2012年5月24日 (木)
Dubow, J.S. (1992) Occasion-based vs. user-based benefit segmentation: A case study. Journal of Advertising Research, 32(2), 11-18.
occasion-based segmentation について書いている資料を探していて見つけた論文。検索でヒットするのは食品関係の資料ばかりで,マーケティング一般の問題として紹介しているのはなかなか見つからない。
ここでoccasion-based benefit segmentation といっているのは,対象者に製品カテゴリの使用オケージョンを聴取し,さらにオケージョンごとにベネフィットを聴取して,(対象者ではなく) 対象者とオケージョンの組み合わせを単位として分類する,というアプローチのこと。そういうアプローチが有益なのはどういう状況においてか,という点の一般化に関心があったのだが,常識的に思いつくようなことしか書いてなかった。ま,いいや。
紹介されている事例そのものよりも,思い出話が面白かった。著者は食品マーケティングが専門の大学教員だが,前職は米コカコーラだった由。
1973年,コカコーラでは自社ブランドのロイヤルティ低下に悩んでいた。ソフトドリンク飲用者が,一日のなかでさえブランドをどんどんスイッチしちゃうのである。
で,調査チームのメンバーであるStephen Turnerという人が,のちに「ニード・ステーツ仮説」と呼ばれることになるアイデアを産んだ。彼いわく,生じているのはバラエティ・シーキングではない。消費の場面場面によって,ニーズの状態の「パッケージ」がちがうのだ。だから,ニーズ状態のパッケージ別にブランドシェアを調べ,ニーズ状態のパッケージによって人とオケージョンをセグメンテーションしよう。
というわけで,調査対象者にオケージョンごとに動機の重要性を評定させ,その人のそのオケージョンでの消費ボリューム(オンス) を動機に割り振ってシェアを出し,対象者xオケージョンを行にとったシェアの行列をk-means法で分類する ... というような方法で分析した。どうみてもムリヤリな分析手法だと思うが,ま,肝心なのはテクニックじゃなくてアイデアですよね。著者いわく,Turnerさんはその後すぐに会社を辞めちゃったもので,世間には知られていないのだが,occasion-based segmentationという発想を産んだのは彼である。
幸いこの調査プロジェクトは成功を収めた。このときのサプライヤーが,National Analyst (コンサルらしい) ,マッキャン・エリクソン,そして調査会社Market Factsであった(後のSynovate,いまではIpsosですね)。
さて,コカコーラは当時Wine Spectrumという会社を持っていたので,ワインについても同じ調査をやった。その後コカコーラはWine Spectrumをシーグラムに売り,シーグラムはさらにVintnersという会社に売った。1989年,著者はコカコーラを辞めて大学に移り,Vintnersに問い合わせたら,あの調査はもう古いから公開しちゃっていいよ,とのことであった(それがこの論文で紹介されている調査結果)。で,著者は分析結果のファイルを追い求め,Market Facts の廃棄書類から無事回収することができた。数日後に焼却する予定だったのだそうである。
というわけで,集計結果しか残ってないので,クラスタ分析を再現することはできない由。ちょっと笑ってしまった。
えーっと,あとはGelman-Hills本のChap. 3を読了。まだ本題に入ってないんだけど,交互作用項入りの回帰モデルでは係数の解釈が難しい,というくだりがちょっと面白かった。でも,あの本,くどい。とにかくくどい,死ぬほどくどい。
2015/05追記:上記論文に登場する、occasion-based segmentationを最初に思いついたStephen Turnerさんという人、名声をつかみ損ねてかわいそうに... と思っていたんだけど、ひょんなことからその後が判明した。アメリカの市場調査実査会社の会長になっておられるようです。いやー、よかったですね。
論文:マーケティング - 読了:Dubow (1992) 消費オケージョン・ベースのベネフィット・セグメンテーション
2012年5月23日 (水)
American Marketing Association (eds.) (2005) AMA Core Marketing Knowledge: Segmentation. American Marketing Association.
数年前に社内研修資料を作る際に入手して、そのまま読まずに放置していたもの。これ、たぶんAMAがトレーニング用教材としてwebで配っていたものと思うのだが(もしかすると有料で)、このたび探してみても全然みつからない。万物が流れゆくこの社会においては、7年前の資料なんてもう誰も見向きもしないということだろうか。よくわからん。
マーケターとリサーチャー向けの、セグメンテーションについての全9章からなる解説、全78頁。各章はおそらくAMAの雑誌 (Marketing Researchとか) に掲載された記事の再録などだと思う。各章の内容をメモ:
"Principles of Market Segmentation" (W.D. Neal) ... セグメンテーションの4要件、アプリオリ vs ポストホック、ベース変数のいろいろ、構築時の注意点、分類手法のいろいろ。
- ポストホック・セグメンテーションのための古典的アルゴリズムは、
- クラスタ分析、
- 対応分析、
- search procedure,
- Q-type因子分析
- で、95年頃から登場した新しい手法は、
- multidimensional segmentation(よくわかんないけど、joint segmentationみたいな話)、
- ANN(代表例はコホーネンネット)、
- 潜在クラスモデル、
- fuzzy/overlapping clustering,
- occasion-based segmentation(たとえば購入チャネルごとに購入時重視点を評定させ、チャネルごとに人を分類したり、全部コミにして分類したりするという話)。
- セグメンテーションが失敗する理由:
- セグメンテーションが戦略そのものなのだということをシニアマネジメントがわかってない。
- セグメンテーションというものがよくわかっていない。各セグメントはマーケティングミクスに対して異なる行動上の反応を示さないといけないのよ。
- 市場全体がセグメント化できるという誤解。
- 実用性より手法にこだわりすぎちゃう。
- 調査をセグメンテーション用に設計してない。
- ベース変数の選択を間違えている。
- セグメンテーションが役に立たない場合:
- 製品カテゴリがすごくコモディティ化しちゃってる。
- 市場が小さすぎる。
- 少数のヘビーユーザが売り上げの大半を占めている。
- 単一のブランドが市場を占拠している。
"Beyond Segmentation" (M.E.Raynor & H.S.Weinberg) ... あるセグメントから他のセグメントに進出するときになにに気をつけないといけないか。NicheとFootholdはちがう。云々。飛ばし読み。
"Defining Your Target Audience" (クレジットなし) ... ターゲット消費者のことをよく知りましょう。云々。飛ばし読み。
"Segmenting the Sales Force" (T. Grapentine) ... STPの考え方で営業スタッフを管理する、という話。組織コミットメントとか成績とかで分類して、面接とか調査とかやって、採用試験やら研修やらに生かす。云々。飛ばし読み。
"Identifying and Reaching Influencers" (P.M.Rand) ... クチコミの重要性は増している;インフルエンサーは大事だ;インフルエンサーはこんな人が多いという調査結果の紹介(結婚してて子供がいる由。ホンマカイナ); インフルエンサー("Bee")の周りにはアルファと呼ばれる消費者がいて情報を媒介している;メーカーも対インフルエンサー対策を始めている;云々。なんというか、そのー、時の流れを感じますね。
"Maladies of Marketing Segmentation" (T.Grapentine & R.Boomgaarden) ... この章は大変面白かった。読み手をメーカーの調査部門に絞って書いているからだと思う。
著者いわく、セグメンテーションがうまくいかない理由は主に4つある。
- ターゲットセグメントとのコミュニケーションがうまくいかない。
- →対策(1): ターゲットセグメントをデモグラ変数で特徴づけられないのはごくありふれた話だ。まず定性調査やっとけ。創造的になれ。
- →対策(2): データベース上でターゲットセグメントを同定できないのもよくある話だ。プロジェクトを始める前に、ターゲットセグメントについてのマーケターの期待を理解し、期待値を下げておけ。新規顧客対象の簡単な調査を続けてデータを貯めて、ターゲットをデータベース上で判別できるような仕組みを時間をかけてつくる、というのも手だ。
