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2012年12月25日 (火)
Vincent, J. (2009) Emotion, my mobile, my identity. in Vincent, J. & Fortunati, L. (eds.) "Electronic emotion: The mediation of emotion via information and communication technologies." Peter Lang.
この人のチームは,欧州で携帯電話使用者についての定性調査を2002年から積み重ねていて,この論文はその紹介。著者はもともと通信会社にいた人らしいのだが,出自は社会学のほうらしく,そのせいか,論旨の運び方が私にはどうもぴんとこない。
携帯電話はただのコミュニケーション・デバイスではなく,社会関係の維持に欠かせないもの,その意味で自己の延長になっている。また,記憶の代替,愛する人の代替,(ほしくもない連絡をもたらす)侵入者の代替といった,ユーザのintra-mediatorとして機能している。云々。
携帯には,たとえひとりになりたいときでも電話がかかってくるわけだけど,その際に電話の相手に自分の気持ちを悟られないように振る舞うことを,著者はホックシールドのいう感情労働の一例として説明している。うーん,そういう見方もできるか。
論文:マーケティング - 読了:Vincent (2009) 携帯電話とアイデンティティ
Vincent, J. (2006) Emotional attachment and mobile phones. Knowledge, Technology, & Policy. 19(1), 39-44.
携帯電話への愛着についての、すごくざっくりとした総説,なんだけど,全然記憶に残っていない。いきなりオートポイエシスとか出てきちゃって、ちょっと困惑したことだけ覚えている。
論文:マーケティング - 読了:Vincent (2006) 携帯電話への愛着
昭和戦前期の政党政治―二大政党制はなぜ挫折したのか (ちくま新書)
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筒井 清忠 / 筑摩書房 / 2012-10
1924年の加藤高明内閣から五・一五事件までの8年間つづいた,戦前の政党政治期について述べる本。案の定,とても面白くて一気読み。
特に興味深かったところをメモしておくと:
[1927年,若槻]内閣崩壊の実相は,朴烈怪写真事件で追い詰められて妥協や多数派工作を図っていたところに,金融恐慌が発生して最後のKOパンチをくらったということであった。すなわち問題は,普通選挙を控え,政策的マターよりも大衆シンボル的マターの重要性が高まっていたことを若槻が十分理解していなかったことのほうにあるのである。「劇場型政治」への無理解が問題なのであった。[...]ロンドン条約時の「統帥権干犯問題」を取り上げて,政党人自らが自分の首を絞めたと主張する人は多く,それは間違いではない。しかし,政治シンボルの操作が最も重要な政治課題となる大衆デモクラシー状況への洞察なしに,そのことだけを問題にしても,現代に起きる反省には結びつかないだろう。[...] 健全な自由民主主義的議会政治(それは政党政治である)の発達を望む者は「劇場型政治」を忌避するばかりでなく,それへの対応に十分な配慮をしておかなければ若槻と同じ運命を辿ることになろう。
多くの先進国がそうであるように,今日,自由で民主主義的な政治とは議会政治であり,議会政治とは政党政治である。政党政治は政党が自らの政策を実現するために,それを選挙民に訴え,反対党と政争を行いまた合従連衡を行う政治である。それは自派の政策を実現するために,他派と不可避的に闘争・競争を行う。ところが,日本社会ではこれらをすべて「党利党略」として忌避し批判する傾向が強いのである。[...] そのことにできるだけ寛容でなければ政党政治は維持できない。この観点が未成熟なので,日本ではメディアによる「既成政党批判」と「支持政党なし」が多数という世論調査結果が繰り返され,政党政治を充実させることよりも政党政治を補完することのほうが先に考えられるというような奇妙な現象が繰り広げられるのである。それが結局「軍部」「官僚」「警察」「[近衛文麿]新体制」などの「第三極」を導き出したことは本書が再三叙述したことであった。
なるほど...
