論文:マーケティング」カテゴリーアーカイブ

読了: Ulu, Honhon, & Alptekinoglu (2012) 品揃え実験で消費者の好みを推定しようとする小売業者の動的最適品揃えモデル

Ulu, C., Honhon, D., Alptekinoglu, A. (2012) Learning consumer tastes through dynamic assortments. Operations Research, 60(4), 833-849.

 研究会でお世話になっている経済学の先生が面白がっておられたので、ダメモトで読んでみた論文。
 自分が決めた品揃えの下での売上を観察することを通じて消費者の選好を推測し、長期的な利益を最大化しようとするメーカーだか小売だかの最適品揃えモデルを提案している研究。数値例は出すけど、実証研究ではない。
 google様いわく、被引用件数82。どうなんだろう、掲載誌に照らせば、それほど多くも少なくもないって感じかな。
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読了: Suzuki, Hamamura, Takemura (2019) 感情制御方略としての無節制消費

Suzuki, S., Hamamura, T., Takemura, K. (2019) Emotional fortification: Indulgent consumption and emotion reappraisal and their implication for well-being. Journal of Consumer Behavior, 18(1), 25-31.

 都合により目を通した論文。ぜいたく消費が感情制御というか気分修復の方略として用いられていて、その点でwell-beingに寄与しうる、という話。google様いわく、被引用回数14件、うーん、ちょっと寂しい。
 第一著者は一橋大の先生らしい… あ、ご褒美消費についての面白い本を書いた方だ! 全然気が付かなかった。
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読了: Burns & Perkins (1996) 購入に失敗した人の説明フローチャート

Burns, D.J., Perkins, D. (1996) Accounts in post-purchase behavior: Excuses, justification and meta-accounts. J. Consumer Satisfaction, Dissatisfaction and Complaining Behavior, 9.

 そうそう、これも記録するのを忘れていた。聞いたこともない学術誌?に載った、なんだか不思議な論文? で、google様いわく被引用件数9件という寂しさである。
 商品の購入後、購入に失敗したことが明らかであるような場面で、人がどういう説明をするかのフローチャートを提案します(証拠いっさいなしで思弁的に)、という内容。まず自分の責任の切り離しを試み、それが無理なら結果のネガティブ性を最小化し、それが無理なら説明の拒否などを行うであろう、とのこと。

読了:Heath, Tynan, & Ennew (2015) 「自分へのご褒美」消費についての本人の説明

Heath, T.P., Tynan, C., & Ennew, C. (2015) Accounts of self-gift giving: nature, context and emotions. European Journal of Marketing, 49(7/8), 1067-1086.

 都合により読んだ論文。「自分へのご褒美」消費についての質的研究である。インタビューをたくさんやって、感情への効果とか、今後の研究枠組みとかについて論じている。
 メモは別のところでとったので省略。しっかし、洋の東西を問わず、質的研究は方法論に関する能書きが多くて面倒くさい… (すいません)

読了: Cian, Longoni, & Krishna (2020) 痩せる前後の写真を並べた広告より、痩せる前と痩せていく途中と痩せた後の写真を並べた広告のほうが効く(ただし鼻づまりスプレーだと逆になる)

Cian, L., Longoni, C., Krishna, A. (2020) Advertising a desired change: When process simulation fosters (vs. hinders) credibility and persuation. Journal of Marketing Research, 57(3), 489-508.

仕事の都合で読んだやつ。広告におけるメンタル・シミュレーション研究である。最後の著者はセンサリー・マーケティングで有名なAradhna Krishnaさん。
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読了: Helveston (2023) 選択課題の個人レベル多項ロジットモデルをふつうのパラメータ化と「WTP空間」パラメータ化の両方で高速に最尤推定するRパッケージlogitr

 先月、コンジョイント分析の実験計画をRで作る方法についてのメモを作ってたんだけど(我ながらマニアックな話だ…)、そのきっかけになったのはRの cbcTools というパッケージをみつけたからであった。メモを公開したら、このパッケージの作者の方にコメント頂いたりして(機械翻訳で読んで下さったのだそうだ)、誠に恐縮でございました。一円の儲けにもならないけど、なんだかちょっと嬉しいですね。
 で、この方が作っている別のパッケージについて解説を眺めていたら、冒頭でいきなり「そうそう!そうなのよ!」と膝を叩くような話が出てきて…