- マネジメントの組織構造が柔軟性を欠いている。短期的・戦術的なインプリケーションを得るためのセグメンテーションならいいけど(タグラインを変えなさいとか)、長期的・戦略的なセグメンテーションは往々にして既存の組織構造を脅かすものだ。
- →対策(1): 調査部門は組織構造を変えられないが、社内クライアントを教育することはできる。頑張れ。さらにいえば、戦略レベルのセグメンテーションより、個別の製品について戦術レベルのセグメンテーションをやったほうが生産的だぞ。(いやあ、身も蓋もないなあ)
- →対策(2): 販売部門とマーケ部門の政治的な押したり引いたりは、うまくいえば健康的で実り豊かだが、リサーチャーにとっては時として地雷原である。たとえば、販売主導の会社で、リサーチャーが「最近の消費者は販売店にあまり影響を受けないようです」という知見を得てしまったとして、販売チャネル向けの広告費や販促費を減らしましょうなどというリコメンデーションを出すのは、相当な抵抗を受ける。できることはただ一つ、プロジェクトを始める前に上級管理職を味方につけておけ。それが無理なら、調査の焦点をもっと狭くしておけ。
- マーケッターがターゲットを絞れない。いろんなセグメントに売りたがる。
- →対策:STPという考え方を教育しろ。(いやはや)
- マーケッターに経験が足りない。セグメンテーションしたいと言っておきながら、そのあとでどうしたらいいのかわからない。
- →対策:事前にマーケターの経験と本気度を瀬踏みしろ。もし足りなさそうな場合には、自分がこれから先生役をするだけの能力があるかどうか考えろ。
というわけで、セグメンテーションに際しての調査部門の心構えは次の4つ。
- 社内クライアントのコンサルタントになりなさい。まずはこんな風に問いなさい:「もし調査の結果、顧客へのコミュニケーションを変えないといけないとわかったら、どうしますか?」
- 上級管理職の「チャンピオン」を探しなさい。
- セグメンテーション調査にはコストがかかるということを率直に伝えなさい。
- ノーということを学びなさい。時には戦略的セグメンテーションを避け、戦術的でアプリオリなセグメンテーションで済ませなさい。
。。。はっはっは。調べてみたら、著者は自営のコンサルタントで、この章はMarketing Research誌の2003年の記事だった。
”Refining the Research Microscope" (T.Grapentine & M.Klupp) ... セグメンテーションができたとして、各セグメントの中心的なメンバーをどうやって同定するか、という話。
中心的メンバーを決めたくなる理由は3つある。
- 結局のところ、どんなセグメンテーションだってセグメント内部に異質性を抱え込んでいるわけで、中心的メンバーと周辺的メンバーの間には重要なちがいがあるだろうし、マーケティングミクスを最適化するためにはその違いが重要になるだろうから。
- 面接とかしたくなるから。
- ターゲットセグメントの中心的メンバーにおけるブランドロイヤリティを調べたいから。
中心的メンバーを決めるためには、まずは所属セグメントについてのフィッシャー判別関数を求めなさい。SPSSは各対象者について、セグメント所属確率とかセグメント重心に対するマハラノビス距離の二乗とかを出してくれます。云々。急にデータ解析初歩コースみたいな話になるので、ちょっと笑ってしまった。著者は経験豊かな実務家らしいが、統計家ではなさそうだ。
"Better Than Sex: Identifying within-gender differences creates more targeted segmentation" (Q.Chen, et al.) ... 項目数の少ない gender尺度を作りましたという話。パス。
"Guided Selling" (L.B.Arthur) ... インターネット時代のマーケティングは、顧客に紐をつけて引っ張ってきて販売に渡すのが仕事じゃなくて、顧客に価値ある情報を与え教育して販売プロセスに導いてやるのが仕事だと考えねばならない。これからのマーケターは、販売部門と手を取り合って、顧客の声をもっと聴かなきゃならない。これがguided sellingという新しい考え方なのだっ。とかなんとか。斜め読み。
論文:マーケティング - 読了: AMA編 (2005) セグメンテーション教室
Beane, T.P., Ennis, D.M. (1987) Market Segmentation: A review. European Journal of Marketing, 21(5), 20-42.
仕事の都合で、消費者調査に基づくマーケット・セグメンテーションについて概観した資料を集めていて、Beane&Ennis(1993) というのがよく引用されているようなので、PDFを買ってみた。中身もわからんのに高い金を出すのも怖いけど、時間もないし、まあ経費でどうにかなるだろう、と。
で、読み進めるにつれ気が付いたのは、やたらに話題が古い。なんだかおかしい。もういちど調べたら、これ、87年の論文ではないか。出版社がデータベースに間違った発行年をいれているのだ(上のDOIリンクからだと正しいけど)。くっそーーーー。こんなこともあるのか。。。!
さらに、87年刊としてみても、やはり相当古臭い内容の論文で、引用している文献はほとんど60-70年代のものばかり。わたくし、歴史家でも好事家でもないので、いまさら近代マーケティング勃興期の若々しい息吹を感じさせられてもですね。。。あああ、悔しい。。。カネ返して。。。
見出しのメモだけとっておくと (内容をちゃんと読む気力はない。わがモチベーション地に落ちたり)
- コトラーにしたがい、セグメンテーションのベースをgeographic, demographic, psychographic, behaviouristicに分けて紹介。さらに"近年の"展開として、
- purchase occasion segmentation(ヒトを購入オケージョンでわけること),
- benefit segmentation,
- usage incidence segmentation(購入オケージョンとベネフィットでわける),
- user statusによるセグメンテーションとして、usage rate segmentation, loyalty segmentation,
- そのほかのbehavioristic segmentation,
- image segmentation(消費者の自己概念と製品イメージとの関係に基づくセグメンテーション)
- セグメンテーションのための統計手法として以下を挙げている:
- AIDとMultivariate AID,
- Canonical Analysis,
- Factor Analysis,
- Cluster Analysis,
- Regression Analysis (具体的にセグメンテーションにどうつながるのかわからない。Wildt&McCann(1980, J. Marketing Res.)というのが挙げられている),
- Discriminant Analysis,
- MDS,
- Conjoint Analysis,
- Componential Segmentation.
ま、どうでもいいや! 次に行こう、次に!!
論文:マーケティング - 読了: Beane & Ennis (19xx) マーケット・セグメンテーションの超最新動向
2012年5月21日 (月)
シェイクスピア全集 (11) ペリクリーズ (ちくま文庫)
[a]
ウィリアム シェイクスピア / 筑摩書房 / 2003-02
善は栄え悪は滅びる,胸暖まるお伽話。素敵だなあ。
あとがきで翻訳の松岡和子さんいわく,「私たちの最も強い願いは,死んだ愛する者の蘇りだろう。『ペリクリーズ』ではその願いがかなえられる。シェイクスピアの手にかかると,荒唐無稽やご都合主義が奇跡に転じるのだ」 仰るとおりですね。
2012年5月20日 (日)
午前3時の不協和音 (Feelコミックス)
[a]
ねむ ようこ / 祥伝社 / 2012-05-08
著者の代表作「午前3時」シリーズのスピンオフ短編集。シリーズ後半の主人公・地味で内気な眼鏡女子たまちゃんが出てくるだけで,わたくしの胸は高鳴るのであった。で,晴れて恋人となった宮下くんとのエッチなシーンはなく,非常にほっとしたのであった。みてください,この切ないファン心理。
乙嫁語り 4巻 (ビームコミックス)
[a]
森 薫 / エンターブレイン / 2012-05-12
相変わらず,凄いなあ。。。一コマ一コマの細密な美しさときたら,尋常ではない。
人間仮免中
[a]
卯月 妙子 / イースト・プレス / 2012-05-18
著者はスカトロ系AV女優かつ統合失調症患者として知られる人。老年期に差しかかった男との壮絶な恋,自殺未遂,入院,社会復帰について赤裸々に描く私マンガであった。
離れて暮らす息子と一緒に街に買い物に行くというエピソード,色々考えさせられた。普段の生活のなかではなかなか見えないことだけれど,多様な人々が,多様な苦しみを抱えているのだ。
コミックス(2011-) - 読了:「人間仮免中」「乙嫁語り」「午前3時の不協和音」
Biondi-Zoccai, G., et al. (2011) Are propensity scores really superior to standard multivariable analysis? Contemporary Clinical Trials, 32, 731-740.
