2015年5月19日 (火)
ここしばらく大阪の住民投票の話が話題になっていて、それ自体にはあまり関心がなかったのだけど、「基礎自治体の適正規模については学界である程度の合意がある。およそ30~50万人」と主張している大学教員の方がおられて、ちょっとびっくりした。そ、そうなんですか? 小中学校の適正規模についてさえあれだけの複雑な議論があるのに。
仮に、自治体の適正規模についてなんらかのコンセンサスがあるとして、それは一体どういう視点からのコンセンサスなのかしらん。もっともこれは一種の政治的プロパガンダで(「だから大阪市を5つに分けるのは合理的だ」という話につながっていくわけです)、まじめに取り合う必要はないのかもしれないけど、それはそれとして、話として面白すぎる...
増田友也(2011) 市町村の適正規模と財政効率性に関する研究動向. 自治総研, 396, 23-44.
というわけで、興味本位でwebで見つけて目を通してみた(仕事からの逃避の一環である)。著者は若い研究者の方で、これは博論が基になっているそうです。
えーと、まず、自治体の適正規模はこれまでどのように捉えられてきたか。大きく分けて3つある由。
- 均衡点としての適正規模。適正規模を、たとえば「人口当たり歳出総額を最小にする」といった問題と捉えて解く。
- 上限ないし下限としての適正規模。たとえば、「日常生活圏が地域の一体性の上限だ」というような議論があるのだそうだ。
- 適正規模は存在しない。もともとこの分野にはDahl & Tafte (1973) "Size and Democracy" という古典的研究があって、そこでの結論はこれ。
適正規模にはどんな規定要因があるか。
- 効率性。規模の経済・不経済に注目して、一人当たり歳出額が最小となる規模を計量分析で求める、という研究が多い。吉村弘さんという方が有名。変数として、人口、面積、サービス水準、などなどが用いられている。これに対して、たとえば歳出額は交付税などの影響を強く受けているから、ほんとに適正規模を求めているのか、それとも自治体財政調整制度がどう設計されているのかを確認しているのかわかんないんじゃない? という批判もある。[←面白い。観察研究が避けて通れない批判だ]
- 民主性。ギリシャ以来、小さいほうが民主主義が良く機能するという議論が主流だが、実証研究による反論もある。そもそも民主主義というものをどう捉えるかという点にも依存していて、たとえば人々の地方自治への関心の高さは、自治体の規模が小さいほうが高いとはいえない。[←なるほどねぇ]
- 機能。自治体がどんな機能を担うかによって適正規模は変わってくる。たとえば、自治体は一定の行財政能力を持たなきゃいけないという発想の下では(これを総合行政主体論というのだそうだ)、小さいと困るわけで、大きな自治体が必要だ、平成の大合併だぜ、という話になる。でも適切なサイズって機能によって違うんだから、機能を腑分けして重要な奴を洗い出し、それに合わせたサイズの自治体をつくるのがいいんじゃない? という意見もある。
- 一体性。地域政府なんだから、自然環境や産業構造や地域社会に照らして一体的なサイズじゃなきゃ困る。大きくした方が効率的だから併合しましょうなんていうのは、自治体を単に国家統治の行政機関としてみているのだ、許せん。という意見。
- 重層性。そもそも民主主義ってのは特定の包括的な主権単位に存在するわけじゃない。政治システムというのは相互関係を持つ複数の単位からなるのだ。問題はある主権単位に適用するための適切な規則じゃなくて、何層の政府を置くか、それぞれの大きさをどうするか、機能をどうやって配分するか... についての適切な規則を求めることである。要するに、単に自治体の規模について検討してちゃだめだ、全体をみなくっちゃ。という意見。[←なるほどー。超・正論だ...]。
そんなこんなで、著者いわく、適正規模を一般的に求める研究は無理。現状では、解を提示できているのは計量分析だけだが、それだっていろんな前提を置いた上での話であることに注意。
ここからは効率性についての計量分析の話。先行研究のレビューがあって...
著者いわく、従来のモデルは次の3点がまずい。
- 従属変数を一人当たり歳出額にしてる。それが最終目的なのはわかるけど、たとえば歳出額と人口との関係を考えたとき、歳出総額なら人口と直線的な関係があるが一人当たり歳出額とはL字型の関係になるから、前者の方がいいんじゃないか。[←この論点、よく理解できない。歳出総額と人口の関係がほんとに線形なら、一人当たり歳出額と人口は無関連になるわけで、じゃ一人当たり歳出額を従属変数にして人口は変数から外そう、ってことになるじゃないですか。一人当たり歳出額と人口がL字型の関係になるんなら、歳出総額と人口の関係は左下端がクイッと上がった線になって、やっぱしモデリングが大変になりませんかね? それとも、なにかをなにかで割った値を従属変数にするのはそもそもよろしくない、というタイプのテクニカルな論点なのかなあ...]
- 歳出を説明する回帰式に人口の対数値の二次項をいれるのはよくない。解釈しにくいから。[←うううむ... この論点は門外漢にはわからない話なのかも。一般論としては、回帰モデルに対して、その組み方に実質科学的基盤がなくても、とにかくうまくフィットすれば勝ち、ないし予測できれば勝ち、というスタンスもありうると思う。きっとこの分野ではそうではないのだろう]
- 歳出を説明する回帰式に総面積をいれるのはよくない。面積が歳出額に与える影響は人口によってかわるから。[←うううううう... これもこの分野に詳しくないとわからない論点なのかも。完全な門外漢としましては、面積を入れるのがまずいというより、ちゃんと交互作用項かなんかをいれなきゃいけないね、ないしパラメトリックな回帰モデルにはちょっと無理があるね、という話にならないのかしらん? と思うんだけど、たぶんなにか事情があるのだろう]
というわけで、最後の話にはちょっとついていけなかったが、レビュー部分がとても面白かったです。勉強になりましたです。
なるほどねえ、いわれてみれば、いろんな論点があるものだ。上のメモでは省略したけど、計量分析についてもいろいろ面白い話があるということがわかった(ノンパラ回帰を使うとか)。政治家や専門家による「自治体のサイズはxx万人くらいが適正だと学問的にわかっている」系の主張には、眉によく唾をつけて接しないといけないこともわかった。
論文:その他 - 読了:増田(2011) 自治体のちょうど良い大きさとはなんぞや
2015年5月16日 (土)
2015年第1四半期。この期も32点も売れている。すごいな。
まずは既読の本から。
宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ (岩波科学ライブラリー (114))
[a]
佐藤 俊哉 / 岩波書店 / 2005-12-06
宇宙怪人しまりす 医療統計を学ぶ 検定の巻 (岩波科学ライブラリー)
[a]
佐藤 俊哉 / 岩波書店 / 2012-06-06
しまりすが売れてます!素晴らしい!
統計的因果推論―回帰分析の新しい枠組み (シリーズ・予測と発見の科学)
[a]
宮川 雅巳 / 朝倉書店 / 2004-04
これも良い本です。いろいろと目からうろこでした。
現代秀歌 (岩波新書)
[a]
永田 和宏 / 岩波書店 / 2014-10-22
あ、この本もいいですよね。いくつか愛唱歌ができました。
消費者理解のための心理学
[a]
/ 福村出版 / 1997-06
わざわざ旧版を古本でお買い上げ。なぜ新版を買わないんだろう...
