elsur.jpn.org >

« 2007年6月 | メイン | 2007年8月 »

2007年7月29日 (日)

Bookcover 「非国民」のすすめ (ちくま文庫) [a]
斎藤 貴男 / 筑摩書房 / 2007-07

Bookcover テレビニュースは終わらない (集英社新書) [a]
金平 茂紀 / 集英社 / 2007-07-22

Bookcover ロストジェネレーション―さまよう2000万人 [a]
朝日新聞「ロストジェネレーション」取材班 / 朝日新聞社 / 2007-07-06

ノンフィクション(-2010) - 読了:07/29まで (NF)

Bookcover 毎日かあさん4 出戻り編 [a]
西原 理恵子 / 毎日新聞社 / 2007-07-20

Bookcover 機動旅団八福神 6巻 (BEAM COMIX) [a]
福島 聡 / エンターブレイン / 2007-07-25

コミックス(-2010) - 読了:07/29 (C)

2007年7月23日 (月)

 その日は珍しく定時前に会社を出た。夕暮れの電車で吊革にぶらさがって窓の外を眺めていたら,目の前に座っている人が席を立ったので,代わりに腰を下ろした。まだ帰宅ラッシュが始まる前の時間で,各駅停車の電車がドアを開け閉めするたび,立っている人はまばらになりはじめていた。
 鞄から本を出すのも億劫で,床に目を落としてじっとしていたのだが,ふと,左隣に座っている男が小刻みに震えているのに気が付いた。
 黒いスーツに地味なネクタイを締めた小太りの男が,膝の黒いショルダーバッグの上で少年漫画誌を性急にめくっている。その両腕がぶるぶると震えている。肉のついた丸っこい左手は,堅く握りしめられて血の気を失っており,雑誌の端を押さえるようにして鞄にきつく押しつけられている。右手は電話帳を繰るような勢いで雑誌を何十頁もめくり,時折乱暴にページを飛ばしたり,また戻ったりしている。
 体調が悪いのか,小便でも我慢しているのか,と横目でのぞき込むと,食いしばった顎とこめかみが,時折ぴくぴくと痙攣している。眼鏡の奥の細い目は膝の上に向けられているようだが,はっきりしない。首筋は贅肉が襟からはみ出して盛り上がっており,色白な肌が薄赤く染まり汗で湿っている。小刻みで荒い呼吸に時々,溜息のような吐息が混じり,噛み締めた歯の奥からごく小さく,なにかを激しく罵るような呟きが聞こえるような気がする。
 突然両手が,雑誌をバシンと鞄に叩きつける。息を深く吐いて,空いた両手で再び雑誌を握るが,もうページをめくるのではなく,引きちぎるような動作で強く力をかけ,また手を離す。両腕がまた小刻みに震えはじめる。
 なにか激しい怒り,激しい憤りのようなものが,小太りの男を繰り返し繰り返し苛んでいるように見える。その感情の強さに,まず俺は呆然とした。こんな純粋な激情を目の当たりにすることは滅多にないだろう。なにか映画の一場面を見ているような気さえする。しかも男の怒りは,男がそれを必死で押し殺すたびに,ますます圧力を増しているように見えるのだ。
 俺は少し怯えてしまい,膝を思い切り閉じて少しでも男から離れようとする。一瞬,いま突然男がわけのわからない叫び声を上げて,右肘を俺に叩きつけたらどうしよう,などと考える。身を縮めた俺は男と数センチの距離を空けているが,左ポケットが財布で盛り上がっていて,運悪く財布は小銭でいっぱいで,その部分が依然として男に触れたままなのが気にかかる。まさか,この財布の出っ張りのせいで機嫌を損ねたりはしないだろうけど,いや,しかし。。。落ち着きなく辺りを見渡したが,小太りの男の異常に気づいている人は誰もいないようだ。男の左側の女性は友人との会話に余念がない。ドアの前では若い母親がベビーカーを両手で支えながら吊り広告を眺めている。向かいのシートに座った老人と中年の男は揃って居眠りしている。その隣,ちょうど俺の正面に座っている,ヘッドホンをつけて目を閉じている若い男だけが,異変に気づきはじめたようで,薄目を空けてちらちらとこちらを伺っているように見えるのだが,男の様子を気にしているのか,それとも不自然に身を縮めて緊張している俺を不審に思っているのかはわからない。
 電車は俺が降りる駅のひとつ手前を発車したところだ。男の拳も吐息もまだ震えている。時折両手が鞄の端を強く強く握りしめ,離しては,投げやりに雑誌に手を叩きつけ,何かを罵り,また握りしめる。感情とはこんなにも持続するものだろうか? いったいどんなひどい目にあえば,これほどに長く震え続けることができるのだろうか?
 ふと,これは全部なにかの冗談なのではないか,という考えが浮かんだ。あるいは芝居の稽古とか。劇団の鬼教師に「今日の課題は『怒っている男』のエチュード,稽古場はこの電車です,さあおやりなさい」と命じられ,男はその課題を完璧にこなしていて,それを遠巻きに観察している同期生が「マヤ,おそろしい子」などと呟いているとか。もちろんそんなわけはない。小太りの男はいま激しい感情に囚われ,それを必死で制御しようとしながら,かえってその感情を増幅させているのだ。いっそいますぐに,極力さりげなく席を立って,難を逃れるべきだろうか?

