2020年4月21日 (火)
2004年12月からなんとなく続いてきたこのブログでございますが(まじか...)、このたび移転いたします。
引っ越し先はこちらでございます。
2020年4月17日 (金)
Tashman, L.J. (2000) Out-of-sample tests of forecasting accuracy: an anlysis and review. International Journal of Forecasting, 16, 437-450.
仕事の都合で読んだ奴。時系列予測の交差検証をどうやるかという話。
2000年の論文というと、結構最近のだなと感じてしまうのだけれど、これは私の感覚が狂っているからで(平成生まれの子ってせいぜいまだ中学生くらいまでだろうという気がしませんか?)、考えてみればこれって20年前の論文なんですね... やれやれ...
1. イントロダクション
[略]
2. in-sample評価 vs. out-of-sample評価
in-sampleの誤差は予測誤差を過小評価しやすい。一期先予測を繰り返して補外するタイプの予測手法(指数平滑化とか)ならなおさらである。また、in-sample適合で選択した手法はpost-sampleの最良予測でない。
post-sample予測精度を確かめるひとつの方法は待つことだが、さすがに現実的でないので、ふつうはホールドアウトを使う。つまりfit期間とtest期間をわけるわけである。
3. fixed-origin手続き vs. rolling-origin手続き
fit期間の最後の期$T$をforecasting originという。そこから予測したい期までの期間をlead timeとかforecasting horizonという。test期間を$N$とする。つまり最長lead timeは$N$期先予測である。
$T$に立って$T+1$から$T+N$を予測するのをfixed-origin評価という。予測実績を得るためには長いtest期間が必要になるし、originをどこにとったかに影響されるし、lead timeを通じた誤差を平均すると短期予測誤差と長期予測誤差を混ぜちゃうことになる。
これに対して、originをどんどん更新していくやり方をrolling-origin評価という。たとえば$N=4$だったら、まず$T$に立って4つの予測値を得て、次に$T+1$に立って3つの予測値を得て... 計10個の予測値を得る。[あれ?ちょっと混乱しちゃったのでメモしておくけど、たとえば$T+1$に立つときは時点$T+1$の実現値を参照するってことだよね? つまりホールドアウトしたテスト期間についてもこっそり実現値を使うってことであってるかな?]
rolling-origin評価の場合、各lead timeごとの正確性を評価できる。さらに、あるlead timeについて予測の経験分布を得ることができる。
4. out-of-sample評価を実装する際の諸問題
- 一番大事なのは、fit期間とtest期間をどうわけるかである。まず、最長で何期先予測が必要かを考慮する必要がある。$H$期先予測まで必要なら$N$はそれ以上でないといけない。さらに、$H$期先予測が最低いくつほしいか($M$)を考える。$N$は$H+M-1$以上でないといけない。分布が欲しければ$N$をもっと長くとらないといけない。
- originをupdateするとfitするデータ点が増えるが、そのたびに予測式も変える(recalibration)ほうがよい。回帰モデルの場合でいえば、recalibrationのないupdateというのはfixed-origin評価と同じことになる。[ああそうか。recalibrationなしというのは、パラメータを固定して学習データ点だけ増やすことを意味しているわけで、単純な回帰モデルの場合はoriginを$T$から$T+1$に移動しても$T+2$の予測値は変わらないが、ARMAモデルだとちょっと変わるね]
- rolling-originデザインでは特定のoriginを選択したことによる影響を取り除ける。ここで大事なのは、はずれ値への敏感性は下がったが、ビジネスサイクルのフェイズへの敏感性は下がってないということだ。test期間はビジネスサイクルの特定の期間だけを反映しているかもしれない。それがいやなら、test期間を複数設けてそれぞれについて誤差を評価すると良い。
- originをupdateするたびに古い時点をひとつ捨てるという手もある(rolling windowsとかrolling sampleという)。ふつうはその必要はない。たいていの時系列手法は遠い過去のデータの影響をあまり受けないから。
5. sliding simulations
手法の選択と評価にrolling-originデザインを使うというアイデアもある。sliding simulationとかrolling horizonという。
時系列をまず前半(fit用)と後半(test用, $N$個)にわける。で、前半をさらに、in-sample fit期間の$T$個とpost-sample fit期間の$P$個にわける。
[この段落よくわかんないので逐語訳] sliding simulationは、検討している手法のそれぞれについての、rolling out-of-sample評価のペアを伴う。第一の評価では、スムージング・ウェイトをpost-sample fit期間へと最適化し、それぞれのlead時間について最良の手法を選ぶ。第二の評価はテスト集合に対する評価で、この手法によって得られた予測の正確性を評価するという伝統的な目的のために行う。[えええ? 予測手法AとBがあるとするじゃないですか。最初の$T$期でそれぞれのパラメータを推定しますわね。次の$P$期でそれぞれの予測性能を評価し、良かったほうを選ぶ。最後の$N$期で選んだほうの予測性能を評価する。次に、最初の$T+1$期で推定、次の$P$期で選択、最後の$N-1$期で評価。という風に繰り返すのだろうか。ってことは、leadごとに手法を変えるってこと?]
