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2009年7月29日 (水)

Bookcover 四十七人目の男〈上〉 (扶桑社ミステリー ハ 19-14) [a]
スティーヴン・ハンター / 扶桑社 / 2008-06-28
Bookcover 四十七人目の男〈下〉 (扶桑社ミステリー ハ 19-15) [a]
スティーヴン・ハンター / 扶桑社 / 2008-06-28
B級冒険小説の巨匠スティーヴン・ハンターがお届けする,問答無用のバカ小説。
 かつてのベトナムの勇士である主人公は,硫黄島で亡き父と死闘を繰り広げた誇り高き日本兵の遺品を,彼の息子フィリップ・ヤノのもとへと届け,彼と厚い友情で結ばれるのだが,彼は極悪ヤクザ組織・新撰組のコンドー・イサミによって斬殺され,その家族も皆殺しにされてしまう。悪の組織を倒し,唯一生き残った幼い娘を救うため,主人公は日本に密入国し,老師による厳しい短期修行を通じてサムライの魂を会得すると,東京国立博物館のオトワ博士に託された妖刀ムラマサをひっさげ,米大使館員の美女ならびに自衛隊員の有志らとともに,悪人どもの屋敷を襲撃するのであった。メンバーは47人。もちろん,雪の日に,日本刀で乗り込むのである。
 ハンターはワシントン・ポストの映画批評記者でもあるのだそうで,著者あとがきによれば,「アメリカ映画が新たな"低み"に達したために,職業的映画批評家としてのわが人生にふさぎの虫が巣食っ」ていたある日,山田洋次の「たそがれ清兵衛」と出会い,以来二年間にわたってサムライ映画にのめりこみ,そのあげくの果てに書いた小説がコレなのだそうだ。ええええ? 山田洋次監督も驚愕する展開だ。
 三脚に組んだゴルフクラブの上に,新聞記者の生首が載っているのが発見され,ゴルフクラブは8番アイアンと9番アイアンと3番ウッドであった,つまりこれはヤクザのしわさだ,とか。。。「なんだって,彼はいまわのきわにドラゴンといったのか? ドラゴンといえばコモドオオトカゲを思い出すな。コモドは日本語のカマドと似ているぞ。よし!アパートのカマドを調べるんだ!」とか。。。しかもそのアパートにはカマドがある,とか。。。突っ込みどころが次から次へと暴力的に襲いかかってきて,息つく暇もないのだが,なかでも素晴らしいのは,悪の総帥・ショーグン登場のくだり。ポルノ産業の支配者である彼は,新作AV「ブラックさくらの女教師」の役作りに悩む売れっ子女優を懇々と諭す。
 「こんな風に考えてみなさい[...] 世界は,とりわけアメリカは,われわれを牛耳ることに血道をあげている。彼らはわれわれのやっていることを変えさせ,われわれをつぶしてしまおうとしている。前の戦争のように,原爆とか焼夷弾の雨とかではなく,彼らの文化,その荒っぽくて,攻撃的で,無分別な流儀でもってだ。きみは,さくらちゃん,きみはそれと戦わなくてはならない。きみはただの女優ではなく,アメリカとの戦いにおける前線の兵士,ひとりの侍なのだ。いいかね,さくらちゃん,きみが自身のなかに侍の魂を見いだすことはとても大事な職分であって,それを果たすために,カメラの前であそこをあらわにし,われわれにその映像を配給させなくてはいけない。完璧な痴女になれ。実際,痴女というのは肉欲を武器とする侍なんだ」
 ええええ?

