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2015年11月27日 (金)

Skiera, B., & Spann, M. (2011) Using prediction markets in new product development. in Williams, L.V. (eds.), "Prediction Markets: Theory and Applications," Routledge. pp.75-86.
 タイトル通り、「新製品開発における予測市場」というテーマでの短い概観。なんかいいこと書いてあるかな、と思ってざっと目を通した。

 著者らいわく。
 製品開発において予測市場が役立つのは次の4つのステージである。

  1. アイデア生成とスクリーニング。すなわちアイデア市場。コミュニティをつくって製品アイデアを取引させ、議論させる。リードユーザの同定にも使える(Spann et al., 2009 JPIM)。スクリーニングにも使える(Soukhoroukova et al., 2012; LaComb et al., 2012; Bothos, 2009 IDEMの奴; Chen, et al., 2010 Interfaces)。こういうアイデア市場の予測市場との大きな違いは、(1)銘柄数が決まっていない、(2)証券の価値が実際の出来事の結果では決まらない。
  2. コンセプト開発とテスト。すなわち選好市場ないしコンセプト市場(Dahan et al., 2011; Dahan et al., 2010 JPIM)。銘柄数は胴元が決める。弱点はペイオフを終値なんかで決めなきゃいけないところだが、致命的な弱点ではない(Slamka et al., 2011)。
  3. 製品テスト。マーケティング担当者を投資家にして予測市場をやる。6人でも大丈夫だという話がある(van Bruggen et al., 2010 DecisionSupportSys.)。消費者を投資家にして予測市場をやり、質問紙調査とFGIを併用するってのもできる[と書いているが、引用しているのはSpann & Skiera (2003)、これはレビューだ。実例はあるのだろうか]
  4. 上市前予測。Dahan & Hauser (2002, JPIM)を見よ。利点は、(1)新情報へのリアルタイムな反応、(2)情報が勝手に集約される、(3)市場を一旦つくっちゃえば安上がり、(4)うまくすれば真の評価を申告するインセンティブをつくれる[そんなに簡単な話じゃないように思うけど。ここでForsythe et al.(1992 Am.Econ.Rev.)が挙げられている。M先生のリストにも入ってたやつだ。やっぱこれ読まなあかんか...気が重い]。

 実証研究の紹介。
 ドイツで映画の興収の予測市場を7ラウンドやった(CMXXというそうだ)。1ラウンドあたり1か月くらいで、参加者はオープン、成績の順位を競う。架空通貨市場、実金銭報酬はなし。ダブルオークション、24時間取引、空売りなし、指値注文。
 結果。各ラウンドの投資家は50人くらい。専門家の予測より当たった。 ただし、あんまり宣伝してない映画は情報がないので成績も悪かった。81本の映画の予測精度について回帰分析すると、価格のボラタリティと上映館数が効いていた。云々。
 
 テーマを依頼されてちゃっちゃと書いたんだろうな、というコンパクトな内容であったが(失礼ヲオ許シクダサイ)、頭の整理になりました。
 完全に未知の文献はそんなに出てこなかったが、未読の奴が結構あることに気が付いた。情けないなあ。

論文:予測市場 - 読了:Skiera & Spann (2011) 新製品開発のための予測市場

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