「傾向スコアが標準的な多変量解析よりも優れているってホントですか?」。いやあ,魅力的な題名をつけるのって大事だなあ。
医療系の論文を読んでいるときに時々面食らうのだけれど、かの世界にはどうやら「統計的手法,それは要因の因果的効果の定量的推定のための手法だ,ほかになにがあろうか」という暗黙の前提があるようで、この論文も、題名には書いてないけど、要するに準実験デザインにおいて共変量を事後的・統計的に調整するための諸手法のレビューである。掲載誌の性質がよくわからなかったのだけど,どちらかといえば統計ユーザ向けの啓蒙的概観であった。仕事の都合で取り寄せて読了。
標準的な多変量解析ってなんのことよ、という疑問がたちまち湧くが、まあ有り体にいえばそれはロジスティック回帰とCox回帰のことである。もっとも,著者はわざわざ以下の手法を例示していて,レベルが揃っていないので気持ち悪いのだが、臨床研究でどのくらい使われているかというコメントが面白いのでメモ。
- Bayesian methods ... いきなりなんのことかという感じだが、「単純なモデルから複雑なモデルに至るまでの複数のパラメータを、MCMCで事後確率分布を生成して評価する手法」と書いているから、まあなんというか、モデルのパラメータのベイズ流推定というような漠とした意味合いで書いておられるのであろう。occasionally used とのこと。
- Bootstrap ... occasionally used. (コレ、アルファベット順であることに、いま気が付いた...)
- CART ... rarely used.
- Cox比例ハザードモデル ... frequently used.
- 判別分析 ... rarely used.
- 正確法(exact methods) ... rarely used.
- 道具変数分析 ... 計量経済学なんかで良く出てくる IVのことですね。rarely used.
- ロジスティック回帰 ... frequently used.
- マッチング ... occasionally used.
- 混合効果分析 ... 「通常、特定のリンク関数を持つ一般化回帰モデルとともに用いられる」と書いているから、階層回帰モデルが念頭にあるのだと思う。occasionally used.
- 傾向スコア ... frequently used.
- 層別 (stratification) ... rarely used.
へえー。傾向スコアが良くつかわれているのと、SEMやIVが使われていないのが面白いと思った。前に仕事の関係で、朝から晩まで図書館にこもってリハビリテーション関連の日本語論文をめくりまくったことがあるのだけど、そのときの印象では、共変量調整の手法としてはマッチング、層別、ロジスティック回帰、Cox回帰の順にfrequently usedで、あとはみなrarelyないしneverという感じだった。もっとも10年くらい前の話だけど(嗚呼...)。
で,前半はロジスティック回帰・Cox回帰の注意点(多重共線性の話とか,変数選択の話とか,比例ハザード性の話とか),後半は傾向スコア調整の注意点。傾向スコア算出のためのモデルの適合を調べるのはHosmer-Lemeshow検定,判別能を調べるのはc-統計量を使うのが一般的だが,これには批判もある由(Weitzan, et al., 2005, Pharmacoepidemiol Drug Saf.; とはいえ著者らはこの研究に対して否定的)。
(※私のような哀れなユーザがなにかの拍子にこのブログを見るかも知れないので,ご参考までに書き留めておくと,c-統計量というのはですね,ROC曲線の下面積のことらしいです。同じことを別の名前で呼ぶのはやめてほしいですよね,まったく)
いざ傾向スコアを求めたとして,それを使った共変量調整の仕方にもいろいろあるが,代表的手法であるマッチングについて著者らは否定的な書き方をしているて,しかしじゃあなにがいいかという話には触れていなかった。きっと山ほど議論があるのだろう。
肝心の「どっちが良いか」という問題については,Cepeda et al.(2003, Am. J. Epidemiol.)というシミュレーション研究に全面的に依拠している。いわく,事象生起数が共変量の数の8~10倍以下のときは傾向スコアが有利になり,もっと多い場合にはロジスティック回帰やCox回帰が有利になる由。ううむ,シミュレーションの詳細がわかんないので気持ち悪い。元の論文を読んだ方がよさそうだ。
えーと,それから,Gelman-Hill本のChap.2をさきほど読了。いやはや,くどい!! どこまで読めるか,ますます自信がなくなってきた。
論文:データ解析(-2014) - 読了: Biondi-Zoccaqi, G., et al. (2011) 傾向スコア vs. その他大勢
2012年5月18日 (金)
Sekohn, J.S. (2011) Multivariate and propensity score matching software with automated balance optimization: The matching package for R. Journal of Statistical Software, 42(7).
RのMatchingパッケージの解説。仕事の都合で読んだ。
ちょっと誤解していたのだが,このパッケージはあくまでマッチングのための機能を提供しているのであって,たとえば共変量の調整のために傾向スコアでマッチングするとして,傾向スコアそのものの算出をやってくれるわけではない。
傾向スコアやマハラノビス距離をつかったマッチングだけではなく,genetic matchingという機能も提供している由。使う予定がないので読み飛ばしちゃったけど。
論文:データ解析(-2014) - 読了:Sekhon(2011) RのMatchingパッケージ
シェイクスピア全集 (〔22〕) (白水Uブックス (22))
[a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
途中で関心をなくして何度か中断したのだが,昨日ようやく読了。活字で読んでもつまんないのだが,舞台だときっとちがうだろうという気もする。
執事マルヴォーリオはこんなひどい目に遭わされて,読んでいるこっちまで腹が立ってくる。復讐を誓った執事が,脳天気な登場人物どもをナタだかチェーンソーだかで皆殺しにしちゃう,という続編はどうだろうか。
2012年5月17日 (木)
スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)
[a]
ジョン ル・カレ / 早川書房 / 1987-01-31
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)
[a]
ジョン ル・カレ / 早川書房 / 1987-01-31
スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))
[a]
ジョン・ル・カレ / 早川書房 / 1987-04-15
海外小説にはなるべく手を出さないように気を付けているのだが、これはGWを言い訳にして読んだ本。先日たまたま「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」の映画化(「裏切りのサーカス」)を観に行って、なかなか味わい深かったもので、心のなかでル・カレのブームが再来した次第である。
スマイリー三部作の第二作と第三作。特に「スマイリーと仲間たち」、実に素晴らしい。昼飯を食べながらめくっていて、いよいよカーラの実像が明らかになるくだりで胸が一杯になってしまった。
フィクション - 読了:「スクールボーイ閣下」「スマイリーと仲間たち」
星野・岡田(2006) 傾向スコアを用いた共変量調整による因果効果の推定と臨床医学・疫学・薬学・公衆衛生分野での応用について. 保健医療科学, 55.