 どこで読んだのか忘れたけれど,なぜ毎日日記をつけるのか,と問われた人が,川の水のように流れていく日々を少しでもつなぎ止めておきたいから,と答えていた。ネットに溢れるたくさんのブログも,その背後にはそういう感覚があるのかもしれない。
 実は大きな意味を持っているのに,気づかれないまま忘れ去られてしまう,そんな細かな事柄が,この平凡な日常には溢れているのではないか。そういう漠然とした焦りが,たしかに俺のなかにもある。でも,言葉で書き留めれば時間が止まるというのは錯覚だ。緊張感のない言葉をいくら費やしても,流れ去る日常を止めることはできそうにない。
 ようやく着いた下車駅のホームで,背後でドアが閉まる音がするのを確かめてから振り返り,ガラス越しに男の顔をまともにのぞき込んだ。男はなにかにじっと耐える人のように,両手を鞄の上に揃えて目を閉じていた。あっという間に男の姿が消え,遠ざかる電車がカーブで見えなくなるのを,立ちつくしてぼんやりと見送った。
 人波が消えて静かになったホームから,改札に通じる階段を一歩一歩降りながら,俺はいまなにか大変なものを見たような気がするのだが,それがなんなのかはっきりしない,と思った。そこにはなにか大事なもの,忘れてはいけないものがあったような気がするのに。でも俺はすぐにこのことを忘れてしまうだろう。激しい感情を反復し増幅させて身を苛んでいた小太りの男のことを,俺はすぐに忘れてしまうだろう。それとも,詩人がそうするようなやりかたで,この一瞬をえぐり取ることができるなら,流れていくこの毎日を,ほんの少しでもせき止めることができるだろうか?

 太った男が怒りに震えながら
 地表を滑るように移動していく
 現在地点が黒い軌跡を描く
 緯度と経度が刻々と変わる
 指先を引きつらせながら川を渡る
 荒い息をこらえながら山を突き抜ける
 爪が手のひらを抉って血がにじむ
 毛穴から下着へと憤りが染みこむ
 いつか空は黒くなる
 太った男は座ったまま暗闇を疾走する
 もうただの太った男には戻れない
 怒りに震える太った男

雑記 - 怒りに震える太った男

2007年7月22日 (日)

