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2011年5月30日 (月)

Bookcover Art 1 誰も知らない「名画の見方」 (小学館101ビジュアル新書) [a]
高階 秀爾 / 小学館 / 2010-10-01
息抜きに読んだ本。著者は美術史の超ビッグネームだが,素人向けにものすごく易しく書いてくれている。カラー図版が多くて目に楽しい。
 はじめて知ったんだけど,ベルト・モリゾという画家の絵,いいなあ。。。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「誰も知らない『名画の見方』」

 原因の有無を行、結果の有無を列にとった2x2分割表に基づいて因果的効果の強さを調べるとき、各行ごとに結果が生じた割合を求め,行のあいだでその比をとることが多い。疫学でいうところの相対リスク(RR)である。
 しかし,列周辺度数が固定されている場合には相対リスクは求められない。たとえば,結果が生じた人を100人,生じなかった人を100人集めてきました,というような場合がそうだ(医学の分野ではこういうのをケースコントロール研究という)。その場合は代用としてオッズ比を使いなさい、とモノの本には書いてある。オッズ比とは,行ごとに右の列と左の列の比を求め,行のあいだでその比をとったもののこと。これはカテゴリカルデータ分析の初歩的な知識で、俺も社員研修などでは必ず話す。
 しかし、オッズ比が相対リスクを近似するのは、結果の生起割合が0に近い場合に限られる(rare disease assumption)。そりゃ医学統計の人はいいでしょう,結果はたいてい発症や死亡で、生起割合はたいてい低いから。でも調査データ分析一般において,いったい生起割合がどのくらい低ければ、オッズ比を相対リスクとして解釈してかまわないのか? 自分のなかであいまいなままやりすごしていたのだが、たまたまその話を解説している記事があったので読んでみた。3頁の短い記事だが、かまうものか、なんでも記録しておくのだ。

Davies, H.T.O, Crombie, I.K., Tavakoli, M. (1998) When can odds ratios mislead? British Medical Journal, 316, 989-991.
 オッズ比はRRよりも極端な方向にずれる。つまり、(a)1を下回る場合はRRより小さく、(b)1を上回る場合にはRRより大きい。著者いわく、(a)の場合、解釈上の実害はさほどない(0.5を半分にしたって0.25、数字がそんなにかわらないから)。しかし(b)の場合には誤解を生むことがある(2の倍は4、数字が大きく変わる)。
 オッズ比とRRのずれは、原因がないときの生起割合(初期リスク)が大きいほど大きくなり、オッズ比が1から離れている時ほど大きくなる。オッズ比が1より大きい場合、だいたいの目安として、初期リスクとオッズ比をかけた値が100%以下なら、オッズ比はRRの2倍以下におさまっている... とのこと。

 いまwebでみたら,この記事には批判コメントが寄せられていて,いわく,著者らはデザインのことをちゃんと考えていない。そもそも実験やコホート研究ならばRRを算出すればよい。いっぽうケースコントロール研究の場合,対照群を適切に抽出しているならば(incidence density sampling),生起割合が高くったってオッズ比はRRを表す。
 ちょっと検索してみたところ,rare disease assumptionは古典的な固定コホートを前提にした議論で,動的コホートを前提にした議論では,ケースコントロール研究のデータが曝露オッズを保持したまま抽出されているのなら,生起割合がどうであれオッズ比はすなわちRRである由(Greenland&Thomas,1982)。。。そういえばこの話,前にどこかで読んだような気がしてきた。勉強してもなかなか身に付かない。イヤになっちゃうなあ。

論文:データ解析(-2014) - 読了:Davies, et. al. (1998) オッズ比がまずいのはどんなとき?

2011年5月29日 (日)

Bookcover シェイクスピア全集 (〔23〕) (白水Uブックス (23)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
ハロルド作石さんが小学館で連載している「七人のシェイクスピア」を布団に寝転がってめくっていたら,ふいにシェイクスピア様の本を読んでみたくなり,たまたま本棚にあった「ハムレット」をカバンにつっこんで出勤した。で,昼飯を食べにいった近所の店でパラパラめくり始めたら,これが無闇に面白くて,パスタそっちのけでのめり込んで読み続ける羽目になった。
 なにしろ昔の戯曲だから,最初はちょっとハードルがある。俺がひっかかるのは,たとえば芝居の冒頭部分,夜中の城壁で兵士が誰何する場面。「止まれ!だれだ!」「この国の味方。」「デンマーク王の臣下。」 なんなの,このやりとりは? 素直に名を名乗ればいいじゃん!!
 というような,おそらく詳しい人が聞いたら鼻で笑っちゃうようなハードルをいったん乗り越えると,これがほんとに面白い。昔読んだときは,これほどまで身近な物語だとは思わなかったのだが。
 今回読んでいてもっとも面白かったのは,オフィーリアの父親のポローニアス。冗長な長台詞で半径数メートルを埋め尽くしながら,実は状況を冷徹に操作している,でも人間観はあまり深くない,というような人。いるいる!こういう人!と,膝を打つような思いであった。
 ポローニアスは中盤でハムレットに刺し殺されてしまうから,ただの脇役だという印象だったのだが,思えばとても重要な人物である。こういうおっさんが悲劇を引き起こすともいえるし,こういうおっさんがいることでカタストロフがうやむやになる,ともいえる。ハムレットがありふれた青年であるのと同様に,ポローニアスもまた,どんな組織にも必然的に生まれてくるタイプなのではないか。。。

 などということを考えながらふと頭を上げると,裏原宿のおしゃれなカフェのカウンターの片隅で,飲みかけのコーヒーを冷めるに任せ,時計にも気づかぬままに,なぜかひたすらシェイクスピアに没頭する,ヨレヨレのスーツの中年男,それがわたくしである。いろんな意味で浮いている。客観的にみて,この男は絶対出世しないタイプだ,と痛感した。

Bookcover 二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [a]
デイヴィッド・ゴードン / 早川書房 / 2011-03-10
海外ミステリには手を出さないように気をつけているのだが,わたくしの愛する「ダメ男一人称小説」に属する新作ということであれば仕方がない。
 実際のところは,すごく上出来なライト・ノベル,という感じであった。主人公はうらぶれた中年作家とはいえ,まだ30代だと思うし。やたらに頭のいい生意気な女子高生が相棒だったりするし。まあ,週末のエンターテインメントとしては申し分ない小説でありました。

フィクション - 読了:「ハムレット」「二流小説家」

Bookcover 浪費するアメリカ人――なぜ要らないものまで欲しがるか (岩波現代文庫) [a]
ジュリエット・B.ショア / 岩波書店 / 2011-03-17
久々に引き当てた超・大ヒット。面白くて面白くて,読むのに時間がかかった。
原著は1998年。アメリカの中産階級は過剰な消費とそのための長時間労働によって不幸になっている,もっと減速しなきゃだめだ。という内容。サブプライム・ショックを経たいまとなっては,本の後半での提言についてはちょっと事情が変わってしまっているかもしれないけれど,前半部分の調査結果を積み上げていくところが大変に面白かった。
いくつかメモしておくと...

マーケティング - 読了:「浪費するアメリカ人」

Bookcover 深読みシェイクスピア (新潮選書) [a]
松岡 和子 / 新潮社 / 2011-02
あまり文学作品の解説本を読むのは好きではないのだが,「ハムレット」を読んでいて,やはりシェイクスピアくらい古いものになると,ある程度まで背景知識があったほうが面白いのかな。。。と反省して手に取った本。ところがこの本,解説本というよりも,シェイクスピアの全作品を訳した高名な翻訳家の芸談であった。ついつい一気読み。
いろいろ面白かったのだが,一番印象に残った箇所をメモしておくと...
「リア王」で,狂気の王がかつての臣下と再会する場面,王のせりふを著者は以下のように訳したのだそうだ。

お前のことはよく知っている。お前の名はグロスター。
忍耐だ。我々は泣きながらこの世にやってきた。
知っているな,生まれて初めて空気を吸うと,
おぎゃあおぎゃあと泣くものだ。[...]