仕事の都合で読んだ。たぶん再読だと思う。わかりやすい名解説。
それから、BMJの論文と, Social Indicaters Res.の論文。勤務先の仕事と近すぎて、ちょっとここには書きにくい。そうだ、それからGelman&Hill のChap.1を読んだっけ。全25章、気力が続くかどうか怪しいところだ。
論文:データ解析(-2014) - 読了:星野・岡田(2006) 傾向スコアで共変量調整;ほか
Gawronski, B. & De Houwer, J. (in press) Implicit measures in social and personality psychology. In H. T. Reis, & C. M. Judd (Eds.), Handbook of research methods in social and personality psychology (2nd edition). New York, NY: Cambridge University Press.
社会心理学方面における潜在認知課題のレビュー。別の著者による全く同じ題名の本があるが、関係ないと思う。
ある方がtwitterで呟いておられたのをみかけて、ちょうどいま仕事で考えている話の役に立ちそうだと思い目を通したのだが、しかし、なんでいまになって心理学の話なんか読んでるんだろうか、どうも妙なものだ。
前半は手法の概観。紹介されているのは、
- ご存じ IAT (Implicit Association Test)。
- Evaluative Priming Task ... 測定対象をプライムにして、posi/nega語のposi/nega判断をプライミング。
- Semantic Priming Task ... 測定対象をプライムにして、形容語の語彙判断や意味判断をプライミング。
- Affect Misattribution Task ... 測定対象をプライムにして、漢字の意味判断をプライミング。
- Go/No-go Association Task ... IATみたいな干渉課題だけど、課題がgo/no-goになっている奴。
- Extrinsic Affective Simon Task (EAST) ... これも干渉課題で、刺激は語。白字の語(posi/nega語)はposi/nega判断、色つきの語(測定対象)は色判断しなさいと教示する。本指標は測定対象語への反応時間。へえー。ID-EASTという変種もあって、そちらはすべての語を大文字/小文字で提示し、posi/nega語はposi/nega判断、そうでない語(測定対象)は大文字/小文字判断しなさいと教示し干渉させる由。理屈はわかるけど、そんなのうまく教示できるのかしらん。
- Approach-Avoidance Task ... 刺激の意味と筋運動を干渉させるパラダイム。レバー操作のような課題では、posi刺激への接近運動とnega刺激からの回避運動は促進される、というような話があって(すでに60年代からあるのだそうだ)、これを利用する。もっとも、筋運動そのものというより運動の意味付けが重要だといわれているのだそうで、たとえば"pull"運動とposi刺激、"push"運動とnega刺激は一致するが、同じ筋運動でもそれらを"move downward"と"move upward"と呼ぶと逆転するとのこと。変種として、Evaluative Movement Assessment (左右を使う)、Implicit Association Procedure(自己関連性を調べる)、などがある由。ふうん。Kinectと組み合わせると面白そうですね。
- Sorting Paired Features Task ... これも干渉課題だが、刺激1(測定対象)-刺激2(posi/nega語)を系列呈示したのちにキー押しさせる。4つのキーを2行2列に並べておいて、たとえば、上を白人、下を黒人、posiを右、negaを左、と決めておく。おおお、おもしれー。Bar-Anan et al. (2009, Experimental Psychology)というのが挙げられている。
- Implicit Relational Assessment Procedure ... 2つの刺激を同時提示し関係性を判断させる。正解はあらかじめ学習させておく。たとえば、デブと"good"が出てきたら"similar"キー、痩せている人と"bad"が出てきても"similar"キー、逆の組み合わせだったら"opposite"キー、なんて決めておくわけだ。信念と合わない正解は遅くなるという理屈。associationを調べているというより、命題的信念を調べている手法である由。提案したのはBarnes-Holmesたち。ネオ-スキナリアンっていうのだろうか。
- Action Interference Paradigm ... 幼児向けに開発されたパラダイム。「サンタさんがおうちにやってきました。ふたり子どもがいて、男の子はお人形が、女の子はミニカーがほしいそうです。さあ配んなさい」とかいってキー押しさせる。ステレオタイプに合わないと遅くなる由。これ、implicit task といえるのかしらん。よくよく調べてみたら、幼児は「おいおいおばさん、それって言い間違いじゃない? いいの配っちゃって?」などと気を使って、キー押しをためらってたりなんかして...
後半は潜在指標の性質についての議論。面白かったところをメモ:
- Perugini et al.(2010, Handbook of Implicit Soc. Cog.) はこう述べているのだそうだ。潜在指標が行動を予測する、そのパターンには5つある。(1)潜在指標のみが行動を予測する。(2)顕在指標と潜在指標が行動を加法的に予測する。(3)顕在指標がdeliberateな行動を、潜在指標がspontaneousな行動を予測する(二重分離)。(4)顕在指標と潜在指標が行動を加法的に予測するが、共通のモデレータが存在する。(5)顕在指標と潜在指標が行動を乗法的に予測する。どの結果も、いわゆる二重過程理論と整合してしまう。だから特定の行動を潜在指標でアプリオリに予測するのは難しい。なるほど。
- 潜在課題は社会的望ましさバイアスと無縁だと思われているが、以下の点に注意する必要がある。(1)うまく二重分離が示せたからといって、その分離が顕在課題での社会的望ましさバイアスのせいで生じているとは限らない。そりゃそうだな。(2)潜在課題だって回答方略の影響を受けうる。つまり、回答の偽装も可能である。(3)潜在課題をウソ発見器として使うのは無理。たとえば、child-sex 間連想を潜在課題で測ってペドフィリアを判別できたという報告があるが(ひょえー)、child-sex間連想はたとえば性的虐待の被害者においても生じるかもしれない。
- 潜在指標は自己報告とちがって文脈に影響されないと思われがちだが、全然そんなことない。この点の説明は大きく3つある。(1)どんな指標も、回答者の安定的な表象というより、その時点でアクセス可能な情報を反映しているから。(2)文脈によって反応が変わるのではなく、対象そのものが変わるから。つまり、バスケットコートにいるマイケル・ジョーダンと、落書きだらけの壁の前にいるマイケル・ジョーダンでは、そもそもカテゴリが違う。それぞれのカテゴリは安定的だが、ジョーダンのカテゴリ化は文脈に依存するわけだ。(3)この中間で、同じ対象であっても文脈によって異なる情報を活性化させる、という説明。(どれも似たように聞こえるけど...)
- 潜在指標で測ろうとしている心的属性は課題の結果に自動的に影響する、と一般に考えられている。だからといって、実験操作の影響が自動的であることを潜在指標でチェックします、という理屈はおかしい。なぜなら、(A)実験操作が心的属性に与える影響が自動的かどうかと、(B)心的属性が結果に与える影響が自動的かどうかとは、別の問題だからだ。たとえば、実験操作として外向的過去経験ないし内向的過去経験を想起させたのちに、IATで自己と内向-外向性との連想を測ったら、条件間で差が出た、としよう。自己表象が結果に与える影響は自動的かもしれないが(B)、過去経験の想起が自己表象にあたる影響が自動的だったかどうか(A)はわからない。
- 適切な刺激を呈示するやいなや、注目している心的連想関係がぼわーんと自動的に活性化し、課題はそれにぐりぐりと直接アクセスしているのだ... という見方は楽観的に過ぎる。課題遂行の過程はもっと複雑なのであって、複数のコンポーネントにわけた細かい数理モデルも提案されている由。たとえばConrey et al.(2005, JPSP)はquad-modelというのを提案していて、たとえば黒人/白人のIATで、(a)人種ステレオタイプに基づく連想が活性化する尤度, (b)正しい回答が得られる尤度, (c)(両方生じたときに) 連想が正解を上回る尤度, (d) (両方生じなかったときの)一般的反応バイアスの尤度、をデータから推定しているのだそうだ。こういうモデル化の例として、ほかにKlauer, et al.(2007, JPSP)、Payne(2008, Soc. Personality Psycho. Compass)というのが挙げられている。新しい手法の開発はもうええかげんにして、こういうメカニズム研究をやりましょうよ、というのが著者らの意見である。面白いなあ。たぶん読まないけど。
知らない話ばかりで、かなり憂鬱になったが、考えてみたらこの分野の論文を読むのは7~8年ぶりなので、新しい話は知らなくて当然、古い話は忘れてて当然である。勉強になった、と前向きに捉えよう。
論文:調査方法論 - 読了:Gawronski & De Houwer (in press) 潜在認知指標レビュー
2012年5月14日 (月)
Baltas, G., & Doyle, P. (2001) Random utility models in marketing research: A survey. Journal of Business Research, 51, 115-125.
