投稿者「elsur」のアーカイブ

読了: Rue, Martino, Chopin (2009) INLAを使って楽しい楽しい潜在ガウシアン・モデル (後編)

 前回に引き続き、以下の論文のメモ。

Rue, H., Martino, s., Chopin, N. (2009) Approximate Bayesian Inference for Latent Gaussian Models by Using Integrated Nested Laplace Approximations. Journal of Royal Statistical Society, B. 71(2), 319-392.

 どうやら私の能力を超えている… 辛い…
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読了: 万, et al. (2020) 比例ハザード性を仮定しない生存時間Bump Hunting手法の提案

万可, 谷岡健資, 南弘征, 下川敏雄, 水田正弘 (2020) 治療効果が顕著なサブグループを抽出するための境界内平均生存時間に基づく生存時間Bump Hunting法の開発. 計算統計学, 33(1), 1-28.

 仕事の都合でめくった奴。
 どういう話かというと、観察データなり臨床試験のデータなりから、新治療と既存治療のアウトカムの差が特に大きいサブグループを抽出したいという話である。大変失礼ながら提案手法そのものには関心がなくて、この領域にはどういう手法があるのかな、という関心から斜め読みした次第。すいません、ちゃんと読んでないです…
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覚え書き: ヤコビアンとかヘシアンとかコシアンとかもうわけがわかんない

 もう一万回くらい書いていると思うけど、私はきちんとした教育をうけていないので数学が全然わからない。しかし仕事上わかりませんでは洒落にならないので、いいトシこいて机に向かって練習問題を解いたりして貴重な休日を費やしたりしているのである。ほんとに辛い。
 いま仕事の都合で読んでいる資料にも、なんの前置きもなくヘシアンがどうたらこうたらと書いてあり、少しでも理解しようと思って机の横にある教科書をめくると、さらにヤコビアンだのナントカアンだのというのが乱舞していて、ほんとにもう、頭の良い奴はみんな死ねばいいのにと思う。

 以下はヤコビアン、ヘシアン、ナントカアンについての自分のための覚え書きである。誰も読む人はいないだろうけど、うっかり読んでしまうと、さみしい中年男の悪あがきに涙が止まらなくなるだろう。
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読了:小林・苗村・清水(2021) 科学的説明というのは必ず因果的説明なのか、そうでもないのか

 マーケティング・リサーチというよくわからない分野で細々と生計を立てていて、ときどきうんざりするのは、あまりに説明と理解が重んじられるという点である。「分析の結果が腹落ちすることが大事だ」とかね。その「腹落ち」ってなに? そんなに神聖なこと? 現実には、人は往々にして、いいかげんな説明によって浅薄な理解に陥ってしまい、それによってかえって視野を狭くしてしまうことだってある。むしろ、わからないことをわからないままに抱え込んでいく強靱さが大事なのではなかろうか…
 などとぐるぐる考えていると、ではそもそも説明ってなんなの? と不思議に思えてくる。広辞苑によれば説明とは、(1)事柄の内容や意味を、よく分かるようにときあかすこと、(2)記述が事実の描写や確認に留まるのに対して、事物や出来事が「なぜかくあるか」の根拠を示すこと。科学的研究では、個別事象を一般的法則と初期条件から因果的に導くこと。なのだそうである。しかし、差し障りがあるから細かく書けないけど、世のビジネス書に書いてあるアレも、マーケティングの偉い先生が仰るアレも、よくよく考えると、上記の意味での説明にはなってないよね? などと考え込んでしまう。

小林裕太・苗村弘太郎・清水雅也 (2021) 非因果的説明論の現在: 多元説・還元的一元説・非還元的一元説. フィスカル, 6(3), 146-174.
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読了:小川(1997) 沖縄の民俗宗教をまるごとキリスト教に鞍替えさせた牧師の話

 宮田登「弥勒」という本を読んでいて、宮古島に洞窟を崇拝するミロク教という新宗教があったと知り、へええ? と興味本位で検索したところ、下記の紀要論文をみつけた。論文の本題とは別に、登場する松森善正という人の人生があまりに面白いので、その点に絞ってメモしておく。

小川順啓(1997) 民俗宗教からキリスト教へ ある沖縄のキリスト教会の物語. 駒澤大学文化, 17, 45-74.
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読了: Rue, Martino, Chopin (2009) INLAを使って楽しい楽しい潜在ガウシアン・モデル (前編)

 流れ流れてデータ解析とかで生計を立てていますが、一日に三回くらい、なぜ私はこんなことをしているのか… もっとましな人生があったのではないか… という疑念に囚われる。もっとましな人生ってなに? よくわかんないけど。
 さらに、Stanのコンパイルでイライラするたび、なぜ私はこんな面倒なことをしているのか… これはMCMCじゃなくてなにか別の方法でも解けるのではないか… という疑念に囚われる。別の方法ってなに? 知らんけど。INLAとか?
 そんなこんなで、数年前から何度かINLAを実戦投入しようとし、その度に挫折している。検索すると2017年、R-INLAについての解説を読んでいるようだが、メモを読み返すと内容をあまり理解できていないことが丸分かりである。切ないのう。

Rue, H., Martino, s., Chopin, N. (2009) Approximate Bayesian Inference for Latent Gaussian Models by Using Integrated Nested Laplace Approximations. Journal of Royal Statistical Society, B. 71(2), 319-392.

