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2007年10月28日 (日)

Bookcover 波紋 (岩波少年文庫 (512)) [a]
ルイーゼ・リンザー / 岩波書店 / 2000-06-16
書き手が少女時代の記憶を辿る,という形式の短編集。冒頭の「僧院」「百合」の二編に衝撃を受け,続きを読む気になれず放置していた。この硬質で鋭い情景描写には,感想の言葉も失ってしまう。これはすごいです。
 気持ちを落ち着けて再挑戦したところ,後半に至ってだんだん親しみやすくなってくるのだが,今度は背後にあるキリスト教文化のぶ厚い地層に阻まれて,ちょっとついていけなくなってしまった。女学校の生活を描いた辺り,おまえらは少女漫画の主人公か,なんて突っ込んでしまったりして。すみません,どうやら心が汚れているようです。
 著者のルイーゼ・リンザーはドイツの高名な作家で,1940年刊のこの本でデビューしたのだそうだ。あとがきによれば,まったく無名の著者に対して,ヘッセがわざわざ賞賛の手紙をよこしたそうである。やるねヘルマン,目が高い。

フィクション - 読了:10/28まで (F)

Bookcover 高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書) [a]
水月 昭道 / 光文社 / 2007-10-16
俺はいわば当事者なので,この問題について冷静に考えることができない。正直なところ,もうどうでもいいや。自分のことで手一杯だ。
 ともあれ,佐藤達哉さんが出てきたのにはびっくり。すごいなあ,どこで名前に出くわすかわからない。
Bookcover 自分のなかに歴史をよむ (ちくま文庫) [a]
阿部 謹也 / 筑摩書房 / 2007-09-10

ノンフィクション(-2010) - 読了:10/28まで (NF)

Bookcover ムーたち(2) (モーニング KC) [a]
榎本 俊二 / 講談社 / 2007-10-23
お父さんの人相は数コマごとに意味もなく変貌する。登場人物は数字に対して異常な執着を示す。などなど,読む者を不安にさせる要素が一杯詰まった怪作であった。連載が2巻で終わるのも,残念だけどやむを得ないという気がする。
Bookcover ヴィンランド・サガ(5) (アフタヌーンKC) [a]
幸村 誠 / 講談社 / 2007-10-23

Bookcover とりぱん(4) (ワイドKC モーニング) [a]
とりの なん子 / 講談社 / 2007-10-23

コミックス(-2010) - 読了:10/28まで (C)

2007年10月21日 (日)

Bookcover 君たちに明日はない (新潮文庫) [a]
垣根 涼介 / 新潮社 / 2007-09-28
ここんところいろいろしんどいことが多いので,気晴らしに手に取った。リストラを題材にした会社員小説。この著者の本ははじめて読んだのだが,話の進め方や会話の描写が実に手馴れていて,きっと他の本もハズレがないだろうな,という感じである。

 言い寄ってきた年下の男にちょっぴり心揺らいでいるキャリアウーマンが,きっとこいつの車はスポーツカーだろうなあ,なんて密かに品定めしていたら,実際にはダイハツのナントカという変わった車で,ちょっと意表をつかれて。。。とか。あるいは,待ち合わせ場所に歩いてくる相手の服装をチェックし,男の性格についてあれこれ考えるあたりとか。
 小説でこういう描写にさしかかるたびに,世の中の人はこういうことを考えて暮らしているのか,きっと彼ら・彼女らからみれば俺はさぞやマヌケなアホなんだろうなあ,と感じ入る。誰がどんな車に乗っていたって俺には全然区別できないし(あ,ハンドルが右ですね,外車ですか。ってなもんだ),相手がどんなおしゃれをしていようが,悪いけど俺には全く弁別できない。ふとした立ち居振る舞いや口調に隠された情報を人々が敏感に捉えているとき,俺は「ここにいる全員が一斉に屁をこいたら引火して危険かなあ」などと考えているのである(実際俺はそういうことで始終考え込む)。この小説でいえば,対人スキルゼロ,ひたすら開発中の製品のことだけ考えているおもちゃメーカーの技術者が出てくるが,俺はかなり彼に近いと思う。おかしいなあ,いったいどうしてこんなことに。。。

