新製品が失敗したとき ~ブランド拡張失敗時のイメージ低下の文化差~

スターバックスが大好きな知人がいます。新製品は真っ先に試し,暇さえあれば店内のソファーでくつろいでいます。安くない値段なのに,ずいぶんリッチだねえ,と冷やかすと,真顔でいわく,「スタバのインスタント・コーヒーがあったらいいのに」。そ,そうかなあ...

企業がブランド拡張に失敗したとき,親ブランドはどのくらい傷を負うのでしょうか? シンガポール・南洋理工大学のシャロン・イングは,ブランド拡張の失敗が親ブランドを傷つける程度は文化によって異なると主張し,興味深い実験をおこなっています。

ブランド拡張とは,ある製品カテゴリで成功したブランドを他のカテゴリでも利用することです(例, 森永製菓のチョコレート「小枝」と,そのブランド拡張である「小枝アイス」)。現代では,多くの新製品はブランド拡張を通じて市場に導入されます。ブランド拡張は,既に構築されたブランド資産を存分に活用できるというメリットがある反面,新製品が失敗してしまった場合は親ブランドのイメージも傷ついてしまいかねないという大きな危険を伴います。

イングの研究は,ブランド拡張を成功させる要因ではなく,不幸にしてブランド拡張に失敗した場合に何が起きるか,という点に焦点を当てています。イングは,ブランド拡張の失敗の影響は東洋と西洋で異なると主張します。この主張の背後には,近年の認知心理学において注目されている<東洋人と西洋人は思考のスタイルがちがう>という一連の研究があります。

これからあなたはアメリカ人 ~プライミング・テクニック~

文化のちがいは人間の思考にどのように影響するのでしょうか。とても興味深い問題ですが,実証的に調べるのはとても難しそうです。真っ先に思いつく方法は,異なる文化のもとで育った人々,たとえばアメリカ人と中国人に,同じ実験や調査に参加してもらい,その結果を比較するというやり方でしょう。しかしそのような方法では,仮に結果にちがいがみつかったとしても,そのちがいが何を表しているのかはっきりしません。たとえば,それは文化による思考のちがいをあらわしているのではなく,アメリカ人と中国人では実験に参加してくれる人のタイプが違う,ということを示しているのかもしれません。

そこでイングは,最近の認知心理学的文化研究でよく用いられる,実験参加者を「アメリカ人的な思考をするように方向付ける」「中国人的な思考をするように方向づける」というテクニックを採用しています。このテクニックでは,まずアメリカの文化にも中国の文化にも親しんでいる人を集めます。この人たちにさまざまに工夫された課題を行ってもらい,この課題を通じて,この人たちをアメリカ人的な思考スタイル,ないし中国人的な思考スタイルへと導いていきます。こうしたテクニックをプライミングと呼びます。きちんと対象者を選び,十分に工夫した課題を使えば,プライミング手続きによって対象者の思考を特定のスタイルへと方向付けることができる,と考えられています。

イングの研究は,中国系シンガポール人学生を集め,アメリカないし中国を象徴するようなさまざまな写真を見せて,それを記憶し思い出してもらう,という手順を用いています。中国の写真をたくさん見せられた人は,知らないうちに思考のスタイルも中国人らしくなってしまうだろう,というわけです。こうして一時的に作り上げた「アメリカ人的に考えるように方向付けられた学生」「中国人的に考えるように方向付けられた学生」に対して,同じ本番課題を与え,結果のちがいを調べます。

親ブランドは傷ついたか?

さて,本番課題は次のようなものです。まず参加者に「このたびソニーはシンガポールで,ゲームができるPDAを新発売します」と伝えます。 学生はシンガポール人ですから,シンガポールで発売される新製品には高い関心を持つでしょう。いろいろな情報を集めてきちんと検討しようとするモチベーションが高いはずです。次に,その新製品について書いてある雑誌記事を読んでもらいます。その雑誌記事には,音質が良いことで知られるソニー製品であるにも関わらず,その新製品はなんと音質があまりよくない,と書いてあります。記事を読み終えた学生にこう尋ねます。「ここに2種類のくじがあります。ソニーのMP3プレイヤーが当たるくじと,別のメーカーのMP3プレイヤーが当たるくじです。どちらかいっぽうを引いてください。どちらにしますか?」