フィクション - 読了:07/29まで (F)

Bookcover アーミッシュの赦し―なぜ彼らはすぐに犯人とその家族を赦したのか (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ) [a]
ドナルド・B・クレイビル,スティーブン・M・ノルト,デヴィット・L・ウィーバー-サーカー / 亜紀書房 / 2008-04-25
2006年,ペンシルバニアのアーミッシュの学校に男が乱入し,女生徒5人を射殺して自殺した事件があった。事件の衝撃性や,「先に私を撃って」と訴えた少女の自己犠牲的精神もさることながら,アーミッシュの人々が犯人を即座に赦し,犯人の家族に思いやりを示したことが話題を呼んだ。この本はその事件についてまとめた本だが,著者らは宗教研究の専門家なので,事件のドキュメントというよりも,この事件を題材にアーミッシュ・コミュニティとアメリカ社会の姿を探る,という内容であった。
 事件当時,アメリカのマスメディアではアーミッシュから赦しの精神を学ぼうという賛辞が溢れたのだそうだが,著者らによれば,アーミッシュの赦しは彼らのコミュニティの文化的習慣と切り離せないのであって,その点だけ取り出して学べるものではない,とのこと。なるほど。
 ついつい俺の暮らす日本に引き当てて考えてしまうのだが,仮にアーミッシュのようなカウンター・カルチャーが日本のどこかにあるとして(子どもを高校に行かせないわ,自動車も電子機器も禁止だわ,というようなコミュニティがあるとして),我々はうまいことそれと共存していけるだろうか。それとも案外,そういうコミュニティは小規模ながらひっそり点在していて,俺がそれを意識していないだけ,と考えるべきか。

ノンフィクション(-2010) - 読了:07/29まで (NF)

Bookcover おかめ日和(6) (KCデラックス BE LOVE) [a]
入江 喜和 / 講談社 / 2009-07-13

Bookcover GUNSLINGER GIRL 11 (電撃コミックス) [a]
相田 裕 / アスキー・メディアワークス / 2009-07-27

Bookcover もやしもん(8) (イブニングKC) [a]
石川 雅之 / 講談社 / 2009-07-23

Bookcover もっけ 9 (アフタヌーンKC) [a]
熊倉 隆敏 / 講談社 / 2009-07-23

Bookcover あさって朝子さん [a]
伊藤 理佐 / マガジンハウス / 2009-07-23

コミックス(-2010) - 読了:07/29まで (C)

2009年7月20日 (月)

Bookcover 1Q84 BOOK 1 [a]
村上 春樹 / 新潮社 / 2009-05-29
Bookcover 1Q84 BOOK 2 [a]
村上 春樹 / 新潮社 / 2009-05-29
いつも村上春樹の本は発売日に買い,即座に読んでいるのだが,この小説に関しては,これだけ社会現象化してしまったので,ちょっと手に取りにくかった(ぼんやりしてたら品切れになってしまったし)。連休を利用し,ようやく読むことができた。
 著者の昔の長編「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」が,もっと読みやすくなり,しかしもっと暗示的で陰鬱になったような物語だ,という印象を受けたのだが。。。的はずれな読み方かもしれない。人によってずいぶん感想がちがうだろう。俺はとても気に入ったが,どこか良いのか自分でもよくわからない。

フィクション - 読了:07/20まで (F)