[実証研究の紹介... Makridakis(1990 Mgmt.Sci.), Fildes(1989 Mgmt.Sci.), Weiss & Anderson (1984 JRSS)というのが挙がっている。この話、この論文であれこれ考えてないで、Makridakisの本とかを調べたほうが早そうだな。よってメモは省略]
6. 複数の時系列: 予測コンペティション
[この節、M-competiton以降の一連の予測コンペティションの話を中心にして書かれているんだけど、いま関心ないのでそれらについてはメモを省略し、面白い部分だけメモする]
単一時系列でわざわざrolling originsを使うのは、それぞれのlead時間について十分な予測を得るため(adequacy)、そして特定の出来事なりビジネスフェイズなりへの誤差指標の感度を下げるため(deviersity)、である。
時系列が複数ある場合、adequacyを得るためには、なんらかの特性において等質なcomponent seriesを選ぶ必要がある。またdiversityを得るためには、性質においてもカレンダー時間においても異質な時系列をたくさん集める必要がある。こういう立場では、originは固定し、テスト期間を単一にすることが多い。
いっぽう、特性のタイプの時系列(例えば産業別の年次売上数量)をうまく補外できること(selectivity)を主目的とすることもある。この場合は、時系列はそんなにたくさん集めず、diversityのためにはrolling originsを使いテスト期間を複数にすることが多い。[...ちょっと飛ばして...]
複数の時系列を使う場合、長さやカレンダー時間は異なっていてよいが、test期間の長さはふつう揃える。予測誤差統計量は異なる時系列を通じて平均したり、異なるlead時間を通じて平均したり、両方を通じて平均したりする。
予測誤差統計量の選び方については、Armstrong & Collopy (1992 Int.J.Forecasting), Fildes(1992, Int.J.Forecasting), Ahlburg et al. (1992 Int.J.Forecasting)を参照せよ。
異なる時系列を通じて平均する場合は、スケール依存な指標(RMSEとかMADとか)は避け、スケール独立な指標(APEとか)を使うべし。ただし、元の値が0に近いことがあるときパーセント誤差はすごく歪む。そういうときはMAPEよりAPEの中央値がおすすめ。symmetric MAPEというのもあるよ。volatalityが変動するときはさらに工夫が必要で...[中略。まあ必要になったら調べよう]
異なるlead時間を通じて平均する場合、ないし時系列とlead時間の両方を通じて平均する場合、通常は単純に足し上げるが(短いleadに重みがつくことになる)、個々のlead時間ごとにMAPEをとったうえでlead時間を通じて(重みつき)平均を出してもよい。
ところで、originによって(ないしカレンダー時間によって)モデルも変えるべきだ、変えるべきだという可能性もある[...]。
手法の予測の正確性についてわかったとして、ではどうやって手法を選ぶか。自動で選ぶという提案もあって[...]。
最近では時系列の階層構造を考慮するという試みもある。Bunn & Vassilopulis(1993 Int.J.Forecasting)をみよ。今後の課題である。[短い説明なのでわからんが、階層時系列回帰をイメージすればいいのだろうか]
7. 予測ソフトウェアにおけるout-of-sample評価
[略]
8. サマリー
[略]
...細かいところに深入りしない広く浅く型のレビューなので、ちょっとストレス貯まったが、ま、勉強になりましたですー。
論文:データ解析(2018-) - 読了: Tashman (2000) 時系列予測の交差検証戦略
2020年4月13日 (月)
仕事の都合で先月とったメモ、なんだけど、読み返すと、なんだかすごく昔のできごとのような気がする。この1か月間の間に、世の中どれだけ変わったことだろうか。
Jamieson, L.F., Bass, F.M. (1989) Adjusting stated intention measures to predict trial purchase of new products: A comparison of models and methods. J. Marketing Research, 26(3), 336-345.