フィクション - 読了:10/21まで (F)

Bookcover ニュース・ジャンキー--コカイン中毒よりもっとひどいスクープ中毒 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ) [a]
ジェイソン・レオポルド / 亜紀書房 / 2007-09-02
マスメディアの内部告発本かと思ったら,毀誉褒貶半ばする有名記者の自叙伝であった。大学中退でヤク中で前科持ちであることを隠したまま,ダウ・ジョーンズのロサンゼルス支局長にまでなったのだそうだ。
 面白い本ではあるけれど。。。真摯な告白の最中にさえついつい話を面白くしてしまうタイプの人がいるものだが,この著者はそういう人なんじゃないかと思う。
 本筋とは関係ないが,なにより驚いたのは,かの有名な馬鹿映画「アタック・オブ・ザ・キラートマト」の脚本家が登場するくだり。彼はカリフォルニアの上院議員になっていて,エンロン事件で重要な役回りを演じるのである。ええええ,嘘だああ。

 「アタック・オブ・ザ・キラートマト」は寒い寒いギャグが詰まったどうしようもない駄作で,しかも「駄作を狙って作っています」というクササがまた正視に耐えないのだが,困ったもので,たった一度しか観ていないのにふと思いだしてしまうことがある。こないだ会社で,数人でどやどやと会議スペースに入ったとき,ふいにこの映画の会議室のギャグ(将軍たちが会議室に集まるが,部屋にくらべて机が大きすぎるせいで身動きがとれなくなる)を思いだして一人で笑い転げてしまい,理由を説明するのに苦労した。

ノンフィクション(-2010) - 読了:10/21まで (NF)

Bookcover ドロヘドロ 8 (BIC COMICS IKKI) [a]
林田 球 / 小学館 / 2006-05-30

Bookcover BLACK LAGOON 7 (サンデーGXコミックス) [a]
広江 礼威 / 小学館 / 2007-10-19

コミックス(-2010) - 読了:10/21まで (C)

2007年10月17日 (水)

Bookcover ザ・コンサルティングファーム―企業との危険な関係 [a]
ジェームズ オシーア,チャールズ・マーティン マディガン / 日経BP社 / 1999-12
コンサル企業についてのノンフィクション。俺の人生とはあまり縁のない話だが,勉強になった。業界トップの某社は,世界中の優秀な学生を片っ端から攫う→クライアントに新人をどっさり送り込み,ばんばんチャージして儲ける→数年でやめさせる→でも若者たちも勉強にはなるし,今後も人脈が大事だから文句は言わない。という仕組みを確立しているそうである。なるほど,なぜあんなに若い社員が多いのか,やっとわかった。

Bookcover 被差別部落の青春 (講談社文庫) [a]
角岡 伸彦 / 講談社 / 2003-07-15
被差別部落出身で地元の保母さんになった女性の話が大変面白かった。部落のおばちゃんは子どもへの怒り方が頭ごなしだ,あれは良くない,というのである。子育てにおける制限コードの優越が,子どもの社会適応を妨げている,という話だろうか。言語使用のスタイルをどうにかしようというんだから,先の見えない戦いだなあ。

ノンフィクション(-2010) - 読了:10/17まで (NF)

Bookcover 劇画信長公記 1 (SPコミックス) [a]
平田 弘史 / リイド社 / 2007-09-26

Bookcover ドロヘドロ 7 (BIC COMICS IKKI) [a]
林田 球 / 小学館 / 2005-10-28

Bookcover今日の早川さん [a]
coco / 早川書房 / 2007-09-07
本好き向けの4コマ。ブログ連載だそうだ。意外に面白かった。
 登場人物はみな若い女の子で,濃ゆーいSFマニアの早川さん,なにかと知識をひけらかす岩波さん,ラノベ好きの富士見さん,滅多に見かけない国生さん(←国書刊行会),ホラー好きの帆掛さん。最後の人だけうまい語呂合わせがつくれなかったのかと思ったのだが,いま調べたら,創元推理文庫のホラーには帆掛船のマークがついている由。恐れ入りました。
 ほかにキャラクターを作れないかなあ,とひとしきり考えた。時代小説好きでひねくれ者の矢来さん,外国の偉い人と会うのが大好きな牛尾さん,文章を書くのは好きだが読むのは嫌いな新風さん。うーん,どうも品がないなあ。