Helveston, J.P. (2023) logitr: Fast Estimation of Multinomial and Mixed Logit Models with Preference Space and Willingness-to-Pay Space Utility Parameterizations. Journal of Statistical Sofware, 105(10).
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読了: Agrawal & Maheswaran (2005) たとえば製品への評価がその製品に与えられた賞とかによって影響されてしまうことがあるけれど、どんな動機づけのもとでそうなりやすいか

Agrawal, N., Maheswaran, D. (2005) Motivated reasoning in outcome-bias effects. Journal of Consumer Research, 31, 798–805.

 仕事の都合でmotivated reasoningについて調べている際に手に取って、最初のパラグラフを読んだ瞬間に「これは読みたいのとちがう…」と思った奴なんだけど、せっかくなので最後まで目を通した。
 Google様いわく被引用数107。

 簡潔に書きすぎていてちょっと不親切な論文だと思うのだが、ここでいう帰結バイアスoutcome biasというのは、たとえば製品について評価する際、その製品そのものについてちゃんと調べて考えるのではなく、その製品のもたらしたなんらかの結果(「いま売れてます」とか)でもって評価してしまうバイアスのことである。そのバイアスがどんな動機づけの下で強くなったり弱くなったりするか、というのがお題である。
 イントロで事例を挙げてくれるとわかりやすいのにね。
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読了: Heyman & Mellers (2008) 価格が公正であると思われるのはどういうときか

Heyman, J.E., Mellers, B. (2008) Perceptions of Fair Pricing. Haugtvedt, C.P, Herr, P.M., & Kardes, F.R. (eds) “Handbook of Consumer Psychology“, Chap.27.

 価格の公正性の知覚についての解説。オフィスの本棚で幅を占めているわりにはあまり役に立ったことがない消費者心理学のハンドブックのなかに、価格に関する章がいくつかあることに気づき、ためしに読んでみた。
 イントロダクションと結論の2節しかないというなかなか斬新な構成である。見出し行が落ちているのかも。
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読了: Gabor & Granger (1966) 品質の指標としての価格

Gabor, A., Granger, C.W.J. (1966) Price as an Indicator of Quality: Report on an Enquiry. Economica, 33(129), 43-70.

 先日読んだ Gabor & Granger (1964)に引き続き、価格感受性測定の超・古い論文に目を通した。
 古い論文は、書き方が風雅すぎて困ってしまう…
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読了: Burlison & Oe (2018) ストア・パトロネージ研究レビュー

Burlison, J., Oe, H. (2018) A discussion framework of some image and patronage: A literature review. International Journal of Retail & Mamagement, 46(7), 705-724.

 仕事の都合で目を通した奴。store patronageについての文献レビュー。store patronageってのは、日本語では「ストア・パトロネージ」と書くことが多いようだが、要するにあれだ、店舗ロイヤルティみたいなもんであろう(雑な言い方でスイマセン)。
 Google様いわく、被引用件数41件。第二著者は現在は日本の大学の先生らしい。
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読了:Gabor & Granger (1964) 消費者の価格感受性について調べましょう

Gabor, A., Granger, C.W.J. (1964) Price sensitivity of the consumer. Journal of Advertising Research, 4(4), 40-44.

 消費者調査でいうところの価格調査(価格感受性についての調査)をめぐる議論では、Gabor-Granger法という縄文式土器くらいに古めかしい方法が、いまだに引き合いに出されることがある。その元論文として引用される論文のひとつ。学会発表の準備のために目を通した。
 実際に読んだのは、1979年にManagement Decisionという雑誌に再録されたもの。たぶん内容は同じだと思う。
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読了:Leone, et al. (2011) プライシング研究の書誌学的分析

Leone, R.P., Robinson, L.M., Bragge, J., Somervuori, O. (2011) A citation and profiling analysis of pricing research from 1980 to 2010. Journal of Business Research, 65(7), 1010-1024.

