってイメージだからよくないんだって ヘンよねェ 駅の名前なんか変わったってこの街もあたしらもかわんないのにサ」「しかしなかなか粋ではあるな 玉の井の女と別れてきたっつーのは」「まー時代がかってますことね~え」とけらけら笑う女の後ろ姿に,男がふと真顔になって「やっぱりおまえはそのカッコしているときが一番いいな」 二人は立ち止まる。「オレァ女の着るもんなんぞどーでもいいと思ってる方だけど おまえはそれが一番似合う」 そっぽを向いて「はじめて店で見たとき 「いい女だな」っつったろ? アレ冗談じゃねえぞ」 女はあわてたように俯いて,「群ちゃん!」 手提げから包みを取り出し「これ電車の中で食べて! おむすびとだし巻き... あたし作ったの」「またおめェはこーいうことをする...」「わかってるって ヤなんでしょベタベタするのは」 一拍おいて「ここで帰るわ」 
 そこは駅前商店街の手前の横断歩道のあたり。ふたりは笑って別れる。「かみしめて食うよ おカミさん」 背中を向けて歩み去りながら,おにぎりを掲げて振ってみせる男に,女が涙を溜めて「じゃあね!」と声をかける。

 。。。書き写してみて確信したけど,これ,いちいち声に出して確かめないと書けない台詞ですね。

Bookcover 乙嫁語り 2巻 (ビームコミックス) (BEAM COMIX) [a]
森 薫 / エンターブレイン / 2010-06-15
パラノイアックなまでの執拗な描き込み。一コマ一コマのあまりの美しさにめまいがする。。。
 あとがきマンガに戯画化された著者が登場し,「そういえばときどき思うのですが,晴れた昼間にひとりで馬の足やら刺繍やらを描いているとこうふつふつと。。。」「ふつふつと。。。」 目を輝かせて机に向かう著者の顔がアップになって 「私いま,生きてる!」 笑ってしまった。さもありなん。

Bookcover 午前3時の無法地帯 (1) (Feelコミックス) [a]
ねむ ようこ / 祥伝社 / 2008-12-08
Bookcover 午前3時の無法地帯2 (Feelコミックス) [a]
ねむ ようこ / 祥伝社 / 2009-04-08
中小企業で働きはじめた若い女性を主人公に据えた青春ストーリー。安野モヨコ「働きマン」を女性誌向けにしたような感じ。これが著者のデビュー作だそうだが,すでに練達の域である。
それにしても,こういうマンガ読んでいると,いやあ恋愛って面倒だなあ,と思えてならない。もう20代に戻らなくてよいかと思うとほんとにうれしい。

Bookcover ヴィンランド・サガ(9) (アフタヌーンKC) [a]
幸村 誠 / 講談社 / 2010-06-23

Bookcover アオイホノオ 4 (少年サンデーコミックススペシャル) [a]
島本 和彦 / 小学館 / 2010-06-11

Bookcover 路地恋花 1 (アフタヌーンKC) [a]
麻生 みこと / 講談社 / 2010-02-05

Bookcover 前夜祭 (モーニング KC) [a]
小田 扉 / 講談社 / 2009-03-23

Bookcover それではさっそくBuonappetito! (ワイドKC Kiss) [a]
ヤマザキ マリ / 講談社 / 2008-08-11

Bookcover イタリア家族 風林火山 (ぶんか社コミックス) [a]
ヤマザキ マリ / ぶんか社 / 2010-06-25

Bookcover ベントラーベントラー(2) (アフタヌーンKC) [a]
野村 亮馬 / 講談社 / 2009-10-23

Bookcover サムライ・ノングラータ [a]
矢作 俊彦,谷口 ジロー / フリースタイル / 2009-10-20

Bookcover レッド(4) (KCデラックス イブニング ) [a]
山本 直樹 / 講談社 / 2010-06-23

コミックス(-2010) - 読了:「杯気分!肴姫」ほか

2010年6月15日 (火)

Bookcover 悲しみのダルフール [a]
ダミアン・ルイス,ハリマ・バシール / PHP研究所 / 2010-04-08
スーダンのダルフール紛争での虐殺を生き延びた女性によるノンフィクションだが,半分以上が田舎町での少女時代の思い出に割かれている。ガルシア・マルケスを思わせる,ほとんど神話的にさえ感じられる世界。とびきりの秀才であった彼女は家族の支えを受け,都会で高等教育を受けて医者となる。しかし故郷の村はジャンジャウィード(アラブ系民兵)に蹂躙され,彼女自身も残虐な暴行を受ける。