欲望を生み出す社会―アメリカ大量消費社会の成立史
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スーザン・ストラッサー / 東洋経済新報社 / 2011-11-18
19世紀末から20世紀初頭にかけてのアメリカ消費社会の勃興期を,豊富な事例で描いた本。セグメンテーションにターゲティングにポジショニング,サンプリングやらクーポンやらプロモーション効果測定やら,近代的マーケティングの主な概念はすでにこの時期に出現していたのだそうである。へえー。
マーケティングに対する科学的な態度が必要であるという[20世紀初頭アメリカでの]主張は,ビジネスや社会生活の他の知的な流行と密接に関連していた。当時は,課業の設定や標準の設定を含む作業へのアプローチである「科学的管理法」を実践し唱導する能率専門家の全盛時代であった。効率という概念は,社会一般に関する考え方を家政や教育といった利益とはほとんど関係のない分野に関する規範的な記述にも浸透した。[...] 科学的マーケティングに関する議論は,人間性に関するより大きな疑問を反映していた。アダム・スミスに追従した経済学者たちは,個人が私利に従って合理的に活動する [...] 非人格的な自立的意思決定の王国としての『市場』の存在を信じるようになっていた。この『経済人』の見解に一致する人間性の概念は,十九世紀末の何人かの広告実務家の考え方の中に見られた。しかし,他の実務は購買者を非合理的なものとみなすようになりつつあった。この見解は1910年までには支配的となり,応用心理学の用語や手法が採用されるようになった。
そうか,この時期に近代マーケティングの黎明期があったとするならば,それはテイラー・システムの兄弟分のような科学主義でありつつ,合理的経済人モデルの否定でもあったわけだ。面白いなあ。
細かい話だけど... 6章に,パンケーキ・ミックスのトレードマーク「ジャマイマおばさん」として有名になったナンシー・グリーンという女性の話が出てくる。奴隷時代の思い出を語ったり歌ったりしながらパンケーキを焼いて見せ,大変な人気を博したらしい。で,「彼女は,お手伝いを辞め,シカゴで判事となり一生を終えた」と書いてあるんだけど...判事?! 驚いてwebで検索してみたけど,シカゴで交通事故で亡くなるまでジャマイマおばさん役を続けた,とある。判事ってどこから出てきたんだろう。
中国人民解放軍の実力 (ちくま新書)
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塩沢 英一 / 筑摩書房 / 2012-11
中国の市民社会――動き出す草の根NGO (岩波新書)
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李 妍${69D8} / 岩波書店 / 2012-11-21
建設業者
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/ エクスナレッジ / 2012-10-01
建築業界の職人さんインタビュー集。とても魅力的で,面白い本であった。
ノンフィクション(2011-) - 読了:「欲望を生み出す社会」「中国人民解放軍の実力」「中国の市民社会」「建設業者」
饒舌について―他五篇 (岩波文庫 青 664-1)
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プルタルコス / 岩波書店 / 1985-10-16
似て非なる友について 他三篇 (岩波文庫)
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プルタルコス / 岩波書店 / 1988-06-16
プロタルコス「倫理論集」からの抜粋。前者は「いかに敵から利益を得るか」「饒舌について」「知りたがりについて」「弱気について」「人から憎まれずに自分をほめること」「借金をしてはならぬこと」の6編,後者は「似て非なる友について」「健康のしるべ」「怒らないことについて」「爽快な気分について」の4編を収録。
2冊読んでようやく得心したのだが,この人の文章はあんまり深くない。セネカのような洞察も,モンテーニュのような凄みもない。思想家というより,町内会長さんみたいな人だ。訳者解説には「常識が羽織を着たような人」という表現が出てくるが,言い得て妙である。
でも,そこんところが,妙に面白いんだよなあ。モンテーニュ伯爵が「倫理論集」を大好きだったというのも,なんとなくわかるような気がする。それに,こっちも凡人なので,こういう文章はかえって身に迫るところがある。「似て非なる友について」は,隠れた不誠実さをめぐる辛辣な人間描写なのだが,読んでいて辛かった。
正法眼蔵随聞記 (ちくま学芸文庫)
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/ 筑摩書房 / 1992-10
原文と現代語訳の対照なのだが,めんどくさくてついつい現代語訳のほうを読んでしまった。時間があったら,もう一度読んでみたいけど。。。無理だろうなあ。
哲学・思想(2011-) - 読了:「饒舌について」「似て非なる友について」「正法眼蔵随聞記」
大東京トイボックス (9) (バーズコミックス)
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うめ / 幻冬舎 / 2012-12-24
下の遠藤浩輝さんの連載とともに,いま新刊が一番楽しみなマンガ。ゲーム産業を舞台にした群像劇。いやあ,面白いなあ。
オールラウンダー廻(10) (イブニングKC)
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遠藤 浩輝 / 講談社 / 2012-12-21
総合格闘技っていうんですかね,レスリングとボクシングを一緒にしたようなルールの試合を,細密に描写する。格闘技にはぜんぜん関心ないんだけど,面白い。
きのう何食べた?(7) (モーニング KC)
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よしなが ふみ / 講談社 / 2012-12-03
満ちても欠けても(1) (KCデラックス Kiss)
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水谷 フーカ / 講談社 / 2012-12-13
マンガの中身とは関係ないけど... この単行本,裏表紙にバーコードがない。どうやってレジ通ったんだろう? シュリンク包装の状態で流通させているのかしらん?