The Partner
[a]
John Grisham / Arrow / 1998-01-28
kindle本でのお買い上げ。私が読んだのは邦訳で、たぶんもう品切れだと思う。
めめんと森 (フィールコミックス) (Feelコミックス)
[a]
ふみふみこ / 祥伝社 / 2013-12-07
少女漫画 (クイーンズコミックス)
[a]
松田 奈緒子 / 集英社 / 2008-02-19
未読・未知の本。
入門・社会調査法―2ステップで基礎から学ぶ
[a]
/ 法律文化社 / 2010-04
全社で勝ち残る マーケティング・マネジメント
[a]
日沖健 / 産業能率大学出版部 / 2013-02-28
変革するマネジメント - 戦略的人的資源管理
[a]
日沖健 / 千倉書房 / 2012-10-20
斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)
[a]
島田 荘司 / 講談社 / 1992-07-03
異邦の騎士 改訂完全版
[a]
島田 荘司 / 講談社 / 1998-03-13
前者の本、大変お世話になった先生にかつて勧められた小説だ。読んでませんけど。
テスタメント〈上〉 (新潮文庫)
[a]
ジョン グリシャム / 新潮社 / 2003-01
テスタメント〈下〉 (新潮文庫)
[a]
ジョン グリシャム / 新潮社 / 2003-01
グリシャムかぁ...
Grand Prix 1968 part 01 (Joe Honda Racing Pictorial series by HIRO No.38)
[a]
ジョー・ホンダ / Model Factory Hiro / 2014-08-22
F1の写真集らしい。いろんな趣味があるなあ。
[普及版]ジェネラティブ・アート―Processingによる実践ガイド
[a]
マット・ピアソン,Matt Pearson / ビー・エヌ・エヌ新社 / 2014-11-21
うーむ、Processingか...
これだけは知っておきたい働き方の教科書 (ちくま新書)
[a]
安藤 至大 / 筑摩書房 / 2015-03-04
労働経済学者による啓蒙書らしい。ちょっと面白そう。
アクティブ・ポートフォリオ・マネジメント―運用戦略の計量的理論と実践
[a]
リチャード・C. グリノルド,ロナルド・N. カーン / 東洋経済新報社 / 1999-10
利食いと損切りのテクニック (ウィザードブックシリーズ)
[a]
アレキサンダー・エルダー / パンローリング / 2012-05-18
損切りか保有かを決める最大逆行幅入門 (ウィザードブックシリーズ)
[a]
ジョン・スウィーニー / パンローリング / 2012-10-12
トレーディングシステム入門 ― 仕掛ける前が勝負の分かれ目 (ウィザードブックシリーズ)
[a]
トーマス・ストリズマン,Thomas Stridsman / パンローリング / 2002-07-31
うーん、投資ねえ... こんな本を買う方が、なぜ私のブログなんてご覧になってんですかね?
アルゴリズミック・アーキテクチュア
[a]
コスタス・テルジディス / 彰国社 / 2010-02
アルゴリズミック・デザイン実行系 建築・都市設計の方法と理論 ALGOrithmic Design EXecution and logic
[a]
渡辺 誠 / 丸善出版 / 2012-12-01
「アルゴリズミック・デザイン」についての本。なんだそれは。
クロマグロ養殖業-技術開発と事業展開 (水産学シリーズ)
[a]
/ 恒星社厚生閣 / 2011-03-15
マグロはおもしろい 美味のひみつ、生き様のなぞ (講談社文庫)
[a]
北川 貴士 / 講談社 / 2012-02-15
水産学シリーズ 160 (160) 磯焼けの科学と修復技術
[a]
/ 恒星社厚生閣 / 2008-10
漁具に対する魚群行動の研究方法 (水産学シリーズ)
[a]
/ 恒星社厚生閣 / 1989-01
これもあっけにとられた。まさか黒マグロの養殖についての本が売れるとは。
書籍以外では、あずきのチカラ・目もと用。レンジで温めて目の上に載せるんだそうです。携帯コインホルダー。コーヒーミルとコーヒー豆。
というわけで、どなたか存じませんが、お買い上げありがとうございましたー。家計の足しにさせていただきますですー。
2014年第4四半期。実に34点の売上があった(このブログにしてはかなり多いのです)。ありがとうございますー。
この四半期は、特にデータ解析系の本が売れている。おそらく、10月に時系列分析についての記事を公開した影響だと思う。
既読の本では、
Rによる時系列分析入門
[a]
田中 孝文 / シーエーピー出版 / 2008-06
R初心者のためのABC
[a]
A.ジュール,E.イエノウ,E.ミースターズ / 丸善出版 / 2012-04-05
状態空間時系列分析入門
[a]
J.J.F. コマンダー,S.J. クープマン / シーエーピー出版 / 2008-09
入門 多変量解析の実際 第2版 (KS理工学専門書)
[a]
朝野 煕彦 / 講談社 / 2000-10-10
サンプルサイズの決め方 (統計ライブラリー)
[a]
永田 靖 / 朝倉書店 / 2003-09-28
未読・未知の本では、
ビッグデータを活かすデータサイエンス -クロス集計から機械学習までのビジネス活用事例-
[a]
酒巻隆治,里 洋平 / 東京図書 / 2014-11-10
不完全データの統計解析 (統計学大系シリーズ)
[a]
岩崎 学 / エコノミスト社 / 2010-07
この本、気になるなあ。
それ以外の本。既読の本では、
経営学のフィールド・リサーチ―「現場の達人」の実践的調査手法
[a]
/ 日本経済新聞社 / 2006-01
好きな本が売れるのはちょっと嬉しい。この本は強くおススメします。ホントに面白いっす。
浪費するアメリカ人――なぜ要らないものまで欲しがるか (岩波現代文庫)
[a]
ジュリエット・B.ショア / 岩波書店 / 2011-03-17
ここからはkindle版のお買い上げ。
ママはテンパリスト 1
[a]
東村 アキコ / 集英社 / 2008-10
満月エンドロール(上) (イブニングKC)
[a]
野村 宗弘 / 講談社 / 2014-09-22
満月エンドロール(下) (イブニングKC)
[a]
野村 宗弘 / 講談社 / 2014-09-22
このマンガ、いいですよね!
未読・未知の本では、
フィールドワークの技法―問いを育てる、仮説をきたえる
[a]
佐藤 郁哉 / 新曜社 / 2002-02-22
これ、買ったきり本棚に埋もれている...
都市経済学 (プログレッシブ経済学シリーズ)
[a]
金本 良嗣 / 東洋経済新報社 / 1997-11
あの人この人―昭和人物誌 (文春文庫)
[a]
戸板 康二 / 文藝春秋 / 1996-11
すばらしいセリフ (ちくま文庫)
[a]
戸板 康二 / 筑摩書房 / 1999-12
戸板康二の本が2冊。後者にちょっと関心を惹かれる。
人に言えない仕事をしています。
[a]
つかさき 有 / 宝島社 / 2014-06-19
愛人、ヌードモデル、女王様など、女の子にしかできない仕事をマンガで解説! という本だそうだ。
共同幻想論 (角川文庫ソフィア)
[a]
吉本 隆明 / 角川書店 / 1982-01
英文法詳解
[a]
杉山 忠一 / 学習研究社 / 1998-04
English Grammar in Use with Answers and CD-ROM: A Self-Study Reference and Practice Book for Intermediate Learners of English
[a]
Raymond Murphy / Cambridge University Press / 2012-03-01
ロングマン英和辞典
[a]
/ 桐原書店 / 2007-02-07
60YEARS 名馬伝説〈上〉―スーパーホースたちの栄光と遺産1994‐2014
[a]
/ トレンドシェア / 2014-05-01
競馬やる人って、馬の写真を眺めていて楽しいのかなあ... きっと楽しいんだろうな。
ここからはkindle版。
国際機関で見た - 「世界のエリート」の正体 (中公新書ラクレ)
[a]
赤阪 清隆 / 中央公論新社 / 2014-07-09
それから、書影は載せないけど、橘花凛という人の写真集「ねえ、聞いてる?」と「爆乳OL・甘い罠」。ははは。
書籍以外では、GARNET CROWというバンドのライブDVD。けん玉を6個(結構な売上だ、どうもどうも)。
浄水カートリッジ。そしてなんと、13000円のセーター! ありがとう、ありがとう!素敵なセーターですね!