コミックス(-2010) - 読了:10/17まで (C)

2007年10月14日 (日)

Bookcover 捨てられるホワイトカラー―格差社会アメリカで仕事を探すということ [a]
バーバラ エーレンライク / 東洋経済新報社 / 2007-09
他の読みかけの本を中断して,昼休みと帰りの電車で一気読み。
 ホワイトカラー求職者に扮した職探し体験記。しかし予想に反し,職探しそのものというよりも職探しビジネス探険記と呼ぶべき内容であった。なにしろ,結局どこにも就職できずに終わってしまうのである。
 ジョブ・コンサルタントの質がさまざまだったり,下らない性格検査漬けに音を上げたり,無闇なポジティブ・シンキングにうんざりしたり,セミナーが宗教活動そのものだったり,どれもごく身近な話ばかりで,一頁ごとに身につまされる思いであった。
 前作「ニッケル・アンド・ダイムド」はブルーカラーに扮して職探しするという体験取材で,貴重な証言だとは思ったけれど,これがお国のベストセラーか,ふうん,という印象だった。要するに,なんだか他人事に感じられたのである。今度は印象が全然違う。一体なぜだろう? ひとつには,俺がたまたま外資系企業に勤めるホワイトカラーだからなのだろうけれど,それだけでは説明がつかないように思う。仮に日本のブルーカラー非正規雇用の労働者が「ニッケル・アンド・ダイムド」を読んでも,社会的状況が違いすぎて,ここまで共感はできないのではないだろうか。労働や雇用を巡る諸条件は,ホワイトカラーから先にグローバル化が進む,ということかしらん。
 些末な感想だけれども,こういう内容を扱うときこそユーモアが大事だなあ,と痛感した。著者は一念発起して,自分が契約したジョブ・カウンセラーに「私を雇いなさい」と猛烈な売り込みを掛ける(人が悪い。。。)。するとカウンセラーが逆に弱音を吐き始め,すっかり立場が逆転してしまう。噴き出さずにはいられない名シーンである。
 
 「中流という階級」がよく引用されるせいで,著者のエーレンライクは社会学者だと思っていたのだが,どうやらジャーナリズムが本拠地でアカデミズムにも出張,というような立場の人らしい。日本でいうと誰にあたるのかなあ。

ノンフィクション(-2010) - 読了:10/14まで (NF)

Bookcover キメラ―満洲国の肖像 (中公新書) [a]
山室 信一 / 中央公論新社 / 2004-07
ここんところずーっと持ち歩いていた本。新書とは思えない重くてしんどい内容で,読み進めるのが大変だった。
 満州国の成立から崩壊までを追いかける内容なのだが,焦点は細かな史実そのものではなく,日本の近代史における「満州国」の位置づけにある。だから結局は,日本にとってアジアとはなにか,我々にとって国家とはなにか,という話になってしまう。一読しただけでげっそり疲れるのも道理である。
 橘樸(たちばなしらき)という人がいて,中国ナショナリズムを直視し日本人の偏見に警鐘を鳴らしたリベラルな中国研究者であったのだが,この人は結果的に満州国初期"王道主義"のイデオローグとなった。その複雑ないきさつからは,俺たちが政治に向かい合う上でのさまざまな教訓を得ることができる,ような気がするんだけど,なにしろ複雑な話だもんで,よく理解しきれない。うぐぐぐ。

日本近現代史 - 読了:10/14まで (CH)

Bookcover アップルシード (2) (Comic borne) [a]
士郎 正宗 / 青心社 / 1985-11

コミックス(-2010) - 読了:10/14まで (C)