離散選択のランダム効用モデルについてざざざーっと概観する論文。長く積読リストに入っていたのを、ようやく読了。
ここでいうランダム効用モデルというのは、てっきり属性の部分効用が消費者間で異なるような離散選択モデルのことを云っているのだと思ったのだが(だって、回帰分析におけるランダム係数モデルってのはそういうのじゃないですか)、そうじゃなくて、選択肢の全体効用に確率的な項が入っているモデルはなんであれランダム効用モデルなのであった。
著者いわく... そもそも、選択モデルの誤差項がIID(独立に同一の確率分布に従うこと)でなくなる理由は、おおきく3つある: (a)観察されていない製品属性, (b)観察されていないtaste heterogeneity(個人間ないし個人内で)、(c)個人内ダイナミクス。この3つを区別することが大事である。
そんなこんなで、著者らはランダム効用モデルを次の4つの観点で分類する。
- (a)製品の観察されていない異質性の扱い方、
- (b)tasteにおける観察されていない個人内異質性の扱い方、
- (c)個人内ダイナミクスの扱い方、
- (d)選択集合の異質性の扱い方。
(a)に対する対処をみると、ランダム効用モデルはIIA型モデルと非IIA型モデルにわけることができる。(a-1)前者は事実上、多項ロジット(MNL)モデルのこと。後者としては、まず一般化極値(GEV)モデル。そのなかで標準的で使いやすいのは(a-2)入れ子型ロジット(NMNL)モデルだが、選択肢の階層をアプリオリに与えなければならない。(a-3)分散不均一極値(HEV)モデルは製品間の誤差分散・共分散を製品間で変えることができるモデルだが、あんまり使われていない。いっぽう、もっとintellectually appealingなのは(a-4)多項プロビット(MNP)モデルなのだが、あいにく計算が大変。
(b)に対する対処には、観察されている属性についてのtasteにおける異質性への対処という面と、選択肢そのものへのtasteにおける異質性への対処という面がある。つまり、対象者 i の選択肢 j の効用をV_{ij}, 共変量を X_{ij} として、V_{ij} = \alpha_j + X_{ij} \beta + \epsilon_{ij} と書いたとき、\betaが人によって違うかもしれないという話と、\alpha_j が人によって違うかもしれないという話があるわけだ。さて対処法としては、
- (b-1)説明変数として個人特性や購買記録を入れてしまうやりかた、
- (b-2)潜在クラスモデルなどを使ってセグメントに分けちゃうやりかた、
- (b-3)個人ごとに係数を固定効果として推定するやりかた、
- (b-4)個人ごとに係数をランダム効果として推定するやりかた、
にわけられる。
個人の係数を固定効果として推定する方法には3つある。
- (b-3-1)正面から個人ごとに推定する。もちろん無理がありすぎる。
- (b-3-2)conditional MLアプローチ。...恥ずかしながら、このくだりは意味がよくわからなかった。\alpha_{ij}が決まれば\beta_j が決まる、というような仮定を置くのだろうか。Chamberlain(1980, Rev. Econ. Stud.), Jones & Landwehr(1988, Market. Sci.)というのが挙げられている。
- (b-3-3)ベイジアンアプローチ。そうか、個人レベルの係数をリッチな購買記録でベイズ更新していくとすると、これは固定効果モデルに分類されるのか。
個人の係数をランダム効果として推定する方法は2つに分けられる。
- (b-4-1)係数の連続分布を仮定するモデル。分布を正しく仮定することが重要になる。
- (b-4-2)係数の離散確率分布を仮定するモデル。潜在クラスモデルと似ているが、解釈が異なる。潜在クラスモデルでは少数の等質な集団を仮定しているわけだが、ここでは連続分布を離散分布で近似しているに過ぎない。ふーん。
(c)の問題はさらに次の2つに分けられる。
- (c-1)状態依存性によって生じる個人内異質性。対処のためには、過去の選択をダミー変数としていれたり、過去の選択記録を要約する変数をいれたりすることが多い。
- (c-2)選好の短期的な慣性によって生じる個人内異質性。経済学ではこういうのをhabit persistenceという由。
... このくだりもよくわからなかったのだが、属性の部分効用がなにかの要因によって時間的に変化しちゃうようなホンモノの個人内異質性のモデル化は、この2つとはまた別の問題だ、という理解であっているだろうか。Roy, Chintagunta, Haldar(1996, Market. Sci.)をみよとのこと。
(d)について。選択集合の異質性の問題をランダム効用モデルに統合すべきかどうかは意見が分かれるところで、最近のトレンドは、選択集合を観察不能な潜在変数とみて確率的に定式化するアプローチである由。
先行研究例の列挙を主眼においた、ざざざーっとした書き方だったので、ついついざざざーっと読んじゃいましたが、頭の整理になりました。
論文:データ解析(-2014) - 読了:Baltas & Doyle (2001) ランダム効果モデルレビュー
2012年5月10日 (木)
Rothman, L., & Parker, M.J. (eds.) (2009) Just-about-right (JAR) Scales: Design, Usage, Benefits and Risks. ASTM Manuals, MLN63. ASTM International.
食品や飲料の消費者テストで、このジュースのすっぱさは「弱すぎる-ちょうどよい-強すぎる」のどれですか、なあんて聴取することがある。英語ではJust-about-right scale ないしJust-right scaleというが、日本語ではなんていうのだろうか。
こういうJAR尺度の利用法についてのガイドブック。ASTMは工業規格の標準化機関だと思うが、ASTM Manualというのがどういう位置づけなのかよくわからない。特許庁の標準技術集と雰囲気がちょっと似ている。
以前の勤務先で、社内のどこぞの誰ぞが作った資料でお勉強するのがいい加減いやになってしまい(ごめんなさい)、たまたまこの資料を見つけ、あとで会社に経費申請するつもりで、55ドル出して買い込んだ。その後、うっかりしているうちに時が経ち、うっかりしているうちに転職してしまった。買ったきり読んでないのはもちろん、経費申請さえしそびれていた、ということにさきほど気が付いた。悔しい。55ドルあったらビールが何杯飲めることか。自腹を切ったモトを取らねばならぬ、というわけで、とりあえずざーっと拾い読み。
最初に編者による総論が13p。編者はクラフトフーズの人と、食品専門のコンサル会社の人。いくつかメモ:
- JAR項目の利点: formulation guidanceを提供する;理解しやすい; 消費者異質性を見つけやすい; likingと一緒に使って優先順位づけできる; いろんな分析方法がある。
- JAR項目を含めどんな調査項目にも共通する危険性: 光背効果; どうでもいい項目に対して特定の回答が生じる; 知覚ではなく期待に基づいた回答; 対比効果; 疲労などの文脈効果; テスト内の刺激水準による文脈効果; 属性の解釈のずれ; 知覚の誤帰属。
- JAR項目に特有な危険性: 知覚と認知の混同; 世の中にはどうしたってjust rightとは思っていただけない属性がある(例, チョコバーのナッツ); 回答者が余計な気を使う(好きな製品じゃないとjust-rightって答えちゃいけないんじゃなかろうかとか); 個々の属性についてjust-rightを目指しても最適製品がつくれるとは限らない; 回答者が自分の理想を知っているかどうか定かでない; too muchと答えた人が多いからと言ってすごく強すぎるわけではない; 試食時間の長さによって評価が変わることがある; どこかの属性についてjust-rightを目指すとこれまでjust-rightと思っていた人が逃げるかもしれない; JAR項目とhedinic項目の両方を聴取したあとでoverall likingを聴取すると回答が歪む。
- Gacula et.al. (2008, J. Sensory Stud.) は、JAR尺度での聴取がoverall liking聴取の前にあっても、overall liking回答は影響を受けない、といっているのだそうだ。本当だろうか。
総論のあとにAppendixとして、いろんな分析手法が事例つきで紹介されている。実に26章, 100pを超える。面白そうなところだけ拾い読みした。各章の内容は:
- A. JAR項目への回答分布を視覚化する。
- B. strong% と weak% の差を求め(これを net effect と呼ぶ)、視覚化する。
- C. あらかじめjust-right反応率のノームを決めといて、それを下回っている属性があったらweak% と strong%の差を求める。ないし、just-right反応率とそれ以外の反応率を比べ、後者のほうが多かったらweak%とstrong%の差を求める。
- D. JAR項目への回答を単純に量的尺度とみなして平均する。
- E. 回答をjust-rightを0とした量的尺度とみなして平均する。ついでに絶対値を平均する。
- F. 回答をjust-rightを0とした量的尺度とみなし、帰無仮説 μ=0 として検定する (ワイルドな発想だ...)