続きまして2014年第3四半期。既読の本から。
光の領国 和辻哲郎 (岩波現代文庫)
[a]
苅部 直 / 岩波書店 / 2010-11-17
風土―人間学的考察 (岩波文庫)
[a]
和辻 哲郎 / 岩波書店 / 1979-05-16
初版 古寺巡礼 (ちくま学芸文庫)
[a]
和辻 哲郎 / 筑摩書房 / 2012-04
古寺巡礼 (岩波文庫)
[a]
和辻 哲郎 / 岩波書店 / 1979-03-16
桂離宮―様式の背後を探る (中公文庫 わ 11-3)
[a]
和辻 哲郎 / 中央公論新社 / 2011-02
どなたか和辻に関心をお持ちのようだ。「古寺巡礼」の岩波文庫とちくま文庫が売れているから、すべて同一人物のお買い上げというわけではないかもしれないけど。
やさしい統計入門―視聴率調査から多変量解析まで (ブルーバックス)
[a]
柳井 晴夫,田栗 正章,藤越 康祝,C.R.ラオ / 講談社 / 2007-06-21
おお、また売れてる...
娼婦たちから見た日本
[a]
八木澤 高明 / KADOKAWA/角川書店 / 2014-07-11
エセー〈1〉
[a]
/ 白水社 / 2005-10
おー、モンテーニュを買っている人がいるぞ。エセー面白いっすよね。
宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ (岩波科学ライブラリー (114))
[a]
佐藤 俊哉 / 岩波書店 / 2005-12-06
しまりすだ! この本、絶対のおススメです。
プロモーション効果分析 (シリーズ・マーケティング・エンジニアリング)
[a]
守口 剛 / 朝倉書店 / 2002-12
新刊は品切れのようで、古書でのお買上。
以下、未読・未知の本。
パッケージデザインを学ぶ 基礎知識から実践まで
[a]
福井 政弘,菅 木綿子 / 武蔵野美術大学出版局 / 2014-03-18
あ、この本、まだ読み終えてないや...。著者のうちおひとりと知り合いなので、今度お会いしたら、私のおかげで売れましたよと恩着せしようと思う。
Hollywood’s Copyright Wars: From Edison to the Internet (Film and Culture)
[a]
Peter Decherney / Columbia Univ Pr / 2013-09-03
へええ...
ビジュアル・コンプレキシティ ―情報パターンのマッピング
[a]
マニュエル・リマ,Manuel Lima / ビー・エヌ・エヌ新社 / 2012-02-24
あ、これ面白そうだなあ。本屋さんで探してみよう。
日本型排外主義―在特会・外国人参政権・東アジア地政学―
[a]
樋口 直人 / 名古屋大学出版会 / 2014-02-22
発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ (健康ライブラリー)
[a]
shizu / 講談社 / 2013-12-11
どなたかがこのブログの書影をクリックして買い物して下さる→amazonは私に小銭を投げる→高度資本主義の末端で生きる哀れな私はわんわんと喜ぶ。という風に、世の中できております。
仕事からの逃避の一環として、昨年からの売り上げ報告。まずは2014年第2四半期。既読の本から...
New Perspectives on Faking in Personality Assessments
[a]
/ Oxford Univ Pr / 2011-08-22
おおっと。こんなマニアックな本が。
やさしい統計入門―視聴率調査から多変量解析まで (ブルーバックス)
[a]
柳井 晴夫,田栗 正章,藤越 康祝,C.R.ラオ / 講談社 / 2007-06-21
2冊も売れている。どうもどうも。
消費者行動論 (ビジネス基礎シリーズ)
[a]
平久保 仲人 / ダイヤモンド社 / 2005-05-19
無念なり: 近衛文麿の闘い
[a]
大野 芳 / 平凡社 / 2014-01-24
続いて、未読・未知の本。
へんな立体―脳が鍛えられる「立体だまし絵」づくり
[a]
杉原 厚吉 / 誠文堂新光社 / 2007-10
すごくへんな立体―「立体だまし絵」づくりでエッシャーの世界を体感する!
[a]
杉原 厚吉 / 誠文堂新光社 / 2008-03
まさか?のへんな立体―「ありえない動き」の立体だまし絵に驚く!
[a]
杉原 厚吉 / 誠文堂新光社 / 2010-10
立体イリュージョンの数理
[a]
杉原 厚吉 / 共立出版 / 2006-02-15
杉原厚吉さんという方の本が4冊も売れている。面白そうな本だ。
入門 統計学 −検定から多変量解析・実験計画法まで−
[a]
栗原 伸一 / オーム社 / 2011-07-26
著者は千葉大園芸学部の先生だそうだ。へー。
2014年版 U-CANの保育士 はじめてレッスン (ユーキャンの資格試験シリーズ)
[a]
ユーキャン保育士試験研究会 / U-CAN / 2013-11-29
合格をお祈りいたします。
外国人のための英語でわかるはじめての日本語
[a]
宮崎 道子,栗田 奈美,坂本 舞 / ナツメ社 / 2009-11-18
旅の指さし会話帳〈21〉JAPAN (ここ以外のどこかへ!)
[a]
榎本 年弥 / 情報センター出版局 / 2001-08-22
日本語生活 フィリピン語(タガログ語)編
[a]
小林 猛 / 廣済堂出版 / 2013-03-26
自分スタイルの服作り
[a]
杉本 伸子 HAYAMA SUNDAY / 文化出版局 / 2014-04-18
ここからはkindle版のお買い上げ。
「それ、根拠あるの?」と言わせない データ・統計分析ができる本
[a]
柏木 吉基 / 日本実業出版社 / 2013-05-11
著者は日産の方だそうだ。
図解 ミスが少ない人は必ずやっている「書類・手帳・ノート」の整理術
[a]
/ サンクチュアリ出版 / 2010-01-23
それから「「心の病」発生職場のマネジメント」上下巻, 日経BP。kindle版しかないらしく、ISBNがない。めんどくさいので書影は省略。
最後に、書籍以外のお買い上げ。けん玉、6個もお買い上げ。トイレクリーナーの取り換え用スポンジ, 3個。そしてEDWINのジーンズ。あのう、amazonでジーンズ買うと、裾上げとかしてもらえないと思うんですけど... ご自分でなさるのでしょうか。
2015年5月13日 (水)
悪魔の涎・追い求める男 他八篇―コルタサル短篇集 (岩波文庫)
[a]
コルタサル / 岩波書店 / 1992-07-16
著者は1984年没、表紙によれば「ラテンアメリカ文学界に独自の地位を占める」作家、だそうだ。予備知識どころか名前さえ知らなかったのだが、ふと手に取ったら、これが実に面白い。不覚であった。この人の小説は読まなきゃ...
収録作品はどれも一級の短編小説だが、「南部高速道路」が抜群に面白かった。超現実的なまでにひどい交通渋滞のせいで、路上に幻の共同体が形成されるという話。
舟を編む
[a]
三浦 しをん / 光文社 / 2011-09-17
数年前のベストセラー。読むつもりはなかったんだけど、パラパラ捲ってたら面白くなっちゃってつい読み終えてしまった。上手いなあ。
無意味の祝祭
[a]
ミラン クンデラ / 河出書房新社 / 2015-04-20
ええトシのおっさんたちが、いったい何をしているんだ...
フィクション - 読了:「悪魔の涎・追い求める男」「舟を編む」「無意味の祝祭」
ヴェブレン
[a]
小原 敬士 / 勁草書房 / 1997-07
しばらく前に「有閑階級の理論」に目を通したが、想像を上回る難解さで、さっぱり理解できなかった。気がめいるので、せめて伝記でも読んでお茶を濁しておこうか、という...