Bookcover 臨済録 (岩波文庫) [a]
入矢 義高 / 岩波書店 / 1989-01-17
本屋でめくっていて,なぜか突然読んでみたくなった本。
 臨済という人は唐末期の禅僧,この本は弟子がまとめた語録。唐末期というのは日本でいえば,えーと,平安時代なんだそうで,いっぽう日本の禅宗の一派・臨済宗は鎌倉時代からだから,ずいぶん間があるわけだな。
 臨済和尚はちょっとしたことですぐに一喝し,棒で打ち,たまに棒で打たれると即座に反撃に転じ,教えを乞うために訪ねたえらいお坊さんに罵倒されると,その坊さんの脇腹に連続パンチを食らわせる。あっけに取られてしまった。いったいどんな暴力坊主だ。それとも,棒で打つというのは象徴的な行為に過ぎず,たいして痛くないのか。さっぱりわからん。
 というわけで,俺はきっと内容を全く理解できていないのだけれど,それでも大変面白かった。以下,印象に残った箇所を抜き書き:
 「君たちが,もし聖なるものを愛したとしても,聖とは聖という名に過ぎない。修行者の中には五台山に文殊を志向する連中がいるが[五台山とは文殊菩薩の霊場として知られた山だそうだ],すでに誤っている。五台山に文殊はいない。君たち,文殊に会いたいと思うか。今わしの面前で躍動しており,終始一貫して,一切処にためらうことのない君たち自身,それこそが生きた文殊なのだ。君たちの一念の,差別の世界を超えた光こそが,一切処にあって普賢である。君たちの一念が,もともと自らを解放し得ていて,いたるところで解脱を全うしていること,それが観音の三昧境だ」
 「君たちが祖仏と同じでありたいと思うならば,こう見究めさえすればよい。思いまどう必要はない。君たちの心と心が異ならぬこと,それを活きた祖師というのだ。もし異なった心を生じると,心の本体とその現れとが別々になる」
 (心と心が異ならぬところとはどういうところか,と問われ)「君がそれを問おうとしたとたんに,もう異なってしまい,根本とその現れとが分裂してしまった。[...]世間のものも超世間のものも,すべて実体はなく,また生起するはずのものでもない。ただ仮の名があるだけだ。しかもその仮の名も空である。[...]一切の仏典はすべて不浄を拭う反古紙だ。仏とは我々と同じ空蝉であり,祖師とは年老いた僧侶にすぎない。[...]君たちがもし仏を求めたら,仏という魔のとりこになり,もし祖を求めたら,祖という魔に縛られる。君たちがなにか求めるものがあれば苦しみになるばかりだ」
 「諸君,まともな見地を得ようと思うならば,人に惑わされてはならぬ。内においても外においても,逢ったものはすぐ殺せ。仏に逢えば仏を殺し,祖師に逢えば祖師を殺し,羅漢に逢ったら羅漢を殺し,父母に逢ったら父母を殺し,親類に逢ったら親類を殺し,そうして始めて解脱することができ,なにものにも束縛されず,自在に突き抜けた生き方ができるのだ」

Bookcover 人物ノンフィクション〈2〉表現者の航跡―後藤正治ノンフィクション集 (岩波現代文庫) [a]
後藤 正治 / 岩波書店 / 2009-06-16
「アエラ」などに載った人物記をまとめたもの。
 これまでに読んだこの著者の本のなかで一番つまんなかったが,それでも北方謙三の章はちょっと面白かった。ハードボイルド小説を量産し,カメラに向かってポーズを取る,いささか好ましからぬ流行作家,という印象しかなかったが,小説のイメージを損なわないために自己演出している側面があるとのこと。
 「北方に長いインタビューをしたとき,途中で私は気がついた。自身の著作について,とくに歴史小説についてそうであったが,筋書きを説明しつつ語る。インタビュアーがその作品を読んでいないという前提で話すのだ。この人は苦労人だと思った」 なるほど。。。

Bookcover サルコジ―マーケティングで政治を変えた大統領 (新潮選書) [a]
国末 憲人 / 新潮社 / 2009-05
フランスのサルコジ大統領について批判的に紹介した本。著者は全国紙の記者。面白かったし,勉強になりましたが。。。
 著者によれば,サルコジさんはブランディングに変わる新しいマーケティング手法「ストーリーテリング」を活用している政治家だ。いっぽう「ストーリーテリングは,政治学や経営学の教科書がまともに扱うような確固たる理論とは言い難い」「そのような発想が,一国の指導者の統治法として堂々とまかり通っている」「サルコジは,そのような現代社会の怪しさと不透明感を象徴する存在でもあるのだ」
 この著者は,一国の指導者の統治たるもの,教科書に載っているような確固たる理論に基づくべきだ,と主張したいのだろうか? それもそれで変な話だ。理論は実践を導くこともあれば,実践から導かれることもあるだろう。むしろこう言い換えるのはどうだろう:ストーリーテリングは確固たる理論とは言い難い。そのような発想が,この本のなかでは,現代政治の分析枠組みとして堂々とまかり通っている。この本はそのような現代社会の怪しさと不透明感を象徴する存在だ。

Bookcover すぐわかる日本の仏教美術―彫刻・絵画・工芸・建築 [a]
守屋 正彦 / 東京美術 / 2003-11
全頁カラーの入門書。法隆寺に行ってみたくなった。
 この本は,先日見に行った東京国際ブックフェアで衝動買いしたもの。ああいうところにいくと,お祭り気分に浮かれてしまい,普段ならぜったい買わないこういう本を,なぜか買っちゃうんだよなあ。