ここからは、同じJAR項目の回答分布の製品間比較。
- G. カイ二乗, CMH, Stuart-Maxwell, McNemar。
- H. 比例オッズモデル・比例ハザードモデルを適用する。おおお、これはやったことがあるぞ。悪くない発想だとわかってうれしい。書いているのはXiong & Meullenet。
- I. JAR項目への回答を単純に量的尺度とみなして平均し、2製品間で t 検定。
- J. JAR項目への回答を単純に量的尺度とみなして平均し、3製品間で ANOVA。
- K. サーストン流の尺度構成法。その発想はなかった...
ここからは、JAR項目のほかに全体好意度も聴取している場合。
- L. いわゆるpenalty analysis。図の書き方が面白い。strongとweakの両方について、%を横軸、ペナルティ(全体好意度の低下)を縦軸にとった散布図を描いている。いいなあ、これ。
- M. 上記のペナルティの求め方の紹介。strongないしweak反応者の全体好意度平均から、全対象者の平均を引いた値をペナルティとする方法と、just-right回答者の平均を引いた値をペナルティとする方法があるが、そのどちらでもなく、回答者の比率を加味した weighted penaltyなるものを求めることを推奨している。面倒なのでパス。
- N. ペナルティの有意性を検定する方法。SEの求め方がいくつか紹介されている(回帰; ジャックナイフ; ブートストラップ)。超めんどくさい...
- O. bootstrapping penalty analysis。面白いことを考えるなあ。書いているのはまたもXiongさんとMeullenetさんだ。
- P. opportunity analsys。JAR項目と全体好意度のほかに当該属性に対する好意度も聴取しているとき、製品好意者に占める属性好意者の割合をrisk, 製品非好意者に占める属性非好意者の比率をopportunityとする。これをペナルティと併用するわけだ。なるほど。書いているのはケロッグ社の人。
- Q. PRIMO analysis. PERT Survey Researchという会社の商品らしく、いま調べたら、弊社のツールはなんとASTMマニュアルにも紹介されています、なんていうリリースが出ている。そのわりに細かいことは書いてないのだが、考え方が面白そうだ。背景の理論についてはWeirichの"Decision Space"という本を読みやがれ、とのこと。
- R. 突然話変わって、just-rightかそうでないかと全体好意かそうでないかとの関係をカイ二乗検定する話。
- S. 複数製品に対する複数JAR項目の回答集計値をマップで視覚化。平均のPCAとか、strong/weak/just-right%のコレポンとか。
- T. JAR項目と属性好意度項目の相関を求める。
- U. 全体好意度をJAR項目(量的尺度とみなす)で説明する回帰。製品別とか、全製品縦積みでとか。ステップワイズで変数選択している。なんだかなあ。
- V. 同じようなモデルだが、今度はMARS(multivariate adaptive regression splines)モデルを使っている。ちくしょー、気が利いているなー。またもXiongさんとMeullenetさんだ。
- W. これもXiong-Meullenet組。JAR項目への回答を、strongとweakの二つのダミー変数にしちゃって、OLS回帰したり、PLS回帰したり。これは前に著者に論文をご恵送いただいたことがある。感謝感謝。
ここからはJAR項目と関係なくて...
- X. 属性のJARじゃなくてintensity("not-at-all"-"extremely")を聴取しといて、全体好意度を回帰で説明したり、2属性で張った空間上に好意度曲面を描いたり。
- Y. 製品の成分を実験計画で動かし、好意度に応答曲面モデルを当てはめる話。
- Z. 実際の製品セットのほかに「理想の製品」についてもあれこれ聴取しといて比較する話。
論文:調査方法論 - 読了:Rothman & Parker (eds.) (2009) オール・アバウト・ちょうどよい尺度
Varki, S. & Chintagunta, P.K. (2004) The augmented latent class model: Incorporating additional heterogeneity in the latent class model for panel data. Journal of Marketing Research, 41(2), 226-233.