Bookcover シャドーワーク―知識創造を促す組織戦略 [a]
一條 和生,徳岡 晃一郎 / 東洋経済新報社 / 2007-02
先週の通勤本。ここでいうシャドーワークとは,家事や子育てのことではなくて,従業員が自発的にやるインフォーマルな仕事のこと。面白い本だったが,事例が多いのでついつい納得してしまうところが,この種のビジネス啓蒙書の怖いところだ。よく考えると,どうもわからない点もある。
 大企業の社員を対象にした調査をやって,社内協働的なシャドーワークが多いか,社外とのパートナーシップに基づくシャドーワークが多いか,という2軸で4象限にわける。で,その企業の競争力とのクロス表をとると,競争力が高い企業ほど,4象限のうち2軸両方がプラスである「プロデューサー型社員」の割合が大きいという。
 なるほど,面白い調査だなあ,とは思うが,ではプロデューサー型社員の割合を高めれば企業の競争力が高くなるのかどうか,その辺に疑問を感じる。第一に,社員が異業種との接点を持とうにも,それなりの会社に勤めてないと相手にされないだろう。業界で地位を占めているとか,独自の資源を持っているとか,そういう看板があるからこそ,社外とのネットワークを築けるのだ。ということは,社外的シャドーワークは競争力の源泉ではなくて,その会社の競争力の高さの結果なんじゃなかろうか。
 第二に,そもそも業務内容からして社外と接点を持っても仕方ない,という場合があると思う。単純労働集約的な業務内容で,技術革新によるイノベーションが難しく,ただQCだけが求められている,とか。でもって,そういう業務を主としている会社の競争力は,数字上は低くなるんじゃないかしらん。
 とこうして書き出してみると,経営方面の知識の乏しさに我ながら呆れてしまうのだが,そこをあんまり卑下してもしょうがない。ともあれ,社内協働と個人的スキルアップとのバランスをどう保つかという問題は,俺のような木っ端サラリーマンにとってさえ,いささか切実なのである。

Bookcover 指揮のおけいこ (文春文庫) [a]
岩城 宏之 / 文藝春秋 / 2003-01

Bookcover 人材コンサルタントに騙されるな! (PHP新書) [a]
山本 直治 / PHP研究所 / 2007-07-14
著者は74年生まれで,人材コンサルタントに転職後,2年目でこの本を書いた由。いい度胸だ。。。まあ勉強になったからいいけどさ。

Bookcover 何も起こりはしなかった―劇の言葉、政治の言葉 (集英社新書) [a]
ハロルド ピンター / 集英社 / 2007-03

ノンフィクション(-2010) - 読了:07/23まで (NF)

Chin, W.W. (1998) Issues and Opinion on Structural Equation Modeling. Management Information Systems Quarterly, 22(1)
どういう雑誌か知らないが,全文がwebで公開されている。SEMの使い方についてまとめた短いコメント。会社で変なときに待ち時間が出来たので,その隙に目を通した。
formativeな指標はふつうのSEMではモデリングできないので,PLSをつかえ,とのこと。そんなあ。。。このご意見は,この人がPLSの専門家だからか,それとも98年当時は一般にそう考えられていたのか。それとも,もしや俺が知らないだけで,いまでもformativeな指標があるときはPLSを使うのが普通なのだろうか。

論文:データ解析(-2014) - 読了:07/22まで (A)

Bookcover おうちがいちばん 2 (バンブー・コミックス) [a]
秋月 りす / 竹書房 / 2007-07-17

Bookcover さよなら絶望先生(9) (講談社コミックス) [a]
久米田 康治 / 講談社 / 2007-07-17

Bookcover 女いっぴき猫ふたり 2 (アクションコミックス) [a]
伊藤 理佐 / 双葉社 / 2007-07-17
この人には,自宅を建てるまでの悲喜こもごもを描いた「やっちまったよ一戸建て」という名エッセイマンガがあるのだが,その有名な一戸建てを売ってしまって,またマンションに引っ越したのだそうだ。うわー。。。おしどり夫婦で売ってたタレントが,突如離婚するようなものだなあ。

コミックス(-2010) - 読了:07/22まで (C)

2007年7月18日 (水)

Bookcover 賭博者 (新潮文庫) [a]
ドストエフスキー / 新潮社 / 1969-02-22
ここのところの通勤本。ロシアから祖母がやってくるあたりから,俄然面白くなった。月並みな感想かもしれないけれど,ギャンブルが嫌いな俺のような人間にさえ,主人公の破滅的な性向の一端が自分のどこかにも潜んでいるように思えて,おそろしくなる。

フィクション - 読了:07/18まで (F)

2007年7月17日 (火)