GUNSLINGER GIRL(15) (電撃コミックス)
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相田 裕 / 角川グループパブリッシング / 2012-12-15
長期連載の最終巻。連載途中から妙に面白くなってきた作品だったのだが,大筋は前巻で終わりで,この巻はエピローグといったところ。ちょっと感傷に流れすぎだと思うけど,好みの問題であろう。
ママゴト 3 (ビームコミックス)
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松田洋子 / エンターブレイン / 2012-12-24
松田洋子さんの傑作,最終巻。覚悟はしていたけど,これはもう... とてもじゃないけど,泣かずには読めない。参った。
コミックス(2011-) - 読了:「大東京トイボックス」「オールラウンダー廻」「満ちても欠けても」「きのう何食べた?」「「GUNSLINGER GIRL」「ママゴト」
あたしンち 18巻
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けらえいこ / メディアファクトリー / 2012-12-14
読売新聞連載の人気マンガ,だったのだが,そっちはすでに終了していて,これから単行本未収録分が発刊されるのだそうだ。知らなかった。おつかれさまでした。
深夜食堂 10 (ビッグコミックススペシャル)
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安倍 夜郎 / 小学館 / 2012-11-30
アヴァール戦記 2 (BUNCH COMICS)
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中村 珍 / 新潮社 / 2012-12-08
女子攻兵 1 (BUNCH COMICS)
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松本 次郎 / 新潮社 / 2011-11-09
女子高生型の巨大ロボットに搭乗し,精神汚染に苦しみながら熾烈な市街戦を繰り広げる男の話。深読みしようと思えばいくらでも深読みできるし,悪い冗談だと思えばそれまでだが... とにかく奇妙なマンガ。
海街diary(うみまちダイアリー)5 群青 (flowers コミックス)
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吉田 秋生 / 小学館 / 2012-12-10
吉田秋生さんの「海街diary」シリーズ,最新作。このマンガ,俺はどうしても好きになれないんだけど,素晴らしい作品ではあると思う。
3月のライオン 8 (ジェッツコミックス)
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羽海野 チカ / 白泉社 / 2012-12-14
このマンガも,素晴らしい...
コミックス(2011-) - 読了:「あたしンち」「深夜食堂」「アヴァール戦記」「女子攻兵」「群青」「3月のライオン」
ゼクレアトル~神マンガ戦記~ 1 (裏少年サンデーコミックス)
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戸塚 たくす / 小学館 / 2012-11-16
主人公の少年はある日,自分が漫画雑誌の主人公であることを教えられる... という,凝った設定のマンガ。なかなか面白い。小学館の無料web雑誌からの単行本化。売れるといいですね。
聖☆おにいさん(8) (モーニング KC)
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中村 光 / 講談社 / 2012-12-03
大奥 第9巻 (ジェッツコミックス)
[a]
よしなが ふみ / 白泉社 / 2012-12-03
なりひらばし電器商店(1) (イブニングKC)
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岩岡 ヒサエ / 講談社 / 2012-11-22
小学館IKKIで「土星マンション」を描いていた人の,講談社での新作。まだちょっと,よくわからない...
