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2007年5月27日 (日)

Bookcover あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実 [a]
ピエトラ リボリ / 東洋経済新報社 / 2006-12
アメリカの経済学者が書いた,グローバリゼーションについての啓蒙書。一枚のTシャツを手がかりに,テキサスの農家,中国の工場,そしてアフリカの古着業者に至るまでを辿り,市場がいかに非-市場的か,経済がいかに政治と切り離せないかを描いていく。大変面白い内容で,思わず膝を打つ箇所が多かった。
 なんであれ社会現象の実態を詳細にみていくと,なにが善でなにが悪なのか,次第にはっきりしなくなるものらしい。著者はタンザニアの古着市場について,ここには真の自由市場がある,実に爽快だ,という(めずらしく価値判断を含んだ)書き方をしているけれども,かの国の人々にだって「アメリカ人の古着を着るなんて民族の恥だ」という感覚があるわけで,いまはそれが経済を動かすファクターとなりえないとしても,先々のことはわからないと思う。うーん。
Bookcover 同盟変貌―日米一体化の光と影 [a]
春原 剛 / 日本経済新聞出版社 / 2007-05

ノンフィクション(-2010) - 読了:05/27まで (NF)

Bookcover偽ブランド狂騒曲―なぜ消費者は嘘を買うのか[a]
サラ・マッカートニー / ダイヤモンド社 / 2006-10
ただのエッセイであった。帯に「行動派マーケターが世界各地で体当たり調査!」なんて書いてある段階で,裏付けのない四方山話だと気づくべきだったな。失敗,

マーケティング - 読了:05/27まで (M)

Bookcover 猫谷 [a]
花輪 和一 / 青林工藝舎 / 2007-05

Bookcover とりぱん(3) (ワイドKC モーニング) [a]
とりの なん子 / 講談社 / 2007-05-23

Bookcover 暁星記(7) (モーニング KC) [a]
菅原 雅雪 / 講談社 / 2007-05-23
これは面白い。。。

コミックス(-2010) - 読了:05/27まで (C)

2007年5月21日 (月)

Bookcover もぐら随筆 (講談社文芸文庫) [a]
川崎 長太郎 / 講談社 / 2006-06-10
小田原の駅前にある本屋で,しばらくためらった末に意を決してレジに向かい,お釣りをもらいながら,つかぬことを伺いますが。。。と切り出した。小田原出身の作家に川崎長太郎という人がいるのですが,その人の小説のなかに本屋さんが出てくるのです。なにかご存じありませんか。
 店主らしい初老の男性が,ああ,それはうちのことでしょう,と事も無げに答えてくれたので,かえって驚いた。当時は店は別のところにあったんだけど,長太郎さんは競馬の帰りによく寄ってくれた。人から借りた金で馬券を買うとよく当たる,と笑っていた。先日十三回忌があって,関係者でだるまや(川崎長太郎が通っていた店)に集まって,みんなでチラシ丼を食べましたよ。若いのに長太郎さんを読んでくれるなんて,うれしいですね。 
 あまり長く話を聞くわけにもいかなかったし,俺の知識といえば短編集を数冊読んだだけで,深く掘り下げて尋ねるほどにこの作家について詳しいわけでもなかった。レジに他の客が来たのを潮に,会釈して店を出た。
 その本屋にはそれまでも何度か立ち寄ったことがあった。登山鉄道で少し登ったところに学校があって,そこで仕事だか勉強だかをさせてもらっていたことがあって,帰りに電車を乗り換えるついでに,市内を散策するのが習慣になっていたのである。夕方の雑然とした商店街を抜けて,人気のあまりない旧道まで,仕事帰りの重い鞄を肩から提げてふらふら歩いたこともあった。旧道の向こうには不気味に閑散とした町並みがあって,黒々とした巨大な防波堤をくぐり抜けると海岸があった。
 うろうろと散歩していても,海を眺めていても,頭の中はいつも不安と焦燥感でいっぱいだった。ここでなにをしているのだろうか,これからどうなるのだろうか,そうやって答えのない問いを繰り返して,後にはただ疲労しか残らない。小田原の町並みを思い出すと,川崎長太郎の描く海岸の掘っ立て小屋の描写と重なって,なにもかもどうでもいいというような,投げやりな感情が蘇ってくる。もっとも,砂を噛むような日々の感情をやり過ごすのが少しうまくなっただけで,本質的には,今もあのころと同じところをぐるぐると回っているのかもしれない。
 本屋で川崎長太郎のことを尋ねた,その翌年だったか,一年ぶりにその本屋に立ち寄ってなにか本を買ったら,カウンターの店主がちらりとこちらを見て,毎度どうも,と会釈してくれた。それがもう四,五年前のことだ。小田原にはそれきり行っていない。

