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2009年10月28日 (水)

安サラリーマンの分際で,多忙だなどというのも滑稽なことだけど。。。なんでかわからんがバタバタ忙しい。内容のメモは来週書くことにして,とにかく書名だけ記録しておこう。

↑と書いてから3週間経ってしまった。どんな本だったか,忘れちゃったよ。。。

Bookcover 近代―未完のプロジェクト (岩波現代文庫―学術) [a]
J.ハーバーマス / 岩波書店 / 2000-01-14
 えーと,この本は,なぜこんな小難しげな本を買ったのかしらんと自分を疑いながら読み始めたら,これが意外にエキサイティングだった,という本。社会哲学者ハーバーマスによる政治時評集。
本の後半はドイツの政治事情に通じていないとわからない話だったもので,ほとんど読み飛ばした。面白かったのは,冒頭の表題作「近代・未完のプロジェクト」。芸術の分野での「近代」概念から語り起こし,それを政治・社会へと広げて,近代的思考をめぐる見取り図を作っていく。少し読むごとに立ち止まり,あれこれと考えさせられた文章だった。よ,う,な気がするが。。。どうしよう,もう全然覚えていない。。。

Bookcover 死刑でいいです --- 孤立が生んだ二つの殺人 [a]
池谷孝司,真下周 / 共同通信社 / 2009-10-02
母親を殺し,強盗殺人で二人を殺し,発達障害の疑いを指摘されながら死刑となった25歳の青年についてのノンフィクション。

ノンフィクション(-2010) - 読了:10/27まで (NF)

Bookcover 禅と戦争―禅仏教は戦争に協力したか [a]
ブラィアン・アンドルー ヴィクトリア / 光人社 / 2001-05
禅宗の高僧たちの戦争協力について述べた本。

いまこの本をランダムにぱらぱらとめくると,たとえばこんな文章がみつかる。「清泉は読者たちに禅の精神に満ちた武士道が,その時代の日本における意義の深さを知らせたかったのであろう。」(p.158)「もしも今まで述べたように集団仏教のすべてが真実であるとすれば,禅宗としてはまったくもってそのままあてはまるものとなる」(p.183)
というわけで,翻訳としての良し悪し以前に,なんだか日本語として妙なのだが。。。しかし,この本を翻訳するというのは,想像するだけで気の遠くなるような作業だ。仏教用語は頻出するし,明治以来の日本語文献の大量の引用について,いちいち原文を探さないといけないわけだし。その大変な作業のおかげで,我々もこの専門書を気軽に読むことができるのだから,文句を言ってはバチが当たる。

日本近現代史 - 読了:10/27まで (CH)

Bookcover 西原理恵子の太腕繁盛記 FXでガチンコ勝負!編 [a]
西原理恵子 / 新潮社 / 2009-09-25

Bookcover MO’SOME STING (ゼロコミックス) [a]
ヤマシタ トモコ / リブレ出版 / 2009-09-10

Bookcover 聖☆おにいさん(4) (モーニング KC) [a]
中村 光 / 講談社 / 2009-10-23

Bookcover きのう何食べた? 3 (モーニング KC) [a]
よしなが ふみ / 講談社 / 2009-10-23

Bookcover とろける鉄工所(3) (イブニングKC) [a]
野村 宗弘 / 講談社 / 2009-10-23

Bookcover オールラウンダー廻(2) (イブニングKC) [a]
遠藤 浩輝 / 講談社 / 2009-09-23

コミックス(-2010) - 読了:10/27まで (C)

Muthen, B.O. (2002) Beyond SEM: General letent variable modeling. Behaviormetrika, 29(1), 81-117.
Mplusの開発者Muthenさんが,Mplusの背後にある理論的フレームワークについて説明した論文。潜在変数として連続変数とカテゴリカル変数の両方を考え,かつ共変量を考えることで,従来のSEMで捉えられるモデルはもちろん,潜在クラスモデル,成長曲線モデル,項目反応モデル,階層モデル,離散時間生存モデルなどなどの多様な分析手法をぜーんぶひとつの枠組みで捉えることができるのですよ。という主旨。
この論文は前の会社に勤めたばかりのころに読み始め,あまりに難しくて途中で挫折したのであった。で,先日ちょっと頭を整理したくてぱらぱらめくっていたら,これが意外にもわかりやすく,途中ちょっと飛ばしたものの,気がついたら読み終えていた。狐につままれたような感じだ。俺なりに多少は成長したのか。。。いや,きっと論文を読むときの態度が変わったのだろう。適当に流し読みするようになったというか,関与が下がったというか。
これはよく引用される論文だと思うが(Google scholarではただいま200件),よくみたら,掲載誌は日本の行動計量学会の英文誌である。へー。