ところが,この訳に基づく舞台の読み合わせで,リア王を演じる山崎努がこのくだりを読むのを聞き,思わず「あ,ちがう!ここは」と叫んだ由。
「泣きながらこの世にやってきた」の「この世」はhither(hereの古語)。これまでの多くの訳が「この世」と訳している箇所だが,それでは次の行を先回りしてしまっている。ここは「泣きながらここへやってきた」と訳した方がいい。なぜならこのくだりは,まず観客に二人がひどい仕打ちにあったうえで「この場所」に泣きながらたどり着いたということを意識させておき,その直後に「この場所」と「この世」をダブルイメージさせる,という仕掛けなのだから。。。と気がついたのだそうだ。

あのとき私が思ったのは,『我々は泣きながらこの世にやってきた』なら名台詞どころか金言にだってなりそうだけれど,『ここへ』じゃ金言にはならないということ,残念だけど。でも[... シェイクスピアは] あくまで,二人の老人が悲惨な目にあっているという芝居を書いた。[...] そこを忘れてはいけない。意味がスムーズに通じて,しかも決め台詞になりそうだからといって,『この世』と先回りして訳してはいけない。たとえて言えば,山登りをするときにはえっちらおっちら歩いていくべきで,ヘリコプターでいきなり七合目まで先にあがってはダメ。ヘリコプター禁止。これは私,『リア王』の稽古場で悟った。以後,翻訳者としての私にとって,大きな教訓になりましたね。

ヘリコプター禁止か。深い... 翻訳のテクニックにとどまる話ではないように思う。

Bookcover ご先祖様はどちら様 [a]
高橋 秀実 / 新潮社 / 2011-04
新潮社「考える人」で連載していた模様。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「深読みシェイクスピア」「ご先祖様はどちら様」

Bookcover オールラウンダー廻(6) (イブニングKC) [a]
遠藤 浩輝 / 講談社 / 2011-05-23
俺はこの人のマンガをたぶんデビュー作から全てリアルタイムで読んでいるのだけれど,感情がピークに達したところでスッと回想に切り替わる,その鮮烈さにいつも感心する。前作「EDEN」でも,準主役の青年が敵兵を次々と殺すそのクライマックスで,彼の少年時代の長い長いエピソードがほとんど唐突に割り込んでくる... という印象的なくだりがあった。非常に独特だと思うのだが,どこか独特なのかよくわからない。

Bookcover ラブやん(15) (アフタヌーンKC) [a]
田丸 浩史 / 講談社 / 2011-05-23

コミックス(2011-) - 読了:「オールラウンダー廻」「ラブやん」

2011年5月27日 (金)

Shocker, A.D. & Hall, W.G. (1986) Pretest market models: A critical evaluation. Journal of Product Innovation Management. 3(2), 86-107.
 上市前販売予測モデルのレビュー。最初に歴史、意義、問題点をまとめたのち、BASES, ASSESSOR, ASSESSOR-FT, NEWS, LITMASについて、データ収集と計算メカニズムを紹介している。
 各種モデルのメカニズムについて並べて紹介している文献をほかにみつけることができなかったので、仕方なく読んだ。その限りにおいては勉強になったが、そもそもこの種の問題について、20年以上前のレビューを読んでも仕方がない面がある。早い話、ASSESSOR-FT, NEWS, LITMASはもう販売されていないはずだ(ええと、別の文献によれば、ASSESSOR-FTはIRIがASSESSORの権利を持っていたころに売っていたモデル。NEWSは70年代初頭に開発された歴史的なモデル。LITMASはsimulated test marketの嚆矢LTMの流れを汲み、現在のDiscoveryモデルの祖先)。ACNeilsenのBASESだって、82年当時と今とではずいぶんちがうだろう。やれやれ。

論文:マーケティング - 読了:Shocker & Hall (1986) プリテスト・マーケット・モデル

2011年5月26日 (木)

Hayduk,L., Cummings, G., Stratkotter, R., Nimmo, M., Grygoryev, K., Dosman, D., Gillespie, M., Pazderka-Robinson, H., Boadu, K. (2003) Pearl's d-separation: One more step into causal thinking. Structrual Equation Modeling, 10(2), 289-311.
 統計データから因果関係を推測するという分野では、最近はPearlの枠組みについて学ぶのがもはや必須となっている模様なのだが、あいにく用語が独特で、俺のようなど素人には非常にハードルが高い。
 よく引用されるPearl (2000) "Causality"には邦訳まで出ていて、仕方がないので大枚はたいて買い込んだものの、たとえば,重要概念であるd-分離(有向分離)についてのPearlの定義はこんな感じである:

道pが次の条件のいずれかを満たすとき,道pは頂点集合Zによって有向分離される(あるいはブロックされる)という。
(1)道pは,ある頂点mがZに含まれるような連鎖経路 i → m → j あるいは分岐経路 i ← m → j を含む。
(2)道pは,mもその子孫もZに含まれないような合流経路(または合流) i → m ← j を含む。
集合ZがXの頂点とYの頂点の間の全ての道をブロックするとき,集合ZはXとYを有向分離するという。(黒木訳「統計的因果推論」pp.16-17)

あはははははは。
 この論文は哀れなSEMユーザに向けて,ただd-分離という概念だけについて,20頁近くを費やして徹底的な解説をお送りする,というもの。あんたらこれをきっかけにPearlの本を読むがいいさ,というきわめて啓蒙的かつお節介な論文である。Pearlの邦訳書にトライする前の景気づけに,と思って目を通した。
 Hayduk先生は読者の知識レベルをちょっと低めに見積もっておられるようで... なんというか,内容よりも説明のテクニックについて学ぶところ多かった。いま俺は市場調査に関連する仕事をしているが,調査結果を解釈する人("リサーチャー")は日々多次元クロス表と悪戦苦闘している。それはそれで素晴らしいことではあるものの,あまりに無原則にデータを層別するのはselection biasの観点からみて危険なのであって,そのあたりの事情を理解してもらうにはどうしたらよいかと,あれこれ試行錯誤したことがあった。この論文では,(1)x+y=zとなるような3つの調査項目の実例を挙げ,(2)x, y, zからなる立方体のなかに平面z=x+yを描き,(3)任意のz=cについて立方体を水平に切り,その断面においてはy=-x+cであることを図示し,(4)つまりうかつにzで層別するとxとyのあいだに見かけ上の負の相関が生じるのです... というやりかたでビジュアルに説明している。これが案外わかりやすい。こういう絵を描けばよかったか。

 この論文を読んでいちばん驚いたのは:パキスタンでテロリストに殺害されたダニエル・パールというジャーナリストがいたけれど,あの人はPearl 教授の息子さんだったのだそうだ。知らなかった。。。

論文:データ解析(-2014) - 読了:Hayduk,L.,et.al.(2003) d-分離:一歩進んだ因果的思考

2011年5月25日 (水)

Bookcover 人間はガジェットではない (ハヤカワ新書juice) [a]
ジャロン ラニアー / 早川書房 / 2010-12-16
「なるほどそういう見方があるか」と「いやそれは極論でしょう」と「この人なにいってんだかわかんない」がおのおの1/3くらいを占める,面白い本であった。
 現代のデジタル・カルチャーを「サイバネティクス全体主義者」「デジタル毛沢東主義者」と批判するところが面白かった。ソーシャルメディアを活用しようとするマーケターなんかは,どういう扱いになるかしらん。相手にさえしてもらえないかな。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「人間はガジェットではない」

2011年5月24日 (火)

Bollen, K.A., Ting, K. (2000) A Tetrad test for causal indicators. Psychological Methods, 5(1), 3-22.
 統計的因果探索の有力株のひとつと名高い(そのわりにはあんまり使われていない)アプローチとして、CMUのTETRADプロジェクトがある。面白そうだからちょっと勉強しようと思って読んだ論文、なのだけれど、おなじTetradでもこれはconfirmatoryな使い方で、CMUのexploratoryな使い方とは方向性がちがう。。。ということに途中で気が付いた。アホだ。
 昨年、前勤務先での出張の移動中にだいたい読み終えていたのだが、新幹線の揺れが気持ちよかったらしく、書き込みのメモの字からみて完全に夢うつつだったようだし、中身を全然覚えていない。整理がつかないのでこのたび再読した。つくづくアホだ。

 BollenのCTA(confirmatory tetrad analysis)の基盤となる vanishing tetrad test を提案する論文。
 いまここに変数が4つあるとする。2変数のペアは6個。6つの共分散のうち4つを取りだし、たとえば以下のように組み合わせたものをテトラッドという。変数$x_i$と$x_j$の母共分散を$\sigma_{ij}$として、
 $\tau_{1234} = \sigma_{12} \sigma_{34} - \sigma_{13} \sigma_{24}$
 つまり、4つの変数を正方形に並べ、頂点を結ぶ線分で共分散を表すとして、このテトラッドは2本の縦線の積から2本の横線の積を引いたものである。テトラッドにはこのほかに、$\tau_{1342}$と$\tau_{1423}$がある。ええと、前者は縦線の積と斜め線の積の差、後者は横線の積と斜め線の積の差ですね。
 そんなことを考えてお前は何が楽しいのかという感じだが、面白いのはここからである。