 机の引き出しの奥に,携帯用の小さなデジタル時計がいまも転がっているはずである。電池は切れていて,液晶の部分はもう何年も空白のままだ。薄い長方形の表面は,青い塗装がもう剥げかけているし,小さなボタンのゴムは少し変色している。
 なにかの景品のようにしか見えない,みすぼらしい時計だが,これを買ったのはもう30年ちかく前のことだ。

 最近は洗濯機も脱水後にピーピーと鳴るが,俺が子どものころは電子音それ自体が物珍しかった。小学校の音楽の時間,音楽室に新しく入ったステレオセットで,教師が (今にして思えば喜多郎のできそこないのような) ピコピコと音が続く奇怪なレコードを回し,これがこれからの音楽だ,と真剣な顔でいった。もっとも俺は,その音にあわせて動くボリュームメータの針に釘付けだったけれど。
 ちょうどそのころ,自宅にはじめて電子音を発する機械がやってきた。それはセイコー製の,枕元に置く目覚まし時計で,ひょっとしたらまだ実家では現役かもしれない。表示部は液晶ではなく,昔の駅や空港の行き先表示のように,数字の薄い板がぱたぱたと回る仕掛けだが,アラーム音が甲高い電子音で,買ってきたばかりのころはそれが鳴るたびに,UFOだUFOの襲撃だ,と家中ではしゃいだ。
 青い携帯用の時計を買ったのはその後のことで,林間学校だかなにかのせいでよそで泊まらなければならなくなった俺が,朝きちんと起きられるようにと,母が商店街の時計屋で買ってくれたのだと思う。なによりも自分専用の時計が出来たのが嬉しく,それがまるで未来からやってきたようなデジタル時計なのがまた誇らしくて,小学生の俺は時計を握りしめて布団に潜り込み,目覚ましの時間を何度も設定し直しては,耳元で鳴らしてみたものだった。

 携帯時計の前面には,メーカーの名前(CITIZEN)の下に,それと同じくらいの大きさで「QUARTZ」という表記がある。クォーツ,つまり水晶の振動を利用した電子回路は計時精度を革命的に進歩させたが,それが安価なコモディティと化したのはずっと後の話であり,田舎の子どもの俺がこの携帯時計を手にしたときでさえ,クォーツ回路はまだまだ高級品であった。その証拠に,この小さな携帯時計には部屋が付属していた。
 携帯時計は四六時中使う物ではない。しかし,幅1センチ足らずの小さな液晶では時間を読み取りにくいから,使わないときは壁に掛けておく,という使い方にも無理がある。そこで考えられたのが,時計の心臓部だけを切り離す,という仕組みである。自宅の壁には大きなアナログ時計を掛けておくのだが,その中心回路は小さなユニットとなっており,取り外せば携帯時計となる。外出する際には,壁の裏側にまわって回路を取り外し携帯する。帰宅時にそれを元通りはめ込めば,再び壁掛け時計が動き出す。
 こうした使い方を想定し,当時のクォーツ携帯時計には,床から天井に達する高さの大きなパネル,その表側にかけるための大きな壁掛け時計,パネルを補強する金属製のフレームが付属していた。部屋の壁から肩幅が入るくらいの距離を離してそのパネルを立てれば,それは部屋の壁と見分けがつかなくなる。パネルの裏側のフレームはかなりしっかりした作りで,パネルから肩幅分だけ裏側に張り出した立方体となっている。要するに,時計を買うと小さな時計室が付いてくるわけである。そんな使い方をすれば部屋は狭くなってしまうわけで,団地暮らしには向かないが,それだけ当時のクォーツ時計は高価な代物だったのである。