論文:データ解析(-2014) - 読了:10/27まで (A)

Grover, R., Vriens, M. (2006) Trusted Adviser: How it helps ay the foundation for insights. in Grover, R. & Vriens, M. (eds.) "The handbook of marketing research," Chapter 1.
市場調査のハンドブックの序章に当たる部分。お世話になった方がこのたび本を出すことになり,その原稿を拝見するにあたって,なにかの役に立つかも,と思って読んでみた。そういえばこのハンドブック,ひとりで全部読んでやろうと思っていたのだが,昨年5月に4章分読んだところで挫折していた。再開しようかしらん。
 市場調査というもの,クライアント側の立場が強すぎても(researcher as order taker),リサーチャー側の立場が強すぎても(researcher shooting in the dark),どちらも相互信頼が生まれないし,従って「信頼されるアドバイザ」にもなれない,とのこと。なるほど,確かにそうですね。調査会社が信頼されるアドバイザの役回りを期待されているかどうかは,全然別の問題ですが。
 著者らによれば,市場調査が必要とされるビジネス課題には意思決定と市場学習がある。前者では,まずクライアントが抱えている症状から出発し,探索的調査を通じて問題領域と選択肢を定義し,情報ニーズが確定して定量調査の設計がはじまる,という演繹的アプローチが適している。ここで肝心なのは,症状から問題領域へ,という上流プロセスからリサーチャーが関わることだ,というわけで,著者らは例題を挙げ,情報ニーズからスタートする普通のリサーチャー(order taker)の手による企画書と,症状からスタートする良いリサーチャー(演繹的)の企画書とを並べて見せる。わたくし正直申しまして,前者の企画書を読んだ段階で,おお結構いいじゃん,なあんて思っちゃいました。すみませんすみません。このあたり,「市場調査業界でxx年生きて参りました」というベテランの方々の意見を聞きたいところだ。さぞや反発があるところだろう。そもそも業界自体がorder-taker的サービスを前提としているのではないかと思うので。
 いっぽう市場学習的な状況下では,重要な変数とそのあいだの関係について記述する概念枠組みを構築することがゴールになる。この場合に必要なのは帰納的アプローチで,その際のポイントは,(1)リーダー格のリサーチャーを中心にした放射状のチームをつくること(ブレインストーム型ではだめ),(2)複数手法・複数ソースの調査を組み合わせること,(3)確率抽出ではなく有意抽出に基づくこと,etc。これは腑に落ちる話だと思った。市場理解を目的とする調査は往々にして,複数のステークホルダーがわいわいとブレインストーミングした末,結局は焦点が絞れていない調査票になっちゃったり,十分な精度を得るべく大き目の調査を企画した結果,予算がないので一発の調査で勝負することになり,本当に知りたい消費者の像には手が届かなかったり,というようになりがちだと思うので。

論文:マーケティング - 読了:10/27まで (AM)

2009年10月21日 (水)

Bookcover 寺よ、変われ (岩波新書) [a]
高橋 卓志 / 岩波書店 / 2009-05-20
著者は松本にある臨済宗神宮寺というお寺の住職さん。文化イベント開催や途上国支援NPO,決算書の公開などの先鋭的な活動で知られている人らしい。
 とても面白い本だった。これからのコミュニティのなかでお寺が果たすべき役割とは,云々という議論は他にもありそうだが,それらを次々と実行に移すところが只事ではない。実践の人ならではの凄みがあって,たとえば宗教者がホスピスに関わることには否定的だったり(痛みの緩和治療のほうが重要だから),戒名料についてはいまだ矛盾を抱えていると告白していたりする。
 お寺について何ら関心が無い俺にとっても,読むだけでちょっと元気が出るような本だったのだけれど,では著者が熱く語るように,お寺がコミュニティとともに再生しうるのかどうかというと,それはちょっと。。。この本の何割かは,伝統仏教がいかに危機的な状況にあるのかという説明に割かれているのだが,誰かがわざわざ危機を訴えないといけないような状況では,そうそう変革など起こらないのではないか。本のなかで,「葬儀がどんどん葬儀社主導になりお寺の役割が小さくなっても,これから団塊世代がいっぱい死ぬから当面は大丈夫」という意味のことを言い著者を絶望させるお坊さんが出てきたけど,この意見は的を得ていると思った。シェアが落ちてもセールスが落ちていない会社は,なかなか自己変革できないんじゃないですかね。
 そもそも,コミュニティの再生のためにお寺が必要なのか,という疑問もある。この本では,日本人にとってお寺は重要であるはずだ,という点が自明視されているのだけれど,これはお坊さんだからそう思うのであって。。。申し訳ないけど,できれば地域社会の将来像はお寺抜きで考えたいものだ。みんなが仏教徒ってわけじゃないんだから。