いわく。
市場調査では購入意向(PI)のデータをよく使う。PIで実購買を予測する研究はいっぱいあって,
- frequently purchased branded products ... Penny et al. (1972 J.MarketRes.Soc.), Gormley(1974 J.MarketRes.Soc.), Tauber (1975 JAR), Warshaw (1980 JMR)
- generic established consumer durable products ... Juster(1966 JASA), McNeil(1974 JCR), Adams(1974 JCR)
結果をまとめていうと、PIは実購買と正の相関を持つが、実購買の予測力は低い。なんとかならんもんか。
この問題、製品タイプで分けて調べたり、新製品か既存製品かで分けて調べたりする必要がありそうだ。
- Kalwani & Silk (1982 Mktg.Sci.): 耐久財と非耐久財との差を示している。
- Granbois & Summers (1975 JCR): 対象者のタイプより製品カテゴリで差があった。
- Sewall (1978 JMR), Urban & Hauser (1980 書籍): 新製品の研究。
なお、Silk & Urban (1978) みたいな上市前売上予測は予測力が高いけど、PIだけつかっているわけではないし、トライアル購買ではなくて市場シェアを予測していたりする。
かつてJohnson(1979, Working Paper)は、市場調査のサプライヤー、コンサル、広告代理店に調査をかけ、どんなPI指標を使っているか、その妥当性を調べたことはあるかと訊ねた。その結果、もっともよく使われているのは次の5件法であった: Definitely will not buy, Probably will not buy, Might/might not by, Probably will buy, Definitely will buy.
というわけで、本研究ではこの5件法PI尺度をつかった3つのモデルを比較する。
選手入場です。
選手1. ウェイティング。
5件法の上から順にウェイト$w_i$を振る。対象者数を$N$、各段階の人数を$n_i$として、
$Pr(Trial) = \sum_{i=1}^5 w_i (n_i/N)$
Johnson(1979)は実務家に、あなたがお使いのウェイト値についても訊ねていた。回答に出てきたのは次の6通り。Topboxから順に
- 1) 1, 0, 0, 0, 0
- 2) 0.28, 0, 0, 0, 0
- 3) 0.8, 0.2, 0, 0, 0
- 4) 0.96, 0.36, 0, 0, 0
- 5) 0.70, 0.54, 0.35, 0.24, 0.20
- 6) 0.75, 0.25, 0.10, 0.05, 0.02
Morrison(1979 J.Mktg)は、真の意向を$I_t$, 言明された意向を$I_x$として、(1)$I_x$はパラメータ$I_t, n$の二項分布に従う, (2)$I_t$は母集団を通じてベータ分布に従う、と仮定した。
$E(I_t|I_x) = (\alpha/\alpha + \beta + n) + (n/\alpha + \beta + n) I_x$
ただし$I_x = x / n$で、$x$は$0$から$n$までの整数。
さらにこのモデルを修正し、実購入確率を$P_x$、真の意向の変化を$\rho$, 系統的バイアスを$b$として、
$P_x = A + BI_x$
$A = [\rho \alpha(\alpha + \beta)] + [(1-\rho) \alpha / (\alpha + \beta + n)] - b$
$B = [(1-\rho) n / (\alpha + \beta + n)]$
[上の式は原文のままメモしたが、これではなにがいいたいのかさっぱりわからないではないか! 以下、自分なりに補足してみよう。