購買記録データをもとに世帯をセグメンテーションする際に、「世帯のなかには、どこかひとつのセグメントに属している世帯と複数のセグメントに属している世帯があるのだ」と考えるモデルを提案する論文。なんでそんなケッタイなことを考えるのかというと、たとえば一人暮らし世帯なら、きっとどこかひとつのセグメントに属しているだろうけど、夫婦世帯の場合は、夫が買い物する時と妻が買い物するときで属しているセグメントがちがうかもしれない、でもどっちが買い物したかはデータからはわからない... というような問題意識があるらしい。なるほど。ご苦労様なことだ。
Kamakura & Russell(1989)のモデル(LCM)から出発する。セグメント s に属する世帯 h が買い物 t においてブランド j を選択する確率を多項ロジットであらわす:
\lambda_{h|s \times jt} = exp(\nu_{h|s \times jt}) / \sum_m exp(\nu_{h|s \times mt})
ここで\nu_{hsjt}は 効用 (から誤差項を抜いたやつ) で、
\nu_{h|s \times jt} = \gamma_{sj} + X_{jt} \beta_s + Z_{hjt-1} \eta_s
ただし、\gamma_{sj}はセグメント s のメンバーにとってのブランド j の固有の効用、X_{jt}はマーケティング変数のベクトルで \beta_s は係数ベクトル、Z_{hjt-1}は前回の買い物で j を買ったかどうかを示すダミー変数で \eta_s は状態依存性を示す係数、である。
いっぽう著者らのモデルでは... 世帯のうち一定割合(q)は上記のモデルに従うが、残りの世帯(1-q)の選好は、各セグメントの選好の加重混合分布だと考える。つまり、世帯 h はセグメント s に対して重み g_hs を持っており(sを通じた合計が1になる)、買い物 t で ブランド j を選ぶ確率は、各セグメントのメンバーが持つ選択確率の重みつき合計だと考える。で、重みのベクトルはディリクレ分布に従うと仮定する(そろそろ蕁麻疹が...)。
著者らはこれを ALCMモデルと呼んでいる。よくわかんないけど、simulated MLで推定できるんだそうだ。
適用例は、スキャナー・パネル・データ、ピーナッツバター(4ブランド)とケチャップ(4ブランド)の2カテゴリ。マーケティング変数は価格と店頭プロモーション有無。各カテゴリのデータに、LCM, ALCM, 連続的なランダム効果モデル、それにrandom-shockがついてるやつ(Erdem, 1996 Marketing Sci.)、の4つを当てはめる。holdoutの予測はALCMで優れている、とかなんとか... 面倒なのでスキップ。
この数値例では、qはピーナッツバターで.58, ケチャップで.40と推定されたそうだが、真の q がどんな値でも、このモデルはうまくいくのだろうか。直観的には、もし多くの世帯が一人暮らしだったら、こんな工夫をすることにあまり意義がなくなり、むしろパラメータ数が増える分だけ損するだろうと思う。逆に、もしほとんどの世帯が夫婦ものだったら、なにがなんだかよくわからないセグメンテーションになっちゃうんじゃないかしらん。
論文:マーケティング - 読了:Varki, S. & Chintagunta, P.K. (2004) 一部の世帯が複数セグメントに所属することを許す購買行動セグメンテーション
高度成長 (中公文庫)
[a]
吉川 洋 / 中央公論新社 / 2012-04-21
昼飯や待ち時間のついでにさーっと読んじゃったんだけど,これは面白い本だった。高度成長のメカニズムのフローチャートに感銘を受けた。
文献として挙げられている「経済大国を作り上げた思想:高度経済成長期の労働エートス」という本,面白そうだなあ。最近,私の父の世代の人々は仕事についてどう思っていたのか。。。と考えることが多いせいもあって,関心を惹かれる。
2012年5月 9日 (水)
前々から不思議に思っているのだけれど、ID-POSデータやスキャナー・パネル・データを使って特定の製品カテゴリの購買を分析する際、往々にして、対象カテゴリの購入記録だけを抽出して分析しているように思う。ほんとは「今日はどれも買う気にならないや」という選択行動だってあるはずなのに、それはあらかじめデータから除外してしまっているわけである。しかし、「どれも買う気にならない」理由は、その日の虫の居所だけではなく、価格やプロモーションとも関係しているだろう。カテゴリ購入決定の要因とブランド選択の要因は重なっているわけだ。つまり、カテゴリ非購入はただのランダム欠損ではない。分析対象から単に除外してしまっては、ブランド選択の諸要因の効果測定にバイアスが生じるのではないかしらん?
ネット調査によればインターネット使用率は100%近かった、なんていう調査結果に対しては鬼の首を取ったようにあざ笑う、意識の高い皆様が、販売記録に基づくブランド価値推定やプロモーション効果測定には特に異議を申し立てない。本質的には、どちらもinformative missingnessという問題を抱えていると思うんだけど。。。私にはどうもよくわからない。
Chib, S., Seetharaman, P.B., & Strijnev, A. (2004) Model of brand choice with a no-purchase option calibrated to scanner-panel data. Journal of Marketing Research, 41(2), 184-194.
題名の通り、「買わない」選択肢つきの選択モデルを購買記録データに当てはめる、という論文。カテゴリ非購入の来店が取り除かれてしまっているデータの正しい分析方法がわかるかも、と期待していたのだが、そうではなくて、カテゴリ非購入が含まれているデータで、カテゴリ購入有無とブランド選択の両方を適切にモデル化する、という話であった。
世帯 h が買い物 t においてあるカテゴリの製品を購入したかどうかを表す二値変数を y_{ht}、購入したときにそのブランド番号(1...J)を表すカテゴリカル変数を y*_{ht} とする(非購入時には欠損値を持つ)。価格を P_{htj}, 店内ディスプレイ有無をD_{htj}, チラシ広告有無をF_{htj}とする。
まず、カテゴリの効用 z_{ht} を想定し、z_{ht}>0 のときに y_{ht}=1になると考える。で、z_{ht}は{切片項、J 個のブランドのPとDとF, 買い置きの量, 誤差} の線形和であると仮定する。誤差項を別にすれば 3J+2 個の係数が登場するわけだが、それらはすべて世帯によって異なると考え(うわあ...)、\gamma_{1h}, \gamma_{2h}, ... と呼ぶ。また長さ(3J+2)のベクトルとみなして \gamma_hとも呼ぶ。誤差 v_{ht}はN(0,1)に従うものとする。
次に、ブランド j の効用 u_{htj} を想定し、それが最大であるブランドが y*_{ht} として選択されると考える。で、u_{htj}は{切片項、P, D, F, 誤差} の線形和であると仮定する。4つの係数はすべて世帯によって異なると考え、
u_{htj} = \alpha_{hj} + \delta_{2h} P_{htj} + \delta_{3h} D_{htj} + \delta_{4h} F_{htj} + \eta_{htj}
とする(識別のために \alpha_{h1}=0とする)。きちんと定義してないけど、(J-1)個の\alphaと3個の\deltaからなる長さ(J+2)のベクトルを\delta_hと呼んでいる模様。誤差 \eta_{htj} からなる長さ J のベクトル \eta_{ht} は、平均0, 共分散行列 diag(1, \sigma_{22}, ..., \sigma_{JJ}) の正規分布に従うものとする。えーと、ブランドレベルの誤差はブランド間で独立とみなしているわけだ。
識別の都合上、上の式を次のように書き換えておく。世帯h, 買い物tにおける各ブランドのP, D, F, \etaとブランド1のそれらとの差を、それぞれP', D', F', \eta'とし、
u'_{htj} = \alpha_{hj} + \delta_{2h} P'_{htj} + \delta_{3h} D'_{htj} + \delta_{4h} F'_{htj} + \eta'_{htj}
とする(ただし j = {2, ..., J})。\eta'_{ht} の分散共分散行列は、対角要素が(1+\sigma_{22}, 1+\sigma_{33}, ..., 1+\sigma_{JJ}), 非対角要素がすべて1になる。
ここに仮説をふたつ付け加える。第一に、カテゴリレベルの誤差 v_{ht}と、ブランドレベルの誤差\eta'_{ht2}, \eta'_{ht3}, ... が、共分散 \rho_{12}, \rho_{13}, ...を持つと仮定する。えーと、ブランドレベルの誤差はブランド間で独立だがカテゴリ-ブランド間では独立でない、と考えているわけだ。第二に、カテゴリレベルの係数ベクトル \gamma_h とブランドレベルの係数 \delta_h を縦に積み、驚くなかれ、共分散行列をそっくり自由推定してしまう。
。。。このやったらにリッチな、パラメータ数の多いモデルを,力づくでMCMC推定してしまう。著者らは先行研究でのいくつかのモデルを紹介し(多項ロジットモデルに「買わない」選択肢を追加するのとか、nested logitモデルとか、効用最大化のGEVモデルとか)、それらよりもこのモデルのほうが柔軟だと述べているが、細かいことはわかんないんだけど、さもありなんと思う。草木を薙ぎ倒し小川を踏み潰し、MCMCという名の重戦車で近隣諸国を蹂躙する、という感じだ。なんだかなあ、もう。
適用例は、コーラのスキャナー・パネル・データ、対象店舗(2店舗)のいずれかでコーラを買った人を対象する。コーラを買ってなくても、店舗来訪じたいは別カテゴリの購買記録でわかる。買い置き量は過去の買い物記録から推定する。ブランドはシェアの順に、ペプシ、コカコーラ、RCコーラ、PBの4つ。
モデルを当てはめた結果、holdoutデータへの説明率はnested logitモデルより改善した由。で、推定したパラメータについて細かく議論している。カテゴリ購入に効くのはペプシの値下げだ、とかなんとか。
私が理解し損ねているのかもしれないが、個々の消費者の選択行動という観点に立った時、モデルの組み方がなんだかぴんとこない。このモデルでは、各世帯においてブランドの価格がそのブランドの効用に与える価格の効果はブランド間で等しいことになっているが、価格弾力性がどのブランドでも共通だという仮定はちょっと直観に反すると思う。またこのモデルでは、各世帯においてどのブランドの価格の変化も大なり小なりカテゴリの効用に影響することになっているが、買わないブランドの価格がカテゴリ購買決定に影響するものだろうか。うーむ。
論文:マーケティング - 読了:Chib, Seetharaman, & Strijnev (2004) スキャナー・パネル・データのための「買わない」選択肢つきブランド選択モデル
壊れかた指南 (文春文庫)
[a]
筒井 康隆 / 文藝春秋 / 2012-04-10
最初の数篇を読んでようやく,すでに単行本で読んでいたことに気がついた。。。
フィレンツェ史(下) (岩波文庫)
[a]
マキァヴェッリ / 岩波書店 / 2012-04-18
ふと気が向いて読み始めたのだが,背景知識は足りないし,似たような名前の人が一杯出てくるし,途中からおんなじような戦争の繰り返しになるし。。。「読んだ」というより「めくった」というほうが近い。終盤にロレンツォ・メディチが出てきたところで,惣領冬実「チェザーレ」に出てくる登場人物を思い浮かべて,ようやく親しみがわいたりなんかして。
面白いことに、いつどの都市がなぜ栄えたかとか、メディチ家がどうやって儲けてたかとか、そういう話はほとんど出てこない。歴史叙述に経済の視点が必須になったのは,いつからなんだろうか?