Bookcover ヒトラー 権力の本質 [a]
イアン カーショー / 白水社 / 1999-01
ずっと前にほとんど読み終えていた本。片づけようと思って手に取ったが,どこまで読んでたのかわからなくなって,結局最初から全部読み通した。

ノンフィクション(-2010) - 読了:10/20まで (NF)

Bookcover モテキ (1) (イブニングKC) [a]
久保 ミツロウ / 講談社 / 2009-03-23
全然もてないまま三十歳を迎えんとしている青年に,突如訪れた凄まじい「モテ期」,美女がよりどりみどり,さあどうしよう。。。という恋愛コメディ。
 いやいや,この青年,そもそも普通の好青年じゃないですか! 可愛い女の子の友達もいるし! ホントに「もてない」20代とはどういうものか,俺が教えてやろうかっ! と義憤に駆られたが,もしそういう奴をリアルに描いていたら,重苦しくて読めないかもしれませんね。

Bookcover デトロイト・メタル・シティ 8 (ジェッツコミックス) [a]
若杉 公徳 / 白泉社 / 2009-09-29

Bookcover BLACK LAGOON 9 (サンデーGXコミックス) [a]
広江 礼威 / 小学館 / 2009-10-19

Bookcover オールラウンダー廻(1) (イブニングKC) [a]
遠藤 浩輝 / 講談社 / 2009-04-23

Bookcover 高校球児 ザワさん 2 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL) [a]
三島 衛里子 / 小学館 / 2009-07-30

コミックス(-2010) - 読了:10/20まで (C)

先日片側検定について調べていたときに読んだ論文。ほかにも読んだような気がするんだけど。。。

Liu, T., Stone, C.C. (1999) A critique of one-tailed hypothesis test procedures in business and economics statistics textbooks. J. Economic Education, 30(1), 59-63.

Lombardi, C.M., Hurlbert, S.H. (2009) Misprescription and misuse of one-tailed tests. Austral Ecology, 34(4), 447-468.
面倒なところを飛ばしてしまったが(非同等性試験のあたりとか),俺のなかでの片側検定ブーム(?)が過ぎ去ってしまったような気がするので,これは読了にしちゃおう。

論文:データ解析(-2014) - 読了:10/20まで (AS)

書いておかないと忘れちゃうので。。。最近読んだ論文。下二本は再読だけど,記録のために。

狩野紀昭,瀬良信彦,高橋文夫,辻進一(1984) 「魅力的品質と当り前品質」, 品質, 14(2) , 147-156.
狩野分析の原論文。いきなりアリストテレスからはじまるのであった。

Walden, D. ed.(1993) Kano's methods for understanding customer-defined quality. Center for Quality of Management J., 2(4).
論文というか,狩野分析についてのハンドブックのような雑誌特集。どういう雑誌なんだろうか。

狩野分析はむしろ海外のほうで知名度が高いようで,学術研究も意外に多い。日本ではあまり見かけないので,webで「狩野分析」を検索したときに俺の名前が上位に出てきたりしたら,ちょっとなんだなあ。。。と要らん心配をしてしまったほどである。ま,杞憂でしたけど。
そんなこんなでちょっと事情があって,ここんところ毎日毎日狩野分析の文献を読みあさっているのだが。。。だんだん飽きてきたぞ。困った。

論文:マーケティング - 読了:10/20まで (AM)

2009年10月18日 (日)

