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2011年4月11日 (月)

Bookcover 知と情 宮澤喜一と竹下登の政治観 [a]
御厨 貴 / 朝日新聞出版 / 2011-03-18
著者は戦後史の重要人物たちへの聞き書きで有名な政治学者。この本は宮澤喜一、竹下登、福本邦雄(戦後政治のフィクサーと呼ばれた人物)の聞き書きをもとに、二人の対照的な保守政治家の軌跡をたどる本。この先生による宮澤さんと福本さんの聞き書きはそれぞれ読んでいたのだが、この本では彼らの微妙な言い回しの真意についても解説されていて、そうだったんですか、という発見があった。
 宮澤さんの聞き書きでは、田中政権以降、突然話がプラザ合意に飛ぶ。途中の三木内閣では外務大臣、鈴木内閣では官房長官だったのに。著者によれば、これは宮澤さんの強い意向であり、語りたくなかったのだろう、とのこと。

日本近現代史 - 読了:「知と情」

Bookcover Rの基礎とプログラミング技法 [a]
U.リゲス / シュプリンガー・ジャパン(株) / 2006-10-22
Bookcover R初心者のためのABC [a]
A.ジュール,E.イエノウ,E.ミースターズ / シュプリンガー・ジャパン株式会社 / 2010-12-22
この種の本を「読み終える」というのも変な話なのだが。。。

諸事情により、いよいよ R を覚えないといけない事態になった。新しい事柄に取り組むのは、もはや大変におっくうなのだが。なるほど、確かに、年を取ったわけだ。
で、あれこれ検討したうえ、しっかりした内容の解説書を2冊選び、キーボードには触らず、ノートを取りながら端から端まで全部読んだ。これはかなりシンドイ作業で、コーヒーがぶ飲み、ボトルガム食べ放題でも精魂尽きる。いや、最近では精魂が尽きる前に眠くなってしまうのだが。

こういう勉強の仕方はあまり普通ではないかもしれない。ディスプレイに向かって時折コードを打ち込みながら、徐々にマスターしていく、というのが常道であろう。しかし、本気で覚えたいのならまずは本を読み通すことだ、それが当然だと、なぜか固く信じて疑わなかったのである。

なぜ疑わなかったのだろう? いま考えるに、これはおよそ20年前の記憶から来ているのかもしれない。SASというシステムについてマスターしようと決意した私は、元旦朝に大学に行き、机の上にSAS Version 6 の分厚いマニュアルを三冊並べ、三が日を費やして読み通した。たしかにその正月休みで私はSAS言語の全体像を理解したが、しかしそれが効率的な勉強方法だと思っていたわけではない。そうせざるを得なかったのである。当時SASは大学のメインフレームにアクセスし課金の下で走らせるものであり、そうそう気軽に使えるものではなかったのだ。

思うに、私は過去の体験に縛られ、今回もまた本を読むことから始めたのだと思う。やれやれ、過去の成功体験に縛られるというのならばともかく、そもそも成功とは言い難い過去に縛られるとは。哀しくてやりきれない。

データ解析 - 読了:「Rの基礎とプログラミング技法」「R初心者のためのABC」

Bookcover 心の病と社会復帰 (岩波新書) [a]
蜂矢 英彦 / 岩波書店 / 1993-04-20
精神科の地域リハビリテーションについての本。本棚の奥に眠っていたのを、整理の都合で再読。93年刊、SSRI などの薬が出る前の話だから、最新の状況はこの本とは変わっているかもしれない。。。

心理・教育 - 読了:「心の病と社会復帰」

Bookcover 秋葉原事件―加藤智大の軌跡 [a]
中島 岳志 / 朝日新聞出版 / 2011-03
秋葉原歩行者天国での無差別殺人事件についての本。著者はもはや若手論客として名を馳せている人だから、この本は事件を通した現代批評かと思っていたのだが、ニュージャーナリズム風の濃密なノンフィクションであった。いろいろ考えさせられる内容ではあったが、著者の犯人に対する思い入れが強すぎて、ちょっと損しているような気がする。

