elsur.jpn.org >

« 2015年10月 | メイン | 2015年12月 »

2015年11月30日 (月)

Bothos, E., Apostolou, D., Mentas, G. (2009) IDEM: A prediction market for idea management. "Lecture notes in business information processing", vol 22. pp.1-13.
 いわゆるアイデア市場の研究のひとつ。書籍の章の体裁になっているが、カンファレンス・ペーパーの再録らしい。前にざっとめくっていたのだけど、都合により急遽再読。
 著者らはギリシャの人。今調べたら、どうやらSAP社と協同でやっているようだ。このチームは現在もアクティブに研究しているようだから、もっと新しい論文もありそうなものだな...

 いわく。
 予測市場を使ったアイデア生成ってのがある(先行研究としてSoukhoroukovaらのLaCombらのを挙げている)。両方ともうまくいっているようだが、既存手法との比較が大事だ。
 アイデア管理のために予測市場を使おうとする際、難しい点が3つある。(1)アイデアは必ずしも実現しないので、ふつうの予測市場とはちがって将来の出来事が定義できない。(2)アイデア評価には多様な使用シナリオが伴う[製品の使用文脈のことじゃなくて、アイデア生成か拡張か評価か、という話]。(3)市場価格しか出力がない。

 というわけで、このたびアイデア管理のための予測市場プラットホームIDEMをつくりました。以下の工夫をしています。

取引アルゴリズムはマーケット・メーカつきの連続ダブルオークション。

価格関数はオープン・ソース・ツール Zocalo にインスパイアされたもので、実世界の需給条件をシミュレートしている。この関数は対数ルールに従い、多くの人が買うとマーケット・メーカの価格を上げ、多くの人が売ると下げる。オリジナルのアルゴリズムでは価格の範囲が0から1になっているので、取引をわかりやすくするために0から100に直した。さらに、ある市場に多くのマーケット・メーカが含まれるようにした。ひとつのアイデア証券あたりひとつのマーケット・メーカがつく。これは、Zocaloの実装ではそれぞれの証券がひとつの市場を構成し、したがってそれぞれの市場にひとつのマーケット・メーカが与えられるからである。

[このくだり、以前読んだときには「お前はなにを言っているんだ??」という状態だったが、いまなら言っている意味がわかる。想像するに、個々のアイデアごとにbuy証券とsell証券をつくり、この2銘柄のマーケット・メーカを走らせているのではないだろうか。で、個々のマーケットメーカだけをみると、たぶんLMSRみたいな仕組みになっているのだと思う。くそー、こういう話だったのか...]
参加者は匿名。3週間実施。最初に架空通貨で10000単位を渡す。参加者は取引だけでなく新アイデアの投稿もできる。2人の審査員が投稿を審査し、上場を決定する[投稿ごとに審査員が変わるのか、全投稿をこの二人が審査するのか、よくわからない]。上場時の株価は50。上場された銘柄の株が50枚配られる[ここだけでは誰に配るのかはっきりしないが、次節とあわせると、どうやらアイデアが上場したらその株を全参加者に配るという話らしい。現実の株式市場とのアナロジーで考えていると度肝を抜かれる展開だ]
 [そのほか、ソフトの機能の説明。省略]

 実験。
 5人の専門家が、市場終了時点で全アイデアを100点満点で評価、これをペイオフとする。アイデア投稿者にはその株を10枚プレゼント。34アイデアの投稿があって26アイデアが上場。取引は1572回発生。
 最後に質問紙。投資家には、これまでにイノベーション過程に関与した経験、予測市場への評価、システムの使いやすさ、実験の特徴(例, 匿名性)が行動にどう影響したか。結果は[...このくだり、別にメモを取るのでここでは省略]。専門家にもアンケートをとった[省略]。

 考察。
 アイデア評価の既存手法として以下がある:

以上の手法を、アイデアの数、評価者の数、扱えるアイデアのタイプ、フィードバックのタイプ、評価者のモチベーション、の観点から比較すると...[略。予測市場は、そのアイデアがなぜ高く/低く評価されたかのフィードバックが限定的だが、他の観点では全勝、という整理であった]
 今後の課題としては... (1)アイデアがすごく増えたときに投資家にどう見せるか。アイデアの擬人化とかどうよ、というようなことを書いている[←面白いかも]。(2)上場審査の民主化。あるいは完全な無政府状態にしちゃうとか。
 云々。

 ところで、この論文の本文中で、アイデア管理のための予測市場プラットホーム(つまりIDEMと競合する既存サービス)として、Spigit, InnovateUs, VirtualVenturesの3つが挙げられている。調べてみると、Spigitは2011年から電通国際サービスが代理店をやっている(売れているのかしらん??)。日本語の宣材をみても、市場メカニズムをにおわせる記述はない。InnovateUsは現存する模様。VirtualVenturesは確認できなかった。
 本題とは関係ないけど、予測市場をつくったら魅力的な固有名詞を付けることが大事だと思った。HSXとかIEMとか、Gates-Hillman Marketとかshuugi.inとか。アイデア市場の先行研究はそこんところでしくじっていると思う。Imagination Marketでは一般的すぎる。ついでにいうと、Soukhoroukovaさんの名前が長すぎるのでメモを取るのに困る。

論文:予測市場 - 読了:Bethos, et al. (2009) アイデア市場プラットホームIDEM

2015年11月27日 (金)

Skiera, B., & Spann, M. (2011) Using prediction markets in new product development. in Williams, L.V. (eds.), "Prediction Markets: Theory and Applications," Routledge. pp.75-86.
 タイトル通り、「新製品開発における予測市場」というテーマでの短い概観。なんかいいこと書いてあるかな、と思ってざっと目を通した。

 著者らいわく。
 製品開発において予測市場が役立つのは次の4つのステージである。

  1. アイデア生成とスクリーニング。すなわちアイデア市場。コミュニティをつくって製品アイデアを取引させ、議論させる。リードユーザの同定にも使える(Spann et al., 2009 JPIM)。スクリーニングにも使える(Soukhoroukova et al., 2012; LaComb et al., 2012; Bothos, 2009 IDEMの奴; Chen, et al., 2010 Interfaces)。こういうアイデア市場の予測市場との大きな違いは、(1)銘柄数が決まっていない、(2)証券の価値が実際の出来事の結果では決まらない。
  2. コンセプト開発とテスト。すなわち選好市場ないしコンセプト市場(Dahan et al., 2011; Dahan et al., 2010 JPIM)。銘柄数は胴元が決める。弱点はペイオフを終値なんかで決めなきゃいけないところだが、致命的な弱点ではない(Slamka et al., 2011)。
  3. 製品テスト。マーケティング担当者を投資家にして予測市場をやる。6人でも大丈夫だという話がある(van Bruggen et al., 2010 DecisionSupportSys.)。消費者を投資家にして予測市場をやり、質問紙調査とFGIを併用するってのもできる[と書いているが、引用しているのはSpann & Skiera (2003)、これはレビューだ。実例はあるのだろうか]
  4. 上市前予測。Dahan & Hauser (2002, JPIM)を見よ。利点は、(1)新情報へのリアルタイムな反応、(2)情報が勝手に集約される、(3)市場を一旦つくっちゃえば安上がり、(4)うまくすれば真の評価を申告するインセンティブをつくれる[そんなに簡単な話じゃないように思うけど。ここでForsythe et al.(1992 Am.Econ.Rev.)が挙げられている。M先生のリストにも入ってたやつだ。やっぱこれ読まなあかんか...気が重い]。