Bookcover 歌舞伎町・ヤバさの真相 (文春新書) [a]
溝口 敦 / 文藝春秋 / 2009-06
新宿・歌舞伎町の戦後史。
 歌舞伎町という町名は,戦後すぐに歌舞伎座を誘致しようという計画があったからなのだが,その計画があっという間に頓挫した後でも,ここに劇場街を建設しようという関係者の熱意は冷めなかった。事態が好転したのは,50年の「東京文化産業博覧会」開催で,この博覧会自体は赤字だったのだけれど,このときに建てたパビリオンが娯楽施設に転用され,歌舞伎町の核になった。たとえば「産業館」はスケートリンクになり,これが現在の新宿東急ミラノだそうだ。この頃の事業家たちには,当時三国人と呼ばれた中国・台湾・朝鮮出身者が多く,たとえばミラノの左斜め前のオデオン座(旧「社会教育館」)は東亜興業,すなわち韓国系。その隣のヒューマックスパビリオン(旧「婦人館」)を経営するヒューマックスグループは華僑系なのだそうだ。へえー,知らなかった。

日本近現代史 - 読了:10/18まで (CH)

Bookcover とう小平 政治的伝記 (岩波現代文庫) [a]
ベンジャミン ヤン / 岩波書店 / 2009-08-18
著者は文革後に国費留学でアメリカに渡った中国人で,鄧樸方(鄧小平の長男)とも親交がある,という中国研究者。
 鄧小平はずっと有能な中堅幹部で,四人組逮捕後に華国鋒を追い出して頂点に立ったのだというおぼろげなイメージを持っていたのだが,この本によると,文革のはるか以前,百花斉放政策の段階ですでに事実上のナンバーツーだったのだそうだ(周恩来と同格だった)。従ってその後の反右派闘争や大躍進政策がもたらした悲劇についても責任があり,本人も晩年にそのことを婉曲に認めていたとのこと。

Bookcover ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所 (ちくま新書) [a]
青砥 恭 / 筑摩書房 / 2009-10

ノンフィクション(-2010) - 読了:10/18まで (NF)

Bookcover 乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX) [a]
森 薫 / エンターブレイン / 2009-10-15
「エマ」の森薫さんの新作。この人はビクトリア朝イギリスの風俗を一生描き続ける人なのかと思ったら,今度は19世紀中央アジアを舞台にした作品であった。
 著者は雄大な風景より,むしろ絨毯や服装のほうに愛着がある模様。細部をパラノイアックに描き込んでいて,眺めていて飽きない。

Bookcover 湯けむりスナイパーPART2花鳥風月編 2 (マンサンコミックス) [a]
ひじかた 憂峰 / 実業之日本 社 / 2006-02-27
これこそ,マンガ史上もっとも優れた題名だと俺が信じてやまない作品である。ああ,この感動を誰かと分かち合いたい。「湯けむりスナイパー」だなんて,いったいどうやって思いついたんだ?
 これはその第二期連載の後半部分で,平成17年に連載されていた模様。

Bookcover 湯けむりスナイパーPart3 (1) (マンサンコミックス) [a]
ひじかた 憂峰 / 実業之日本社 / 2009-03-28
今年にはいって第三期連載がはじまり,現在も継続中の模様。TVドラマ化されたせいであろうか。
 いったいどうしたんだろう,同じマンガ家だろうか,と思わず表紙を見直してしまった。いままで右手で描いていたけど,こんどは左手でも描いてみた,というような感じ。プロットも,なんだかその。。。竹熊健太郎と相原コージの傑作「サルでも描けるマンガ教室」のなかで,主人公たちの大ヒット連載マンガが途中から迷走し,絵柄も徐々に崩壊していく,というくだりがあったのを思い出してしまった。とはいえ,このような感想を持つのも,第二期連載までが素晴らしかったからであろう。

Bookcover 高校球児 ザワさん 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL) [a]
三島 衛里子 / 小学館 / 2009-04-30
唯一の女子部員を中心にした高校野球マンガだとのことで,先行作品が山ほどある設定なのに,いまさらどうするのかと不思議に思った。読んでみたら,ゆったりしたコマ割りで,高校生たちのなんでもない日常をスケッチした作品であった。その手があったか。