フィクション - 読了:05/21まで (F)

2007年5月20日 (日)

Bookcover 大いなる眠り (創元推理文庫 131-1) [a]
レイモンド・チャンドラー / 東京創元社 / 1959-08
15年前だか20年前だか,とにかく大昔,昼下がりにふとテレビをつけたら古い映画をやっていて,茶色っぽい画面のなかでは口ひげを生やした男がハンドルを握っており,納谷悟朗の声のナレーションが,どうせみんないつかは死んじゃうんだ,という意味のことを重々しく述べていた。ふいに画面はCMに切り替わり,そのまま映画は終わってしまったので,筋はまったくわからなかったのだが,そのナレーションの最後の台詞,大いなる眠りを待つのだ,という言い回しが妙に心に残って,その後なにかの拍子にふと口ずさむことがあった。
 ずっと後になって,あの映画はたぶんチャンドラーの「大いなる眠り」を映画化したものなのだろう,と気が付いた。調べてみると,たしかにこの小説は,ボカートの「三つ数えろ」の原作になっただけではなく,70年代になってからロバート・ミッチャム主演で映画化されている。
 なにか面倒な事や腹の立つ事,やるせないことが起きると,心の中で銭形警部の声を真似て,誰も彼も結局のところは「大いなる眠りを待つのだ」,と呟いてみることがあったように思う。とはいえ,俺はマーロウではないし,世の中はチャンドラーの小説よりもずっとずっと味気なくてつまらなくて,散文的なものであるように思われる。

フィクション - 読了:05/20まで (F)

Bookcover 日清・日露戦争―シリーズ日本近現代史〈3〉 (岩波新書) [a]
原田 敬一 / 岩波書店 / 2007-02-20

日本近現代史 - 読了:05/20まで (CH)

Bookcover さよなら絶望先生(8) (講談社コミックス) [a]
久米田 康治 / 講談社 / 2007-04-17

Bookcover 海街diary 1 蝉時雨のやむ頃 [a]
吉田 秋生 / 小学館 / 2007-04-26
良い作品だということはよくわかるんだけど,どうしても好きになれないタイプのマンガ。
 鎌倉とか茅ヶ崎とか,風情のある町が物語の舞台になっているだけで,ちょっとうんざりしてしまうのである。荒川区でも葛飾区でも多摩市でも八王子市でも,饐えた匂いのする暗渠の脇や冷え冷えとした団地でも,子どもは大きくならなければならないし人は生きていかなければならないのに。まあ,八つ当たりだけどさ。

コミックス(-2010) - 読了:05/20まで (C)

2007年5月13日 (日)

Bookcover 偽装請負―格差社会の労働現場 (朝日新書 43) [a]
朝日新聞特別報道チーム / 朝日新聞社 / 2007-05-11
朝日新聞の偽装請負キャンペーンは,大手紙によるここんところの最大のヒットであろう。新聞代払ってんのも悪くないな,と思わせてくれた。
 大きな会社には大抵,社訓だか社是だかがあるものだが,あれを作る意味合いってのは,いったいなんなんだろか。組織に基本理念が必要であることはとてもよくわかるのだが,なんらかの言葉を社員に徹底すればそれが基本理念になるのかというと,どうも怪しい。この本によれば,「産業報国,公明正大。。。」で有名なかの松下だって,社員を請負会社に短期間だけ大量出向させるという方法で,正社員から請負労働者への直接の指示を禁じる法の網の目を潜り,さらには不正すれすれのやり方で自治体から補助金をせしめているのである。
Bookcover 花と爆弾―人生は五十一から〈6〉 (文春文庫) [a]
小林 信彦 / 文藝春秋 / 2007-05

ノンフィクション(-2010) - 読了:05/13まで (NF)

Bookcover 権力の病室―大平総理最期の14日間 [a]
国正 武重 / 文藝春秋 / 2007-04

日本近現代史 - 読了:05/13まで (CH)