 いまではすっかり忘れられてしまった,このタイプのクォーツ携帯時計に,数十年ぶりに再会する機会があった。ご厚意を得て,実際にクォーツ時計を壁掛け時計にはめ込ませてもらった。
 畳が敷かれちゃぶ台が置かれた展示用の居間は虚ろに明るく,かえって現実味がなかったが,古い砂壁にみせかけたパネルの裏側,時計室の薄暗い空間に身を屈めて入っていくと,ふと子どもの頃に帰ったような気がした。パネルの裏面は不思議なくらいに巨大な緑色の電子基板で,それに左肩を触れないようにしながら,壁掛け時計の裏側に当たるところへとにじり寄っていくのだが,はめ込む場所は子どもの頃の記憶とは違い,パネルの裏側の基盤ではなく,その右側(つまり部屋の壁の側)にしつらえてあるもう一枚の小さな基盤上にあった。壁掛け時計の下側に円形の小さな穴が開けてあり,そこから基盤へと白い光が差している。あとで伺ったところによれば,これは初期の型にのみあった仕組みで,壁の穴から目をこらせば携帯時計の表示部も見ることができる,ということなのだそうである。
 お借りした携帯時計を基盤にそっとはめ込むと,液晶が一瞬またたき,パネルの向こうでガチリ,ガチリ,と壁掛け時計が動き出すのがわかった。そっと外に出て,まぶしさに目をしばたいた。回路の経年劣化のせいか,居間で時を刻む秒針は,時折ふと止まっては,あわてたようにまた動き出す風情である。直径が身長ほどもある巨大な壁掛け時計を眺めながら,数十年を経て変わらず時を刻みつづける時計と,それを取り巻く時代の変化に思いを馳せた。

 目が覚めて,そうだ,考えてみれば俺のあの携帯時計ってかなりな貴重品だよなあ,いまどうなっているかしらん,とあわてて引き出しをかき回した。ほこりをかぶった懐かしい時計を久しぶりに手にとってはじめて,あ,これは夢だ,と気が付いた。子どもの頃に買ってもらったのは本当,電子音が嬉しかったのも本当,でもおまけに部屋が付いてくるというのは夢だ。ずいぶんリアルな夢たったので,起きてからも信じ込んでしまったが,考えてみたら荒唐無稽な話である。なに考えてんだかなあ。

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雑記 - そうだ,ブログに写真を載せてみよう

2007年10月 9日 (火)

Bookcover マダム・エドワルダ/目玉の話 (光文社古典新訳文庫) [a]
バタイユ / 光文社 / 2006-09-07
さんざっぱら乱交を繰り広げたあげく,主人公が草の上に寝転がって夜空を見上げると「銀河には,星の精子が点々と穿たれ,天の尿が流れて奇妙な模様を作り」「天の頂上に開いたこの裂け目はアンモニアの靄で出来ているように見え」云々。なに考えてんだこのフランス人は。

Bookcover ボストン・シャドウ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 281-2)) [a]
ウィリアム・ランデイ / 早川書房 / 2007-08-24
久々の海外ミステリ。60年代ボストンに警官と検事と空き巣の三兄弟がいて,連続殺人犯を追ったり父の死の謎を追ったりギャングに追われたり母の再婚相手と喧嘩したりする。前作「ボストン,沈黙の街」よりも面白かった。

フィクション - 読了:10/09まで (F)

2007年10月 7日 (日)

Bookcover 樹影譚 (文春文庫) [a]
丸谷 才一 / 文藝春秋 / 1991-07-10
表題作ほか2編を収録。
 「樹影譚」はとても面白い小説で,読み終えてあまりの鮮やかさに呆れ,もういちど読み直した。難しくいうとメタフィクションってんですかね,そういう技巧を凝らした構成なのだが,俺はむしろ,良くできた落語みたいな話だと思った。主人公の作家が足下を攫われて混沌に落ち込んでいく,その落ちに持っていくために,すでにマクラからして計算されているのである。

Bookcover パンドラ・アイランド〈上〉 (徳間文庫) [a]
大沢 在昌 / 徳間書店 / 2007-10
Bookcover パンドラ・アイランド 下 (徳間文庫 お 2-9) [a]
大沢 在昌 / 徳間書店 / 2007-10
この小説はゲームに似ている。よく知らないけど,画面の下に文字が出てきて,ときどき選択肢が出てくる奴。「私は一匹狼の元刑事だ。このたび離島に保安官として赴任した」→クリック→「海辺を酔っぱらった老人が歩いている」→話しかけるをクリック→『お前は島の財産を狙っておるのか』→クリック→「老人はなにを云おうとしているのだろうか?」→ホテルに戻るをクリック→初日終了,という感じ。主人公が受け身で,回想場面がなくて,人物設定が平板だから,こういうことになるのだろう。連載されたメディアの特性に影響されているのかもしれない(スポーツ紙連載)。でもその限りにおいては面白いし,良質な娯楽小説だと思う。