Bookcover 闇金ウシジマくん 16 (ビッグコミックス) [a]
真鍋 昌平 / 小学館 / 2009-09-30

Bookcover インド夫婦茶碗 (13) (ぶんか社コミックス) [a]
流水 りんこ / ぶんか社 / 2009-09-30

コミックス(-2010) - 読了:10/18まで (C)

2009年10月 3日 (土)

Bookcover エセー〈2〉 [a]
ミシェル・ド モンテーニュ / 白水社 / 2007-02
昼休み,仕事と一切関係ない本を無性に読みたくなることがあって,そんなときのために,鞄のなかにモンテーニュを突っ込んで持ち歩いている。16世紀フランスの貴族が城館に籠って書き綴った,軍馬についての思い出やら睡眠についての省察やらをぱらぱらめくっているのは,実に心なごむ。もっとも,モンテーニュさんが生きた時代の戦火と混迷たるや,現在の経済危機の比ではないわけだが。
 一度に数ページしか進まないので,一冊読み終わるのに大変時間がかかる。全六巻を読み終わる日は来るのだろうか? もっとも,訳本じたいがまだ三巻しか出ていない。

Bookcover NHKスペシャル うつ病治療 常識が変わる [a]
NHK取材班 / 宝島社 / 2009-09-17
抗うつ剤の大量投薬に対する批判に重点を置いた内容であった。NHKだけあってバランスに配慮した書き方になっているが,それでも関係者の方のなかには異論を持つ人がいるかもしれない。
 臨床心理士の国家資格化をめぐる話をコンパクトに紹介していて,面白かった。いまや臨床心理士は二万人を超えているのだそうだ。それは大変ですねー。

Bookcover 貧者を喰らう国 中国格差社会からの警告 [a]
阿古 智子 / 新潮社 / 2009-09-26
格差社会化する中国について書いた本。テーマは,エイズ禍,農村の荒廃と農民工,失地農民と農地不法転用,加熱する学歴競争。著者は若手の研究者で,冷静な筆致であった。

ノンフィクション(-2010) - 読了:10/02まで (NF)

Bookcover 大奥 第5巻 (ジェッツコミックス) [a]
よしなが ふみ / 白泉社 / 2009-09-29
性役割が入れ替わった江戸時代における大奥を舞台にした架空時代劇。ただいま元禄時代で,綱吉も柳沢吉保も女性,桂昌院は男。しかし浅野内匠頭や大石内蔵助は男であり,赤穂浪士に討ち入りされた吉良上野介(老女)は,大石が女であったなら,こんなことにはならなかったのに。。。と嘆いて死ぬ。

Bookcover Love,Hate,Love. (Feelコミックス) [a]
ヤマシタ トモコ / 祥伝社 / 2009-09-08
著者はたしかBL系の作家なので,ちょっと手が出なかったのだが,評判がいいらしいので恐る恐る読んでみた。面白いマンガであった。
 28歳,とても美しくしかし大変に奥手な女性が,マンションの隣室の初老の大学教授と恋に落ちる話。しかし,そうやって恋愛マンガのフォーマットのなかで捉えるよりも,3歳からの25年の全てをバレエに捧げてきた女がそのバレエを捨てるときの話,と捉えたほうがポイントを突いていると思った。
 この大学教授,魅力的だけど,物語の都合上要請される書き割り的な存在に思えてしかたがない。古谷実の一連の青春マンガでは,冴えない受動的な青年の前になぜか魅力的で能動的な娘が現れ(必ず巨乳),話の展開をドライブしていくが,あれと同じ事ではないかしらん。

Bookcover P.S.アイラブユー (クイーンズコミックス) [a]
谷川 史子 / 集英社 / 2009-09-18
谷川史子の新作。このマンガ家の技術はすごい,ほんとにすごい,と毎回感嘆するのだが,よく考えてみると,どこがどうすごいのかを言葉にするのが難しい。うーむ。あれこれ考えながら二度読んだ。

Bookcover 不思議な少年(8) (モーニング KC) [a]
山下 和美 / 講談社 / 2009-09-23

Bookcover ヴィンランド・サガ(8) (アフタヌーンKC) [a]
幸村 誠 / 講談社 / 2009-09-23

コミックス(-2010) - 読了:10/02まで (C)

2009年10月 1日 (木)

