投稿者「elsur」のアーカイブ

読了: Davis, et al. (2021) カウント時系列モデリング・レビュー

Davis, R., Fokianos, K., Holan, S.H., Joe, H., Livsey, J., Lund, R. ,Pipiras, V. Ravishanker, N. (2021) Count Time Series: A Methodological Review. Journal of the American Statistical Association, 116(535), 1533-1547.

仕事の都合でカウント時系列について考えることになり、とりあえずRのtscountパッケージの解説に目を通したら、知らない話題がたくさんあることに気が付き、あわてて手に取った。
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読了: Liboschik, Fokianos, Fried (2017) カウント時系列の一般化線形モデル(tscountパッケージ)

Liboschik, T, Fokianos, K, Fried, R. (2017) tscount: An R Package for Analysis of Count Time Series Following Generalized Linear Models. Journal of Statistical Software, 82(5), 1–51.

 カウント時系列データ分析のRパッケージtscountの解説。このパッケージを実践投入する予定はないんだけど、カウント時系列の分析方法について知りたくて手に取った。
 本文だけで34ページある…
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覚え書き:GARCHモデルってなんだっけ

 データ解析に関連して、苦手な話題は多々あるが(というか得意な話題が見当たらないが)、特に苦手な話題が、時系列分析での分散変動モデルである。ああいうのはさ、数学が得意な人が資本主義に魂を売り、ファイナンスだかなんだかで儲けようとするときに使うモデルでしょう?
 と思ってたんだけど、仕事の都合でちょっと変わった事情が生じて、少し勉強せざるを得なくなった。ごく表層的な知識しか身につく気がしないけれど。
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覚え書き: cmdstanr+OpenCLでGPUをうまく使えたり使えなかったり (WSL2-Ubuntu-NVIDEA編)

 cmdstanrパッケージでOpenCLを経由してGPUを使う方法についての試行錯誤の記録、その第三弾。こんどは、Windows上のWSL(Windows Subsystem for Linux)の上でLinuxを動かし、そこでcmdstanからGPUを使ってみようという試みである。
 なんだか遠回りな話だが、一概にばかばかしいとはいえない。下のCase 21でわかるように、GPUを使わない場合、Windows上でcmdstanを使うより、おなじPCのWindows上のWSL上のLinux仮想マシン上でcmdstanを使ったほうが、計算速度が速かったりするのである。
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覚え書き: cmdstanr+OpenCLでGPUをうまく使えたり使えなかったり (Windows-Intel編)

 cmdstanrパッケージでOpenCLを経由してGPUを使う方法についての試行錯誤の記録、前回のWindows+NVIDIA編に続く第二弾。こんどはWindows+Intel。実のところ、前回記事にまとめた実験の途中で、PC再起動などで手が空いた時間にノートPCでも試してみた、といういきさつである。
 気をとりなおして頑張ろう!
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覚え書き: cmdstanr+OpenCLでGPUをうまく使えたり使えなかったり (Windows-NVIDIA編)

 仕事の都合でStanを使うことがあるんだけど、その環境を用意するのは結構面倒である。
 特に困るのが並列処理。Stanの実装のひとつcmdstanは並列処理の方法をいくつか用意していて、そのひとつがOpenCLライブラリを経由したGPUの利用である。Windows上のRでcmdstanrパッケージを使う場合、その実行の遅さによってストレス死しないためにも、GPUをぜひ利用したい。
 説明を読む分には簡単そうである。ところが、実際に試してみると、これがなかなかうまくいかない。
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読了: Ly, et al.(2017) 頻度主義・ベイジアン・MDLからみたフィッシャー情報量

Ly, A., Marsman, M., Verhagen, J., Grasman, R.P.P.P, Wagenmakers, E.J. (2017) A Tutorial on Fisher information. Journal of Mathematical Psychology, 80, 40-55.

 仕事の都合で選択課題の最適実験計画について調べていて、学力不足を痛感して読んでみた論文。題名のとおり、フィッシャー情報量だけに焦点をしぼったチュートリアルである。
 著者にWagenmakersさんが入っているから、頻度主義だけでなくベイジアンな話が出てくるのは予想がつくが、その2つに並ぶもう一つのパラダイムとしてMDLが出てくるところが、へええ? という感じである。
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読了: Agrawal & Maheswaran (2005) たとえば製品への評価がその製品に与えられた賞とかによって影響されてしまうことがあるけれど、どんな動機づけのもとでそうなりやすいか

Agrawal, N., Maheswaran, D. (2005) Motivated reasoning in outcome-bias effects. Journal of Consumer Research, 31, 798–805.

 仕事の都合でmotivated reasoningについて調べている際に手に取って、最初のパラグラフを読んだ瞬間に「これは読みたいのとちがう…」と思った奴なんだけど、せっかくなので最後まで目を通した。
 Google様いわく被引用数107。

 簡潔に書きすぎていてちょっと不親切な論文だと思うのだが、ここでいう帰結バイアスoutcome biasというのは、たとえば製品について評価する際、その製品そのものについてちゃんと調べて考えるのではなく、その製品のもたらしたなんらかの結果(「いま売れてます」とか)でもって評価してしまうバイアスのことである。そのバイアスがどんな動機づけの下で強くなったり弱くなったりするか、というのがお題である。
 イントロで事例を挙げてくれるとわかりやすいのにね。
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読了: Heyman & Mellers (2008) 価格が公正であると思われるのはどういうときか

Heyman, J.E., Mellers, B. (2008) Perceptions of Fair Pricing. Haugtvedt, C.P, Herr, P.M., & Kardes, F.R. (eds) “Handbook of Consumer Psychology“, Chap.27.