進撃の巨人(9) (講談社コミックス)
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諫山 創 / 講談社 / 2012-12-07
深海魚
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勝又 進 / 青林工藝舎 / 2011-10-30
コミックス(2011-) - 読了:「聖☆おにいさん」「大奥」「ゼクレアトル」「深海魚」「進撃の巨人」「なりひらばし電器商店」
2012年12月 4日 (火)
アーサー・ミラー〈2〉るつぼ (ハヤカワ演劇文庫 15)
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アーサー・ミラー / 早川書房 / 2008-05-23
アーサー・ミラーの戯曲。
先日ひょんなことから,この戯曲の新訳を使った舞台を観たのだけれど,主人公の妻エリザベスの終盤での非常に重要な台詞のなかに,たしか「この世界にこういう生き方があるなんて知らなかったの」というような言い回しがあって,印象に残った。で,この本を買ってきて探したら,この訳では「あなたは本当に優しい,いい人だった」。原文を探してみたら,"I never knew such goodness in the world"であった。
素直に考えれば,goodnessは夫プロクターの内なる善性を指している。新訳はここの訳語を,作品全体を賭ける勢いで,ものすごく思い切って選んでいるのだと思う(いま探したら,たぶん訳者の先生が,その事情について縷々述べている記事をみつけた。 やっぱりなあ...)。訳の正否は私にはわからないんだけど,いやあ,文学作品の翻訳って大変な仕事だ。ほんの一言で全てが変わってしまう。
密教 (ちくま学芸文庫)
[a]
正木 晃 / 筑摩書房 / 2012-11-07
えーと,密教が台頭した5~6世紀のインドには強大な統一国家がなかった(グプタ朝はもはや衰えていた)。密教が伝わったチベットも同様。13世紀,チベットが強大なモンゴル族の支配下におかれると,絢爛豪華な儀礼を発展させてきたチベット密教はモンゴル族向けサービス産業と化し,チベットの政治経済を主導する。以来チベットでは宗教勢力が政治勢力を兼ねる。
いっぽう中国では,密教伝播の時点で唐帝国が確立しており,東アジアの密教は国家鎮護の道具となった。その教えを承けた日本の真言宗も然り... だそうだ。なるほどー。
ナメクジの言い分 (岩波科学ライブラリー)
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足立 則夫 / 岩波書店 / 2012-10-05
研究者による啓蒙書ではなく,ひょんなことからナメクジ・マニアとなった元日経記者によるエッセイであった。これだから岩波科学ライブラリーは油断できない。まあ,この本に関しては,それはそれで面白かったのでよかったけれども。
総統国家―ナチスの支配 1933―1945年
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ノルベルト フライ / 岩波書店 / 1994-04-15
ナチスの知識人部隊
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クリスティアン アングラオ / 河出書房新社 / 2012-01-25
ノンフィクション(2011-) - 読了:「総統国家」「ナチスの知識人部隊」「ナメクジの言い分」
おんなの窓 4
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伊藤 理佐 / 文藝春秋 / 2012-11
おいピータン!!(13) (ワイドKC Kiss)
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伊藤 理佐 / 講談社 / 2012-11-13
産休後の復帰作。お待ちしておりました。
不器用な匠ちゃん 1 (フラッパーコミックス)
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須河 篤志 / メディアファクトリー / 2012-10-23
著者はまだ新人の部類だと思うのだけど,女の子をとても魅力的に描くところが良い。この連載は「社会人青春ラブコメ」だそうで (ああ,なるほど),20代の青年たちがちょっと奇妙な趣味にはまって,アパートを借りて部室のようなものをつくってしまう。
34歳無職さん 2 (フラッパーコミックス)
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いけだたかし / メディアファクトリー / 2012-11-22
だんだん話がディープになってきて,コタツで一日中寝ているという描写だけで一話12頁を使ったりしている。妙に面白い。
ヴィンランド・サガ(12) (アフタヌーンKC)
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幸村 誠 / 講談社 / 2012-11-22
闇金ウシジマくん 26 (ビッグコミックス)
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真鍋 昌平 / 小学館 / 2012-11-30
とろける鉄工所(9) (イブニングKC)
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野村 宗弘 / 講談社 / 2012-11-22
鉄工所勤務経験に基づいて描くコミカルなストーリーマンガ。次巻で終了とのこと。不渡りを食らって社員旅行を中止し心沈む社長を気遣って,忘年会の席で精一杯ハメを外してみせる工場長の姿,ちょっと目頭が熱くなってしまった。
そう言やのカナ 2 (ニチブンコミックス)
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野村 宗弘 / 日本文芸社 / 2012-11-28
あさひなぐ 7 (ビッグコミックス)
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こざき 亜衣 / 小学館 / 2012-11-30
深夜食堂 10 (ビッグコミックススペシャル)
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安倍 夜郎 / 小学館 / 2012-11-30
コミックス(2011-) - 読了:「不器用な匠ちゃん」「おいピータン」「おんなの窓」「34歳無職さん」「ヴィンランド・サガ」「闇金ウシジマくん」「とろける鉄工所」「そう言やのカナ」「あさひなぐ」「深夜食堂」
式の前日 (フラワーコミックス)
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穂積 / 小学館 / 2012-09-10
団地ともお 20 (ビッグコミックス)
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小田 扉 / 小学館 / 2012-10-30
おかめ日和(15) (KCデラックス BE LOVE)
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入江 喜和 / 講談社 / 2012-11-13
鋼鉄奇士シュヴァリオン 1 (ビームコミックス)
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嵐田佐和子 / エンターブレイン / 2012-11-15
ゴレンジャーみたいな戦隊ヒーローが,悪の組織を倒し平和を取り戻し,おのおの一市民として生活をはじめたのに,リーダー格のヒーローだけはどうしても変身が解けず,倒すべき敵もおらず住所も職もなく。。。というコメディ。設定はとても面白いと思うんだけどなあ。
めしばな刑事タチバナ 7 [うどん百景] (トクマコミックス)
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坂戸 佐兵衛,旅井 とり / 徳間書店 / 2012-11-07
誰そ彼の家政婦さん (Feelコミックス)
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小池田 マヤ / 祥伝社 / 2012-11-08
例によって,とっても業のふかーい筋立ての女性向けコミックス。ううむ。
コミックス(2011-) - 読了:「式の前日」「団地ともお」「おかめ日和」「鋼鉄奇士シュヴァリオン」「誰そ彼の家政婦さん」「めしばな刑事タチバナ」
鹿志村香、熊谷健太、古谷純(2011) 「エクスペリエンスデザインの理論と実践」, 日立評論, 2011.11.