表紙ではわからないが、実は1965年の本の新装版。ヴェブレンさんの生涯と業績をコンパクトにまとめた内容であった。
気になっていま調べてみたら、amazon様いわく、いま新刊で手に入るヴェブレンの訳書は、ちくま文庫「有閑階級の理論」、勁草書房「企業の理論」、の2冊だけのようだ。晩年の著書「特権階級と庶民」って、ちょっと面白そうなのになー。
プリンセスメゾン 1 (ビッグコミックス)
[a]
池辺 葵 / 小学館 / 2015-05-12
勤め先は居酒屋さん、年季の入ったアパート暮らし、裕福とはいえない地味な独身女性が、しかしマンション購入を夢見ていて... という物語。
もともと講談社や秋田書店でアーティスティックなマンガを描いていた人なのに、このたびは小学館。しかも、大手不動産業者が運営する独身女性向けwebサイトとタイアップしているようで、事情はよくわかんないけど、たぶんすっごくたくさんの制約の下で描いているんだろうなと想像する(きっと悪徳不動産業者は登場しないだろう)。それでもほろりとさせる良い物語に仕上げるんだから、これはもう流石というしかない。
2015年5月10日 (日)
坂手洋二 (1) 屋根裏/みみず (ハヤカワ演劇文庫 7)
[a]
坂手 洋二 / 早川書房 / 2007-03-23
世界はゴ冗談
[a]
筒井 康隆 / 新潮社 / 2015-04-28
日本の古典―完訳〈50〉好色一代男
[a]
暉峻 康隆 / 小学館 / 1986-04
なんどか岩波文庫の原文に挑戦しては挫折していた本。諦めて古本屋で現代語訳を探して読んだんだけど、これはしかたがないわ、現代語でさえわかりにくい。とてもハイコンテクストというか、時代風俗の十分な知識がないと理解できない文章なのであった。
増村保造の映画の印象が強いので、ひたすら蕩尽を続ける世之介に、閉塞した社会への孤独な抵抗者の姿を重ねていたのだけれど、西鶴からそれを読み取るのは、よほど深読みしないと難しいみたいだ...
心で犯す罪
[a]
ベス ヘンリー / 本の友社 / 2000-06
図書館で借りて読んだ。81年にピュリッツァー賞を受けた戯曲。映画にもなっているし、検索してみると日本でも頻繁に舞台で上演されているようだ。
フィクション - 読了:「好色一代男」「世界はゴ冗談」「屋根裏/みすず」「心で犯す罪」
歴史と私 - 史料と歩んだ歴史家の回想 (中公新書)
[a]
伊藤 隆 / 中央公論新社 / 2015-04-24
高名な日本近代史研究者の回想録。政治的には右の人で、初期の「新しい歴史教科書をつくる会」に参画したりしている。
面白い内容であった。どうやらけっこう性格のきつい方らしくて、言いたいことを云って波風を立てるというくだりが多い。一緒にオーラル・ヒストリー研究を進めていた弟子筋の御厨貴さんとも、いまは絶交状態であるとあっさり明かしている。
勘三郎、荒ぶる (幻冬舎文庫)
[a]
小松 成美 / 幻冬舎 / 2010-02
パリ・コミューン(下) (岩波文庫)
[a]
H.ルフェーヴル / 岩波書店 / 2011-10-15
残念ながら、これはさっぱり頭に入らなかった...
男は邪魔! 「性差」をめぐる探究 (光文社新書)
[a]
高橋 秀実 / 光文社 / 2013-04-17
地方議会には生協運動などを母体にした地域政党の議員さんがいることがあるけど(東京生活者ネットワークとか)、決まって女性であるような気がする。あれは女性じゃないといけないのかしらんと不思議に思っていたのだが、著者の高橋さんも疑問に思ったそうで、神奈川ネットワーク運動に取材している。取材に応じた議員さんと、男は別にいなくてもねえという会話になり(そういう主旨の本なのである)、「男性がいたら幅が広がるのかしらね」「どうなんでしょうね」と首をかしげていると、女性スタッフが「あれ、前、男性いたでしょ」「えっ」「あっ、いたね」「いた、いた」「いたことあるじゃん」「ごめんごめん」...「でも、いたからといって...」「幅は広がってないね」これには吹き出してしまった。
シャルリ・エブド事件を考える: ふらんす特別編集
[a]
/ 白水社 / 2015-03-07
ノンフィクション(2011-) - 読了:「歴史と私」「勘三郎、荒ぶる」「パリ・コミューン」「シャルリ・エブド事件を考える」「男は邪魔!」
高野山 (岩波新書)
[a]
松長 有慶 / 岩波書店 / 2014-10-22
(055)貧困の中の子ども: 希望って何ですか (ポプラ新書)
[a]
下野新聞子どもの希望取材班 / ポプラ社 / 2015-03-03
ドキュメント パナソニック人事抗争史
[a]
岩瀬 達哉 / 講談社 / 2015-04-02
内村鑑三の人と思想
[a]
鈴木 範久 / 岩波書店 / 2012-04-27
コケの自然誌
[a]
ロビン・ウォール・キマラー / 築地書館 / 2012-10-30
著者はコケを研究する植物学者にして、ネイティブアメリカン出身者として環境教育に関わっているという人。読み始めたら、自然の中で心のままに踊っているとエネルギーが満ちるのを感じます、とかなんとかといったくだりがあって、これはハズしたかなと危惧したんだけど、予想外に面白いエッセイであった。これも偏見かもしれないけど、精密な観察を旨とする自然科学者は文章も良くなるのかもしれない。中谷宇一郎とかさ。
謎の大富豪に、庭園にコケを植える手助けをせよと無理難題を押しつけられる章が面白かった。短編小説の趣がある。
ノンフィクション(2011-) - 読了:「高野山」「貧困の中のこども」「パナソニック人事抗争史」「内村鑑三の人と思想」「コケの自然誌」
2015年5月 9日 (土)
読んだ本を記録しないと溜まってしまう。とりあえず、最近読んだ本の中から...
空海はいかにして空海となったか (角川選書)
[a]
武内 孝善 / KADOKAWA/角川学芸出版 / 2015-02-24
唐に渡るまでの空海を辿る歴史書。
白隠禅画をよむ―面白うてやがて身にしむその深さ
[a]
芳澤 勝弘 / ウェッジ / 2012-12
あそぶ神仏: 江戸の宗教美術とアニミズム (ちくま学芸文庫)
[a]
辻 惟雄 / 筑摩書房 / 2015-04-08
禅画や浮世絵(北斎)など、江戸時代の仏教美術についての本。風外慧薫という江戸時代初期の禅僧の話が面白かった。平塚の博物館に達磨図があるらしい。
ノンフィクション(2011-) - 読了:「空海はいかにして空海となったか」「あそぶ神仏」「白隠禅画を読む」
計画策定と意思決定のための予測手法入門
[a]
スピーロス マクリダキス,スティーブンC. フィールライト / 同友館 / 1995-07
数年前に気になって、古本で入手したきり積んであった本。 Marridakis & Wheelwright (1989) "Forecasting Methods for Management", 5th ed. の翻訳。文字通り、ビジネス予測の実務家向け概説書である。
必要な時にぱっと参照できるように、ぱらぱらめくって内容を見渡しただけだけど、いちおう読了にしておく。ちょっと内容が古いけど、いやあ、これは良い本だなあ。手に入れておいてよかった。
データ解析 - 読了:「計画策定と意思決定のための予測手法入門」
Barlas, S. (2003) When choices give in to temptations: Explaining the disagreement among importance measures. Orginizational Behavior and Human Decision Processes, 91, 310-321.