Bookcover ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書) [a]
中川淳一郎 / 光文社 / 2009-04-17
著者はテレビ誌を経てニュースサイト編集者という人。内容はタイトル通りで,特に付け加えることがない。
 前提として,「ネットの集合知が社会を変える」といったポジティブな未来像を語る人々がいて,この本はそのアンチテーゼというか,解毒剤として自らを位置づけているものだから,本家を知らない人にとっては,この本の意味はないだろう。俺はまさに本家のほうを知らないので(梅田望夫のベストセラーも読んでないし),この本に対しては共感も反発も感じないのだけれど,意図的にレベルの違う話を混在させているような,筋の悪いアジテーションであるような気がして仕方がない。「ブログ論壇の誕生」云々という話をしているときの「インターネット」と,「ネットで流行るのは結局『テレビネタ』」と突き放すときの「インターネット」では,指しているものがちがうのではないかしらん?

Bookcover 2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書) [a]
佐々木 俊尚 / 文藝春秋 / 2009-07

Bookcover テレワーク―「未来型労働」の現実 (岩波新書) [a]
佐藤 彰男 / 岩波書店 / 2008-05-20

ノンフィクション(-2010) - 読了:07/20まで (NF)

Bookcover おうちがいちばん 4巻(バンブーコミックス) (バンブー・コミックス) [a]
秋月りす / 竹書房 / 2009-07-16

コミックス(-2010) - 読了:07/20まで (C)

 このブログをはじめたきっかけは,ブログの記事作成時には本のISBNだけ書けば,ブログ上ではどっかのデータベースから引っ張ってきた書誌情報が表示される,という芸当が出来るのだと知ったからである。こりゃ面白い,試してみなきゃ損だな,と思った。ちょうど前の会社に勤めたばかりで,精神的にも物理的にもヒマだった,という背景がある。
 あれこれ探した末,mt-bk1.plというmovable type プラグインを使うことに決めた。オンライン書店bk1の書誌データを引っ張ってくるプラグイン。中のperlコードがシンプルなのが魅力的だったし,作者は当時bk1のCOOの方だったから,サービスの安定性には不安がない,と思ったのだ。
 甘かったですね。その後この方はbk1を辞めてしまい,bk1の書誌データ検索APIはあっというまに停止してしまった。面白いサービスを無料提供してくれたbk1の方には感謝するけれど,こんなことなら最初からamazon用のプラグインを使っておけばよかったよなあ,と愚痴りたくもなる。互換性を保つため,amazonの英語のマニュアルと首っ引きで,プラグインの中身を書き換えはじめたら,休日を二日潰す羽目になり,出来上がりはオリジナルと似ても似つかないものになった。その後も,movable typeの大きなバージョンアップやamazon APIの仕様変更があるたび,休日のひとときをコードの修正に当てることになった。
 で,このたびのamazonの大仕様変更である。2009年8月15日から,amazon APIへのすべてのリクエストに署名認証が必要になる。。。署名認証? いったいそれはなんだ。難しい話をいきなりふっかけるのはやめてほしい。そんなの自分で勉強しろ,といわれたら返す言葉もないが,その勉強こそがもっとも面倒なのである。
 昨日ようやく重い腰を上げて,web上の情報を参考に自家製プラグインを書き換えてみたが(さいわいみなさんお困りのようで,参考情報には事欠かない),これが現プロバイダのサーバではうまく動かない。みなさん,さくらインターネットのレンタルサーバには,perlのDigest-SHAモジュールがインストールされていないのです。激安プランに入っているおかげでSSHログインができないから,自分のディレクトリにモジュールをインストールすることもできない。プロバイダさんにインストールを依頼してみたが,はたして期限までに対応してもらえるだろうか?
教訓:(1)コンピュータが普及したら,たくさんの人が自分でコードを書くようになり,プログラミングは一般市民の常識となり。。。ほんの20年ほど前には,こういう夢が大まじめで語られていた。実際には,世の中はどんどん複雑化していくし,わかりやすい説明にはコストがかかる(Digest-SHAとDigest-SHA1がどうちがうのか,俺に親切に説明してくれる人はいそうにない)。このご時世,素人が自分でコードを書くなんて,大変に効率の悪いことなのだ。プロ/セミプロの善意にすがっているほうがはるかに賢い。(2)ここに至って,レンタルサーバにmovable typeに自家製プラグインだなんて,いったいどんなコンピュータ好きだろうか? どっかのブログサービスを借りた方がはるかに簡単だ。なのにサンク・コストに縛られて,なかなか身動きがとれない。やれやれ,人はかくのごとくして年を取っていくのだ。