PIを$n+1$件法尺度で訊いたときのある人の回答を、5件法なら4, 3, 2, 1, 0とコーディングし、これを$x$とする。$I_x = x / n$とする(5件法なら上から1, 0.75, 0.5, 0.25, 0)。$x$が試行回数$n$の二項分布に従うと捉え、成功確率を$I_t$とする。$E(I_x|I_t) = I_t$である。
さて、$I_t \sim Beta(\alpha, \beta)$と考える。つまり事前分布の平均は$E(I_t) = \frac{\alpha}{\alpha + \beta}$である。成功確率$I_t$の試行を$n$回行い成功回数が$x$だったんだから、事後分布は$Beta(\alpha+x, \beta + (n-x))$となる。その平均は
$E(I_t|I_x) = \frac{\alpha+x}{\alpha+\beta+n} = \frac{\alpha}{\alpha+\beta+n}+I_x \frac{n}{\alpha+\beta+n}$
さらに、実購買確率は
$P_x = \rho E(I_t) + (1-\rho) E(I_t|I_x) -b $
だと考える。つまり、調査時点の態度$E(I_t|I_x)$から少しだけ$E(I_t)$のほうに戻ってしまい(その程度を表すパラメータが$\rho$)、さらにバイアス$b$だけずれる、と考えるわけだ。
...ってことですよね!? きちんと書いてくださいよ、もう...]
選手3. 線形モデル。
5件法で訊く($I_x$)と同時に101件法でも訊いちゃう($P_x$)。で、
$Pr(Trial|Intentions) = \sum_x Pr(I_x) Pr(P_x|I_x)$
$Pr(Trial) = k Pr(Trial | Intentions)$
とする。
[ちょっとよくわからんのだが、脱力しちゃって真面目に考える気にならない。これってPIの設問が増えてんじゃん... 比較にならないじゃん...]
選手2の$\rho$と$b$、選手3の$k$を決めるために、本研究では製品知覚の項目を使う。すなわち、認知(4件法)、好意(5件法)、購入容易性(4件法), 誰かに相談するか(二値)、購入可能性(お店でみたことがあるか。2件法)。
というわけで、実験でございます。
M/A/R/Cに実査を頼んで電話調査をやった。対象者は世帯の買い物をしている女性。同一対象者に3ヶ月あけて3回調査。順に800, 412, 200人。以下では3回とも答えた200人について分析する。
製品は10個、カテゴリは歯磨き、ダイエット飲料、フルーツスティック、パソコンなど10種類(うち5つは耐久財)。製品特徴は提示するけどブランド名は出さなかった。だいたいひとり5製品について聴取した(延べで921製品x人)。wave 1でむこう6ヶ月PI、wave 2でトライアル購入有無とむこう3ヶ月PI, wave3でトライアル購入有無を訊いた。
結果。
PIとトライアル購入の間には正の相関があった。非耐久財のほうがやや高かった。
選手1について。重みづけ合計と実トライアル購買率を比べると、6)がいちばんましだったけど(MAEは9.87パーセントポイント)、大差なかった。
選手2について。まず最尤法で$\alpha$と$\beta$を推定する。で、それと観察された$P_x$から$\rho$と$b$を求めることもできるんだけど、そうすると$P_x$の予測には使えないわけなので[ああそうか。著者らは$\rho$と$b$も製品ごとに推定しようと思っているのだ]、まず当該製品以外の9製品の$P_x$を使って$\rho$と$b$を推定し、それらを5つの製品知覚項目に回帰した。結局、$\hat{\rho}$の説明変数として相談有無と購入可能性、$\hat{b}$の説明変数としては好意度と購入可能性を採用した。そんなこんなで$P_x$が予測できるようになった。性能は良くなった(MAEは3.9パーセントポイント)。
選手3について。[...めんどくさいので中略...] 性能はさらに良くなった(MAEは2.3パーセントポイント]。
というわけで、実トライアル購買の予測に際しては単なるウェイティングじゃなくて、補助的な変数も使ったほうがいいのではないでしょうか。云々。
...うーん...