 閉店間際のコーヒーショップのソファー席に腰を下ろし,コーヒーを一口啜ってカップをテーブルに置いたところで,どさっという音がして,左足が付け根から外れた。見下ろすと,ちぎれた太ももがジーンズのなかに引っかかり倒れかかっていて,足のかたちが不自然に歪んでいる。次第に鈍い痛みが広がりはじめる。困ったな,どうしたものか,ともう一度コーヒーを啜り,それから身体を屈めて,両手ですそを押し下げるようにして,ちぎれた足を押し上げようとするのだけれど,断面と断面の間に布がはさまってしまい,元通りにはつながらない。ポケットの下あたりから滲み出てきた血が,栓を抜いたように噴き出してきて,もう自分のものではなくなってしまった踵を伝って流れだし,床一面に黒く広がる。その速度はあり得ないほどに速い。これはもう駄目だ。このまま目を閉じてじっとしていよう,次第に寒くなってきたことだし,などと考えたところで,お客様申し訳ありませんが閉店のお時間です,と若いハンサムな店員に起こされた。はっと息を飲んで見下ろすと,一口しか口を付けていないコーヒーカップがあって,間髪入れずに店員が,そのままで結構です,ありがとうございました,と云った。
 物音に飛び跳ねて逃げていく鼠のように店の外に出て,歩道でようやく歩みを緩めながら,これでは駄目なんだ,と思った。人々が希望の夢,成功の夢を見ているとき,俺は突然に身体中の血を流して倒れたり,なにかに全身を押しつぶされたり,狙撃者にこめかみを打ち抜かれたり,そんな白日夢ばかりを見ている。これでは駄目なのだ。それはわかっている。でも一体どうすればいい?

雑記 - 睡眠不足

2007年7月15日 (日)

Bookcover なぜ、その子供は腕のない絵を描いたか [a]
藤原 智美 / 祥伝社 / 2005-04
著者は小説家兼ノンフィクション作家。最近の幼児の描画が実に貧しい,いったい日本はどうなるんだ,という問題提起(というか恐怖喚起)があって,デスクリサーチでもって犯人捜しをする,という内容。犯人は過剰な密着的育児と早期教育なのだそうである。まあそうなのかもしれないけれど,でもいったいなにを根拠に。。。

心理・教育 - 読了:07/15 (P)

Bookcover 続・吉野弘詩集 (現代詩文庫) [a]
吉野 弘 / 思潮社 / 1994-04
息抜きにゆっくりと読んでいるはずなのに,いつのまにかいつものように,ざっと目を通して要点をつかむような読み方になってしまう。詩集を読むのは難しいなあ。

フィクション - 読了:07/15 (F)

Bookcover Rozen Maiden 2 (バーズコミックス) [a]
PEACH-PIT / 幻冬舎 / 2003-12-24
片づかないので読了にしておくが,実のところ1巻の後半のあたりで挫折し,あとはぱらぱらとめくっただけ。
人気のあるマンガだというので試しに手にとってみたのだが,絵柄にも設定にもついていけず,不本意ながら挫折してしまった。ある種の少女マンガと同じく,なんというか,身体が受け付けないのである。なんでもこのマンガ,いまの外務大臣がお読みになっておられたそうだが,うーん,マンガ好きという評判は本当なんだなあ。

コミックス(-2010) - 読了:07/15まで (C)

Bookcover 仕事のための12の基礎力~「キャリア」と「能力」の育て方~ [a]
大久保 幸夫 / 日経BP社 / 2004-05-20
本棚にあったので,ざっとめくった。成功をつかむには云々,なんていわれても,俺はキャリア形成に完全に失敗しちゃっているので,全然関心が持てないのである。なんでこんな本買ったんだ? きっとなにか気が滅入るようなことがあって,本屋で気が迷ったのであろう。
著者はリクルートのえらい人。あるときに,よし俺はこれから雇用問題の専門家になろう,と思って,実際にそれを実現させたのだそうである。すごいすごい。立派立派。人に説教できて楽しいだろうなあ。
なんでも,キャリアカウンセラーの認定試験みたいなものが,日本に11個もあるんだそうだ。生産性本部のとか,いかにも天下り先っぽい団体のとか,民間のとか。ははは。まあどうでもいいや。

ノンフィクション(-2010) - 読了:07/15 (NF)

2007年7月11日 (水)