 仕事の都合で調べ物をしていて目を通した奴。タイトルの通り、pricingに関連する論文の書誌学的分析である。
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読了: Jagpal & Spiegel (2011) 無料サンプル配布と市場構造・ゲーム戦略

Jagpal, S., Spiegel, M. (2011) Free samples, profits, and welfare: The effect of market structures and behavioral modes. Journal of Business Research, 64, 213-219.

 仕事の都合で製品サンプリングについて調べていて読んだ奴。サンプリング活動の効果の実証研究ではなく、ゲーム理論による規範的研究である。
 正直、タイトルの段階で「これは読みたいのと違う…」って思ってたんだけど、なんとなく目を通してしまった。仕事からの逃避かもしれない。
 google様いわく、被引用関数16。す、少ない…
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読了: Moes, Fransen, Verhagen, Fennis (2022) CSR的な広告が道徳的正当化を経由して衝動購買を引き起こす

Moes, A., Fransen, M., Verhagen, T., Fennis, B. (2022) A good reason to buy: Justification drives the effect of advertising frames on impulsive socially responsible buying. Psychology & Marketing, 39(12), 2260-2272.

 しばらく前に読んだ奴。
 メモはほかのところに書いたので省略するけど、消費者による購買の正当化を価値的正当化と道徳的正当化にわけ、それぞれを誘発する広告(自己利益的広告と他者利益的広告)を提示して衝動購買(意向と行動)への効果をみるという話であった。他者利益型のほうが効く、それは道徳的正当化に媒介される、という結果。
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読了: Chandukala, Dodson, & Liu (2017) 製品サンプル配布の効果を観察データから推測する

Chandukala, S.R., Dodson, J.P., Liu, Q. (2017) An Assessment of When, Where and Under What Conditions In-Store Sampling is Most Effective. Journal of Retailing, 93(4), 493-506.

 仕事の都合で読んだ奴。店頭での製品サンプル配布が売上に及ぼす影響をモデル化して既存データからパラメータを推測するという話。
 Google様いわく、被引用件数18件。す、少ねえ…
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読了: Okada (1995) 消費者は購買を正当化しなければならない、そのせいでこんなことが起きる

Okada, E.M. (1995) Justification Effects on Consumer Choice of Hedonic and Utilitarian Goods. Journal of Marketing Research, 42(1), 43–53.

 仕事で読んだ論文。
 内容のメモは別の形でとったので省略するけれど…

 たとえばレストランのデザートメニューに、おいしそうだけどカロリー高めのやつともう少し低脂肪のやつがあるとして、もしどっちかしか載ってなかったらそれを頼むけど(カロリー高めだからやめとこうということにはならないけど)、両方載ってたら後者を選んじゃうでしょう?
 あるいは、高いカメラを買うとき、「離れた店で同じカメラがもっと安く売ってるよ」といわれたとして、必要に迫られてではなくて趣味で買うときのほうが、じゃあそっちの店まで歩くかってことになるでしょう?
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読了: Brennan, Person & Priola (2015) 企業ブランドの内面化を通じた従業員のアイデンティティ形成(あるいは、未来の自己の動員を通じた規律権力の構築)

Brennan, M.J., Persons, E., Priola, V. (2015) Brands at work: The search for meaning in mundane work. Organization Studies, 36(1), 29-53.

 仕事の都合でコーポレート・ブランディングについて調べていて、実証とポエムとセールストークが奇妙に混淆した資料の山にほとほとうんざりしていたんだけど、たまたまこれをみつけ、あまりの面白さに読み耽ってしまった。こんなことをしている場合じゃないのに。
 記録のために書いておくけど、久保田・阿久津・余田・杉谷(2019, マーケティング・ジャーナル)のなかで、阿久津聡さん(有名な先生ですね)が、経営組織論におけるコーポレート・ブランディング研究としてこの論文を例示していたのがきっかけである。ありがとうございます。
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読了:Urde (2013) コーポレート・ブランディングのフレームワークCBIMのご提案

Urde, M. (2013) The corporate brand identity matrix. Journal of Brand Management, 20(9), 742-761.

 仕事の都合で読んだ奴。コーポレート・ブランディングのためのフレームワークを提示するという話。カプフェレのブランド・アイデンティティ・プリズムみたいな壮大なポンチ絵(すいません)のコーポレート版である。
 google様いわく、被引用回数286。
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