この架空のストーリーでは,ソニーは「ゲームができるPDA」という新しい製品カテゴリへとブランドを拡張し,失敗しています。ブランド拡張の失敗はソニー・ブランドのイメージを低下させ,既存カテゴリであるMP3プレイヤーにおいても,ソニー製品の魅力を下げるはずです。つまり,ソニーのくじを選ぶ人は減る,と予想できます。

ところが,実験の結果は複雑でした。

「アメリカ人的に考えるよう方向付けられた学生」たちは,ブランド拡張の失敗にも関わらず,多くの人がソニーのMP3プレイヤーを選びました。ところが,説明文を「このたびソニーはシンガポールで...」という身近な文面から,「このたびソニーはアジアで...」という,参加者とちょっと縁遠い文面に変更すると,結果は一転しました。ソニーのMP3プレイヤーを選ぶ人が減ったのです。このように,アメリカ人的な思考スタイルでは,情報をきちんと検討しようというモチベーションが低いとき,ブランド拡張の失敗によって親ブランドのイメージが下がりやすくなるようです。

「中国人的に考えるよう方向付けられた学生」では全く逆のパターンがみられました。「このたびソニーはシンガポールで...」という文面ではソニーを選ぶ人が減るのに対し, 「このたびソニーはアジアで...」という文面では減らなかったのです。中国人的な思考スタイルでは,情報をきちんと検討しようというモチベーションが高いときのほうが,ブランド拡張の失敗によって親ブランドのイメージが下がりやすくなるようです。

思考スタイルとモチベーションの役割

なぜこのような結果になるのでしょうか? イングは以下のように説明します。

イングが依拠する心理学的主張によれば,西洋人と東洋人では思考のスタイルが異なります。西洋人は情報を分析的に処理するのに対し,東洋人は情報を全体的に処理します。対立する情報に接した場合,西洋人はどうにかしてその対立を解消しようとしますが,東洋人は矛盾を受け入れ「中庸」を探そうとします。

ブランド拡張が失敗したとき,消費者は2つの対立する情報を処理しなくてはなりません。ひとつは,ソニーは音質が良い,というこれまでのポジティブなイメージ。 もうひとつは,ソニーの新製品は音質が悪い,という新しいネガティブな情報です。

西洋的な思考スタイルでは,情報のあいだの対立は 解消しなければなりません。

  • ですから,消費者はふたつの情報を両方考慮し,そこにある矛盾を 自分のなかで解決しようとします。この場合,親ブランドのイメージは さほど低下しません。ただし,このような心的処理には それなりの努力や時間が必要なので, この問題についてきちんと考えようというモチベーションが高い場合に しか,このような心的処理は行われません。
  • モチベーションが低いとき,消費者はこのような大変な処理の かわりに,もっと楽な方法を採ります。一方の情報を無視し, 他方の情報だけを採用するのです。 PDAはソニーの既存製品に近いカテゴリの製品なので, ソニーのPDAの音質が悪いという新しい情報は,これからソニー製品に ついて考える際に重要な情報であるように思われます。つまり, 優先度が高い情報です。ですから,モチベーションの低い消費者は, ソニーについてのこれまでのポジティブなイメージを無視し, 優先度が高い新しい情報だけに頼ることになるでしょう。 こうして親ブランドのイメージは低下します。

従って西洋的な思考スタイルでは, きちんと検討しようというモチベーションが低い 場合のほうが,親ブランドのイメージが低下することになります。

東洋的な思考スタイルは,対立する情報をそのまま受け入れる傾向があります。

  • ですから,きちんと考えようというモチベーションが低い消費者は, これまでのイメージも新しい情報も,両方をほどほどに受け入れて しまいます。この場合,親ブランドのイメージはあまり下がりません。
  • しかし,モチベーションが 高い消費者は,さすがにこの矛盾を放置できなくなり, どちらかの情報を採用せざるを得なくなります。 この場合,西洋的な思考スタイルの場合と同様に,新情報のほうが 優先度が高いとみなされ,このネガティブな情報だけに頼って 判断することになります。 こうして親ブランドのイメージは低下します。

従って東洋的な思考スタイルでは, きちんと検討しようというモチベーションが高い 場合のほうが,親ブランドのイメージが低下することになります。

著者はこの説明に基づき,失敗した新製品がブランドの既存製品とかけ離れた製品だった場合や,新製品が成功した場合についても実験を行い,結果が予測と一致することを示しています。