これ要するに、購入意向の5件法回答だけじゃなくて事後の店頭接触経験を考慮したほうがトライアル購入率を正確に予測できたよ、5件法と一緒に確率評価をさせればもっと正確になったよ、って話ですよね。えーっと、そりゃまあ、そうでしょうね...
申し訳ないけど、よく載ったねえ、というのが正直な感想である。確かに選手2のモデルは勉強になったけど、この論文のオリジナリティというわけではないだろう。おそらく、当時はこういうデータを集めるのがすごく大変だったから、これでも論文として成立したのではないかと思う。
まあ、ヒストリカルな意味ではすごく面白かったし(特に選手1のところ)、仕事の役に立つ内容だったので、文句はないんですけど...
いくつか追加でメモしておくと...
- 考えてみると、最初に新製品かどうかでちがうとかカテゴリによってちがうとかいっておきながら、結局はひとつのモデルで済ましてんのね。まあいいけどさ。
- 引用されているJohnson(1979)という研究、すごく面白いので、ちょっと調べてみたんだけど、引用文献によればアリゾナはPheonixにあるArmour-Dial Co.という会社のprivately cirlulatedなワーキングペーパーである由。この会社はおそらくDialという石鹸をつくっている会社であろう。著者Jeffrey Johnsonについてはよくわからない。ワーキングペーパーの題名"A study of the accuracy and validity of purchase intention scales"で検索すると、これを引用している論文がこの論文以外にもいくつかみつかる: Holak(1988 J.ProductInnov.Mgmt.), Whitlark, Geurts, & Swenson (1993 J.Business Forecasting Methods & Systems), Repace & Gertner (2013, J. MktgPerspectives)。これら全部が原文を確認せず孫引きしているとも思えないので(楽観的過ぎますかね?)、実在したワーキングペーパーなのだろう。手に入れられそうにないのが残念だ。
- イントロの最後のところに、「調査で質問することで、回答者たちのその後の実購買が変わるんじゃないか」という予想されるツッコミについての防衛線が1段落ある。確かに相関は高めになるかもだけど、とにかくここで実購買を予測できることが必要条件でしょ、という言い分である。こういう質問-行動効果って、実証研究はSharman(1980)に遡るんだけど、この論文では引用していない。やっぱりマーケティング領域では、Morwitz, Johnson & Shmittlein (1993)のJCR論文が出るまで、あまり知られていなかったんだろうな...
- 著者らの研究というより、先行するMorrison(1979)らのベータ二項モデルに対する疑問なんだけど、ある人の5件法の回答$x$がその人の真の態度を$p$として二項分布$B(4, p)$に従うという仮定は、さすがにちょっとどうかなと思う(自白すると、仕事でやむなくそういう強気なモデルを組んだこともあるんだけど、あれは後味が悪かった...)。$p$についてベータ分布を考えるときに話がスマートになるというのはわかるけど、回答誤差の分散が$4p(1-p)$になると決め打ちしていることになるでしょ。実質的な観点から見たリアリティに欠けるのではないか。いや、回答の認知過程についての諸仮定から演繹的に出てきたんですとか、SEMだかMMTMだかで回答誤差を評価したらどうやら分散は$4p(1-p)$に近いですとかだったら、その時は納得するけどさ...
論文:調査方法論 - 読了: Jamieson & Bass (1989) 購入意向で売上を予測する上手い方法
2020年4月 2日 (木)
前回に引き続き、今度はバッハ「ヨハネ受難曲」の全編演奏の動画を探してみた(音楽のみで画像は静止画、というのは除外)。
バッハ・コレギウム・ジャパン、鈴木雅明指揮、福音書記者James Gilchrist、2020年。先月ケルンで開かれるはずだったの演奏会が新型肺炎のために中止になってしまい、かわりに無観客でライブ配信したのだそうで、その録画。ここんところサブディスプレイでこれを流しっぱなしにして仕事している。ある意味、貴重な映像だと思うんだけど、これっていつまで観られるんだろう?