入江喜和「杯気分! 肴姫」(4)(5)(6)(7)。主人公は下町の小料理屋の若きおかみさんで,流れ者の医者と恋に落ちるが,悩んだ末,過疎地に赴任していく男についていくのではなく,店を守ることを選ぶ(その決断は,彼女が小料理屋の店構えを見上げるカットで簡潔に示される。とても美しい場面だ)。で,別れの日,旅立つ男と一緒に軽口叩きながら歩き,東向島の駅の近くでおむすびを渡して,じゃあね,と精一杯の笑顔で手を振ってみせる,そのアップですとんと完結する。このマンガ,モーニング連載時にはそんなに気にしていなかったのだが,このラストシーンを目にして,これは粋な締めくくり方だなあと感心し,作者の名前を覚えたのである。
 ところが,このたびようやく入手した単行本によれば,笑顔のアップはラストシーンどころか,その回の最終頁でさえない。連載は93年頃,もう15年近く前だから,曖昧なのも当然だが,それにしても,記憶というのはずいぶんあてにならないものだ。

コミックス(-2010) - 読了:05/13まで (C)

2007年5月 8日 (火)

Bookcover おまけより割引してほしい―値ごろ感の経済心理学 (ちくま新書) [a]
徳田 賢二 / 筑摩書房 / 2006-11
よく考えると,この本で紹介されているのはどれも単に現象の記述であって,説明とはいえないのではないかと思う。つまんなかった。

とはいえこの本を書いている人は,ちゃんとした仕事をしてきた(たぶん),ちゃんとした大学の先生で(たぶん),ちゃんとした本をいっぱい書いている(たぶん) 人なのである。いくら偉そうなことを抜かしても,俺は結局のところ他人様のお書きになった本を読み飛ばしているだけであって,死ぬまでに自分の本を書けるわけでもなし,死ぬまでに胸を張れるような仕事ができるわけでもない。
 本当に本当に虚しい。誰か虚しさについて知りたい人がいたら俺に意見を聞くといいと思うぞ。こうやって本など読むより,パチンコだか競馬だかで余暇を過ごした方がなんぼか気が利いている。いったい俺はなにをしているのかしらん? 何年も前から,なにもかも悪い冗談のような気がして仕方がない。

マーケティング - 読了:05/08まで (M)

Bookcover わにとかげぎす(3) (ヤンマガKCスペシャル) [a]
古谷 実 / 講談社 / 2007-05-02

コミックス(-2010) - 読了:05/08まで (C)

2007年5月 6日 (日)

Bookcover パレスチナ [a]
ジョー サッコ / いそっぷ社 / 2007-04

コミックス(-2010) - 読了:05/06まで (C)

2007年5月 4日 (金)

Bookcover ロリータ (新潮文庫) [a]
ウラジーミル ナボコフ / 新潮社 / 2006-10-30
「テヘランで『ロリータ』を読む」という大変面白そうな本があって,もうとっくに買い込んであるのに,本家のナボコフ「ロリータ」を読んでないんじゃしょうがないよなあとペンディングにしていて,本棚の背表紙をみるたび,なんだか急かされているような気分だった。20世紀世界文学の記念碑的傑作,云々という中途半端な知識に邪魔されて,なんとなく億劫になっていたのである。
 で,このたび本棚を整理したところ,なんと「ロリータ」の文庫版を二冊も持っていることがわかり(大久保康男訳と若島正の新訳),悪態をつきながら,さすがに仕方なく手に取った。
 若島訳のほうを尻ポケットに突っ込んで駅前に出かけ,両手に買い物袋を下げて区民会館のベンチに腰を下ろし,何の気なしに読み始めて,たったの数十頁で(語り手が自分の嗜好についてあれこれ能書きを垂れるあたりで),ああしまった,ハイリコンデシマッタ,と思った。主人公の妄想の可笑しさ,馬鹿馬鹿しさといったら,もう例えようがない。娘の一挙手一投足に身も心もかき乱されるあたりなんて,志村けんの最良のコントだってかなわない。身をよじって笑いの発作に堪えるうち,突如として主人公の願望が成就してしまい,一転して索漠とした荒野が延々と広がる。このドライブ感! 世の中にこんな面白い小説があったとは!
 本当に良い本を読んでいるときにだけ感じるあの奇妙な感覚,頁を閉じて飯を食っていても風呂に入っていても,頭のどこかがその本の世界に取り残されているような感覚から,いまだ抜け出ることができない。一読しただけなのに,何年間もの奇妙な経験をくぐり抜けたような心境である。恐るべき爆笑小説にして,涙も凍る絶望小説であった。