 モデル構築の際、指標が潜在変数に対してreflectiveかformativeかというのは、一義的には概念上の問題である。潜在変数が動いたせいで指標が動くなら前者、逆なら後者だ。しかし現実にはどちらとも決めかねることが多いわけで、データからサポートを得たいと考えるのは人情である。一方、一般的な共分散構造分析の枠組みでは、矢印の向きを決める方法はない(ネストしてないから尤度比検定はできない)。そこでテトラッドを使えば、すくなくとも「4つ全部がreflective」か「4つ全部がformative」かという二択の問題については、3つの標本テトラッドを観察することによって判断できるわけだ。
 これを一般化してモデルの検証に使う、というのがCTAのアイデアである。指標が4つより多い場合にも少ない場合にも一般化できるし、矢印の向きだけでなく誤差相関の有無についても検討できる。
 ただし、CTAを使えばすべての矢印の向きがわかるという夢のような話ではない。たとえば「4つの指標のうち1つだけがformative」な場合も、やはり3つのテトラッドが消失するわけで、「4つ全部がreflective」な場合と区別することができない。また、仮に指標がformativeであることがわかったとして、そういうモデルがSEMで識別可能かどうかはまた別の問題である。

 第二著者がSASマクロを配布している模様。Rのパッケージがあるかどうかはわからない。一度つかってみたいなあ。

論文:データ解析(-2014) - 読了:Bollen & Ting (2000) 因果指標のテトラッド・テスト

「このウジ虫め,何様のつもりだ!いま貴様ができることをやれ!」「サー!イエッサー!」というわけで,華やかな話題を横目に古い論文をコリコリと読む今日この頃である。コリコリ。

Armstrong, J.S., Brodie, R.J. (1999) Forecasting for marketing. in Hooley, G.J. & Hussey, M.K. (eds.) "Quantitative Methods in Marketing," Second Edition, pp.92-119.
 予測についての概論。分厚いハンドブックのなかの1章らしい。どっか基礎知識がすっぽり抜けているのではと不安になり、いまさらこういう概説を読んでいる有様である。
 最初に予測手法をざっと総ざらえしたのち、市場規模予測、意思決定者の行為の予測、市場シェアの予測、売上予測、利益予測の各領域について簡潔に紹介する内容。
 面白かったところをメモ:

論文:マーケティング - 読了:Armstrong & Brodie (1999) マーケティングのための予測

2011年5月23日 (月)

Bookcover 眠れる美女 (新潮文庫) [a]
川端 康成 / 新潮社 / 1967-11-28
表題作の「眠れる美女」,高校生の頃に読んだ頃は,主人公の老人が,まだ「男としての力がある」のないのという点に妙にこだわるのが可笑しかった。いま読んだらさぞや印象がちがうだろうなあ,と思って手に取ってみた。
 今回いちばん印象に残ったのは,全裸でこんこんと眠る若い娘たちの描写であった。エロティックというより,切なく,哀しい。

フィクション - 読了:「眠れる美女」

Bookcover 大鳥圭介―幕府歩兵奉行、連戦連敗の勝者 (中公新書) [a]
星 亮一 / 中央公論新社 / 2011-04
日清戦争や閔妃暗殺についての本を読んでいると,清国に赴任した大鳥公使という人が出てくるけど,あれは戊辰戦争の旧幕府軍の若き指揮官・大鳥圭介とどういう関係にあるのか,不思議に思ったことがあった。たまたま新書で伝記が出ていたので読んでみたら,やっぱし同じ人であった。かつての朝敵ではないですか。明治時代ってよくわからん。
 やれやれ,老後はこうやって歴史の本でも読んで過ごすか。。。俺が貧乏で孤独で悲惨な老後を過ごすことになる近未来にも,まだ無料の公共図書館があるとよいのだが。

日本近現代史 - 読了:「大鳥圭介」

Bookcover 戦国誕生 中世日本が終焉するとき (講談社現代新書) [a]
渡邊 大門 / 講談社 / 2011-05-18
「中世日本が終焉するとき」という副題に惹かれて読んでみたものの,登場人物が多すぎ,人間関係が複雑すぎて,ほとんど理解できなかった。すみません。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「戦国誕生」

Bookcover ジゼル・アラン(2) [a]
笠井 スイ / エンターブレイン / 2011-05-14
各書店の棚での展開をみてびっくり。1巻は予想外に売れていたようだ。悪いマンガじゃないとは思うけど... 萌えは強し,ということかしらん。

Bookcover リューシカ・リューシカ 1 (ガンガンコミックスONLINE) [a]
安倍 吉俊 / スクウェア・エニックス / 2010-06-22
Bookcover リューシカ・リューシカ(2) (ガンガンコミックスONLINE) [a]
安倍 吉俊 / スクウェア・エニックス / 2011-05-21
小さな女の子の視点でありふれた世界の不思議さを描くフルカラー連載。スクエア・エニックスのwebで連載している模様。

Bookcover イグアナの嫁 (幻冬舎文庫) [a]
細川 貂々 / 幻冬舎 / 2011-04-12
大ヒット作「ツレがうつになりまして」の続編にあたるエッセイマンガ。

Bookcover やじろべえ 1 (マーガレットコミックス) [a]
山川 あいじ / 集英社 / 2011-04-25
イケメンの義父と女子中学生との二人暮らしを描くハートウォーミングな少女マンガ。

コミックス(2011-) - 読了:「ジゼル・アラン」「リューシカ・リューシカ」「やじろべえ」「イグアナの嫁」

2011年5月21日 (土)

Abramson, C., Andrews, R.L., Currim, I.S., Jonese, M. (2000) Parameter bias from unobserved effects in the multinomial logit model of consumer choice. Journal of Marketing Research, 37(4), 410-426.
 消費者の選択データ(POSデータとか)に選択モデルをあてはめるとき、モデルに組み込みそこねている変数がパラメータにバイアスを与える。たとえばある消費者があるブランドをリピート購入したとして、それは前回の選択の影響かもしれないし(状態依存性)、そのブランドが好きだからかもしれない(選好の個人差)。仮にどちらも正しいとして、しかし選好の個人差を考慮せず状態依存性だけを考慮したモデルをつくると、状態依存性はその分大きく見積もられるわけだ。
 そこで、どんなときにどんなバイアスが生じるのか、シミュレーションでシステマティックに調べました、という研究。うーむ、玄人好みの渋いテーマだ。マーケティング実務への示唆は特にないが、POSデータの分析者にとっては大事な話だろう。
 5ブランドからひとつを選択する場面を考え、各ブランドの効用を適当に決め、マーケティング・ミックス変数(4つ)をランダムに発生させて架空のPOSデータをつくる。その際、さらに以下の4要因を操作する:

各3水準で操作するので、3^4=81通りの架空データができる。
 で、各データに次の9つのモデルを当てはめる:

 で、ブランドの効用のバイアス、マーケティングミックス変数の係数のバイアス、ブランド・ロイヤルティの係数を従属変数とし、4要因の分散分析をかける。その結果わかったことは、

などなど。全体的にいって、予測精度が高いのはモデル9, パラメータ推定が良いのはモデル7。2)のロイヤルティ変数をいつも組み込んでおくのがお勧めである由。
 推定したパラメータのバイアスの大きさは、モデルの予測的妥当性なり適合度なりをチェックすればわかるだろうと考えがちだが、決してそうではない。怖い話だ。

論文:マーケティング - 読了:Abramson, et. al. (2000) 消費者選択の多項ロジットモデルにおけるパラメータのバイアス

2011年5月20日 (金)