Bookcover ユニクロ帝国の光と影 [a]
横田 増生 / 文藝春秋 / 2011-03-23
ユニクロ・柳井社長について、どちらかといえば批判的に取り上げた本。単なる悪口ではなく、わざわざスペインのZaraを見学に行って比較するところが面白かった。

Bookcover 若き芸術家たちへ - ねがいは「普通」 (中公文庫) [a]
安野 光雅:佐藤 忠良 / 中央公論新社 / 2011-04-08
先日亡くなった彫刻家・佐藤忠良と、安野光雅さんとの何度かの対談をまとめた本。ずいぶん直截な題名だが、これは文庫化にあたっての改題で、もとは「ねがいは「普通」 」という題名であった由。
 安野光雅さんはもう座談の名手だから、読んでいてとても楽しい。よくよく読んでみると二人の話は全然かみ合っていなかったりして、そこもなんだか良い。

Bookcover カラー版 地中海都市周遊 (中公新書) [a]
陣内 秀信,福井 憲彦 / 中央公論新社 / 2000-07
2000年の出版時にほとんど読み終えていたはずなのだが、このたび風呂の中で改めて読み直した。建築史家と歴史学者が、地中海周辺の都市の建築について語りあう対談集。写真がたくさんついていて、目に楽しい。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「秋葉原事件」「ユニクロ帝国の光と影」「若き芸術家たちへ」「地中海都市周遊」

Bookcover 竜の学校は山の上 九井諒子作品集 [a]
九井 諒子 / イースト・プレス / 2011-03-30
著者は同人誌で有名な人らしい。RPG風の世界で、勇者が魔王を倒した後はどうなるのか。。。といった題材の短編集。意外に面白かった。

Bookcover 花のズボラ飯 [a]
久住 昌之,水沢 悦子 / 秋田書店 / 2010-12-20
いま評判のマンガ。原作は「孤独のグルメ」の人たちで、これも同路線のB級グルメマンガだが、夫が単身赴任中のズボラでかわいい主婦30歳を主人公にして、ダジャレやギャグをテンポよく織り交ぜている。
掲載誌の秋田書店「エレガンス・イブ」は女性コミック誌の古株だが、今日マチ子の太平洋戦争を題材にしたストーリーマンガやナンセンス・ホームコメディ「嫁姑の拳」など、ちょっと尖った感じの作品を連載している。巻末の広告ページでは「マンガ読みの最先端!」と謳っている。講談社「アフタヌーン」やエンターブレイン「コミック・ビーム」のようなポジションなのだろうか。

Bookcover 東京ラストチカ(2) (アヴァルスコミックス) [a]
みよしふるまち / マッグガーデン / 2011-03-15
身分違いの恋を描いた悲恋ストーリー。二巻で終わらせるところがなかなか良い。

Bookcover 進撃の巨人(4) (講談社コミックス) [a]
諫山 創 / 講談社 / 2011-04-08
回想シーンが長く、人物もあまりうまく描き分けれていないので、正直言ってちょっとわかりにくい。普段マンガを読まない人には、つらいのではないか、と思うのだが。。。これがいま売れているのである(帯によれば「累計400万部」)。どういう人が読んでいるのだろうか。

Bookcover めしばな刑事タチバナ 1 [立ち食いそば大論争] (トクマコミックス) [a]
坂戸 佐兵衛 / 徳間書店 / 2011-03-30
以前、「取調室でかつ丼をおごる代わりに、うまいカツ丼について真に迫った描写を繰り広げ被疑者を悶絶させる刑事」というのを空想し、ひとりで悦に入っていたのだが、これはまさにそういうマンガ。刑務所の雑居房でのB級グルメ・トークバトルを描いた傑作「極道めし」が出たいまとなっては、二番煎じの誹りを免れえないマンガだが、これはこれでばかばかしくてよい。京王線新宿駅改札前のカレースタンドC&Cのカレーと、京王新線改札前のC&Cのカレーとは微妙にちがう、などという話を真剣に語り倒す。アサ芸で連載している由。

コミックス(2011-) - 読了:「竜の学校は山の上」「花のズボラ飯」「東京ラストチカ」「進撃の巨人」「めしばな刑事タチバナ」

2011年4月 5日 (火)