「重要性についての論文をしみじみ読む会」(会員1名)、本年度第5弾。google scholarで引用回数28って、うーん、見なかったことにしようか... と思ったのだが、失礼ながらこれが意外な拾い物であった。
この論文のキーワードは「重要性についての信念」importance beliefなんだけど、長くて書きにくいので、以下のメモでは「主観的重要性」と略記する。また、観察された意志決定から(重回帰かなんかで)求められた属性の相対的重要性のことを「客観的重要性」と略記する。
いわく。客観的重要性と主観的重要性とはふつう合致しない。これは人が自分の決定過程について理解していないということの現れだと解釈されてきた[ここでSlovic & Lichtenstein(1971 OBH)を引用]。
これに対し、主観的重要性と選好を切り離そうという試みもなされてきた。主観的重要性は文化的に学習された規則の表れだとか(Reilly & Doherty, 1992 OBHDP)、課題の認知表象における役割に依存して決まるとか(Pennington & Hastie, 1988 JEP:LMC)、重要性の解釈がコミュニケーション上の目標によって異なるのだとか(Goldstein, Barlas & Beattie, 2001)。こうした試みは散発的で、統一的な理論的枠組みがない。
本研究ではこう提案する。主観的重要性、それは目標駆動的な知識転移ツールだ。
ひとは課題に繰り返し接することで課題についての抽象的な知識を構築する。この知識は、未知の選択肢の評価を可能にし、適切な情報の探索をガイドし、選好についての対人的コミュニケーションを促進する。
この知識のなかに主観的重要性も含まれている。主観的重要性は決定を通じて多彩な機能を果たすので、広範囲な高次目標に、選択そのものよりも強く影響される。また抽象的知識の量は過去経験によっても異なる。従って、決定において観察される相対的重要性と主観的重要性とのずれは、以下の要因に影響される。(1)意思決定者の目標。(2)意思決定者が主観的重要性に従って環境から情報を得ているか。(3)過去の記憶。
まず目標について。
通常の意思決定課題では、被験者は属性の束として記述された選択肢を与えられ選択する。このとき、ふつう次のように想定される。まず被験者は選択肢の属性の値を評価する。次にそれらを重要性の信念に従って重みづける。で、それらを結合して選択肢への全体的選好を形成する。[←Fishbeinモデル、というかその俗流版であるBass-Talarzykモデルのことね]
ここには、決定者は正しく選好するために主観的重要性を形成しているのだ、という暗黙の想定がある。確かにそういう面もある。でも意思決定の目標は目の前の課題の正確な遂行だけではない。課題の因果構造を理解すること自体だって目標のひとつだ。さらに、属性間トレードオフに対する自分の決定を自分と他者に対して正当化するというのも目標のひとつだ。[←深い... Tverskyいうところのreason-based choiceに通じる話だ。Hsee(1995 OBHDP), Jones&Wortman(1973 書籍), Tetlock(1997 in Goldstein&Hogarth(eds.))というのが挙げられている] おそらく決定者は自己イメージの拡張と他者からの承認を促進するような形で属性に主観的重要性を与えるだろう。
本研究では次の仮説について検討する:合理的な属性は、選択においてよりも重要性判断においてより重視され、誘惑的(tempting)な属性は重要性判断においてよりも選択においてより重視されるだろう。
つぎに情報収集について。
次の仮説について検討する:意思決定者は主観的に重要な属性についてより多くの情報を収集する傾向があるだろう。また合理的な属性のほうがより決定正当化に寄与するだろう。従って、合理的な属性のほうがより早くから処理されるだろう。また、決定者が情報のフローを制御している限り、合理的な属性において、客観的重要性と主観的重要性とのずれが小さいだろう[←ここのロジックはいまいちわからない]。
最後に記憶について。[ここ、よく理解できなかったので逐語訳したが。うーん、やっぱし何言ってんだかよくわからん...]
意思決定者が選択肢の誘惑的側面についての情報を能動的に検索していない場合でさえ、もし決定者が関連する過去経験を持っていたら、[誘惑的属性についての]情報が記憶から検索されるだろう。すでに論じたように、決定者が選択肢についてのより詳細な概念を利用できるようになり、選択肢の評価と情報の探索において重要性についての抽象的な信念に依存しなくなっている場合には、過去の記憶の内容が、重要性の諸指標のあいだの乖離を生みだす主要な原因となるだろう。Loewenstein(1996)が論じたところによれば、誘惑的属性について考慮することにより、ポジティブな経験は頻繁かつ即時的に生じるが、ネガティブな経験はあまり生じないし、即時的に生じることはない。多くの合理的属性についてはその逆が成り立つ。従って、過去の記憶は、誘惑的属性について考慮したことの結果として実際に生じたポジティブな帰結を含むが、合理的属性について考慮しなかったことの結果として生じたネガティブな帰結については含まないものと思われる。結果として、決定における誘惑的属性のインパクトは記憶へのアクセスが促進されたときに増大するだろう。従って本研究の最後の仮説は次のとおりである。先行経験へのアクセスは重要性の諸指標間の乖離を増大させる。
[まあいいや、ここまでを整理しておこう。理屈はよくわかんないけど、とにかく仮説は3つだ。(1)主観的重要性は合理的属性で高めになり、客観的重要性は誘惑的属性で高くなる。(2)決定のプロセスにおいて、合理的属性のほうが処理のスタートが早く、客観的重要性と主観的重要性のずれが小さい。(3)先行経験にアクセスすると客観的重要性と主観的重要性のずれが大きくなる。]
というわけで、実験。被験者は学生40名。
避妊法を選択させる課題[←おっとぉ...]。選択肢は10個: {卵管避妊手術、精管切除、混合経口避妊薬、プロゲスチン単独避妊薬、子宮内避妊器具、コンドーム、ペッサリー/子宮頚部キャップ、フォーム/クリーム/ジェリー、膣外射精、fertility awereness techniques [オギノ式みたいなものだろうか]}。属性は10個、うち5個が合理的属性(病気の予防になるか、とか)、5個が誘惑的属性(使いにくさ、とか)。医師と相談のうえ、各選択肢の属性の値を表す表をつくった。
要因はふたつ。どちらも被験者間。[おいおい、ってことは1セル10人かよ... コンピュータ実験なのに、しょぼいなあ...]
- A. 被験者に情報を選ばせるか(high control)、そこにある情報だけを使わせるか(low control)。前者では画面に属性のリストだけが出てきて、クリックすると値が出る[←結局、情報ボード法みたいなものか...]。被験者内操作。
- B. 表の選択肢に名前をつけて示すか(high memory access)、かわりに"Method A"というようなラベルをつけて示すか(low memory access)。被験者内操作。
課題は4つ。
- 選択ないし魅力評価。high control条件では選択肢ペア(総当たりで45ペア)をひとつづつ提示し、好きなだけ情報収集したのちにどちらか選択させたのち、選好の程度を評価。low control条件では表をみせ、各選択肢について魅力評価。
- 属性を重要性で順位づけ。
- 各属性が選択肢の危険性の指標として役にたつ程度と、喜ばしさ・便利さの指標として役に立す程度を評定。(誘惑的属性と合理的属性の定義が正しいかどうかの操作チェック用)
結果。
まず対象者ごとに属性の客観的重要性を求める。low control条件では、全体評価に対する回帰のR二乗を客観的重要性とする[←ここ、意味がわからない。もし説明変数10個の重回帰ならば、R二乗ではなく、たとえば投入によるR二乗の増分を使わないといけないし、説明変数はきれいに直交しているわけではないから、変数の投入順序が問題になってしまう。それとも10回単回帰を繰り返しただけ、すなわち単相関の二乗なのだろうか。でも"they were derived from holistic evaluations of the alternatives by means of a regresson analysis"っていっているしなあ...]。high control条件では、ペアのうち選んだ方への選好の強さを目的変数、ペアの属性の値の差を説明変数にした回帰のR二乗を客観的重要性とする[←上と同様の疑問がある]。
対象者ごとに属性の主観的重要性も求める。こちらは単に重要性の順位。
- 主観的重要性と客観的重要性の一致: 低い。相関0.27。
- 誘惑的属性・合理的属性が主観的重要性と選択に及ぼす効果: 10属性それぞれについて、主観的重要性と客観的重要性の順位の差の平均を求めると、合理的属性で主観的重要性のほうが高く、誘惑的属性は客観的重要性のほうが高い。
- controlの効果: high-control群において、客観的重要性より主観的重要性のほうが属性クリック数との相関が高い。しかしmemory accessがhighだと差がなくなる。さらに、high controlでは客観的重要性と主観的重要性の相関があるのに、low controlではがくんと落ちる。組み合わせで見ると、合理的属性は主観的重要性のほうが高いんだけど、high controlかつlow memory accessのときはそうでもなくなる。つまり、high control条件では合理的属性の主観的重要性の高さが情報探索をガイドし、それが決定に効いてしまう(過去記憶に頼れないとき=low memory accessのときは特に)。
[ほかに、要因が効いているのは主観的重要性じゃなくて客観的重要性のほうだとか、性差があるとか、いろいろ書いてあるけどパス。書き方がちゅっとわかりにくいよ、これ...]