Bookcover マーケティングの科学―POSデータの解析 (シリーズ・予測と発見の科学) [a]
阿部 誠,近藤 文代 / 朝倉書店 / 2005-11
仕事の都合で読んだ。スキャナー・データ(POS, ID-POS, ホームスキャンデータ)の分析手法に焦点を当てた解説書。
 内容は:スキャナー・データの概要、プロモーション効果のモデル(BWとSCAN*PRO)、時系列予測(平滑化、ARMA、状態空間モデル、LA/AIDSとかいうやつ)、時系列と回帰を合わせたようなモデリングの例が2つ(回帰係数が時間的に動いたりなんだり、いやあ難しいわ)、購買モデル(ポアソンモデルとハザードモデル)、選択モデル(MNLとGAM)、個人差のモデル(LCA, HB)。
 章によっては解説どころかご自身の研究の紹介ではありませんか、困りますよ先生!... と、自分の能力不足を棚に上げてやつ当たりしながら読了。十分理解できたとは到底言い難いが、勉強になりました、ということで。。。

マーケティング - 読了:「マーケティングの科学」

Bookcover おひとり様物語 (3) (ワイドKC キス) [a]
谷川 史子 / 講談社 / 2011-05-13
わたくしが尊敬するベテランマンガ家の新刊。もしマンガの価値がふとした息抜きにあるとするならば,この人の作品は文句なしに最高級品だ。どうしてこうも読みやすいのか。どこに秘密があるのか。

コミックス(2011-) - 読了:「おひとり様物語」

2011年5月19日 (木)

van Heerde, H.J., Leeflang, P.S.H., Wittink, D.R. (2000) The estimation of pre- and postpromotion dips with store-level scanner data. Journal of Marketing Research, 37(3), 383-395.
値引きなどの販促によって商品の売上は伸びるけど、買い貯めや事前の買い控えが起きるので、販促期間の前後は売上が落ちる。この現象はホーム・スキャン・データで確認できるのだが、不思議なことに、POSデータでは確認できないといわれているのだそうだ。そこで、販促の変数をラグつきでどっさりぶちこんで、ブランドの売上を予測する計量経済学的なモデルをつくりました。実データに適用した結果、やはり隠れた低下があること、その大きさはホーム・スキャン・データからの知見と同程度(4~25%)であることがわかりました。という論文。テクニカルな話で、実務的な示唆はあまりない。
 モデルはSCAN*PROモデル(ニールセンが商品化している)の改訂版である由。整理して書き出すと、

ln(店i, ブランドk, 第t週の売上}) 
= \sum_j \alpha_{jkl} ln(店i, ブランドj, 第t週, 状態 l のPI)
+ \alpha_{Fk} (ブランドk, 店i、第t週にfeatureのみ非価格販促の有無)
+ \alpha_{Dk} (ブランドk, 店i、第t週にdisplayのみ非価格販促の有無)
+ \alpha_{FDk} (ブランドk, 店i、第t週にfeature&display非価格販促の有無)
+ \sum_u \sum_l \beta_{kl,u} ln(店i, ブランドk, 第t-u週, 状態lのPI)
+ \sum_v \sum_l \gamma_{kl,v} ln(店i, ブランドk, 第t+v週, 状態lのPI)
+ (店i, ブランドkの切片)
+ (ブランドk, 第t週の切片)
+ (店i, ブランドk, 第t週における残差)

  PIとはそのときの価格と通常価格の比。状態 l = {1,2,3,4} は順に、値引きについてfeatureもdisplayもなし、featureのみ、displayのみ、両方、を示す(所与のi, j, tのもとで現実の状態は一つしかないから、現実でない l についての PI は 0とでもするのかしらん)。\alphaが現在の値引きや非価格販促に対する売上の(交差)弾力性、\betaと\gammaが過去・未来の値引きに対する売上の弾力性を表している。
 で、ツナ缶(3ブランド)、ティッシュ(6ブランド)の、それぞれ24店舗・52週のPOSデータを用い、上記のモデルをブランド別に推定する。\betaと\gammaにあれこれ制約をかけてみたり(指数関数的に減衰するとか)、uとvの上限を動かしてみたりして、AICでモデル選択する。で、(a)実際の売上曲線、(b)得られたパラメータをもとにしたシミュレーション、(c)販促前後のネガティブな効果を取り除いたシミュレーション、の3本を比較すると、(a)(b)が一致し、そこでは販促前後にいっけん「谷」がないようにみえるけど、(c)と比べると「谷」がある、実は落ちていたんですね、というストーリー。

 J. Marketing Researchの論文はどれも難しそうな数式が多くて近寄りがたいのだが、きちんと読んでみるとそんなにややこしい手法は使っていないことが多い。誠にありがたいことである。この論文も、いろいろ工夫しているけれど、要するに回帰モデルだ。
 話の本筋からは離れるが、Narasimhan, Chakravarthi, Neslin, Sen(1996, J. Mktg) は製品カテゴリの"ability to stockpile"の消費者評定をとっているそうだ。へええ。

論文:マーケティング - 読了:van Heerde, et. al. (2000) POSデータによる販促前後売上減の推定

Bookcover 国家の崩壊―新リベラル帝国主義と世界秩序 [a]
ロバート クーパー / 日本経済新聞出版社 / 2008-07
著者はイギリスの外交官で,ブレア政権下の外交戦略の理論的支柱として知られた人。(読み終えてから知ったのだが,ピアニスト・内田光子の旦那さんである由。へぇー。)
 この本,副題に「新リベラル帝国主義と世界秩序」とあり,きっとネオコンのエゲレス版なんだろうなあ,ブッシュ政権に追随した英国の外交官だもんなあ... と勘ぐって,怖いモノみたさで買ったのである。で,読みかけたものの内容についていけず,そのまま放置していた。先日読んだ細谷雄一「倫理的な戦争」のおかげでようやくコンテキストがわかり,最初から読みなおすことができた。ここでいう「帝国主義」とは,ある種の価値の普遍性を信じる,という程度の意味で,アメリカの新保守主義者の単独行動主義とは対極にあるもののようだ。
 さほど長くない文章を3編所収。第一部の,世界秩序をプレ近代・近代・ポスト近代にわけて論じる文章が白眉なのだと思うが,他の文章もとても面白かった。
 著者は現代の外交のありかたについて,5つの(すごく一般的な)提言を行っているのだが,そのひとつが「状況を拡大せよ」である。「ビスマルクが目指したのは,ヨーロッパ内部の現状維持だった。この目標を追求する家庭で,ビスマルクにとって最大の問題となっていたのは,ドイツがアルザス・ロレーヌ地方を併合したことが引き金となったフランス側の抜き差しならぬ敵意だった。[...] フランスと和解する望みはまったくない。そこでビスマルクは,問題となる状況を拡大し,フランスの帝国主義的野心を焚きつけ,[...] ヨーロッパを越えた帝国の世界を巻き込んでヨーロッパの国境問題を処理しようとした」「状況を狭めることは,さまざまな問題を発生させたり,悪化させたりすることが多い」ではなぜ,問題を大きくすることが問題の解決につながるのか? 「戦術レベルでは,[他の問題とリンクさせることで] 威圧や報償など何らかの一時的手法をみつけることになる。戦略レベルでは,より大きな利害を問題に加えることになる。実存主義のレベルでは,アイデンティティを変えることを意味する」「イギリス,フランス,ドイツが,1000年にもわたる敵対関係にもかかわらず,もはや戦争を起こさないのは,『われわれ』自身を再定義したことが理由である[...] 状況拡大の究極の形とは,状況だけでなく,われわれ自身についての定義を拡大することなのである[...] その答えが幅広いものになればなるほど,『われわれ』が平和に暮らせる可能性は高くなる」 なるほど。。。 この発想は勉強になった。問題を切り分ければいいってもんでもないですね。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「国家の崩壊」

Bookcover 数寄です! 1 [a]
山下 和美 / 集英社 / 2011-04-20
「不思議な少年」「天才 柳沢教授の生活」で知られるマンガ家・山下和美さんによる,初のエッセイコミック。一軒家を建てるまでのすったもんだを描く。
 面白いんだけど,ちょっと共感するのが難しいなあ... という印象を受けた。巷のエッセイコミックのダラダラ感と,この人の作品のコアにある固い感じとが合わないのかも。あるいは,同じテーマでの傑作,伊藤理佐「やっちまったよ一戸建て」とついつい比較してしまうからかも。

コミックス(2011-) - 読了:「数寄です!」

2011年5月15日 (日)

俺には特に趣味といえるものがなくて,それが俺の人間的な幅のなさのひとつの要因にもなっていると思うので,せいぜい映画だけはなるたけこまめに観るように心がけている。走ったり跳んだりしなくていいので楽だし,安上がりだし。
 で,先日から池袋の新文芸座で,高峰秀子や成瀬巳喜男の連続上映をやっていて,時間をみつけてイソイソと通っていた。いやもう,GWの混雑はすさまじかった。詰め掛けた善人男女が,ビルの3Fの劇場から階段を辿って表まで行列をつくっていたりして。観客のほとんどは団塊世代ないしそれ以上で,俺でさえ若い部類であった。