フィクション - 読了:05/04まで (F)

Bookcover 義務教育を問いなおす (ちくま新書 (543)) [a]
藤田 英典 / 筑摩書房 / 2005-07-06
新書とは思えない分厚い内容で,読み終えるのに時間がかかり,ちょっと適当に読み飛ばしてしまった。残念だが,仕方ない。
 日本の義務教育は総体としてはうまくいっているのに,政治と社会がおかしな改革を叫ぶせいで危機に陥っている,という主旨。ゆとり教育の初期理念には賛同するが,運用に対して批判的。学校選択制にはとても批判的。学力調査の結果についてデータに基づいた議論をしているところが面白かった(きちんと読めてないけど)。

 心理学からは足を洗ったし,教育系企業も辞めちゃったわけで,こういう本を読んでもいまいち真剣になれないのは道理なのである。しかし,それじゃマーケティングナントカだの消費ナントカだのという本を読む気になるかというと,それはそれでいまいち関心が持てない。あまり大きな声ではいえないが,「A社の製品が売れなくたって,かわりにB社の製品が売れるんだから,大勢に影響ないじゃん」,なんて,ついつい白けた気分になってしまう。困ったものだ。
 高給&激務で知られた外資系有名コンサルで10年ほどバリバリ働き出世した末,すっぱり辞めて農家をはじめた人の話を,前にどこかで読んだか聞いたかしたことがある。格好いいねえ,というのが大方の反応だと思うけれども,個人的には,それはちょっと可哀想な話なんじゃないかなあと思った。せっかく築いた経験と蓄積を捨ててしまうだなんて,捨ててしまいたくなるような十年だなんて,いくら給料が良くたって,切ないよなあ,と思ったのだ。いま思うに,やっぱり俺が子供っぽいんだと思う。高給であろうがなかろうが,仕事というものは,本来つまらないもの,もともと切ないものなのであろう。

心理・教育 - 読了:05/04まで (P)

2007年5月 3日 (木)

Bookcover 小泉政権―「パトスの首相」は何を変えたのか (中公新書) [a]
内山 融 / 中央公論新社 / 2007-04

Bookcover 少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ (岩波新書) [a]
山田 昌弘 / 岩波書店 / 2007-04-20

俺はなにか?岩波新書マニアかなにかか?
こうやって新書ばかり読んで,いったいなにをどうしたいのだろうか?

ノンフィクション(-2010) - 読了:05/03まで (NF)

Bookcover 大正デモクラシー―シリーズ日本近現代史〈4〉 (岩波新書) [a]
成田 龍一 / 岩波書店 / 2007-04-20

日本近現代史 - 読了:05/03まで (CH)

Bookcover ナルミさん愛してる―その他の短篇 (BEAM COMIX) [a]
山川 直人 / エンターブレイン(角川GP) / 2007-04-25
2002年に少年画報社から出た本の復刊だそうだ。こんなに良い作品なのに,あっというまに絶版になったというんだから,本というのはわからないものだ。
Bookcover おかめ日和 (KCデラックス BE LOVE) [a]
入江 喜和 / 講談社 / 2007-04-13
女性コミック誌に連載していたらしい。全然気が付かなかった。
Bookcover デトロイト・メタル・シティ 3 (ジェッツコミックス) [a]
若杉 公徳 / 白泉社 / 2007-04-27

Bookcover 不成仏霊童女 続 (ぶんか社コミックス) [a]
花輪 和一 / ぶんか社 / 2007-02-28

Bookcover できるかなクアトロ (SPA COMICS) [a]
西原 理恵子 / 扶桑社 / 2007-04-25

Bookcover 新吼えろペン 7 (サンデーGXコミックス) [a]
島本 和彦 / 小学館 / 2007-04-19

Bookcover セクシーボイスアンドロボ #2 (BIC COMICS IKKI) [a]
黒田 硫黄 / 小学館 / 2003-02

コミックス(-2010) - 読了:05/03まで (C)

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