この研究は,認知心理学者ニスベットらの文化差研究の枠組みをマーケティング分野に応用したものだといえます。ニスベットらの研究については,彼らの著書「木を見る西洋人 森を見る東洋人」で知ることができます。文化差の認識的基盤を指摘する彼らの研究は,大変興味深い反面,多様な個人差を「東洋」「西洋」というステレオタイプで覆い隠しているに過ぎないという批判も受けているようです。

この研究の知見を目にすると,私たちの想像はさまざまに膨らみます。たとえば,もしスターバックスがインスタントコーヒーを出して,それが残念ながらおいしくなかった場合,日本ではコアなスタバマニアが離れていき,アメリカでは逆にライト・ユーザーが離れていくのだろうか... というふうに。グローバル化した社会におけるローカライズの必要性について示唆を与えてくれるという点で,この研究はとても興味深いものだと思います。

いっぽう,消費者理解において「東洋」「西洋」という視点が持つ意義については,少し冷静になっておく必要があると思います。文化差は,消費者の多様性を説明する切り口の一つに過ぎません。ひとくくりに日本といっても,そこには多様な消費者が存在し,ダイナミックにその姿を変えています。ひょっとすると,東京のリッチな30代ホワイトカラーは,同じ日本の50代ブルーカラーより,ニューヨークのリッチな30代ホワイトカラーと共通している面が多いかも知れません。また,ちょうどこの実験の参加者がそうであったように,私たちはある時には東洋的に思考し,ある時には西洋的に思考するのかもしれません。

消費者の多様性とダイナミズムを,スタティックな枠にはめ込むのではなく,さまざまな分析軸の重ねあわせのなかで捉えること。東洋と西洋という大きな枠組みを,固定的なステレオタイプとして受け取るのではなく,人間を捉えるたくさんの分析軸のなかのひとつとして捉え直すこと。文化差の心理学的研究は,そうすることではじめて本来の価値を持ち始めるのではないか... という気がします。

Ng, S. (2010) Cultural orientation and brand dilution: Impact of motivation level and extension typicality. Journal of Marketing Research, 47(1), 186-198.

要約

本研究は,ブランドの希薄化,ならびに動機づけやブランド拡張の典型性がブランドの希薄化を緩和する効果における,文化間の差異を検討する。近年の研究では,矛盾する情報の扱い方に文化が影響すると指摘されている。これらの知見に基づき,本研究では,ブランド拡張の失敗に対する反応が,東洋人と西洋人とで異なると予測する。西洋人に関する先行研究では,典型的拡張の失敗がもたらす希薄化は,動機づけが高い場合に小さい,と示唆されてきた。いっぽう本研究は,東洋人の場合は動機づけが低い場合に小さい,と論じる。非典型的拡張では逆のパターンの結果となる。これらの予測と,想定された心的過程について,3つの研究によって裏づけを得ることができた。

1. 問題

  • ブランド拡張が失敗したときの消費者の反応は, 文化によって異なるか?
  • 文化による差異は,動機づけの水準とブランド拡張の 典型性によって緩和されるか?