 以下の2冊は,成瀬作品の関係者へのインタビューと作品紹介を中心にした本。どちらも存在は知っていたのだけれど,わざわざ読もうという気にはならなかった。映画もきちんと観ていないのに,ゴシップばかりに詳しくなるのも,なんだかイヤな感じではないですか。しかし,新文芸座という映画館は心得たもので,「流れる」のような不朽の傑作を観終え,余韻に浸りながらふらふらと暗闇から出てきたところに,こういう本が並べてあると,それはついつい買っちゃいますわね。

Bookcover 成瀬巳喜男―透きとおるメロドラマの波光よ (映画読本) [a]
/ フィルムアート社 / 1995-01
Bookcover 成瀬巳喜男 演出術―役者が語る演技の現場 [a]
/ ワイズ出版 / 1997-07
前者は中北千枝子,須川栄三らのインタビューや,成瀬監督の文章・対談,未映画化シナリオ,作品紹介などを収録。後者は高峰秀子,香川京子,岡田茉莉子,杉村春子(!)ら出演者や,石井輝男,井出俊郎へのインタビューなどを収録。

特に面白かったところを抜き書きしておくと...

ノンフィクション(2011-) - 読了:「成瀬巳喜男」「成瀬巳喜男 演出術」

2011年5月13日 (金)

誰かがこのブログの書影をクリックすると(中略) わんわん,にゃーにゃー。というわけで,売上報告シリーズの最終回,2011年第一四半期。

目を引くのは,このブログで賞賛した真面目な本が,なぜか急激に売れているという点だ。

Bookcover Q&Aで知る統計データ解析―DOs and DON’Ts (心理学セミナーテキストライブラリ) [a]
繁桝 算男,森 敏昭,柳井 晴夫 / サイエンス社 / 2008-02
Bookcover 新しい消費者行動 [a]
清水 聡 / 千倉書房 / 1999-05
Bookcover 宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ (岩波科学ライブラリー (114)) [a]
佐藤 俊哉 / 岩波書店 / 2005-12-06
Bookcover 消費者理解のための心理学 [a]
/ 福村出版 / 1997-06
Bookcover 経営学のフィールド・リサーチ―「現場の達人」の実践的調査手法 [a]
/ 日本経済新聞社 / 2006-01
Bookcover 統計的因果推論―回帰分析の新しい枠組み (シリーズ・予測と発見の科学) [a]
宮川 雅巳 / 朝倉書店 / 2004-04
Bookcover メディアの支配者(上) (講談社文庫) [a]
中川 一徳 / 講談社 / 2009-06-12
Bookcover メディアの支配者(下) (講談社文庫) [a]
中川 一徳 / 講談社 / 2009-06-12
BookcoverHandbook of Consumer Psychology [a]
Curtis P. Haugtvedt, Paul M. Herr, Frank R. Kardes / 2008-4-30
なんと,これらはみな,掛け値なしの良書・面白本・お買い得本,私がこのブログで賞賛を書き綴った本ばかりではないか。さらに...

Bookcover まちがいだらけのサーベイ調査―経済・社会・経営・マーケティング調査のノウハウ [a]
ジュセッペ・イアロッシ / 一灯舎 / 2008-04
Bookcover 消費者行動論体系 [a]
田中 洋 / 中央経済社 / 2008-09-26
どうしたことか,この2点に至っては,なんと2冊づつ売れているのである!

Bookcover 調査法講義 (シリーズ「調査の科学」) [a]
豊田 秀樹 / 朝倉書店 / 1998-04
この本はこのブログでは紹介していないが,前職の同僚向けにつくったブックリストで紹介した本だし...

Bookcover マイ・バック・ページ - ある60年代の物語 [a]
川本 三郎 / 平凡社 / 2010-11-26
そう,これも面白かったし...

Bookcover 午前3時の危険地帯 2 (Feelコミックス) [a]
ねむ ようこ / 祥伝社 / 2010-12-08
そうだ! このマンガもこのブログで賞賛したっけ。ウブなデザイナー・たまちゃんがとてもカワイイのです。

というわけで,もしや世界のどこかに,私が誉めた本を買うのを趣味だという極めて奇特なストーカーの方がおられるのか,などとあらぬ妄想を抱いてドキドキしたのだが...

Bookcover 消費行動の社会心理学―消費する人間のこころと行動 (シリーズ21世紀の社会心理学) [a]
/ 北大路書房 / 2000-11
ようやく,誰にも紹介していない本が登場した(目を通してはいたけれど)。ああ,びっくりした。

ほかに,タカラトミーのベイブレードというおもちゃが2点。実物を見たことがないのだが,どんなものなのだろうか。ともあれ,お買いあげ誠にありがとうございました。

雑記:売上報告 - 売上大感謝祭:2011第1四半期

2011年5月12日 (木)

Corstjens, M., Lal, R. (2000) Building Store Loyalty Through Store Brands. Journal of Maketing Research, 37(3), 281-291.
 ちょっと思うところあって目を通した論文。
 あるカテゴリのナショナル・ブランド製品とプライベート・ブランド製品の2つだけを扱う小売店が2軒あり,消費者がそのエリアに均等に散らばっている... というような単純化された状況を想定し,それぞれの店が利益最大化のために価格をどのように設定するかについてゲーム理論的分析を行いました。その結果,もしPB製品の品質が良く,かつNBを買い続ける人がある程度多いときには, PBは店舗の利益に貢献するし,過度な価格競争を回避し両方の店を共存共栄にみちびく,ということが示されました。この結果は実際のパネルデータでも裏付けられています。という論文。

 数理的分析のほう,面倒なので読み飛ばしたのだが,要するに,上のような状況ではブランド・スイッチしやすい消費者が自店のPBに乗り換えてくれるから,PBは店の差別化要因になる,ということらしい。NBよりPBのほうが利益率が高いからPBを売ったほうが良い,という話ではない。
 NBを買い続ける人が多すぎても少なすぎても駄目だ,というところがこの分析のミソで,どうやら,多すぎるとNBでの価格競争,少なすぎるとPBの価格競争に突入する,ということらしい。ふうん。こういう抽象的状況での数理的分析による知見が,いったいどのくらい実世界にあてはまるのか,いまいちぴんとこないなあ。
 実データの分析のほうは,世帯スキャンデータをつかって店舗への支出額についての重回帰分析を行い,その店舗に行った回数を調整した後でも,PB購入額の割合が高い店舗のほうが支出額が大きいです,という話であった。決定的証拠とはいいにくそうだ。

 毎度のことながら,マーケティング分野の論文の良し悪しはさっぱり見当がつかない。これは単に俺の知識が足りないからだろう。ま,他の分野なら見当がつく,と胸を張れるわけでもないしな。

論文:マーケティング - 読了:Corstjens&Lal(2000) ストア・ブランドによる店舗ロイヤリティ構築

2011年5月11日 (水)

誰かがこのブログの書影をクリックして買い物するとamazonは俺に小銭を投げて寄越し愚かな俺はにゃーにゃーと鳴く... というわけで,売上報告の続き,2010年下半期分。

BookcoverThe Essential Guide to Effect Sizes: Statistical Power, Meta-Analysis, and the Interpretation of Research Results [a]
Paul D. Ellis / 2010-7-1
これまた,渋い本が売れているなあ。目次をみたところ,効果量と検定力についての比較的易しめの解説書であるようだ。

BookcoverScale Development: Theory and Applications (Applied Social Research Methods) [a]
Robert F. DeVellis / 2003-5-28
社会科学向けの心理尺度構成法の本。たぶん有名な本だと思う。恥ずかしながら未見ですが。

Bookcover Excelで学ぶ共分散構造分析とグラフィカルモデリング [a]
小島 隆矢 / オーム社 / 2003-12
内容に対しては批判もあるようだが,これ,勉強になる本です。GMとSEMを両方一気に説明している本は,ほかになかなか見あたらない。

Bookcover イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press) [a]
クレイトン・クリステンセン / 翔泳社 / 2001-07
「破壊的イノベーション」ってやつですね。あまりに有名になってしまったので,なんだかもうとっくに読んだような気がして仕方ないのだが,よく考えてみるとぱらぱらめくったきり部屋の隅に積んである。反省。

Bookcover バリュー・プロフィット・チェーン―顧客・従業員満足を「利益」と連鎖させる [a]
ジェームス・L. ヘスケット,レオナード・A. シュレシンジャー,W.アール サッサー / 日本経済新聞社 / 2004-12
これも上に同じだ... 反省。有名になりすぎるのも良し悪しですね。

Bookcover 顧客満足[CS]の知識(日経文庫) [a]
小野 譲司 / 日本経済新聞出版社 / 2010-04-16

Bookcover 消費者行動論 (ビジネス基礎シリーズ) [a]
平久保 仲人 / ダイヤモンド社 / 2005-05-19
この本,ブログではあまり良い書き方をしなかったので,ちょっと後ろめたい...