Bookcover 恥辱 (ハヤカワepi文庫) [a]
J.M. クッツェー / 早川書房 / 2007-07
ここんところ無闇に忙しかったので,その反動もあって,いろんな人に無理を押しつけ時間を空けて,IMPS2007(国際計量心理学会)を見に行った。以前なら行かなかった学会だが,なにより,知り合いの一人もいない場所で,単に人の話をフガフガと聴いているだけというのが,もう楽しくて仕方がない。意外な講演が大変勉強になったりするし(今日はrandomized response法の話とMillsapの講演が面白かった),偉い人も拝めるし (動いているBollenを見てしまった)。
 きちんとオーガナイズされたビジネス系のセミナーと違い,発表取消のせいで突然空き時間ができたりしちゃうのも,いまとなっては新鮮である。というわけで,会場の横の本屋でこの文庫本を買って時間を潰した。
 老年期手前の英文学の先生が,教え子に手をつけてクビになる,というところまでで1/4くらい。その後,なぜか田舎でひとり農婦ぐらしをしているレズビアンの娘のもとに転がり込み。。。という辺りから,俄然話が深くなる。帰宅する電車で読みふけり,夕飯と共に読了。重い重い小説であった。
 今日最後の講演を聴きながら,ああこのホールにいる世界各地の先生方のなかにも,女子大生との情事でエライ目に遭っている人がいたりするかもなあ,などとふと空想し,実に感興深かった(ちょうどその辺まで読んだところだったのである)。まあそれも人生ですよね。

フィクション - 読了:07/11まで (F)

集中講義で話の種に使おうと思うので,ここでメモしておく。

日経新聞

「日本は美しい」5割強、内閣府世論調査
 内閣府は5日、安倍晋三首相が目指す国家像「美しい国」づくりに関する特別世論調査の結果をまとめた。今の日本を「美しい」とした人は10.6%で「どちらかというと美しい」の42.7%と合わせ5割強に上った。「日本の美しさとは何か」を複数回答で尋ねたところ、1位は山や森などの「自然」で 80.0%。伝統工芸などの「匠(たくみ)の技」が58.5%、田園・里山といった「景観」が52.8%で続いた。[...]

毎日新聞

内閣府調査:過半数が「美しい国」 20、30代では逆転
 内閣府は5日、安倍晋三首相が提唱する「美しい国」づくりに関する世論調査の結果を発表した。現在の日本を「美しい」と回答した人は、「どちらかというと美しい」(42.7%)も含めると53.3%と過半数を占めた。「美しくない」と回答した人は、「どちらかというと」(31.8%)を含めて43%だった。
 ただ年齢別にみると、40代以上は「美しい」が過半数を占めたのに対し、20代の57.6%、30代の50.5%は「美しくない」と回答。若い世代は日本を美しく思っていない側面が浮き上がった。
 一方、日本の美しさを複数回答で尋ねたところ、山や森、海などの「自然」が80%、伝統工芸や宮大工の技術など「匠(たくみ)の技」が58.5%、田園・里山の風景など「景観」が52.8%--などが上位だった。内閣府は「上位の自然や匠の技などに若者はなかなか関心を持ちにくいので、『美しくない』が多くなったのではないか」と分析している。[...]

産経新聞

日本は「美しい」53.3% 内閣府世論調査.
 日本を美しいと考える人が53.3%、美しくないとの回答は43.0%であることが5日、内閣府が発表した「美しい国づくりに関する特別世論調査」で分かった。40~70歳代以上の過半数が「美しい」と答え、20~30歳代では過半数が「美しくない」とした。「重要と思う美しい国の姿」では「文化、伝統、自然、歴史を大切にする国」(47.5%)が最も多く、次いで「規律を知り、凛(りん)とした国」(22.6%)、「世界に信頼され、尊敬されるリーダーシップのある国」(16.7%)の順。[...]

時事通信

「日本は美しい」53%=「美しくない」43%-内閣府調査
 政府は5日、安倍晋三首相が政権構想の基盤に据える「美しい国づくり」に関する特別世論調査の結果を発表した。それによると、現在の日本について「美しい」と回答した人は53.3%だったのに対し、「美しくない」は43.0%に上った。若い世代で「美しくない」と答えた人が過半数を占めており、内閣府は「いじめや虐待などの報道に接し、現状に問題意識を持っている人が多い表れ」としている。
 調査は、日本の「美しさ」に対する国民のイメージを探り、国内外に向けた日本の魅力発信などの施策づくりに役立てるのが狙い。5月24日から6月3日にかけ、3000人の成人男女を対象に実施し、有効回答率は60.9%だった。