 価格の公正性の知覚についての解説。オフィスの本棚で幅を占めているわりにはあまり役に立ったことがない消費者心理学のハンドブックのなかに、価格に関する章がいくつかあることに気づき、ためしに読んでみた。
 イントロダクションと結論の2節しかないというなかなか斬新な構成である。見出し行が落ちているのかも。
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読了: Gabor & Granger (1966) 品質の指標としての価格

Gabor, A., Granger, C.W.J. (1966) Price as an Indicator of Quality: Report on an Enquiry. Economica, 33(129), 43-70.

 先日読んだ Gabor & Granger (1964)に引き続き、価格感受性測定の超・古い論文に目を通した。
 古い論文は、書き方が風雅すぎて困ってしまう…
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読了: Burlison & Oe (2018) ストア・パトロネージ研究レビュー

Burlison, J., Oe, H. (2018) A discussion framework of some image and patronage: A literature review. International Journal of Retail & Mamagement, 46(7), 705-724.

 仕事の都合で目を通した奴。store patronageについての文献レビュー。store patronageってのは、日本語では「ストア・パトロネージ」と書くことが多いようだが、要するにあれだ、店舗ロイヤルティみたいなもんであろう(雑な言い方でスイマセン)。
 Google様いわく、被引用件数41件。第二著者は現在は日本の大学の先生らしい。
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読了:Gabor & Granger (1964) 消費者の価格感受性について調べましょう

Gabor, A., Granger, C.W.J. (1964) Price sensitivity of the consumer. Journal of Advertising Research, 4(4), 40-44.

 消費者調査でいうところの価格調査(価格感受性についての調査)をめぐる議論では、Gabor-Granger法という縄文式土器くらいに古めかしい方法が、いまだに引き合いに出されることがある。その元論文として引用される論文のひとつ。学会発表の準備のために目を通した。
 実際に読んだのは、1979年にManagement Decisionという雑誌に再録されたもの。たぶん内容は同じだと思う。
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読了:Leone, et al. (2011) プライシング研究の書誌学的分析

Leone, R.P., Robinson, L.M., Bragge, J., Somervuori, O. (2011) A citation and profiling analysis of pricing research from 1980 to 2010. Journal of Business Research, 65(7), 1010-1024.

 仕事の都合で調べ物をしていて目を通した奴。タイトルの通り、pricingに関連する論文の書誌学的分析である。
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読了: Jagpal & Spiegel (2011) 無料サンプル配布と市場構造・ゲーム戦略

Jagpal, S., Spiegel, M. (2011) Free samples, profits, and welfare: The effect of market structures and behavioral modes. Journal of Business Research, 64, 213-219.

 仕事の都合で製品サンプリングについて調べていて読んだ奴。サンプリング活動の効果の実証研究ではなく、ゲーム理論による規範的研究である。
 正直、タイトルの段階で「これは読みたいのと違う…」って思ってたんだけど、なんとなく目を通してしまった。仕事からの逃避かもしれない。
 google様いわく、被引用関数16。す、少ない…
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読了: Moes, Fransen, Verhagen, Fennis (2022) CSR的な広告が道徳的正当化を経由して衝動購買を引き起こす

Moes, A., Fransen, M., Verhagen, T., Fennis, B. (2022) A good reason to buy: Justification drives the effect of advertising frames on impulsive socially responsible buying. Psychology & Marketing, 39(12), 2260-2272.

 しばらく前に読んだ奴。
 メモはほかのところに書いたので省略するけど、消費者による購買の正当化を価値的正当化と道徳的正当化にわけ、それぞれを誘発する広告(自己利益的広告と他者利益的広告)を提示して衝動購買(意向と行動)への効果をみるという話であった。他者利益型のほうが効く、それは道徳的正当化に媒介される、という結果。
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読了: Chandukala, Dodson, & Liu (2017) 製品サンプル配布の効果を観察データから推測する

Chandukala, S.R., Dodson, J.P., Liu, Q. (2017) An Assessment of When, Where and Under What Conditions In-Store Sampling is Most Effective. Journal of Retailing, 93(4), 493-506.

 仕事の都合で読んだ奴。店頭での製品サンプル配布が売上に及ぼす影響をモデル化して既存データからパラメータを推測するという話。
 Google様いわく、被引用件数18件。す、少ねえ…
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覚え書き: Mplus version 8.1-8.10の新機能

 えー、昨今は大規模言語モデルとかナントカGPTとかでいろいろ大騒ぎですけれど、大人のデータサイエンティストが本気で使うソフトといえばMplusですよね。Mplus一択ですよね。Mplus一択ですよね。
 (ウエストランドという漫才コンビが、ステージに出てきていきなり「本気の大人のデートは吉祥寺の鳥貴族に限りますよね、吉祥寺の鳥貴族一択ですよね、吉祥寺の鳥貴族一択ですよね」と畳みかける際の口調で)
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読了: Glickman & Jensen (2005) 一対比較の適応的実験計画 by ベイジアン最適計画アプローチ

Glickman, M.E., Jensen, S.T., (2005) Adaptive paired comparison design. Journal of Statistical Planning and Inference, 127, 279-293.

 仕事の都合で一対比較法の実験計画の動的最適化について考えていて(なぜこんな柄にもないことを考えているのか…)、タイトルがそのものずばりだったのでめくってみた。Google様いわく被引用件数73件。この分野では多いのだろうか、少ないのだろうか。

 本論文はあいにくトーナメント戦の設計を考えていて(大相撲の15日間の各日の取り組み表を決めるというような状況)、私が抱えているところの、調査における刺激の心理量の一対比較測定という問題とは、いっけん乖離が著しいのだが、でも本質的には同じ話なんだろうなと思う。
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