考察。いろいろ書いているけど、省略。
うーん...
主観的重要性は合理的属性で高めになり、主観的重要性が高い項目はクリックされやすく、クリックさせると主観的重要性に合致した選択がなされやすい、というわけだ。
この研究、実験だけ見るとあんまり面白くなくて、すごく冷たくいっちゃえば、主観的重要性表明は社会的望ましさバイアスを受ける、情報収集プロセスを顕在化させると情報収集も社会的望ましさバイアスを受ける、よって決定も社会的望ましさバイアスを受ける... という、ごく当たり前の話なんじゃないか、という気もする。情報収集の操作(high/low control)と課題特性(選択/評価)が交絡している点も、なんというか、そんな設計でいいの? という感じだ(考察のところで防衛戦をやっているけど)。
じゃあ仮説構築までのロジックが面白いかというと、私の頭が悪いだけかもしれないけど、正直なところよく理解できない。すいません。
私にとってとても面白かったのは、冒頭の課題設定、風呂敷を広げるところであった。
著者のいうとおり、主観的重要性に関する議論は、それは実際の意思決定を反映しているか?という枠組みになりがちである。私自身そうだ。消費者調査では「Xを買うときになにを重視しますか」というような主観的重要性評定をよく用いるのだけれど、その回答は現実の購買行動や顧客満足における"キードライバー"の特定手段として解釈されるのが普通である。そういう文脈では、じゃあ回帰分析で間接的に推定した重要性とどっちが正しいんだ?とか、やっぱり調査対象者のいうことはあてにならない、アンケートはだめだ、これからはソーシャル・リスニングだ、いや行動経済学だ(←ほんとにこういうことを云う人がいる)... といった、宙に浮いたような話になりがちなのである。
いやいや、主観的重要性にはもっと積極的な意義があるはずだ。ある人が「Xを買うときにYを重視します」というとき、その発話は消費者を理解する上でなんらかの意味を持つはずではないか。と思うわけだけど、じゃあどんな意味があるの?と訊かれると、ちょっと言葉に詰まる。問題は、主観的重要性判断の心的プロセスについて十分な理論的枠組みがないということである。「主観的判断はバイアスを受ける」という表現自体、プロセスモデルが欠如している現れである(それは回答を真値とバイアスに分解しているに過ぎないわけだから)。
著者の視点ではこういうことになるだろう。主観的重要性は経験を通じて獲得された抽象的知識の一部である。それは決定プロセス初期の意識的な情報収集を支配し、また決定プロセス後期の正当化にも寄与する。そうそう、こういうのだ。こういう枠組みを考えないといけないんだよな。
考察に出てきた、ちょっと面白そうな言及をメモ:
- Keller & McGill (1994 J.Cons.Psy.): 属性のイメージ容易性は選択に影響するが、主観的重要性には影響しない
- Huffman (1997 Psych.Mktg.): 過去経験を精緻化させたとき、主観的重要性の高い属性に関する精緻化は選択と主観的重要性の両方に影響するが、主観的重要性の低い属性に関する精緻化は選択にしか影響しない [←よくわかんないけど、これは面白そうだ。仕事とも関係しそうだなあ]
論文:マーケティング - 読了:Barlas(2003) 「なにを重視しますか」と実際の重視点が一致しないのはなぜか
2015年5月 8日 (金)
三酔人経綸問答 (光文社古典新訳文庫)
[a]
中江 兆民 / 光文社 / 2014-03-12
本の主旨からは離れるけど、この原文のリズム感、ドライブ感といったらない。これは兆民の才能なのだろうか、それとも漢文読み下しというもの自体が持つ特性なんだろうか。ところどころ原文にあたっては、声に出さずに音読してウットリしていた。時間がないので現代語訳のほうで通読しちゃったんだけど、できれば原文で全部読み直してみたいものだ。
官僚制としての日本陸軍
[a]
北岡 伸一 / 筑摩書房 / 2012-09
日本近現代史 - 読了:「三酔人経綸問答」「官僚制としての日本陸軍」
マックス・ウェーバーを読む (講談社現代新書)
[a]
仲正 昌樹 / 講談社 / 2014-08-19
哲学・思想(2011-) - 読了:「マックス・ウェーバーを読む」
ランド 1 (モーニングKC) (モーニング KC)
[a]
山下 和美 / 講談社 / 2015-04-23
「不思議な少年」の著者による壮大な物語。連載開始時から単行本化を待っていた。とても面白い。
中2の男子と第6感(1) (ヤンマガKCスペシャル)
[a]
福満 しげゆき / 講談社 / 2015-04-06
ヒナまつり 8 (ビームコミックス)
[a]
大武 政夫 / KADOKAWA/エンターブレイン / 2015-03-03
スズキさんはただ静かに暮らしたい 1 (ゼノンコミックス)
[a]
佐藤洋寿 / 徳間書店 / 2015-04-20
こいいじ(1) (KC KISS)
[a]
志村 貴子 / 講談社 / 2015-03-13
千年の翼、百年の夢 (ビッグコミックススペシャル)
[a]
谷口 ジロー / 小学館 / 2015-02-20
この作品にしてもそうなんだけど、東日本大震災で日本人の感覚がちょっと変わったんじゃないか、という気がすることがある。時間の感覚というか、因果性に対する感覚というか...
清々と 3巻 (ヤングキングコミックス)
[a]
谷川史子 / 少年画報社 / 2015-04-24
清々と 4巻 (ヤングキングコミックス)
[a]
谷川史子 / 少年画報社 / 2015-04-24
私が尊敬してやまない職人的名手が、いたいけな少年たちの心を弄ぶべく確信犯的に世に問う、SF的なまでに清純な乙女たちの青春記。いやあ、巧いです。滅茶苦茶に巧い。2015年のマンガ表現のひとつの極北だと思う。溜息をつきながら頁をめくった。
しかし物語自体は、正直いってもう身の毛がよだつくらい大嫌いなタイプの話で(こんな!!美しい思春期など!! 実在しないっ!!)、その意味では苦痛であった。そのためときどき頁を閉じては、こいつらを全員光線銃で皆殺しにして... 建物ごと焼き払い... ローラーで平らにして... などと考えて精神の平衡を保っていたのであった。辛かった。
コミックス(2015-) - 読了:「ランド」「中2の男子と第6感」「スズキさんはただ静かに暮らしたい」「ヒナまつり」「千年の翼、百年の夢」「こいいじ」「清々と」
水色の部屋<下>
[a]
ゴトウ ユキコ / 太田出版 / 2015-04-15
母と息子のぎりぎりの関係を描くサスペンス。好き嫌いは別にして、読み手の心を揺らす傑作であった。
重版出来! 5 (ビッグコミックス)
[a]
松田 奈緒子 / 小学館 / 2015-04-10
腕~駿河城御前試合~ 3 (SPコミックス)
[a]
南條 範夫 / リイド社 / 2012-10-26
枕魚 (書籍扱い楽園コミックス)
[a]
panpanya / 白泉社 / 2015-04-27
カオスノート
[a]
吾妻ひでお / イースト・プレス / 2014-09-07
イムリ 17 (ビームコミックス)
[a]
三宅乱丈 / KADOKAWA/エンターブレイン / 2015-04-25
淡島百景 1
[a]
志村 貴子 / 太田出版 / 2015-04-14
ちいさこべえ 4 完 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
[a]
望月 ミネタロウ / 小学館 / 2015-03-30
山本周五郎「ちいさこべ」を震災後の日本に翻案した作品、最終巻。良いマンガだ。
コミックス(2015-) - 読了:「水色の部屋」「重版出来」「腕」「ちいさこべえ」「枕魚」「カオスノート」「イムリ」「淡島百景」
読んだ本が少し溜まってしまったので、記録しておく。まずはコミックスから。
かくかくしかじか 4 (愛蔵版コミックス)
[a]
東村 アキコ / 集英社 / 2014-07-25
かくかくしかじか 5 (愛蔵版コミックス)
[a]
東村 アキコ / 集英社 / 2015-03-25
いやあ、これには参った。降参。
読者によって胸撃たれるところは異なると思うが、私は最終話の、中年となった語り手のアップでたまらなくなってしまった。
おかあさんの扉4 セクシー四歳児 (オレンジページムック)
[a]
伊藤 理佐 / オレンジページ / 2015-02-02
新装版 海景酒店 HOTEL HARBOUR-VIEW
[a]
関川 夏央,谷口 ジロー / 双葉社 / 2015-04-08
田中圭一最低漫画全集 神罰1.1
[a]
田中圭一 / イースト・プレス / 2015-04-05
手塚治虫の絵柄でとんでもなく下品なギャグを連発し、著者の名を一躍高めた「神罰」(2002年)の増補版。ジャングル大帝の息子が色欲に溺れ、手塚先生に蹴られたりします。
コミックス(2015-) - 読了:「おかあさんの扉」「神罰1.1」「海景酒店」「かくかくしかじか」
2015年5月 7日 (木)
Abalo, J., Varela, J., Manzano, V. (2007) Importance values for importance-performance analysis: A formula for spreading out values derived from preference rankings. Journal of Business Research, 60, 115-121.