Bookcover 消費者理解のための心理学 [a]
/ 福村出版 / 1997-06

Bookcover 蟻の兵隊―日本兵2600人山西省残留の真相 (新潮文庫) [a]
池谷 薫 / 新潮社 / 2010-07-28
Bookcover 日本政治思想史―十七~十九世紀 [a]
渡辺 浩 / 東京大学出版会 / 2010-03
上記2冊,私も感銘した本です。不思議なもので,自分が好きな本が売れるのは,なんだかちょっとうれしい。

Bookcover 不眠の医療と心理援助―認知行動療法の理論と実践 [a]
/ 金剛出版 / 2010-07-29

Bookcover 死角 オーバールック (講談社文庫) [a]
マイクル・コナリー / 講談社 / 2010-12-15

Bookcover フランキー・マシーンの冬 上 (角川文庫) [a]
ドン・ウィンズロウ / 角川書店(角川グループパブリッシング) / 2010-09-25
なぜか上巻のみのお買いあげ。著者は青春ミステリの佳作「ストリート・キッズ」の人ですね。最近また翻訳が出ているようだ。

Bookcover ひとりガサゴソ飲む夜は・・・・・・ (角川文庫) [a]
椎名 誠 / 角川書店(角川グループパブリッシング) / 2010-01-23

Bookcover あしなり(1) ~漫画家アシスタントで成金になれるか!?~ (バンブーコミックス WIN SELECTION) [a]
葛西 りいち / 竹書房 / 2010-06-26
Bookcover それでも町は廻っている 1 (ヤングキングコミックス) [a]
石黒 正数 / 少年画報社 / 2006-01-27
Bookcover それでも町は廻っている 2 (ヤングキングコミックス) [a]
石黒 正数 / 少年画報社 / 2006-10-26
Bookcover 午前3時の無法地帯 (1) (Feelコミックス) [a]
ねむ ようこ / 祥伝社 / 2008-12-08
Bookcover 午前3時の無法地帯2 (Feelコミックス) [a]
ねむ ようこ / 祥伝社 / 2009-04-08
Bookcover 午前3時の無法地帯 3 (Feelコミックス) [a]
ねむ ようこ / 祥伝社 / 2009-09-08
上記コミックス6点は私も読んだが。。。

Bookcover 姉妹みっくす (ムーグコミックス) [a]
椿 十四郎 / ジーウォーク / 2009-10-05
こちらは未見。書影からみてガチガチの18禁マンガであろう。「繊細で大胆な性描写は秀逸!」なんだそうです。

そのほかに... ラグビーの雑誌2冊,プロ向けの業務用スニーカー。これらは友人による購入にちがいない。感謝,感謝。

「ねば塾まん天 花化粧水」。化粧水で「ねば塾」とは,なんだかべとつきそうな名前だなあ,と不思議に思っていま調べてみたところ,ねば塾とは長野県佐久市・佐久福祉事業所のブランド名らしい。へえー。

最後に,なんだかよくわからないおもちゃ。虫のようにもぞもぞ動くらしい。なんだかさっぱりわからんが,ともあれ,お買い上げ誠にありがとうございます。

雑記:売上報告 - 売上大感謝祭:2010下半期

Fildes, R., Nikolopoulos, K., Crone, S.F., Syntetos, A.A. (2008) Forecasting and operational research: a review. Journal or Operational Research Society. 59, 1150-1172.
 予測手法について勉強しないとな... しないとなあ...と思い,まず手始めに読んでみた。ORの学術誌に載った予測研究のレビュー。よく知らないけど,第一著者は相当えらい人のようである。
 全くの門外漢の感想なんだけど,「時系列曲線の補外について地道な研究に邁進しても,いまさら劇的な進歩があるでなし,せっかく改善しても実務家は相変わらず指数平滑法なんか使い続けてるし,そうこうしてるうちにあさっての方角からANNだのSVMだの出てきたりして,いやいやこの世界も大変なのよ全く」というぼやきが,行間から聞こえてくるような気がしました。いや,勝手に聞いているだけですが。
 まあそれは幻聴としても,価格決定やプロモーション評価のための先進的システムをせっかく作ろうとしても,クライアントの担当者が異動しちゃって頓挫しちゃうことあるよね... というような話が,ほんとに出てきた。はっはっは。
 ともあれ,よく知らない世界の話なので,とても勉強になりました。レビューを読むのは疲れるのだが,その甲斐はあったぞ。。。ということにしておこう。明日にはもうすっかり忘れちゃっているかもしれないけど。

 ところで,著者らはOR関係の主要12誌から予測関係の論文を選び('85-'06)、被引用回数でランキングしている。1位はKahneman&Lovallo(1993, Management Sci.)、リスク下での楽観バイアスについての論文。以下、ニューラルネット、ブルウィップ効果と続き、顧客維持にCSが大事だというMarketing Sci.の論文(Bolton, 1998)が4位にランクインしている。ふーん。

論文:マーケティング - 読了:Fildes, et.al. (2008) 予測とOR

このブログの書影をクリックするとamazon.co.jpに飛ぶ。買い物するとamazonが儲ける。頭の良いamazonは俺に小銭を投げ与える。哀れな俺はわんわんと吠える。これをアフィリエイトという。

というわけで,ときどき「このブログ経由でなにが売れたか」をチェックしてこのブログに載せることにしていたのだが,なんだかんだで一年ちかくさぼっていた。久々に売上報告。長くなってしまいそうなので,まずは2010年4月から6月まで。

BookcoverDatabase Marketing: Analyzing and Managing Customers (International Series in Quantitative Marketing) [a]
Robert C. Blattberg, et.al. / 2008-1
よく知らないけど,きっとデータベースマーケティングについての本なのでしょうね。こんなめんどくさそうな本を,買って読もうと決意した人がどこかにいたんだなあ。すごいなあ。

Bookcover まちがいだらけのサーベイ調査―経済・社会・経営・マーケティング調査のノウハウ [a]
ジュセッペ・イアロッシ / 一灯舎 / 2008-04
おお,この本が売れたか。これはホントにおすすめです。なぜもっと有名にならないのか不思議なくらい。

Bookcover 消費者行動論体系 [a]
田中 洋 / 中央経済社 / 2008-09-26
上記の本とこの本は,いま休眠しているもうひとつのほうのブログを経由してのお買いあげだと思う。気づかないうちに小銭を儲けていたとは。ううう。

Bookcover 精神科医が映画を観ると 現代のエスプリNo.477(477) [a]
/ 至文堂 / 2007-03
Bookcover シネマのなかの臨床心理学 (有斐閣ブックス) [a]
/ 有斐閣 / 1999-12
この2冊,なかなか面白そうだなあ...

Bookcover データの罠 世論はこうしてつくられる (集英社新書) [a]
田村 秀 / 集英社 / 2006-09-15

Bookcover 世論調査と政治――数字はどこまで信用できるのか (講談社プラスアルファ新書) [a]
吉田 貴文 / 講談社 / 2008-11-21

Bookcover 世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか (光文社新書) [a]
菅原 琢 / 光文社 / 2009-12-16
この若い先生がときどき渋谷陽一さん編集の「SIGHT」誌に書いている記事,とても面白いです。残念ながらこの本は未読ですが,読んでみようかと思います。

Bookcover 世論をさがし求めて―陶片追放から選挙予測まで [a]
西平 重喜 / ミネルヴァ書房 / 2009-12
しまった,この本も買ったきり読んでいない... お買いあげはもしかすると前職の同僚かもしれない。どうもどうも。

Bookcover 研究者という職業 [a]
林 周二 / 東京図書 / 2004-09
誰が買ったんだろう,知っている人かな...