2. 理論的枠組み

  • ブランド・エクイティの希薄化
    • 既存ブランド名を活用して新製品を投入し,それが 失敗した場合,親ブランドのエクイティが希薄化されて しまう。
  • 動機づけと典型性の影響
    • ブランド希薄化に影響する要因として動機づけ水準が 指摘されている。 矛盾する情報がある場合, 動機づけ水準が低いときには 一部の情報しか処理されないと考えられている(二重過程理論)。 ただし,旧情報と新情報のどちらに焦点が当たるかは意見が分かれる:
      • 旧情報に焦点があたるという立場(例, 一貫性バイアス)。 この立場からは,動機づけ水準が低いと親ブランドの ブランド希薄化効果は小さくなると予測される。
      • 診断的diagnisticな情報(すなわち新製品の情報)に 焦点があたるという立場(例, Chaikenら)。 この立場からは,動機づけ水準が低いと親ブランドの ブランド希薄化効果は大きくなると予測される。
    • 上記の対立はブランド拡張の典型性を考慮することで統一的に 理解できる(Gurham-Canli&Maheswaran,1988)。
      • 既存製品から遠い拡張が失敗した場合,その情報は親ブランドに とって診断的ではないので, ブランド希薄化効果はより小さくなる。
      • 既存製品に近い拡張が失敗した場合,それは診断的な情報なので, 動機づけ水準が低いほうがブランド希薄化効果が大きくなる。
    • 仮説: 新製品のある属性のパフォーマンスが 期待を下回ったとき,親ブランドのその属性のパフォーマンスも 低く評価される。この効果は,
      • H_1a: 西洋人の場合,典型性の高い拡張では, 動機づけ水準が低いときに効果が大きい。
      • H_1b: 西洋人の場合,典型性の低い拡張では, 動機づけ水準が高いときに効果が大きい。
  • ブランド希薄化における文化差
    • 先行研究は西洋を中心に行われてきた。 いっぽう,矛盾を起こしている二つの情報(すなわち既存ブランドと新製品) がある場合,西洋人は矛盾の解決を目指したり,片方の情報のみに 注目するのに対し,東洋文化では矛盾を受け入れ, 中間的な立場を探索する傾向があると指摘されている(Nisbettら)。
    • 従って,動機づけが低い場合,東洋人は両方の情報を処理するだろう。
    • いっぽう動機づけが高い場合,
      • 既存製品から遠い拡張が失敗した場合,その情報は親ブランドに とって診断的ではないので, ブランド希薄化効果はより小さくなる。
      • 既存製品に近い拡張が失敗した場合,それは診断的な情報なので, ブランド希薄化効果がより大きくなる。
    • 仮説: 新製品のある属性のパフォーマンスが 期待を下回ったとき,親ブランドのその属性のパフォーマンスも 低く評価される。この効果は,
      • H_2a: 東洋人の場合,典型性の高い拡張では, 動機づけ水準が高いときに効果が大きい。
      • H_2b: 東洋人の場合,典型性の低い拡張では, 動機づけ水準が低いときに効果が大きい。
  • ブランド拡張効果
    • 新製品が成功した場合はブランド・エクイティが向上する (ブランド向上)。
    • 動機づけが高いとより精緻な処理が行われ,態度は極化するだろう。
    • 整合的な情報の処理には文化差がないので, 西洋人も東洋人も同じパターンを示すだろう。
    • 仮説:
      • H_3: ブランド向上の程度は,東洋人でも西洋人でも,動機づけが 高いときに大きい。

3. 実験1

  • 典型的拡張において,否定的情報がフィードバックされたことによる 効果を調べる。西洋文化的/東洋文化的方向づけのアクセス容易性を プライミングによって操作する。
  • 実験計画: 文化プライム(US vs 中国) x 動機づけ(高 vs 低)。どちらも被験者間操作。拡張の典型性は高めに固定。
  • 対象者: 中国系シンガポール人学生 (中国文化と西洋文化の両方に親しんでいる)。セルあたり26名。
  • 手続き: コンピュータで実験。
    • 本課題とは「無関係」だと称した課題を与える。 課題はプライム刺激の理解と記銘・再生を必要とする。
      • USプライム条件... プライム刺激はUSの文化的アイコンの写真。
      • 中国プライム条件... プライム刺激は中国の文化的アイコンの写真。
    • 文章を読ませる。 「このたびソニーはXXXで,ゲームができるPDAを新発売します」
      • 高動機づけ条件... XXXは「シンガポールで」
      • 低動機づけ条件... XXXは「アジアで」
      (ソニーにとっての「ゲーム機能つきPDA」の典型性は高く,文化間で 差がないことを別途確認済み)
    • 新製品についての雑誌記事を読ませる。
      • そこには,デザイン, バッテリー持続時間,音質,価格についての情報が書かれている。
      • 記事によれば,その新製品は音質が悪い。
      (上記4つの属性がPDA購入において重要であり,かつソニーは どの属性でも高い評価を得ていることを別途確認済み。)
    • 評定課題。
      • ソニーについて,上記4属性
      • 新製品について,上記4属性
      • 新製品の典型性
      • ソニーと新製品とが合致しているかどうか
    • 「ソニーのMP3プレイヤーがあたるくじ」と「クリエイティブ・ゼンの MP3プレイヤーがあたるくじ」のどちらかを選ばせる。
    • 記事の感想を聴取,操作チェック質問。
  • 結果:
    • ソニーの音質評定: 交互作用が有意。USプライム条件では 低動機づけで高く,中国プライム条件では高動機づけで高い。
    • (別に用意したコントロール群との 比較によれば) US-低動機付け群と中国-高動機付け群でのみ ブランド希釈化が生じている。
    • 記事の感想を分類。 USプライム条件では,低動機付け群のほうが雑誌記事を重視。 中国プライム条件では,高動機づけ群のほうが雑誌記事を重視。
    • ソニーのくじ選択率は,US-低動機付け群と中国-高動機付け群で低い。
  • 考察:
    • 仮説H_1a, H_1bが支持された。
    • しかし,文化のどんな次元が文化差をもたらしたのかがわからない。 実験2では,文化ではなく,処理スタイルを直接的に操作する。
    • 別の説明も可能。対立する情報の処理に文化差があるのではなく, 中国プライム条件ではブランド名のほうが診断的情報となった のではないか。実験2では,拡張の典型性を操作して検証する。