ノンフィクション(-2010) - 読了:「悲しみのダルフール」

忙しい忙しいという奴にロクな奴はいないと思うのだが,いやいや,なんだか忙しい忙しい。。。

Bookcover 生き方の不平等――お互いさまの社会に向けて (岩波新書) [a]
白波瀬 佐和子 / 岩波書店 / 2010-05-21
教育,若者の雇用,ジェンダー,高齢者の4つの領域での格差と不平等について概観した本。著者云うところの「お互いさまの社会」実現のための提言としては,(1)再分配政策の見直し(富裕層の所属税増税とか),(2)子育て支援や就労支援で,社会保障機能の恩恵を実感させること,(3)柔軟な就労を可能にする参加型社会の形成によって財源を確保すること,の3つが挙げられている。ふうん。

Bookcover 社会史とは何か (洋泉社MC新書) [a]
阿部 謹也 / 洋泉社 / 2009-11-06
晩年の短めの文章の集成。
グリム童話のようなメルヘンについて語る「メルヘンにみる中世人のこころ」という文章の末尾に,こんなくだりがあった。「メルヘンは全体として中世の小宇宙のなかで生きていた人々の夢を描いた話として浮かび上がってくる」「中世の人々は日々 [病気や貧困などの] 不安のなかで暮らしていたのである。しかし中世にもそれなり隠蔽の手段があった」「不安を根本的に解消するためには,大宇宙の力と折り合いをつけることができなければならなかった。そこで生まれるのがメルヘンである。メルヘンの主人公は孤立し,一人前とはいえない欠陥をもった人間である。このような人間でも大宇宙の力の前に謙虚になったとき,大宇宙は助力の手をさしのべる。その助力によって人間世界のなかで孤立した主人公も,あらゆる人生の困難を乗り切って平和でゆたかな暮らしをすることができるとメルヘンが語っているのである」

Bookcover 改革逆走 [a]
大田 弘子 / 日本経済新聞出版社 / 2010-05-25
俺は経済とか財政とかの知識がからきしないもので,安倍・福田内閣の閣僚が書いたこういう本を読むと,そうですか小泉改革は偉かったですか,なあんてもうすぐに説得されちゃうのである。定見がないとはこういうことだ。

勤務先の同業者が集まる勉強会に行ったら,大学にいたときの末期にお世話になった先生のところの院生が出席していてびっくり。思わず,誰々は知ってる? 誰々は元気? などと質問攻めにしてしまった。勉強会に来ていたのは就職活動の一環らしい。市場調査業界がわざわざ目指すべき職種なのかどうか,俺にはよくわからないんだけど,まあ,いろんな人の話が聞けるのはきっと良いことなのだろう。
 それにしても,日常の生活のなかで大学の頃の関係者に前触れなく出くわすと,非常に動揺する。上野を歩いていたらいきなり渋谷に着いた,というような,悪酔いのような感覚がある。これもまた,一貫しないライフコースをふらふらさまよっている代償のひとつであろう。ひとつの道を真っ当に進んで成功していたら,きっとこんな目に遭わなくて済んだのだろう。

ノンフィクション(-2010) - 読了:「生き方の不平等」ほか

2010年6月 7日 (月)

Bookcover レンタルチャイルド―神に弄ばれる貧しき子供たち [a]
石井 光太 / 新潮社 / 2010-05
ムンバイの浮浪少年たちを描いたノンフィクション。目を疑うようなエピソードが次々に登場する。しかし,日本の敗戦後の闇市にも,ここで描かれているのと同種の悲惨があったのかもしれない。

Bookcover ハドリアヌス帝―文人皇帝の生涯とその時代 (文庫クセジュ) [a]
レモン シュヴァリエ,レミ ポワニョ / 白水社 / 2010-03
ローマ五賢帝のひとり,ハドリアヌス帝についての解説。実生活となんら関わりのない本を読みたくなり,手に取った。ローマ近郊に,この皇帝の別荘の遺跡がある由。