雑記 - amazon APIの仕様変更

2009年7月13日 (月)

Bookcover アフリカ 苦悩する大陸 [a]
ロバート ゲスト / 東洋経済新報社 / 2008-05
アフリカの政治の惨状についてのノンフィクション。必要なのはとにかく自由貿易なのだ,という,いかにもエコノミストの記者らしい主張であった。ううむ。

Bookcover 人間を撮る―ドキュメンタリーがうまれる瞬間 [a]
池谷 薫 / 平凡社 / 2008-05
数年前に,「延安の娘」という題名の,文革期の下放青年たちのその後を描いたドキュメンタリー映画を観て感銘を受けたことがあった。この本はその監督による手記。
 この監督さんは「蟻の兵隊」という映画でも評判になった。観たいんだけど,レンタルビデオ屋にはないだろうなあ。。。

 「延安の娘」で一番印象に残っているのは,下放先の延安に残留した人々の一人である,ある貧しい男の一人住まいの住宅内にカメラが入る場面だ。それは薄暗い洞窟のような,心まで冷え込むような殺伐とした住まいなのだが,不似合いな大きな木箱があって,中にはマルクスなどの専門書が積み重ねられている。それはいまとなっては何の役にも立たない,彼の青春の遺物なのだ。
 で,この辺からうろ覚えなのだが,この人の住まいをもう一度訪ねると,誰かにもらったとかで,DVDプレーヤーつきの小さなテレビが据え付けられている。男は孤高の哲学者のような口調で言う。「音楽はいい。人を解放してくれる」 いったいどんな高邁な音楽を聴いているのか,と思いきや,それがなんというか。。。ドン・キホーテで500円のラジカセを買ったらおまけについてきた,というような,きわめて安っぽいポップス調のベートーベンなのである。あれには本当に参った。

ノンフィクション(-2010) - 読了:07/13まで (NF)

Bookcover 精神疾患はつくられる―DSM診断の罠 [a]
ハーブ カチンス,スチュワート・A. カーク / 日本評論社 / 2002-10
精神医学のバイブル・DSMについて,その策定を巡る政治的駆け引きの歴史を中心に,批判的に紹介した本。特に,DSM-IVでの採用を目指して挫折した診断名「マゾヒスティック・パーソナリティ」をめぐる熾烈な戦いの話が面白かった。
 最終章での著者らの提案は,(1)DSMは診断基準をもっと厳しくすべきだ,(2)DSMの妥当性と信頼性はとても低いので,研究目的を超えた運用は避けるべきだ,(3)臨床家はDSMを正直につかうべきだ(保険の支払いを念頭に妥協してはならない),(4)医療以外の社会的援助システムを構築すべきだ,という4点。
 書き方が非常に辛辣なので,ラディカルなDSM批判の本のようについ思えてしまうが,考えてみると著者らが云っているのは,DSMはその触れ込みほどには妥当性や信頼性を持ち合わせていないよ! その制定プロセスはむしろ政治の産物だよ! それをあたかも科学的システムのように運用しているせいでひどいことになっているよ!---という話だ。操作診断の必要性と可能性を否定しているわけではない。研究者はもっと「科学的」な操作診断システムを追求しよう,と主張しているようにも思える。素人の印象に過ぎないが,これは本質的には穏和で保守的なスタンスなのではないか?