(2020/04/10追記: 昨日、バッハ・コレギウム・ジャパンがこの動画の演奏部分を切り出したものをYoutubeに投稿した模様。この動画は消えないと思うので、ついでに貼っておく)
コレギウム・ヴォカーレ、指揮フィリップ・ヘレヴェッヘ、福音書記者ジュリアン・プレガルディエン。2020年、リハーサルの録画で、モノラル録音じゃないかと思う。
英国のVOCES8というヴォーカルグループとエンシェント室内管弦楽団による演奏。指揮Barnaby Smith, 福音書記者Sam Dressel。2019年。教会での演奏なんだけど、前列に座っている子どもたちが退屈そうにしていて可笑しい。
Bach Collegium at Saint Peter's, 指揮はオルガン弾いているBalint Karosiさんという人、福音書記者Gene Stenger, 歌詞は英語訳。 2019年。コンサートではなく、ニューヨーク市Saint Peter's Churchの礼拝での演奏。最後は会衆全員の合唱。みんな体力あるなあ。コンサートならわかるけど、礼拝としては長くないっすか?
オランダバッハ協会、指揮はヨス・ファン・フェルトホーフェン、福音書記者はRaphael Hohnという人。2017年。原則35歳以下の音楽家たちによる演奏だそうな。単に聴いている側からみると年齢なんてどうでもいいような気がするんだけど、養成という意味では大事な取り組みなんでしょうね。
TENETとThe Sebastiansという音楽グループの演奏, 2017年。NYの教会での演奏で(礼拝というわけではない)、録音がいまいち。動画を全部見たわけではないんだけど、終わりごろには会衆のなかにぐったりしている人がいて、ちょっと同情した。椅子、固そうだしね。
ダニーデン・コンソート, 指揮ジョン・バット, 福音書記者ニコラス・マルロイ, 2017年。イギリスで毎年夏に、BBC Promsという大規模な音楽フェスがあるのだそうで、そこでの演奏。ここまで大規模だと、なんというかスーパーボールという感じで、ちょっと引いちゃいますね...
(2020/04/13追記) 一昨日投稿されたものを発見。説明がハンガリー語なんだけど、えーっと、Budafoki Dohnányi Zenekar, 指揮ガボール・ホッレルング(Hollerung Gábor), 2017年。ハンガリー語字幕付き。冒頭部分を観ただけなのだが、合唱者たちが不思議な芝居をするだけでなく、仏教のお坊さんやイスラム教徒も登場するという、これまた斬新なステージである。教会ではなくホールで上演しているが、コラールでは観客も合唱し始めたし、これはひょっとして音大生による上演なのかな?
Barockorchester Stuttgart(シュトゥットガルト・バロック管弦楽団、でいいのかな?)、指揮はフリーダー・ベルニウス、福音書記者はTilman Lichdiって人。2016年。
Stiftsbarock Stuttgart、指揮カイ・ヨハンセン、福音書記者はJan Kobowって人。2015年。
コンチェルト・ケルン、ペーター・ダイクストラ指揮、福音書記者はマクシミリアン・シュミット。演奏年不明。すごく安っぽいキャプションがついている野良アップロード動画で、2015年投稿だけど、映像の感じからするともっと古そうだ。→youtubeの解説欄をよくみると、この映像の権利はNAXOSが持っている模様。ひょっとしてこのDVDなのかしらん。だとしたら2015年の演奏だ。
Le Concert Etranger, 指揮Itay Jedlin, 福音書記者Vincent Lievre-Picard, 2014年。フランスはアンブロネという町で開かれた音楽祭での演奏。
イングリッシュ・バロック・ソロイスツ, 指揮はジョン・エリオット・ガーディナー。福音書記者はあのマーク・パドモア兄貴である(クラシックなんてからきしわかんないけど、この髭のおっさんはなんだかすごい)。おそらく2008年のBBC Proms。英語字幕付き。
バッハ・コレギウム・ジャパン、鈴木雅明指揮、福音書記者はゲルト・テュルクって人。2000年、サントリーホールでのライブ。英語字幕つき。