 大学から足を洗って2年半になるが,ここのところ立て続けに,かつてお世話になった人たちに会う機会があった。奇妙なもので,そういうことがあるたびに,なんだか精神的に混乱してしまい,立ち直るのに時間がかかる。俺はいったいどこにいて何をしておるのか,と途方に暮れてしまう。
 そんなことがあった帰り,本屋でなるべく肩の凝らなそうな文庫本を探し,大沢在昌のなるべく長い小説を選んで,喫茶店で一気読みした。そういうときにうまいこと面白い小説に当たるのは,人生の救いといえるだろう。世の中の小説がみんなドストエフスキーでは困る,ということが,最近だんだんわかってきた。

フィクション - 読了:10/11 (F)

 久しぶりにこのblogに投稿したら,なぜか500 internal server errorが頻発する。pluginを外したり,EntriesPerRebuildを思い切り下げてみたり,新規投稿時のping先を全部削ったり,DBをBarkley DBからSQLiteに変えてみたりしたが,全然解消されない。サーバの負荷を調べてみたが,特段高いわけでもないようだ。ほんとにいらいらするぞ。
 自前でblogを動かすのはやめて,はてなかどこかに移ろうか,とも思うのだが,amazonから書影を呼び出すmovable typeのpluginを自前で書いているので,それを捨てるのもなんだかもったいない。レガシー資産に縛られて身動きがとれなくなる典型である。きいいい。いらいらするううう。

 世間の働くお父さんたちは(そう,もうそういう年齢なのである),ウィークデイは脇目もふらず仕事のことを考え,ホリデイは家族のことを考えて過ごすのであろう。ウィークデイにはコーヒーショップでぼんやりし,ホリデイにはブログの設定に血道を上げているようでは,人生ぱっとしないのも道理である。きいいい。

→ 思いあまって movable typeを4に上げてみたり,それでも駄目なのでブログサービスへの乗り換えを画策したりしていたのだが,頭を冷やしてみると,どうみたって怪しいのは自家製プラグインだ。というわけで,コードを整理してみたら,無事動くようになった(Amazon ECSが返す書籍情報のXMLのなかに,ImageSetが複数個はいっていることがあるのを見落としていた)。一人上手もいいところだ。

雑記 - Internal Server Error

 珍しく忙しくて,土日も出勤するわ会社に泊まり込むわ,自分の中では一騒動であった。もっとも客観的にみると,あまり大したことはしていないのだが。やれやれ。
 不思議なものでこういうときは,昼休みにコーヒーショップで文庫本をめくっても,あまり混みいった内容の文章は頭に入らなくなってしまう。先日から鞄の中には,旧満州国の歴史的位置づけについて書いた面白い本とドストエフスキーの未読の中編が入っているのだが,どちらもこの一ヶ月,さっぱり頁が進まない。目で活字を追っていても,ついつい別のことを考えてしまう。
 本屋のビジネス書の棚に行くと,なにもここまで噛み砕いて書く必要はないでしょう,読み手を馬鹿にしているのですか,というようなスタイルの本がぎっしり並んでいる。あれは一体どういうことかと不審に思っていたのだが,ビジネスマンはみんな真面目に忙しく働いている,ということだったんですね。

雑記 - ビジネス書の秘密

2007年10月 5日 (金)

Bookcover シッダールタ [a]
ヘルマン ヘッセ / 草思社 / 2006-01
これは先月中頃の休みの日に読んだ本。

フィクション - 読了:10/05まで (F)

Bookcover 国のない男 [a]
カート ヴォネガット / 日本放送出版協会 / 2007-07-25

Bookcover 「負け組」の戦国史 (平凡社新書) [a]
鈴木 眞哉 / 平凡社 / 2007-09

ノンフィクション(-2010) - 読了:10/05まで (NF)