 そういうわけで、先日も仕事の都合で発作的にINLAの勉強をはじめた(仕事のほうは時間切れでそれどころではなくなり、結局はStanで切り抜けた)。その際のメモ。長くなるので2パートくらいにわける。
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読了: Tierney & Kadane (1986) 事後分布の平均とか分散とか周辺密度とかをラプラス近似で得る

Tierney, L, Kadane, J.B. (1986) Accurate Approximations for Posterior Moments and Marginal Densities. Journal of the American Statistical Association, 82(393), 82-86.

 都合により調べ物をしていて(後日のためにメモしておくとRue, Martino, & Chopin(2009), INLAについての論文)、途中で話についていけなくなったので、引用を遡って読んでみた奴。
 こんなの読むなんて柄じゃないんですけどね。数学できないんですけどね。いったいどういう罰ゲームなのか。
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読了:「イリアス」「オデュッセイア」「ジプシー歌集」「過去を売る男」「刑罰」「祖父の祈り」

フィクション、その2。

年明けからだったか、突如「イリアス」ブームが訪れ、ほとんど熱狂的にページをめくっていたのであった。とにかく面白い。加えて云えば、現代の価値観では考えられないような行為と、現代人にとってもごくなじみ深い心の動きの両方を描いているところがサスペンスフルである。
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読了:「更級日記」「黒石 新宿鮫XII」「焔」「煉獄の獅子たち」「スパイはいまも謀略の地に」

昨年9月以降に読んだ本、フィクション、その1。

フィクションに分類していいのかどうかわからないけれど… コロナ禍や疫病について考えていて、不意に読みたくなった。
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読了:「バガヴァッド・ギーター」「宗教者ウィトゲンシュタイン」

しばらく前にヒットしたインド映画「バーフバリ」で、悪人側の叔父さんが、しかし死なずに生き残り善人側に仕えるじゃないですか。ハリウッド的勧善懲悪に馴れた目には少しびっくりする展開だったけど、あれは映画の元ネタであるマハーバーラタの価値観なのだ、と誰かが述べていて、へええ?と思った。勉強のため、マハーバーラタの一部であるバガヴァッド・ギーターを試しに読んでみた次第である。ううむ… 世界は広いなあ…
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読了:「マキアヴェッリの独創性 他三篇」「歴史のなかに見る親鸞」「華厳経入法界品」「禅仏教とはなにか」「<個>の誕生 キリスト教教理を作った人々」

これはなかなか面白かった、んだけど、読み終えてメモを取らずに放置していたせいで、なにがどう面白かったのか思い出せない…
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読了:「「断絶」のアメリカ、その境界線上に住む」「真理の語り手:アーレントとウクライナ戦争」「調べる技術:国会図書館秘伝のレファレンス・チップス」「私がつかんだコモンと民主主義」「国商 最後のフィクサー葛西敬之」

ノンフィクション、その5。

これはとても役に立つ本であった。
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読了:「信仰か、マインド・コントロールか」「ドキュメント通貨失政」「日本銀行 虚像と実像」「千年の歓喜と悲哀 アイ・ウェイウェイ自伝」「病むことについて」

ノンフィクション、その4。

読んでかなり日が経ってしまったけど、とても面白い内容であった。
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読了:「アジア都市音楽ディスクガイド」「ウクライナ 通貨誕生」「デス・ゾーン」「アメリカは内戦に向かうのか」「ギリシア・ローマの文学」

ノンフィクション、その3。

独立直後のウクライナの通貨制定に関わったエコノミストによる回顧録。
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読了: 「香港の民主化運動と信教の自由」「オーラル・ヒストリーの可能性 東京ゴミ戦争と美濃部都政」「母という呪縛 娘という牢獄」「変容するシェイクスピア」「栄光の昭和映画スター」

ノンフィクション、その2。

信仰のある人を想定読者としてまとめられた本で、私にはちょっと読み辛かったけど、興味深い内容であった。
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読了: 「平家物語 他六篇」「日本古典と感染症」「東方キリスト教の世界」「地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団」「叙任権闘争」

ノンフィクション、その1。

岩波新書版で読んでいたんだけど、このたび岩波文庫に入ったのを機に再読。
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読了:「イリオス」「Bye-Bye アタシのお兄ちゃん」

コミックス、その12。たぶんこれがラストだ。

いま一番続きが待ち遠しいマンガ。トロイア戦争あたりのギリシア神話を現代ヤクザの抗争に翻案したアクションマンガである。
 荒唐無稽な話ではあるんだけれど、胸を打たれるエピソードも少なくない。敵アキレウスへの愛に目覚めながらも倒れるアマゾネス国の女王ペンテシレイア、じゃなかった、変態的殺し屋テシベさんとか。
 なお、ホメロス「イリアス」でアキレウスの愛馬クサントスは一度だけ言葉を喋るが、本作で東名高速を疾走する馬クサントスは結構セリフが多い。喋るたびに周囲が死ぬほど驚くところが可笑しい。
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