「重要性についての論文をしみじみ読む会」、本年度第4弾。著者らはスペインの人だそうだ。要するに、主観的重要性測定を順位づけ課題でやる、という話であった。
いわく。マーケティングはじめいろんな分野で、キー属性についての情報を集め、重要性とパフォーマンスを軸にとった散布図を描くことがよくある (importance-performance analysis, IPA)。4象限にわけて、これらの属性のパフォーマンスが足りない、これらはちょっとやりすぎだ、なんてやるわけだ。元祖はMartilla & James (1977 J.Mktg)。
さて、ここで属性の重要性をどうやって測るか。大きく二通りある。(1)リッカート尺度で重要性を評定してもらったりして、直接的に測る。(2)製品・サービスの全体評価についての回帰分析とかコンジョイント測定とかで間接的に測る。
Bacon(2003 IJMR)は直接測定を支持している。しかし属性の重要性評定は押しなべて高くなりがちである。Martilla & Jamesの手続きだとそもそも定性調査とかで大事な項目を選ぶところから始めるわけだから、なおさらである。また、回答者の関与が足りなかったり、熟達が足りなかったりして差がつかないこともある。
間接測定としては標準化偏回帰係数が使われることが多い。これは相対的重要性、すなわち人間の推論と選択についてのより現実的な見方なのだ[と、EdwardsやTversky&Kahneman(1981 Sci.)を挙げている。うぬぬぬ]。重要性などという難しいことを聞かずに済むのも利点。いっぽう問題点としては、(1)多重共線性が怖い。(2)全体評価と属性評価の関係は線形じゃないかも[と、Mittal et al.(1998, J.Mktg), Sethna(1982 Bus.Econ.)というのを引用]。なお、コンジョイント測定という手もあるけど、属性数が多いときは非現実的。
要するに、IPAにおいて一番頼りにできる重要性指標がなんなのか、事前に知るのは難しい。
そこで... 重要性の絶対評定じゃなくて、順位づけをしてもらうのはどうでしょうか。相対的指標になるし、答えやすいじゃないですか。
というわけで、提案手法は以下の通り。
対象者数を$n$, 属性数を$s$とする。重要な属性を1位から$k$位まで選んでもらう(タイなし)。対象者$j$が属性$i$に与えた順位を$g_{ij}$とする。これをスコア$h_{ij}$に変換する。もし順位が付与されなかったら $h_{ij} =0$、付与されたら$h_{ij} = ( k- g_{ij} + 1) / k$とする。
これを$j$を通じて平均したのを$m_i$とする。これだと属性間で差が出にくいので[←という、およそ本質的でないことが書いてある]、$m_i^{k/s}$と変換する。これを$P_i$とする。これを使いましょう。
後半は実例。流し読みした。
いやはや... 要するに、属性の重要性を順位づけさせ、それを平均し、差が出るように適当に変換して属性の重要性とみなしましょうというお話であった。云っちゃなんだが... いやいや!なにも云うまい!
論文:調査方法論 - 読了:Abalo, Varela, Manzano (2007) 属性の重要性ランキングで重要性を測りましょー
Gromping, U. (2009) Variable importance assessment in regression: Linear regression versus random forest. The American Statistician, 63(4), 308-318.
「重要性についての論文をしみじみ読む会」、本年度第3弾(おいおい... 予定ではとっくに第50弾のはずだったのに)。回帰における重要性と、ランダム・フォレスト(RF)における重要性を比較する。
1. イントロ。先行研究:
- 回帰において、説明変数に重要性を与えるというアイデア自体に対する批判: Ehrenberg(1990 AS) [←一橋大の暗い書庫でこのごく短いコメントに出会ったのが、重要性の問題に関心を持ったきっかけであった...思えば長い時間が経ってしまった]; Christensen(1992 AS); Stufken(1992 AS)
- Gromping(2007 AS): 線形回帰における分散分解ベースの重要性についてレビュー
- Chevan & Sutherland (1991 AS): 階層パーティショニング
- Theil & Chung (1988 AS): 情報量ベースのアプローチ
さて、ご存じのように最近ではRFが広く使われている。RFベースの重要性については:
- van der Laan (2006 Int.J.Biostat.): 因果的効果に基づく重要性概念[←ぎゃー、これ読まなきゃ]
- Ishwaran(2007 ElectronicJ.Stat.): MSEの縮減を、BreimanらのCARTのRFにおいて理論的に扱う。ちょっと修正すると閉形式で解ける、云々[←えええ?]
- Strobl et al.(2007 BMC Bioinfo.): 説明変数が無相関のとき、RF-CARTの変数重要性が不偏でないことを示し、代替案を提出
- Strobl et al.(2008 BMC Bioinfo.): 説明変数が無相関でないとき、上記の代替案がうまくいかないことを示し、「条件つき重要性」を提案[←たぶんこれのことだろう]
なお、RFは分類や生存モデルにも使えるけど、以下では回帰の文脈に絞る。またデータサイズが変数の数よりも十分大きい状況に絞る(そうしないと回帰と比較できないから)。
2.データセット説明。swiss fertility データ。Rについているswissというデータセットの元になったデータだそうである。
3.線形回帰と重要性。説明変数が無相関でない限り、R二乗を説明変数に分配しようとすると、説明変数の投入の順序によって変わってしまう。そこで...
- Lindeman, Meranda, & Gold (1980 書籍), Kruskal(1987 AS): 変数の数を$p$として、$p!$通りの順序すべてについてR二乗を分配し平均。以下LMGと呼ぶ。Budescuのdominance analysisも、Lipovetsky & Conklin のシャープリー値も、みんなこれと同じだ。[←そ、そうなんですか? ちょっとは違うじゃない? うーん、でも他ならぬGrompingさんの仰ることだからなあ...]