NHKスペシャル 生活保護3兆円の衝撃
[a]
NHK取材班 / 宝島社 / 2012-04-14
ノンフィクション(2011-) - 読了:「フィレンツェ史」「生活保護 3兆円の衝撃」
2012年5月 5日 (土)
McArdle, J.J. (1984) On the madness in his method: R. B. Cattell's contributions to structural equation modeling. Multivariate Behavioral Research, 19, 245-267.
「彼は50年以上も前にSEMのテクニックを使っていたのだ!」というわけで,歴史的心理学者Raymond B. Cattellの因子分析についての膨大な業績を,現代のSEMの観点から振り返る,という酔狂な論文。
先日,キャッテルのData boxという概念に興味を引かれて資料を検索していて,つい魔が差して国会図書館関西館に複写依頼を出してしまったもの。いつもながら丁寧な複写で,ほんとに頭が下がります。そのお気遣いを無にしないためにも,はい,ちゃんと読みますです。
題名は一体どういう意味だろうと不思議に思ったのだが,ハムレットのなかでポローニアスが"Though this be madness, yet there is method in't"と独白する場面があって(手元の小田島訳では「気ちがいのことばとはいえ,筋がとおっておるわい」),これに由来する"There's method in his madness"という慣用句があって(ランダムハウス英語辞典では「狂ってはいるが言うことの筋道は通っている」),それに由来しているらしい。
著者はキャッテルの考え方に潜む尽きせぬ革新性のことをmadnessと呼んでいる(もちろん誉めているのである)。
キャッテルの因子分析アプローチと現代のSEMの考え方を,モデルのSpecification, Estimation, Comparison, Substance(理論的含意の導出)の4段階に分けて比較している。文章があまりに文学的なので参った。著者は成長曲線モデルの研究で有名な人だと思うけど,なんというか,若気の至り,という感じの文章である。
知識不足もあって,内容をよく理解できたとはいえないんだけど,キャッテルは決して統計家ではなく,あらゆる場面において実質科学的推論をすごく重視していたのだ,ということが,なんとなくわかったような。というより,ここまでが統計的推論でここから実質科学的推論,というような線引き自体が,キャッテルさんにとっては意味をなさなかったのかもしれないなあ。
論文:データ解析(-2014) - 読了:McArdle(1984) R.B.キャッテル,狂気の筋道
北朝鮮現代史 (岩波新書)
[a]
和田 春樹 / 岩波書店 / 2012-04-21
ルポ 賃金差別 (ちくま新書)
[a]
竹信 三恵子 / 筑摩書房 / 2012-04-04
フィレンツェ史(上) (岩波文庫)
[a]
マキァヴェッリ / 岩波書店 / 2012-03-17
メディチ家 (講談社現代新書)
[a]
森田 義之 / 講談社 / 1999-03-19
望遠ニッポン見聞録
[a]
ヤマザキマリ / 幻冬舎 / 2012-03-09
どん底 部落差別自作自演事件
[a]
高山 文彦 / 小学館 / 2012-04-02
福岡で起きた,同和地区出身の町職員が差別的言辞を連ねたハガキを自分に送りつけていたという事件についてのノンフィクション。
この事件の犯人について,著者は彼のような「物静かな恐ろしい獣を見たことがない」とまで書く。実際に事件を追ってきた人の,これは実感なのだろうけれど。。。
私もまた,自分でも理解できない愚かさと,不遜さと,獣性を備えているように思う。ただ涙し謝るだけで他者の理解を拒みつづける犯人の姿は,ある意味で,私自身の姿でもあるように思う。
ノンフィクション(2011-) - 読了:「どん底」「フィレンツェ史」「メディチ家」「望遠ニッポン見聞録」「北朝鮮現代史」「ルポ賃金差別」
ママゴト 2 (ビームコミックス)
[a]
松田洋子 / エンターブレイン / 2012-04-25
まだ終了していないけれど,最近読んだマンガのなかでベストワン。決してお涙頂戴の演出ではないんだけど,とうてい平常心では読めない。
闇金ウシジマくん 24 (ビッグコミックス)
[a]
真鍋 昌平 / 小学館 / 2012-04-27
このたびのエピソードは特に,身も凍るようなリアリティがあって,いったいどうやって創っているんだろうかと不思議に思う。生活保護申請に来た青年が,緊張のあまり大便を漏らしてしまう場面とか。。。
おかめ日和(13) (KCデラックス BE LOVE)
[a]
入江 喜和 / 講談社 / 2012-03-13
この連載,しばらく前から,平凡な娘の地味な恋を延々と描き倒していて,大丈夫なんだろうか,と心配なのである。でも,きっと私のような固定ファンがいるんだろうなあ。
とろける鉄工所(8) (イブニングKC)
[a]
野村 宗弘 / 講談社 / 2012-04-23
うさくんの脳みそやわらかい (DCEX) (電撃コミックス EX 138-1)
[a]
うさくん / アスキー・メディアワークス / 2010-05-27
ゲーム誌などに載った作品を集めたもの。何箇所か声に出して笑ってしまった。
アゲイン!!(4) (KCデラックス 週刊少年マガジン)
[a]
久保 ミツロウ / 講談社 / 2012-04-17
銀の匙 Silver Spoon 3 (少年サンデーコミックス)
[a]
荒川 弘 / 小学館 / 2012-04-18
チェーザレ 破壊の創造者(9) (KCデラックス モーニング)
[a]
惣領 冬実 / 講談社 / 2012-04-23
深夜食堂 9 (ビッグコミックススペシャル)
[a]
安倍 夜郎 / 小学館 / 2012-04-27
マスタード・チョコレート
[a]
冬川智子 / イースト・プレス / 2012-04-14
コマ割が縦長の同一サイズで固定されている。ケータイコミックなんだそうだ。好きなタイプのマンガではないが,好きな人がいるのは理解できる。
コミックス(2011-) - 読了:「おかめ日和」「マスタード・チョコレート」「深夜食堂」「ママゴト」「チェーザレ」「銀の匙」「アゲイン」「うさくんの脳みそやわらかい」「闇金ウシジマくん」「とろける鉄工所」