Bookcover 組合せ最適化「短編集」 (シリーズ「現代人の数理」) [a]
久保 幹雄,松井 知己 / 朝倉書店 / 1999-01
仕事の都合で組み合わせ最適化の勉強をする必要に迫られ(なぜ数学嫌いの俺が?),何冊か買い込んだ本のなかの一冊。ごく初心者向けの読み物を意図しているのだが,話を易しくするためのたとえ話が途中から暴走するところが面白く,一気に読み終えてしまった。ナップザック問題の章では,ナップザックにできるだけ高価な盗品を詰め込もうとする二人の泥棒が登場するのだが,その後輩格のほうは大学の応用数学科卒業という設定で,先輩に対して噛んで含めるような説明を繰り広げる。結局二人はつかまるが,今度は先輩が留置所で「最適化ハンドブック」を猛勉強し,より高度な解法を噛んで含めるように説明するのである。もう可笑しくてたまらない。

データ解析 - 読了:10/05まで (D)

Bookcover さよなら絶望先生(10) (講談社コミックス) [a]
久米田 康治 / 講談社 / 2007-09-14

Bookcover ドロヘドロ 5 (BIC COMICS IKKI) [a]
林田 球 / 小学館 / 2004-08-30
Bookcover ドロヘドロ 6 (BIC COMICS IKKI) [a]
林田 球 / 小学館 / 2005-02-28

Bookcover OL進化論(27) (ワイドKC モーニング) [a]
秋月 りす / 講談社 / 2007-09-21
18年連載していて,クオリティが全然落ちない。偉大な作家だ。

Bookcover レッド(1) (KCデラックス イブニング ) [a]
山本 直樹 / 講談社 / 2007-09-21
小学館IKKI誌連載だそうだ。セクシャルな描写が全く無い。この作者の新しい挑戦なのだろう。
 連合赤軍の活動家たちの群像劇。この巻は,羽田空港で火炎瓶を投げるエピソードからはじまり,銃砲店を襲うところで終わる。よく知らないけど,史実にかなり忠実であるような印象をうける。リーダー格の「谷口」と「赤城」が,坂口弘と永田洋子であろうか。

Bookcover 大東京トイボックス(2) (バーズコミックス) [a]
うめ / 幻冬舎 / 2007-09-22
連載誌を講談社から幻冬舎に移籍して,その第二巻。
 講談社で出た旧刊は品切れだったのだが,こちらも幻冬舎から再刊された。損益分岐点がちがうんでしょうね。ともあれ,個人的に気に入っているマンガなので,再刊自体は喜ばしい限りである。
 ところが本屋で見たら,再刊本の裏表紙に載せられた短いあらすじが,中身と全く食い違っている。幻冬舎の書籍担当者は,内容をきちんと読んでいなかったのだろう。
 それはそれでいいじゃないか,とは思う。丁寧に製品をつくるのも商売だし,開発コストをかけずに次々と新製品を繰り出すのもまた商売だ。でも,もし講談社で版を重ねていればこんな目にも遭わずに済んだだろうなあ,と思うと,ちょっと切ない。
 (いま調べたら回収騒ぎになっているらしい。新宿駅の大きな書店で平積みだったんだけどなあ)

Bookcover よつばと! 7 (電撃コミックス) [a]
あずま きよひこ / メディアワークス / 2007-09-27

Bookcover もっけ(7) (アフタヌーンKC) [a]
熊倉 隆敏 / 講談社 / 2007-09-21

Bookcover 盆堀さん (BEAM COMIX) [a]
いましろ たかし / エンターブレイン / 2007-09-25

Bookcover アップルシード (1) (MF文庫) [a]
士郎 正宗 / メディアファクトリー / 2001-06
本屋で見つけて購入。文庫化されていたとは知らなかった。
 たしか「攻殻機動隊」の単行本が出たばかりの時に,六本木の青山ブックセンターの突き当たり右の壁際に士郎正宗のマンガがずらりと揃っていて,この「アップルシード」を立ち読みで全読破した覚えがある。いま調べたら,おそらく1991年。うわあ,バブル末期の話だ。。。つい昨日のことのようなのに。

コミックス(-2010) - 読了:10/05まで (C)

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