日立の社内誌のXD特集号の巻頭論文。著者らはみな日立の社員の方。第一著者はUI研究で有名な人だと思う。
エクスペリエンス・デザインを実践するアプローチとして、人間中心設計プロセス、ワークショップと思考の外在化、将来像を描く、の3つを挙げている。で、具体的なテクニックとして、エスノグラフィー調査、エクスペリエンス・テーブル(みんなでつくるシナリオみたいなもの。時間の流れに沿ってビジョンを表現する)、ビジネス折り紙、が紹介されている。この折り紙っていうの、いいなあ。
論文:マーケティング - 読了:鹿志村ほか(2011) 日立のエクスペリエンス・デザイン
今西一(2011) 「荒神橋事件・万博・都市科学研究所 -上田篤氏に聞く」, 小樽商科大学人文研究, 122, 3-46.
先日、日本のマーケティング系のエスノグラフィー的研究の話を伺っていて、全然知らない話が多く、不勉強を痛感した。今和次郎とか、70年代の「生活財生態学」とか。で、その流れで関西の京大系シンクタンクについてなんとなく調べていて(仕事しろよって感じですね)、たまたまみつけて読みふけった紀要論文。
上田篤さんという、戦後の都市論研究の第一人者だという方に、50年代の京都の学生運動を中心にインタビューした聞き書き。この方、京大天皇事件('51)の際に「私の写真がアサヒグラフに出ちゃったんですよ」という世代の方で、後藤正治のノンフィクション「幻の党派」で描かれたシンクタンク「都市科学研究所」の創設者なのである。いやー、面白かった。
論文:その他 - 読了:今西(2011) 50年代の京都の学生運動についての聞き書き
ここんところ大変バタバタしていたせいで,記録を取り損ねていたのだが,覚えている範囲で...
Markowitz, L., Alvarez-Chavarria, L., Garau, B. (2012) What's a nice insight like you doing in a concept like this? How marketers can avoid wasting good insights on poorly articulated concepts. ESOMAR Congress 2012, ESOMAR.
先日のESOMAR Congress (市場調査の国際会議) での発表。著者らはIpsos社の製品開発系リサーチの偉い人。
消費者インサイトを見つけるのは結構だが、せっかくみつけたインサイトをうまく製品化できていないんじゃないですか? というわけで、自社がやったテストのデータベースから、消費者インサイトのスクリーニング・テストを通過したインサイトに基づきコンセプトをつくってまたテストした約100事例を引っ張り出し、インサイトの評価とコンセプトの評価を比べてみたら、あまり相関がありませんでした。スタートが良いからといって安心してはあきませんね、製品開発プロセスのあいだじゅうトラッキングしとかんとあきませんね。という主旨。
ここでいうインサイトとは、消費者は(自分では気が付いていないけど)ほんとはこんなものを求めている、という知見のこと。であるからして、むしろインサイトの有望性について消費者に尋ねるってのがヘンなんじゃないすかね... という点がいささか疑問なのだが、細かいところはこのペーパーだけではよくわからない。まあ、とにかく勉強になりましたです。
論文:マーケティング - 読了:Markowitz, et al.(2012) 消費者について理解すればよい製品ができるのか
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