ノンフィクション(-2010) - 読了:「レンタル・チャイルド」ほか

Bookcover 午前3時の危険地帯 1 (FEELCOMICS) (Feelコミックス) [a]
ねむ ようこ / 祥伝社 / 2010-05-08
祥伝社の女性マンガ誌「フィール・ヤング」に連載していた人気恋愛マンガの続編。そんなのいちいち読んでられるか,とこれまで無視していたんだけど,こんどは超地味な新人OLが主人公だというので(そしてメガネ娘だというので),ついふらふらと手にとってしまった。いや,これ,意外に面白いです。

Bookcover おんさのひびき(1) (アクションコミックス) [a]
伊図 透 / 双葉社 / 2010-05-28
著者の第二作。少年時代を細やかに描く。デビュー作「ミツバチのキス」の面白さはフロックじゃないかと疑っていたのだが,これはホンモノだ,と納得。マンガの才能ってあるんですね。

Bookcover ベントラーベントラー(1) (アフタヌーンKC) [a]
野村 亮馬 / 講談社 / 2009-02-23
「アフタヌーン」連載時に全部読んでいたのだけれど,先日の最終話がとても面白かったので,最初から読んでみたくなった。

Bookcover モーレツ!イタリア家族 (ワイドKC Kiss) [a]
ヤマザキ マリ / 講談社 / 2006-10-13
奇想天外な風呂マンガ「テルマエ・ロマエ」の著者の旧作エッセイマンガ。

Bookcover 女たちよ(1) (モーニング KC) [a]
川島 秀雄 / 講談社 / 2010-05-21
奇妙にブンガク的なショートショート。20年前ならきっと小説として発表されていたことだろう。

Bookcover 7人のシェイクスピア 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL) [a]
ハロルド 作石 / 小学館 / 2010-05-28

コミックス(-2010) - 読了:「午前三時の危険地帯」ほか

2010年6月 2日 (水)

Bookcover 闇金ウシジマくん 18 ヤミ金くん (ビッグコミックス) [a]
真鍋 昌平 / 小学館 / 2010-05-28

Bookcover アイアムアヒーロー 3 (ビッグコミックス) [a]
花沢 健吾 / 小学館 / 2010-05-28

Bookcover 聖☆おにいさん(5) (モーニング KC) [a]
中村 光 / 講談社 / 2010-05-24

Bookcover あしめし すりー アシを辞めてもメシが食えんのか (ビッグコミックススペシャル) [a]
葛西 りいち / 小学館 / 2010-05-28

コミックス(-2010) - 読了:「闇金ウシジマくん 18」ほか

Bookcover 全体主義 (平凡社新書) [a]
エンツォ・トラヴェルソ / 平凡社 / 2010-05-15
2001年にフランスで刊行された全体主義研究のアンソロジーの序文を膨らませたものが,イタリアで一冊の本となり,これはその翻訳だそうだ。近代の政治思想における「全体主義」概念の変遷を辿る,という内容であった。
 第二次大戦前後,欧米の反ファシズム運動はスターリニズムを批判できなかった(ジョージ・オーウェルや,トロツキストや,空気を読まない少数の例外を別にして)。しかし,ソビエト体制への「盲目の隷属状態という罪を負わされた反ファシズムをまえにして,全体主義への真のアンチテーゼとして,政治的に明快で歴史的に無垢な自由主義を対置させることは,1945年以降の堅固な西欧民主主義を戦間期に投影する回顧的な幻想でしかない。」「ムッソリーニやヒトラーの独裁がかつての自由主義的秩序から生じたのであれば,どうして自由主義をかかげて闘うことができるだろう。」「王党派,ブルジョア,さらに多くに知識人をふくめた[...]イタリア自由主義の主要な流れは,すべてファシズムの側に立ったことを忘れてはいけない。ウィンストン・チャーチルやアメリカの自由主義者が,ムッソリーニを賞賛していたことを[...]忘れてはいけない。プロシアのエリートたちが,1930年から33年にかけて,簡単に彼らの自由主義を投げ捨て,ヴァイマールの民主主義を破壊し,ヒトラーの手に権力をにぎらせたのを忘れてはいけない。1938年のミュンヘン会談の妥協と,スペイン内戦傍観の政策もまた忘れてはいけない。」「ヨーロッパ大陸の自由主義政党のもとでは,ナチズムにたいしてどのような大衆運動も実質的な抵抗も望めないがゆえに,スターリニズムを批判することが控えられたのである。」 なるほど。。。

ノンフィクション(-2010) - 読了:「全体主義」

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