Bookcover ボン書店の幻―モダニズム出版社の光と影 (ちくま文庫) [a]
内堀 弘 / 筑摩書房 / 2008-10-08
戦前のごくわずかな期間に詩の出版を手がけた,いまでは忘れられたある青年の人生を,古書店店主の著者が執拗に追跡する。良質の推理小説のようにエキサイティングな本であった。「文庫版あとがき」でついにその青年の最期の数年にたどり着くくだり,感動的である。

Bookcover 日本神判史 (中公新書) [a]
清水 克行 / 中央公論新社 / 2010-05-25
神判というのは,熱湯に手を突っ込んで火傷しなかったら勝訴とか(湯起請),焼けた鉄を握って火傷しなかったら無罪とか(鉄火起請),そういう裁判のこと。面白い本であった。世の中にはいろんな研究者がいるものだ。

Bookcover 東京電力・帝国の暗黒 [a]
恩田 勝亘 / 七つ森書館 / 2007-10
フリージャーナリストによる,原発の問題を中心に据えた東電批判本。2007年刊,中越沖地震で起きた柏崎原発の事故の隠蔽が問題になっていた頃の本。ふうん。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「ボン書店の幻」「日本神判史」「東京電力 帝国の暗黒」

Bookcover それでも、日本人は「戦争」を選んだ [a]
加藤 陽子 / 朝日出版社 / 2009-07-29
歴史家が高校生(といってもメチャクチャ優秀な生徒たち)を相手に縦横無尽に語る,日本近代の戦争の歴史。出版時(2009)に大変な評判になった本を今頃になって読了。

日本近現代史 - 読了:「それでも,日本人は『戦争』を選んだ」

Bookcover 日本の教育格差 (岩波新書) [a]
橘木 俊詔 / 岩波書店 / 2010-07-22
教育における社会格差についての本。著者独自の意見は控えめに,これまでのさまざまな議論をコンパクトに概観した内容であった。
 こどもの教育に家庭の文化資本が与える影響は,日本ではさほど大きくないというのが通説であったが,片瀬一男という方の研究ではもう少し複雑なことが示されていて,男子高校生では読書が,女子高校生では芸術への接触が,大学進学意欲に影響を与えているのだそうだ。面白いなあ。

心理・教育 - 読了:「日本の教育格差」

Bookcover 斬り介とジョニー四百九十九人斬り (KCデラックス アフタヌーン) [a]
榎本 俊二 / 講談社 / 2010-12-22
ナンセンスギャグマンガの旗手による時代劇画,なのだが,筋と言えるほどのものはなく,単に剣の達人が何百人ものの盗賊を斬って斬って斬りまくるという内容。かつてこの著者は,人物の動きの面白さだけを追求した極めて前衛的なマンガを描いていたことがあったが(「反逆ののろし」),それをエンターテインメントとして成熟させたのがこれだと思う。血なまぐささを別にすれば,アードマン・スタジオのクレイアニメのアクションシーンに通じる面がある。好みが別れると思うが,一見の価値があると思う。

Bookcover 東京ラストチカ(1) (アヴァルスコミックス) [a]
みよしふるまち / マッグガーデン / 2010-11-15
明治末期を舞台に,貴族の当主と下層階級出身の女中の恋を描く。いまのところあんまり特徴のないマンガだが,ヒロインが可愛いから許す。

Bookcover もやしもん(10) (イブニングKC) [a]
石川 雅之 / 講談社 / 2011-03-25

Bookcover 海辺へ行く道 冬 (ビームコミックス) [a]
三好 銀 / エンターブレイン / 2011-03-25

Bookcover OL進化論(31) (ワイドKC モーニング) [a]
秋月 りす / 講談社 / 2011-03-23
31巻にして,まったく変わらないこのクオリティ... 「サザエさん」と並び,マンガの歴史に君臨する4コマ連載だと思う。

コミックス(2011-) - 読了:「斬り介とジョニー四百九十九人斬り」「東京ラストチカ」「海辺へ行く道」「もやしもん」「OL進化論」

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