共同通信

「日本美しい」は1割強 内閣府が世論調査
 内閣府は5日、安倍晋三首相が唱える「美しい国づくり」に関する特別世論調査の結果を発表した。日本の現状を「美しい」とした回答は10・6%にとどまり、「どちらかというと美しい」を合わせてようやく53・3%と半数を超えた。
 「美しくない」は11・2%、「どちらかというと美しくない」は31・8%。40代以上は「美しい」「どちらかというと美しい」が過半数だったが、20-30代は逆に「美しくない」「どちらかというと美しくない」が過半数。内閣府は「特に若い世代が美しくないととらえている点をよく考慮し、今後の政策を考えたい」としている。
 「日本の美しさとは何か」という質問(複数回答可)では、山や海など「自然」が80・0%でトップ。このほか伝統工芸など「匠の技」が58・5%、田園や街並みなど景観が52・8%、能や歌舞伎など「伝統文化」が50・8%だった。敬語や方言など「日本語」は32・8%にとどまった。

朝日,読売ではみつからなかった。内閣府のリリースはここ

とにかく,誰かを馬鹿にするのだけはやめよう,と思う。それはなにも生まない。ただ自分の頭が良いような気がするだけ,ただ気分がよくなるだけだ。
なぜこんな調査が生まれるのか。それの結果はどのように流通し,どのように利用されていくか。そのことだけを考えたいと思う。

雑記:データ解析 - 美しい国づくりに関する特別世論調査

2007年7月 9日 (月)

Bookcover ソーントン・ワイルダー〈1〉わが町 (ハヤカワ演劇文庫) [a]
ソーントン ワイルダー / 早川書房 / 2007-05-24
「わが町」ってあれね,市民劇団なんかでよくやるやつね,という程度の知識しかなくて,きっと古き良きアメリカを描いた心温まる名作なんだろうなあ,ちょっと面倒だなあ,でもまあこれも後学のためだ,と思いながら手に取ったのである。(なんだろう後学って)
 朝の電車で読み始めたら止まらなくなって,乗換駅で電車が来るのが恨めしいほどであった。昼に読み,帰りに読み直し,今日一日で二度読んだ。ごく単純なつくりの,背筋も凍るくらいに硬質な,一言たりとも無駄のない戯曲であった。完全に打ちのめされた。「もう許してください」級の傑作。

フィクション - 読了:07/09 (NF)

Bookcover 満州事変から日中戦争へ―シリーズ日本近現代史〈5〉 (岩波新書) [a]
加藤 陽子 / 岩波書店 / 2007-06-20
いまAmazonをみたら,この本のカスタマーレビューには,この本の内容とは全然関係のない主張が何件も書きつけてある(慰安婦が云々,朝日が云々)。たぶん同じ人だろうけど,面白いことに,本の「おすすめ度」はどれも満点にしてある。あきらかに読んでもいない本なのだから,どう評価してもよいだろうに,なぜだろうか。「おすすめ度」を高くしたほうが,スパムと判断されにくいのだろうか。

日本近現代史 - 読了:07/09 (CH)

2007年7月 8日 (日)

Bookcover イラク戦争の深淵―権力が崩壊するとき、2002~2004年 [a]
国末 憲人 / 草思社 / 2007-06-26
朝日の記者の取材日記。

 あれこれいろいろ疲れることがあって,土曜の午後から日曜一杯,ひたすら寝たり本読んだりして過ごした。ぼんやりしているとろくな事を考えない。俺はなにをやってるんだろうか,自尊心ばかり高くて少しも努力しない,そりゃあダメだよな,今回の人生は失敗だったなあ。などと思うとますます疲れが溜まっていく。離れ島で魚でも釣って暮らしたいところだが,自分と向き合う時間が長い分だけ,もっと大変だろう。離れ島にはきっとコンビニも本屋もないだろうし。
 上の本を読んでいたら,立派な人が立派なことばかりいうので,どんどんページをめくる速度が速くなってしまったが,毎日新聞の記者の話のところで手が止まった。不発弾をお土産に持ち帰ろうとして,アンマンの空港の手荷物検査で爆発事故を起こした記者の話(あったなあ,そういう話が)。著者によれば,この事故を起こすまで,毎日は朝日よりもずっと貧しい陣容で,それでも良い記事を送っていたのだそうだ。
 でも,ついつい気を取られてしまうのは,この記者のその後のことだ。イラク特派員といえば,きっと社内でも花形だったのだろう。逮捕されて,釈放されて,帰国して懲戒解雇されて,その後この人はなにをしているのだろうか。やりがいのある仕事,約束された人生を棒に振ってしまったことを,この人は一生悔やみつづけて,眠れない夜を過ごすだろうか。それとも,どうにかしてそれを乗り越えて,次の人生の目標を見つけちゃってたりするのだろうか。