 誠にどうでもよい話だが,先週土曜日の講義終了後,学生さんたちがわらわらと教室から出て行くのを見送りつつ,ノートPCを終了させ,荷物を鞄にしまって,部屋のエアコンと照明をオフにし,ドアを開けて廊下に出たところで,そこに立っていた人と危うくぶつかりそうになった。みるとそれは制服を着た女子高生で,驚いたことに,その後ろにも女子高生たちが,ずらーっと,長い行列をつくって並んでいるのである。その奇妙さが俺にこの下手な文章でうまく伝わるかどうかわからないが,先頭の女の子と目があったときは,なんというか,シュールレアリズムの映画のなかの住人になったかと思った。
 正面から顔をつきあわせることになった娘さんが,緊張した声で「こんにちは」というので,我に返って「え?!なに?!なにこれ?!」と口走ると(ちっとも我に返っていないぞ),その娘さんも俺につられて慌てたようで,「あ,あの。。。エイオーニューシの。。。」と口ごもる。振り返って見ると,いま開けたドアの廊下側に,「AO入試受験者控え室」というような張り紙が貼ってある。教務の方が講義中に貼っていったらしい。知らないうちに,教室は高校生たちの控え室になっていたようで,彼女たちはドアが開くのを行儀良く待っていたのだった。
 とっさに,「あ,そんならこの教室使うのね?,はいはいはい」と明るく声を掛け,後ろ手にドアを開けて数歩後ずさり,片手で照明とエアコンをつけながら「はいどうぞー」とドアを大きく開けた。で,あたかも急用があるかのような早足で教員控え室に向かいつつ,そうかそれで高校生がいたのか,と納得した。ああ,びっくりした。
 それから,これが我ながら不思議なのだが,俺はひとしきり反省した。いま俺の行動は不審ではなかったか? いや,なかったなかった,大丈夫だ。いかにも教員らしい落ち着いた振る舞いであったことよ。うんうん。というふうに。

 先日の休日に近所を散歩していて,音大の前を通りかかったら,ちょうど秋の学園祭をやっていた。オーケストラの生演奏に釣られて入ってみると,コンサート会場はもう立ち見で満杯で,屋外ステージは人混みに隠れて見えない。仕方がないので,屋台で紙コップの生ビールを買い,所在なくあたりを見回していると,まわりは二十歳前後の女の子たちでいっぱいで,それがなんだかおしなべて美人なのである。さらに,彼女たちの腰の位置の高いことといったら。とにかくもう,スタイルがものすごーく良い。日本人はいったいどうなっちゃったんだ,食い物のせいか,などと呟きながら,若く美しい娘たちをジロジロジロジロと鑑賞した。
 これはお嬢様の通う名門音大だからか? それともイマドキの女の子はみんなこんなにスタイルが良いのか? 別の大学ならどうだろうか,とそこまで考えて,はたと気がついた。自分が教えている学生さんたちを,俺はろくろく見ていない。顔は覚えているけど,美人だとかそうでないとか,そういう視点で学生さんたちをみたことはないし,体型に至っては全く記憶にない。教室で顔を合わせるだけ,せいぜいたまに飲みに行ったりする程度だから,当然のことだろうか。。。いや,やはりそれだけではないな。いざ自分がなにかを教える立場となると,学生たちのスタイルだとかルックスだとか,そういう事柄にはもう全く気が回らなくなってしまうのである。

 要するに,これは役割の問題であろう。仕事先のキャンパスにおいては,俺はせっかちな非常勤講師であり,音大のキャンパスにおいては,俺は近所の忌憚無きスケベオヤジである。どちらが本物,という問題ではない。俺は見事に社会的役割を取得している。
 でも,なにかの拍子に不意を打たれると。。。たとえば,開けたドアのすぐ目の前に可愛らしい女の子が立っていて思わずつんのめりそうになったりしたときに,ぶ厚い被覆が一瞬剥がれ落ちる。その内側の俺は,若い女性を見るとすぐにあがってしまってまともに口もきけなくなってしまう,小心な青年のままだ。俺はさまざまな社会的役割をとっかえひっかえして,かろうじて生き延びている。
 年を取ろうが,結婚しようが,俺は全く成長していない。これからも成長できないだろう。そう気づくことはとても哀しい。実に情けないことだが,オカシイ,コンナハズデハナカッタ,という気がするのである。

雑記 - ドアの前に立つのはやめてください

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