- Feldman(2005)のPMVD。[←数年前にFeldmanさんにお問い合わせしたことがあるのだが、査読論文にはしてない由であった]
というわけで、以下ではLMGとPMVDを比較する。
4.回帰のためのRF。まず回帰木について。ここでは二分木についてのみ扱う。アルゴリズムとして、
- BreimanらのCART。ノード中心からの偏差平方和が最小化されるように大きく育ててから枝を刈る。変数の型とかカテゴリ数とかでバイアスがかかっちゃう。
- Hothorn, Hornik, & Zeileis (2006 J.Comp.GraphicalStat.) のmultiplicity-adjusted conditional tests。各ノードについてまず育てていいかどうかの大域的検定をやって、それにパスしたらはじめて変数選択する。
でもって、RFについて。
- 一番有名なのはBreimanによるCARTのRF化(以下RF-CART)。RだとrandomForestパッケージ。
- Hothornらのconditional treeのRF化もある(Strobl et al., 2007 BMC Bioinfo., 以下RF-CI)。Rだとpartyパッケージのcforest関数。
ふつうはRF-CIのほうが個々の木が小さくなるんだけど、まあパラメータ次第である。
さて、重要性をどうやって測るか。まず、分類木ならばジニ係数、回帰木ならこれに類したaverge impurity reductionという手がある[←式が書いてないよ... どこかで読んだような気もするけど]。でもこれはバイアスがかかる。で、ある変数をpermuteしたときのMSE減少を使おうという路線が出てくる。これはもともとBreimanが出したアイデアで[←へー]、彼は結局使わなかったけど、現在ではこれが主流になっている。えーと、それぞれの木$t$について下式のOOB MSEを求め
$OOBMSE_t = \frac{1}{n_{OOB, t}} \sum_{i \in OOB_t}^n (y_i - \hat{y}_{i,t})^2$
$X_j$をpermuteしたときの上式の値との差を求めて、木を通じて平均する。単に$X_j$を用いたときのMSEと用いなかった時のMSEの差ではないことに注意。また、R二乗を分解してるわけじゃない点に注意。
5.swiss fertilityデータにすべての指標を適応。説明変数は5個。線形モデル(二次効果をふたついれる)のPMVDとLMG, {RF-CART, RF-CI}x{mtryを1,2}の4通り、計7通りについて重要性を求めた。mtryってのは枝分割のためにランダムに選ぶ候補変数の数のことね。
結果。LMGとPMVDはだいたい同じ。一か所、すごく違うところがあるんだけど(他と相関が高い変数の重要性)、そこのPMVDの信頼区間はやたらに広い。4種類のRFはLMG-PMVDともお互いとも違っている。RF-CIはmtryに強く影響される[←おー、なるほどー]。
... なんだかんだいっても実データでは何が起きてるかわからんわけで、本命は次節である。
6. シミュレーション。説明変数は4つ。期待値0, 分散1の多変量正規分布に従う。で、2変数$j, k$間の相関を$\rho^{|j-k|}$とし、$\rho$を-0.9から+0.9まで0.1刻みで動かす[←たとえば$\rho=-0.9$ならば、$X_1$と$X_2$の相関は$-0.90$, $X_1$と$X_3$の相関は$+0.81$, $X_1$と$X_4$の相関は$-0.73$ということであろうか。不思議な相関行列だ]。で、目的変数はこいつらの線形和に正規誤差が乗ったものとし、真の係数ベクトルを7つ用意する。たとえば$(4,1,1,0.3)'$とか。$R^2=0.5$となるように正規誤差を乗せる。こうしてサイズ1000のデータをつくり、重要性の算出を100回試行し平均する。手法はさきほどと同じく7通り。
結果。まずLMGは、真の係数が大きい説明変数の重要性が、相関の増大とともに低下する。いっぽうPMVDと相関との関係は複雑で、あんまり変動しないこともあればすごく変動することもある。
RF-CARTはLMGに近い。RF-CIはmtry=1のときはLMGにやや近いが、mtry=2になるとPMVDに接近する。とかなんとか。
RFのmtry依存性について。Breimanはmtryを$\sqrt{p}$にすることを薦めている。しかし回帰木ではもうちょい多めに$p/3$としたほうがよいとも言われておるし、$p$にしちゃえという説もある。本研究によれば、OOB-MSEを最小化するmtryは、モデルと相関構造によって変わるようだ。
重要性の指標もmtry次第で変わる。その事情は部分的には説明できるけど[略]、全容はいまだ不明。RF-CARTの結果がmtryによってあんまり変わらなかったのは木の数が多かったからであろう。云々。まあとにかく、RFベース重要性の挙動にはまだいろいろわからんことが多い。
7.変数重要性という概念について。そもそも変数重要性という概念自体がきちんと定義されていない。これまでの提案はアドホックなもので、重要性指標が目指すべきだとされる特性もいろいろである。たとえば、R二乗を非負に分配すべし、とか。昔は単相関の二乗とか(marginal路線)、標準化回帰係数の二乗とか(conditional路線)が用いられていた。Johnson&Lebreton(2004 ORM)がおおまかに定義した変数重要性概念に沿っているのがLMGとPMVD。LMGはのちにシャープリー値として正当化された。PMVDは開発者Feldmanさんいうところのexclusion特性を持っていて(真の係数が0だったら重要性も0だという特性)、conditional寄りである。
marginal路線とconditional路線はどっちが良いとも決めがたい。たとえば$X_2$→$X_1$→$Y$という因果関係がある場合も、$X_2$←$X_1$→$Y$という因果関係がある場合も、線形モデルで$X_2$の係数は0, つまりconditionalには重要性ゼロである。予測的観点からはそうだろう。ところが説明や因果の観点からは、前者の因果関係における$X_2$の重要性がゼロだということに同意できない人も多かろう。
RFの変数重要性は変数選択に用いられることが多い。変数選択も、説明・因果的観点からなされる場合と予測的観点からなされる場合とがある。説明・因果的観点に立つ人が「$X_2$→$X_1$→$Y$のときに$X_2$を選択したい」というならば、どのみち矢印の向きはデータからはわかんないんだから、$X_2$←$X_1$→$Y$のときに$X_2$を選んじゃうことも覚悟しないといけない。
説明・因果的観点からの変数選択という課題のために生まれたのがelastic netである。強く相関している変数のグループがあったとき、lassoではそのなかの代表選手だけが選ばれるが、elastic netではグループ全体が選ばれる。
話を戻すと、conditional極(LMGはこちら)とmarginal極があるとして、RFはmtryが小さいときにはconditional極の近く、mtryが大きくなるとちょっとmarginal側に動くわけである。Strobl et al.(2008)はconditional極に立って考えているので、RF-CIベースのパーミュテーション重要性を推す。でもmtryがpより小さい限り、重要性は完全にはconditionalにはなれないんですよ? [←なるほどねえ...]
RFとLMG, PMVDはいずれも、Achen(1982)いうところのdisperson重要性であって、反応のdispersionに基いている。説明変数によって引き起こされた分散は係数と説明変数間相関の両方に依存するから、dispersionに基づく重要性指標は説明変数間の相関に依存してしまう。つまり、相関している説明変数の重要性は高くなることを覚悟しないといけない。もしそれが嫌なら、相関の影響を取り除くという長い旅路に出る羽目になる。PMVDのようにデータに依存する込み入ったウェイトを導入するとか、Strobl et al.(2008)のようにconditional permutation という枠組みを導入するとか。あるいは全然異なる基盤を見つけるようとすることになるかもしれない。たとえば線型モデルの標準化係数とか。残念ながら、変数の数がデータサイズより多いときにはそういうのを見つけるのは無理だけどね。云々。
... 最後の考察が大変勉強になった。重要性の話を読んでいて一番イライラするのは、なぜ説明係数の分配というような特徴にこだわり、「こんな因果構造があったらこの重要性指標はこうなる」という話にならないのだろう、という点であった。なぜDAGから出発しないのか、と。その点、この著者の書いていることはいちいち腑に落ちる。
テクニカルな教訓としては、RFの重要性指標がなかなか安定しないという点。木の数が十分かどうか、気をつけないといけない。cforestの重要性がmtryにすごく影響されちゃうという点も全然気がつかなかった。
論文:データ解析(2015-) - 読了:Gromping (2009) 変数の重要性の評価: 線形回帰 vs. ランダム・フォレスト