Bookcover レポート・論文の書き方入門 [a]
河野 哲也 / 慶應義塾大学出版会 / 2002-12-13
Bookcover 勝つための論文の書き方 (文春新書) [a]
鹿島 茂 / 文藝春秋 / 2003-01

Bookcover 会話分析・ディスコース分析―ことばの織りなす世界を読み解く (ワードマップ) [a]
鈴木 聡志 / 新曜社 / 2007-11-10
新耀社のワードマップシリーズは,書店でみかけると異常に魅力的に見えて,ついつい買い込んでしまい,でも結局読まない,ということが多い。私だけでしょうか。

Bookcover MOLESKINE モレスキン シティノートブック アトランタ ([文具]) [a]
/ ワーキングユニット・ジャパン / 2008-09-01
Bookcover アトランタに暮らす (地球ライブラリー) [a]
アトランタに暮らす編集委員会 / ジェトロ(日本貿易振興機構) / 2001-05
Bookcover アトランタ・ノースカロライナ・サウスカロライナ・アラバマ・テネシー便利帳〈Vol.5〉 (The benriーcho series) [a]
Y’s Publishing Co.,Inc. / Y’s Publishing Co.,Inc. / 2009-01-20
どなたかアトランタにお出かけの方がいらっしゃったようだ。お疲れさまです。

Bookcover 平成マンガ家実存物語 おはようひで次くん!(1) (ビームコミックス) (BEAM COMIX) [a]
小田 ひで次 / エンターブレイン / 2010-05-17
Bookcover まだ旅立ってもいないのに [a]
福満 しげゆき / 青林工芸舎 / 2003-07
コミックスはこの2冊が売れていた。このブログを読んでいる方は,どうやらあまり異性にもてるタイプではなさそうですね。

Bookcover ファイアスターター (上) (新潮文庫) [a]
スティーヴン・キング / 新潮社 / 1982-09
Bookcover ファイアスターター (下) (新潮文庫) [a]
スティーヴン・キング / 新潮社 / 1982-09
ああ,懐かしい! この本のなかの,お父さんが念力を使うたびに少しずつ脳細胞を失っていくという描写,ほんとに怖かった。

書籍以外では:無添加石けん。16GBのSDカード。

そして! もはや有名ブランドと化した家庭用スキャナScanSnap,4万円のお買いあげ! 誠にありがとうございました。わんわん。

雑記:売上報告 - 売上大感謝祭:2010上半期

2011年5月10日 (火)

動機や中身は問わず,とにかく論文と名の付くものを読んだら漏れなく記録しておこう。という,何度かめの決意を胸にして...

Wickham, H. (2007) Reshaping Data with the reshape Package. Journal of Statistical Software, 21(12).

Wickham, H. (2011) The Split-Apply-Combine Strategy for Data Analysis. Journal of Statistical Software, 40(1).

前者はRのreshapeパッケージ,後者はplyrパッケージについての解説で,統計学ではなくむしろデータ整形に属する内容。著者はRの世界では有名な人らしい。GGobi の関係者でもあるようだ。

reshapeパッケージというのは,たとえばフィールド{ID, X1, X2, ..., Xk} を持つ100行のデータセットがあるとき,それをまず {ID, varname, value}の3列のみを持つ100*k行のすごく縦長なデータセットに変換してしまい(これをmeltという),そこから必要に応じてデータ行列なり集計表なりを生成すると便利だ (これをcastという) ... というアイデアに基づくデータ整形パッケージ。ながらくSASをつかっているなかで,このような手順でデータを整形することが多かったので,そう悪い発想でもなかったのか,我が意を得たり,という気分である。やたらに行数が多いデータ行列ができるわけで,SASの場合はデータセットへのアクセスに時間を食うのがネックだったのだが,Rはどんなデータセットであれまるごとメモリに展開してしまうようだから,あまり問題にならないのだろう。

plyrパッケージというのは... Rを使い始めて日が浅いけど,いまもっともウンザリしているのがデータの層別処理のわかりにくさだ。apply系だのaggregateだのbyだの,たくさん関数があってどれも微妙に挙動がちがう。このパッケージはもっと整理された体系を提供してくれているようで,いっそ標準の関数は見捨ててこのパッケージだけ使い倒そうかと思い読んでみた。もっとも,このパッケージにもそれはそれでちょっとクセがある模様だ。
論文の最後に標準の関数との対応関係が整理されていて,その記述のおかげで頭が整理できたので,ま,読んでよかったということにしておこう。

見知らぬソフトウェアを新たに使いはじめ,ここがわかりにくい!ここがウンザリだ!と不平不満たらたらなのだが,冷静になってみれば,Rは確かによくできている。俺のような初心者にとってもなかなかわかりやすい代物だ。なにしろ,これまで使っていたSASのことを想えば... ああ,proc tabulate の奇妙さときたら,ODSの取って付けた感ときたら,マクロ言語の冗談じみたわかりにくさときたら。もっとも,いまはあのごった煮がちょっと懐かしいのだけれど。

論文:データ解析(-2014) - 読了:Wickham(2007) Rのreshapeパッケージ; Wickham(2011) Rのplyrパッケージ

2011年5月 6日 (金)

Bookcover ら抜きの殺意 [a]
永井 愛 / 而立書房 / 1998-02
永井愛さんの97年の戯曲。「ら」抜き言葉やことわざの誤用を切り口にした喜劇。後半で女性語についての議論になるところ,とても可笑しくて,しかも深い。

 俺はこの劇作家がおそろしくてたまらない。この人は,我々のさもしい根性や情けない振る舞いを,透徹した視線でじーっと見つめているのだろうなあ,という気がしてならない。悪いことに,現代日本を代表するこの劇作家は外見的には平凡な女性であり,さらに悪いことに,どういうわけか俺はこの人とばったり出会うことが多いのである。永井愛作・演出の芝居を見に行った帰り,出口で愛想良く頭を下げている人をふとみたら永井愛。渋谷で鮮やかなコートの女性とすれ違いざま目があったら永井愛。高円寺の階段で立ち話をしている女性とぶつかりそうになり,あわてて避けたらそれが永井愛。三軒茶屋の喫茶店で散々馬鹿話をした後,振り返ってお勘定を頼もうとしたら,すぐ背中のカウンターで静かにコーヒーを啜っている永井愛。なぜだ。心臓に悪い。どうにか配慮してもらえないものだろうか,「ナガイアイでございます」とスピーカーで怒鳴りながら歩くとか。

フィクション - 読了:「ら抜きの殺意」

Bookcover 昭和とは何であったか―反哲学的読書論 [a]
子安 宣邦 / 藤原書店 / 2008-07
日本近世思想史の有名な先生による書評集。読みたい本が増えてしまった。。。

Bookcover 悪名の棺―笹川良一伝 [a]
工藤 美代子 / 幻冬舎 / 2010-10
笹川良一の評伝というより,「男・笹川良一一代記」とでもいうべき内容であった。

日本近現代史 - 読了:「昭和とはなんであったか」「悪名の棺 笹川良一伝」

連休につき,不要不急の本ばかり読んでみた... のだが,考えてみたら,普段からそうであった。

Bookcover ローマ人への20の質問 (文春新書) [a]
塩野 七生 / 文藝春秋 / 2000-01
かの「ローマ人の物語」執筆と並行して出版された,ローマ文化紹介の本。対話体で,比較的に軽めな内容であった。

Bookcover 増補新装 カラー版日本建築様式史 [a]
太田博太郎,藤井恵介,宮本長二郎,上野勝久,丸山茂,松崎照明,平山育男,後藤治,藤田盟児,光井渉,大野敏,中谷礼仁,松隈洋 / 美術出版社 / 2010-03-24
図版が山ほど載っていて楽しい本なのだが,解説の文章のほうは,どうもとっつきが悪くて...
 この本に限らず,建築の世界はことばで損していると思う。たとえばこの本だと,近代の日本建築についての章にもっとも面白そうなことが書いてある。著者は建築様式を細部装飾のテンプレートとして捉える見方を「ひながた主義」と呼び,西洋建築受容の枠組みとして位置づける。コンクリの豆腐みたいな形のモダニズム建築だって,日本ではまず「ひながた主義」的に理解された,というのである。なんだか面白そうではないか。ところが,せっかく関心を持って読み進めても,建築の世界の独特の言い回しにじゃまされてしまう。「ひながた主義」の克服について論じたくだりで,戦中に北村捨次郎という棟梁が設計した数寄屋が紹介されるのだが,「貴人口外には中庭の池を引き込んだ庭があり,その縁の端の平の手すりが直交したディテールには束が立っていない。[...] その開放性,自由なディテールの処理は,十分に『ひながた主義』から脱却しているのである」 この描写には大きな写真が添えられているが,それと見比べても,俺にはさっぱりわからない。束が立っていないってどういうことだ? せっかく大事なことを言っているように思われるのに,もったいないことだ。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「ローマ人への20の質問」「日本建築様式史」