ミュンヘン・バッハ・コレギウム, エノッホ・ツー・グッテンベルク指揮。福音書記者はクレス=ホーカン・アーンショーという人。同じメンツでマタイ受難曲の動画もあったなあ。2015年投稿だがかなり古い演奏だと思う。
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス, 指揮はニコラウス・アーノンクール, 福音書記者はクルト・エクウィルツ。1985年。私この指揮者のヨハネ受難曲のCDをときどき聴いているのだが、この動画で聴くとちょっと違った印象である(語彙が貧困でうまく表現できない...)。調べてみたところ、このアーノンクールさんはヨハネ受難曲を三回も録音しているのだそうで、私のCDは1993年演奏。へー。
ミュンヘン・バッハ管弦楽団、カール・リヒター指揮、福音書記者ペーター・シュライアー。1970年。演奏と絵画が交互に映される、昔風の映像である。それはそれで味わい深い。英語字幕つき。
探せばまだまだありそうだけど、だんだん音大生とか地域の音楽サークルとかの演奏が増えてくるので、このへんで打ち止めにしよう。
2020年4月 1日 (水)
実にどうでもいい話ですが... すいませんこれは私による私のためのメモです。
年明けに、音楽学者・磯山雅の「マタイ受難曲」という本を読んだのがきっかけで、妙にバッハのマタイ受難曲にはまってしまい、仕事しながらずーっと聴いていた。ついには柄にもなく、たまたまみつけたコンサートのチケットまで取ってしまったのだが(クラシックのコンサートなんてどれだけプチブルなのかとびびりつつ)、そこでコロナ禍が来襲し、コンサートはあえなく中止、のみならず自宅から出られないという事態に陥った。
残念だなあ、とぼんやりyoutubeを眺めていたら、全編演奏の動画が結構あるので驚いた。ひとが口あけて歌っているのをみてなにが楽しいのかと思いますが、これが妙に楽しいんですね。冴えない感じのおっさんが天使のような歌声の持ち主だったりして。
というわけで、youtube上でみつかった、バッハ「マタイ受難曲」の全編演奏の動画を挙げておく(音楽のみで画像は静止画、というのは除外)。正確な演奏年はわからないのが多いんだけど、だいたい新しそうなのから順に。
いきなり再生回数の少ないやつから始まるけど、マレーシア・バッハ・フェスティバル・オーケストラ、David Chin指揮。2019年の演奏らしい。英語と中国語字幕付きというちょっと珍しいライブ動画である。1曲目の合唱の出だし、日本語で「来なさい娘たち、ともに嘆きましょう」は「来吧、女兒們、来興我們哀悼」なのだそうです。
オランダバッハ協会、指揮はヨス・ファン・フェルトホーフェン、福音書記者はベンジャミン・ヒューレットというイケメン。2019年投稿だから、2018-2019年ごろのライブであろう。映像としていちばん見ごたえがあるのはこの動画だと思う。ネットでの発信に力をいれているようで、他にもいろいろ説明が充実してそうだ。
コンセルトヘボウ室内管弦楽団, 指揮ヘイス・レーナース, 福音書記者Mikael Stenbaek, 2018年。
Bach Collegium at Saint Peter's, 指揮はオルガン弾いているBalint Karosiさんという人、福音書記者Gene Stenger, 歌詞は英語訳, 2018年。これはライブコンサートというよりも、ニューヨーク市Saint Peter's Churchの礼拝での演奏らしい。なので、3時間近くかかった演奏が終わると、会衆は拍手するどころか全員起立、お祈りと聖歌合唱である。へえええええ、こういう文脈で演奏されることもあるのか。これはちょっと貴重な映像であった。
Hofkapelle Munchenってかいてあるんだけど、ホーフカプレ?ってどういう意味なの? 指揮はChristian Fliegnerって人、福音書記者はBenjamin Glaubitzというお兄さん。世の中は広いもので、バッハの演奏を片っ端から調べてデータベースにしてくださっている奇特な方がいらして、それによれば2017年演奏だそうです。
イングリッシュ・バロック・ソロイスツ, 指揮はジョン・エリオット・ガーディナー。おそらく2016年ごろの演奏。福音書記者はマーク・パドモアという、他の動画にも出現するひげのおっさんで、音楽の素養もドイツ語の知識も全くない私だが、このおっさんの謎の説得力にはびびってしまう。この人が新聞の勧誘に来たら取っちゃうかも。