ノンフィクション(-2010) - 読了:07/08 (NF)

2007年7月 7日 (土)

Bookcover マングローブ―テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実 [a]
西岡 研介 / 講談社 / 2007-06-19
JR東の革マル派問題を暴いて評判になった,週刊現代の連載を書籍化したもの。索引がついている。。。気合い入ってるなあ。。。
Bookcover 強いリベラル [a]
加藤 紘一 / 文藝春秋 / 2007-06
現役の政治家の本はあまり手に取る気にならないんだけど,この人の本はつい読んでしまう。主な内容は市場原理主義批判と地域再生の話。学校選択制には大反対。著者略歴にまで「小,中,高と地元の公立学校に通い続け」とあって,ちょっと笑ってしまったが,こういうの,これからの政治のひとつの軸になるのだろう。
地元の山形で小規模の集会を繰り返していると,出席者のなかに知識があって弁の立つ人がいたりして,ついその人と話してしまうのだが,実はそういう人は地域であまり人望がなく,まとめ役は黙っていることが多くて,実はそういう人が自民党の基盤である由。うーん,なんだか目に浮かぶような話だ。
Bookcover 反転―闇社会の守護神と呼ばれて [a]
田中 森一 / 幻冬舎 / 2007-06

ノンフィクション(-2010) - 読了:07/07まで (NF)

Bookcover わにとかげぎす(4)<完> (ヤンマガKCスペシャル) [a]
古谷 実 / 講談社 / 2007-07-06

Bookcover まんが極道 (BEAM COMIX) [a]
唐沢 なをき / エンターブレイン / 2007-05-25

Bookcover トモネン [a]
大庭 賢哉 / 宙出版 / 2004-12
好みにあわなくて読み飛ばしたが,好きなひとは好きだろうと思う。

コミックス(-2010) - 読了:07/07まで (C)

2007年7月 1日 (日)

Bookcover テロル (ハヤカワepiブック・プラネット) [a]
ヤスミナ・カドラ / 早川書房 / 2007-03-23
幸せに暮らしていたはずなのに,突然妻が自爆テロを起こし,絶望と混乱にたたき落とされるアラブ系イスラエル人の医師の話。良い小説であった。
 後半で主人公は妻の死の真相を求めて危険地帯をさまようのだが,監禁されたり暴行されたり場面をもっと膨らませ,手に汗握らせることができるだろうに,驚くほどそっけなく片づけてしまう。冒険小説ではないのである。そうか,こういう書き方もあるんだなあ。

フィクション - 読了:07/01まで (F)

Bookcover もやしもん(5) (イブニングKC) [a]
石川 雅之 / 講談社 / 2007-06-22

Amazon Web Serviceの調子がおかしい... それとも仕様が変わったのだろうか? 参るなあ。

コミックス(-2010) - 読了:07/01まで (C)