4. 実験2

  • プライミングによって処理スタイルそのものを操作し, さらに典型性の効果を調べる。
  • 実験計画: 処理スタイル(分析的 vs 全体的) x 動機づけ(高 vs 低) x 拡張の典型性(高 vs 低)。すべて被験者間操作。
  • 対象者: シンガポール人学生。セルあたり14~15名。
  • 手続き: コンピュータで実験。動機づけ操作は実験1と同じ。
    • 文章を与え,指定した代名詞に丸をつけさせる。
      • 分析的処理条件... 自己関連語(I, me)に丸をつけさせる
      • 全体的処理条件... 対人関係関連語(we, us)に丸をつけさせる
    • 文章を読ませる。 「このたびノキアは新しい携帯電話を発売しました。その製品には...」
      • 高典型性条件... 「画像安定機能がついています」
      • 低典型性条件... 「ビデオ会議機能がついています」
      (処理スタイル間で典型性に差がないことを別途確認済み)
    • 新製品についての雑誌記事を読ませる。
      • そこには,外観,使いやすさ,ソフトウェア,カメラの画質に ついての情報が書かれている。
      • 記事によれば,その新製品は使いにくく,画質が悪い。
    • 評定課題。
      • ノキアについて,上記4属性
      • 新製品について,上記4属性
      • 新製品の典型性
    • 記事の感想を聴取,操作チェック質問。
  • 結果: ノキアの画質評定で,3次交互作用が有意。
    • 高典型性条件では,分析的処理条件では低動機付け条件のほうが 評価が低く,全体的処理条件では高動機付け条件のほうが 評価が低い。
    • 低典型性条件ではパターンが逆になる。
  • 考察:
    • 仮説を支持。
    • 実験1での代替説明を反証。

5. 実験3

  • ブランド拡張が成功した場合について調べる。
  • 実験計画: 文化プライム(US vs 中国) x 動機づけ(高 vs 低) x 拡張の成否(成功 vs 失敗)。すべて被験者間操作。
  • 対象者: シンガポール人学生。セルあたり14~15名。
  • 手続き: コンピュータで実験。動機づけ操作は実験1と同じ。
    • プライム課題。実験1と同じ。
    • デルが新発売したデジタルカメラについての説明文を提示。 画質,カスタマイズ,使いやすさ,価格の情報が含まれている。
      • 拡張成功条件 ... 画質がよく使いやすい
      • 拡張失敗条件 ... 画質が悪く使いにくい
    • 評定課題。
      • デルについて,上記4属性
      • 新製品について,上記4属性
      • 新製品の典型性
    • 記事の感想を聴取,操作チェック質問。
  • 結果: デルの画質評定で,3次交互作用が有意。
    • 拡張成功条件では,US・中国を問わず,低動機づけで低評価。 プライム条件との2次交互作用なし。
    • 拡張失敗成功条件では,USでは低動機づけで低評価, 中国では高動機づけで高評価。
  • 考察: 仮説を支持。

6. 一般的考察

  • 理論的貢献
    • 西洋人と東洋人の情報処理のちがいを,マーケティングの文脈で示した。
    • ブランド希薄化はこれまでカテゴリ化の観点から検討されていた。 そこに情報の統合という視点を導入した。
    • ブランド希薄化を緩和する変数のはたらきが, 文化によって異なることを示した。
  • 実務的示唆
    • ブランド管理戦略のローカライズの必要性を 示唆。 例) 東洋・高関与製品・典型的拡張という組み合わせは要注意。 失敗すると大変なことになる。サブブランディングのほうが よろしかろう。
    • コミュニケーション戦略のローカライズの必要性を示唆。 例) ブランドがPR上の危機に陥った際,東洋では関与の高い人が ネガティブな態度に,西洋では関与の低い人がネガティブな 態度になると思われる。
  • 限界と将来の方向
    • 参加者はすべて多文化的社会に属していた。単一文化での研究が必要。
    • 親ブランドがポジティブな評価を得ていない場合についての検討も必要。

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このページは、2010年4月 9日のブログ記事です。

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