Verbier Festival Chamber Orchestra, Thomas Quasthoff指揮, 2015年。ヴェルビエってのはスイスのリゾート地らしい。指揮者が椅子に座ってるんでどうしたのかと思ったら、この方はもともとサリドマイド薬害で障害をもっていて、かつては有名な声楽家だったんだけど引退したんだそうな。福音書記者は... おっと、またマーク・パドモアだ。
説明がロシア語なのでさっぱりわかんないんだけど、機械翻訳によれば、「バッハ・アンサンブル」の演奏で、指揮はヘルムート・リリング。福音書記者のメガネのおっさんはローター・オディニウスという人かしらん? 2014年。
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団, 指揮はイヴァン・フィッシャー、福音書記者はまたもマーク・パドモアさん、2012年。DVDやBlu-rayにもなっているらしい。このメモをとるために各動画の1曲目だけをそれぞれぼーっと聞いてたんだけど、この演奏にはすっかり引き込まれてしまい、2曲目、3曲目と進んで途中で止めようにもなかなか止められない、という感じであった。
コレギウム・ヴォカーレ・ゲント, 指揮はフィリップ・ヘレヴェッヘ, 福音書記者はクリストフ・プレガルディエンというおっさん。画面左上に「3sat」と書いているのを手掛かりに探したところ、どうやら2010年の演奏らしい。英語の字幕付き。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団, 指揮サイモン・ラトル, 2010年。これはピーター・セラーズの謎の演出がついていて(いやいや、「博士の異常な愛情」のあのコメディアンじゃなくて。有名な演出家らしい)、合唱隊が歌いながらなんだかよくわからない芝居をする模様。忙しそうだなあ。16本にも分割されているので全部はみてないんだけど、2曲目にやおら立ち上がって歌い出す丸刈りの福音書記者は、なんと!マーク・パドモア兄貴じゃありませんか。
(2020/04/10追記: 調べてみたところ、DVDやBDも出てるし、ベルリンフィルのWebサイト(なんと日本語版がある)で金を払えばネットで見ることができる(なんと日本語字幕付き)。なんという商売上手。さらに、ただいま新型肺炎のため期間限定で観放題。なんという太っ腹。というわけで、さっそくサブディスプレイで流し始めたんだけど、あまりに斬新なステージでびびってしまい、仕事どころではなくなってしまった。困った。イエスに香油を注ぎに来た女が福音書記者とハグしてたよ...どうしたらいいんだ...)
アムステルダム・バロック管弦楽団, トン・コープマン指揮。2005年、2日に分けてやった模様。英語字幕付き。
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、指揮はゲオルク・クリストフ・ビラー、福音書記者はマルティン・ペッツォルトという人、1998年。音質がちょっと悪いかな?
サイトウ・キネン・オーケストラ、小澤征爾指揮, 福音書記者ジョン・マーク・エインズリー、1997年。ありがたいことに日本語字幕付きである。
ブランデンブルク・コンソート, スティーヴン・クレオバリー指揮, 福音書記者はRogers Covey-Crumpという人。1994年。
ミュンヘン・バッハ・コレギウム, エノッホ・ツー・グッテンベルク指揮。福音書記者はクレス=ホーカン・アーンショーという人。2015年投稿だがかなり古い演奏だと思う。→1990年の演奏とのこと。
よくわかんないけど、指揮はニコラウス・アーノンクールらしい。1985年。残念ながら音質も画質もよくない。
ミュンヘン・バッハ管弦楽団、カール・リヒター指揮、1971年。すごい、こんな映像があるんですね。英語字幕つき。調べてみたら、どうやらDVDになっている模様。
というわけで、この危機的事態がいつまで続くのかわからないが、バッハの長い曲など聞きつつ、なすべきことをなし、事態が収束するか自分も感染して死ぬのを待つことにしよう。