Johnson, J.W. & LeBreton, J.M. (2004) History and use of relative importance indices in organizational research. Organizational Research Methods, 7, 3, 238-257.
マイナーな雑誌なので入手に困ったが,著者様が送ってくれた。ありがとうございました。
 相対的重要度についての特集号に載ったレビュー(そんな特集号があるのね)。ここで相対的重要度というのは,ある結果側変数と複数の原因側変数を押さえている調査データを使い,それぞれの原因側変数に相対的な重要度を割り当てたい,でも原因側変数同士に相関があるので偏回帰係数は使い物にならない,さあどうしようか,という話。紹介されているのは,
(1)単回帰ベースの指標(r,b,β,t,R2増加量,βr)
(2)重回帰ベースの指標(部分相関の二乗のモデル間平均;偏相関の二乗のモデル間平均;BudescuのDominance指標;Anzen&Budescuのcriticality指標)
(3)いったん直交変数に変換する方法(Greenらのδ;著者らのε)
 わかりやすくまとめてくれていて,大変助かった。この論文のおかげで霧が晴れた思いである。
 もっとも,このテーマにはほかのアプローチもあると思う。主成分回帰やPLS回帰のように次元縮約するやり方もあるし,リッジ回帰という手もあるだろう。事前知識やグラフィカル・モデリングを使い,独立変数間の関係について正面からモデル化しちゃう路線もあるだろうし,データが大きければニューラルネットだっていけそうだ。その意味では狭い範囲に限定したレビューなのだが,ま,なにもかも人に頼ってはいけないよな。

Johnson, J.W. (2000) A heuristic method for estimating the relative weight of predictor variables in multiple regression. Multivariate Behavioral Research, 35,1,1-19.
 上の論文でεという指標がお薦めされていたので(まあ自分が提案した指標だからな),国立の図書館に出張してコピーしてきた。数学苦手なのに,こんな雑誌の論文を読む羽目になろうとは。しかも自分でプログラムを書かねばならんのか,と途方にくれていたら,著者様がサンプルプログラムを送ってくれた。尋ねてみるものだ。ありがたやありがたや。
 εというのはこういう指標である。変数X1,X2,...,Xkについて,まず,「ひとつひとつにぴったりフィットしつつも直交している」変数Z1,Z2,...,Zkをつくる(こういう手続きをなんていうのかね。直交化?) で,こいつらからYに対して重回帰する。いっぽう,ここが味噌なのだが,こいつらからX1,X2,...に対しても重回帰する。要するに三層のネットができて,真ん中の層(Z)から上の層(Y)と下の層(X)への矢印が延びるわけである。で,XiからYに行くすべての経路(k本)の係数の二乗和を,Xiの重要度とする。
 ZからXにパスが延びる,というのは妙な感じだが,そこのところの理屈づけはない。とにかく結果をごらんあれ,Dominance Analysisと似た結果になるでしょう? でもDominance Analysisは2^k回の重回帰をかけなきゃいけないから,kが大きいとき計算できないでしょう? この方法ならkが大きくても大丈夫よ,というストーリー。
 このあいだEdwards&Bagozziの論文を読んでいたら,うかつにformativeな測定モデルを組んではいけない,X1,X2,...にひとつづつ潜在変数Z1,Z2....を与え(これが真値),ZiからXiへのパスを引き,その上でZiから構成概念へのパスを引きなさい,そうすればXiの誤差がモデルに組み込めるでしょう,という話があった。この論文のモデルはその話に似ていると思う。この著者にとってZiはただの道具的な変数に過ぎないんだろうけど,もっと積極的に意味づけられないものだろうか。まあどうでもいいけどさ。

 思うに相対的重要度などというものは,ピュアな統計学者なら見向きもしない不純な概念なのだろうと思う。今回いろいろ調べていて偶然みつけたのだが,Kruskal&Majorsの相対的重要度レビュー論文に対して,Ehrenbergという人がこんなコメントを寄せている。"I think, however, that they have missed an important factor, which is that only unsophisticated people try to make such assessments." そうかunsophisticated peopleか,と笑ってしまった。
 確かに,この人が書いているとおり,"As soon as the relationships in question come to be better understood [...], the discussion turns, I think, to modelling the processes and their possible causal mechanisms as such, rather than their relative 'importance.'" なのである。因果的身分が異なる変数群を一緒にし,さあどれが重要か,と問うのはナンセンスなのだ。
 しかしその一方で,(たとえば)顧客満足度を左右する特性がk個ある,特性間の関係についてはどうでもいい,注力すべきなのはどれなんだ!という切実なニーズに,全く応えないわけにもいかない。このギャップを埋めるためには,まず相対的重要度が必要とされる状況を概念的に整理し,分類しておいたほうがいいんじゃないかと思うのだが,うーん,難しくて手に負えない。

論文:データ解析(-2014) - 読了:07/01まで (A)

« 2007年6月 | メイン | 2007年8月 »

rebuilt: 2020年11月16日 22:50
validate this page