Bookcover ふらり。 (KCデラックス モーニング) [a]
谷口 ジロー / 講談社 / 2011-04-22
伊能忠敬に江戸の町を歩かせるという趣向。大きなコマ割りと細密な描写で,マンガとバンド・デシネの境界線,という感じ。

コミックス(2011-) - 読了:「ふらり」

2011年5月 3日 (火)

Bookcover アライバル [a]
ショーン・タン / 河出書房新社 / 2011-03-16
異国への移民をテーマにした,グラフィック・ノヴェルの名高い傑作。大河映画を観終えたような,深い感動がある。
このたび翻訳が出たので買ってしまったのだが,考えてみたら台詞は一言もないのだから,原書で買えば良かったんだよな。

Bookcover 岳 みんなの山 14 (ビッグコミックス) [a]
石塚 真一 / 小学館 / 2011-04-28
小学館青年誌の看板連載のひとつ。このたび映画化したそうだが,主人公の山男・三歩を演じるのはイケメンの人気俳優らしく... 心配ダナア。

コミックス(2011-) - 読了:「アライバル」「岳」

2011年5月 2日 (月)

Bookcover 海炭市叙景 (小学館文庫) [a]
佐藤 泰志 / 小学館 / 2010-10-06
函館をモデルにした地方都市を舞台にした短編連作。映画を先に観てしまい,これが実に良い映画だったもので,この原作の良し悪しについてはもはや確信が持てないのだが... きわめて地味だけど,ちょっと心に残る部分がある小説だなあ,という印象。

フィクション - 読了:「海炭市叙景」

Bookcover 倫理的な戦争 [a]
細谷 雄一 / 慶應義塾大学出版会 / 2009-11-11
最近では一番の面白本であった。本は読んでみないとわからない。
 若手の国際政治学者による,トニー・ブレアの外交政策を辿った専門書なのだが,ただのジャーナリスティックな叙述ではなく,ブレア期の英国を支えたリベラル国際主義思想を素人にも読みやすく解説していて,お得感溢れる内容であった。米国の独走を阻止し国際協調を保とうと世界を駆け回り,一時的な成功を収めつつもやがて挫折していくブレアさんの姿は,日本人にとっても他人事ではないなあ,などと思う次第である。

Bookcover パチンコがアニメだらけになった理由(わけ) [a]
安藤 健二 / 洋泉社 / 2011-01-08

Bookcover 中国は、いま (岩波新書) [a]
/ 岩波書店 / 2011-03-19

Bookcover ルポ 餓死現場で生きる (ちくま新書) [a]
石井 光太 / 筑摩書房 / 2011-04-07

Bookcover 凶悪―ある死刑囚の告発 (新潮文庫) [a]
/ 新潮社 / 2009-10-28

Bookcover ネット大国中国――言論をめぐる攻防 (岩波新書) [a]
遠藤 誉 / 岩波書店 / 2011-04-21

ノンフィクション(2011-) - 読了:「倫理的な戦争」「凶悪」「餓死現場で生きる」「中国は,いま」「ネット大国中国」「パチンコがアニメだらけになった理由」

Bookcover 谷干城―憂国の明治人 (中公新書) [a]
小林 和幸 / 中央公論新社 / 2011-03
谷干城という名は,西南戦争で熊本城に籠城した陸軍の指揮官として見覚えがあった程度で,読み方さえわからなかった(タニ・タテキ,ないしカンジョウと読む)。経歴から想像できるようにバリバリの国家主義者ではあるのだが,その純正保守主義ゆえに足尾鉱山事件の被害者を支援し,日露戦争では非戦論を唱えたのだそうだ。とても面白い本だった。

日本近現代史 - 読了:「谷干城」

連休にはいってから読んだマンガ。

Bookcover テルマエ・ロマエ III (ビームコミックス) [a]
ヤマザキマリ / エンターブレイン / 2011-04-23
Bookcover ルミとマヤとその周辺(3) <完> (KC KISS) [a]
ヤマザキ マリ / 講談社 / 2009-06-12
前者は云わずと知れた大人気作品の最新刊。なんと、映画化も決まったのだそうだ。後者は同じ作者の旧作で、このマンガ家が放っておくとどんどん説明的で感傷的なお話をつくってしまう人であることがわかる。この人に風呂をテーマにしたコメディを描かせようと考えた編集者も、なんというか、スゴイなあ。

Bookcover GUNSLINGER GIRL 13 (電撃コミックス) [a]
相田 裕 / アスキー・メディアワークス / 2011-04-27
イタリアを舞台に,テロリストたちと政府機関の子ども兵たちの死闘を描いた連載,そろそろ終盤。大人の事情がしっかり描き込まれるようになったあたりから,別のマンガのように面白くなってきた。よく知らないけどこのマンガ,もともとメディアミックス企画の一環としてはじまり,ビジネスとしては終わったが,マンガの連載だけは続いている,という状況なのではないかと想像している。

Bookcover 罪と罰(10) (アクションコミックス) [a]
落合 尚之 / 双葉社 / 2011-04-28
ドストエフスキーを題材にした犯罪サスペンスの最終巻。うーん,これ,どうなんだろう...

Bookcover 闇金ウシジマくん 21 (ビッグコミックス) [a]
真鍋 昌平 / 小学館 / 2011-04-28

Bookcover 刻刻(4) (モーニング KC) [a]
堀尾 省太 / 講談社 / 2011-04-22

Bookcover カブのイサキ(4) (アフタヌーンKC) [a]
芦奈野 ひとし / 講談社 / 2011-04-22

Bookcover ヴィンランド・サガ(10) (アフタヌーンKC) [a]
幸村 誠 / 講談社 / 2011-04-22

コミックス(2011-) - 読了:「テルマエ・ロマエ」「ルミとマヤとその周辺」「ガンスリンガー・ガール」「闇金ウシジマくん」「刻刻」「カブのイサキ」「ヴィンランド・サガ」「罪と罰」

連休前に読んだ漫画。

Bookcover 平凡倶楽部 [a]
こうの 史代 / 平凡社 / 2010-11-30
「夕凪の街 桜の国」の作家が、平凡社のwebで連載していたコミック・エッセイ。凝りに凝りまくった内容で,眺めているだけで時間が過ぎる。併録の「古い女」は,専業主婦が夫の目を盗んで折り込みチラシに描いたという設定のこわーい短編で,これを読むためだけでも買う価値がある。

Bookcover どげせん 1巻 (ニチブンコミックス) [a]
RIN / 日本文芸社 / 2011-03-04
劇画調の絵柄で「格闘技としての土下座」を描いたマンガ。「土下座 それは命への執着の究極形態 命恋(いのちごい)である」「こ,これは土下座じゃない!構えだ!」なあんてね。こういう秀逸なワン・アイデアが俺はたまらなく好きなので,どうしても甘くなってしまうのだが,実にバカバカしくて良い。

Bookcover ちゃんと描いてますからっ! 1(リュウコミックス) [a]
星里 もちる / 徳間書店 / 2011-04-13
女子中学生の主人公が,実はずぼらなマンガ家の父親のかわりに原稿を描いている,というシチュエーション・コメディ。作者は80年代に徳間でデビューし,その後小学館に移って活躍していたベテラン。もともとこの種の軽い喜劇が得意な人だと思う(たしかなにかのインタビューで,ビリー・ワイルダーが好きだと云っていた)。徳間に戻って描いたこの作品は,その本領発揮という感じ。よかったよかった。

Bookcover 嫁姑の拳 4 (秋田レディースコミックスデラックス) [a]
函岬 誉 / 秋田書店 / 2011-01-20

Bookcover とろける鉄工所(6) (イブニングKC) [a]
野村 宗弘 / 講談社 / 2011-04-22

コミックス(2011-) - 読了:「平凡倶楽部」「どげせん」「ちゃんと描いてますから」「嫁姑の拳」「とろける鉄工所」

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