心理・教育 - 読了:07/13まで (P)

2009年7月 8日 (水)

Bookcover 焼跡のイエス・善財 (講談社文芸文庫) [a]
石川 淳 / 講談社 / 2006-11-11

フィクション - 読了:07/08まで (F)

Bookcover 市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影 (中公新書) [a]
根井 雅弘 / 中央公論新社 / 2009-06
俺は経済学の知識がまったくなくて,つい最近まで,新自由主義経済学者のフリードマンと,ニューヨーク・タイムズのコラムニストのフリードマンをごっちゃにしていた。だって,同じくNYTのコラムニストのクルーグマンはノーベル経済学賞をとった学者ではないか。誰だって間違えますよね? そんなわけはないか。前者のフリードマン先生はとっくに亡くなっています。
 この本は,そのミルトン・フリードマンについての一般向け解説書。勉強になりました。細かいところはよくわからんのだけれど,ま,仕方がない。

Bookcover 差別と日本人 (角川oneテーマ21 A 100) [a]
辛 淑玉,野中 広務 / 角川グループパブリッシング / 2009-06-10
対談というより,野中広務インタビュー+辛さんのコメント,という感じの内容。

Bookcover 日本産業社会の「神話」―経済自虐史観をただす [a]
小池 和男 / 日本経済新聞出版社 / 2009-02
著者は労働経済学のえらい先生。日本人は会社人間というのは迷信だ,などなど。専門書というより,エッセイ風の文体で書かれた本であった。

Bookcover 橋の上の「殺意」―畠山鈴香はどう裁かれたか [a]
鎌田 慧 / 平凡社 / 2009-06

ノンフィクション(-2010) - 読了:07/08まで (NF)

2009年7月 7日 (火)

Bookcover マンガ家田中K一がゆく! (単行本コミックス) [a]
田中 圭一 / 角川書店(角川グループパブリッシング) / 2009-07-04
自伝コメディ「サラリーマン田中K一がゆく」の続編。
 著者はサラリーマン兼マンガ家として有名な人で,どちらかといえば,俺はこの人のギャグマンガよりも,この人の時間の使い方のほうに強い関心がある。そういう人はきっといっぱいいるから,「田中K一の時間術」といったハウツーマンガを描けばいいのに,と前々から思っていた。この本の帯には「あなたも土日でマンガ家になれる!?」なんて書いてあるから,そうかそうかついに出したか,と喜んで購入。
 読んでみたところ,相変わらず面白いんだけど,営業マンとして多忙な日々を送った著者が,いったいいつマンガを描いていたんだか,やっぱりよくわからない。まあ,教えてくれたところで,真似できるものではないんだろう。
 会社に内緒でマンガ家デビューした主人公の青年は,版元の小出版社の幹部に「他社で描いたら会社に副業をばらすぞ」と脅迫される。もちろんこれはマンガの話だが,あとがきによれば,そのようなパワハラを受けていたのは事実なのだそうだ。調べてみたところ,田中圭一のデビュー誌は「コミック劇画村塾」,有名な劇画作家が自ら興した会社の雑誌であった。世の中いろいろあるんですね。

Bookcover 百鬼夜行抄 18 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス) [a]
今 市子 / 朝日新聞出版 / 2009-07-07
このシリーズ,1巻から愛読しているのだけれど,ここんところ話の流れがひどくつかみにくくなっているように思う。なにがあったのだろうか。

Bookcover うちの妻ってどうでしょう? 2 (アクションコミックス) [a]
福満 しげゆき / 双葉社 / 2009-06-27

Bookcover アオイホノオ 2 (少年サンデーコミックススペシャル) [a]
島本 和彦 / 小学館 / 2009-05-11

Bookcover 団地ともお 14 (ビッグコミックス) [a]
小田 扉 / 小学館 / 2009-06-30

Bookcover PLUTO 8 (ビッグコミックス) [a]
浦沢 直樹 / 小学館 / 2009-06-30

Bookcover 闇金ウシジマくん 15 (ビッグコミックス) [a]
真鍋 昌平 / 小学館 / 2009-06-30

Bookcover ニッポン昔話 上巻 (ビッグコミックススペシャル) [a]
花輪 和一 / 小学館 / 2009-06-30

コミックス(-2010) - 読了:07/07まで (C)

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