 実証研究の紹介。
 ドイツで映画の興収の予測市場を7ラウンドやった(CMXXというそうだ)。1ラウンドあたり1か月くらいで、参加者はオープン、成績の順位を競う。架空通貨市場、実金銭報酬はなし。ダブルオークション、24時間取引、空売りなし、指値注文。
 結果。各ラウンドの投資家は50人くらい。専門家の予測より当たった。 ただし、あんまり宣伝してない映画は情報がないので成績も悪かった。81本の映画の予測精度について回帰分析すると、価格のボラタリティと上映館数が効いていた。云々。
 
 テーマを依頼されてちゃっちゃと書いたんだろうな、というコンパクトな内容であったが(失礼ヲオ許シクダサイ)、頭の整理になりました。
 完全に未知の文献はそんなに出てこなかったが、未読の奴が結構あることに気が付いた。情けないなあ。

論文:予測市場 - 読了:Skiera & Spann (2011) 新製品開発のための予測市場

2015年11月25日 (水)

 ここんところ市場メカニズムに関する資料ばかり読んでいて、なんだか殺伐とした気持ちになってしまったので、気分転換に目を通した。
 Gelman先生2009年の論文、うっかり2007年のdraftで読んじゃったけど、中身は同じだと思う。

Gelman, A., Park, D.K. (2009) Splitting a predictor at the upper quarter or third and the lower quarter or third. American Statistician, 63(1).
 回帰分析は素人には難しい。そこで、Xで高群と低群にわけ、群間でYの平均の差をみる、という方法が広く行われている。でもどうせなら高中低の3群に分けたほうがいいよ。という論文。
 (ここで感涙... ああ、なんて親しみやすい話題でしょう。心温まるね)

 まずは数値例。
 例1. 過去のUS大統領選における、各州の平均所得とその週の共和党得票率の関係を回帰分析で調べると、1980年頃以降の選挙では回帰係数がどんどん負の方向に変化している(平均所得が低い週で共和党が勝ちやすい)。
 例2. 過去のUS大統領選における、個々の投票者の所得と共和党への投票の有無の関係をロジスティック回帰分析で調べると、1980年頃から、係数が正になっている(所得が高い人は共和党に投票しやすい)。

 なぜこうなるのか、というのはここでの関心ではない。 問題は、こういう結果を一般人にどうやって説明するかだ。
 相関だ、回帰係数だ、なんていわれても素人にはわからない。単純な要約統計量ならわかってもらえるけど(各週の共和党の得票率を色で表すとかね)、上記のような2変量間関係を表すのは難しい。散布図をみせるのはいいけど、関係の強さの変化を時系列でみせるためには、やっぱりなんらかの要約が必要だ。
 
 以下では、回帰モデル $y_i = \alpha + \beta x_i + e_i$を真とする。誤差項は正規分布、等分散、$x$から独立だとする。回帰係数の最小二乗推定値を$\hat{\beta}^{ls}$とする。
 話はそれるけど、この回帰係数ってやつも、結局は比較なのである。なぜなら
 $\displaystyle \hat{\beta}^{ls} = \frac{ \sum_i (y_i - \bar{y})(x_i - \bar{x}) }{ \sum_i (x_i - \bar{x}) }$
 $\displaystyle = \frac{ \sum_{i,j} (y_i-y_j)(x_i-x_j) }{ \sum_{i,j} (x_i - x_j)^2 }$
 $\displaystyle = \frac{ \sum_{i,j} \frac{y_i-y_j}{x_i-x_j} (x_i - x_j)^2 }{ \sum_{i,j} (x_i - x_j)^2 }$
つまり、回帰係数とは、2つのケースの差の比$\displaystyle \frac{y_i-y_j}{x_i-x_j} $を、すべてのペアを通じて$(x_i - x_j)^2$で加重平均した値なのだ。
 [うおおおおお... そんな風に考えたことはなかった!恥ずかしながら目からうろこが]

 この$\hat{\beta}^{ls}$を近似できる、もっとわかりやすい指標について考えましょう。
 閾値$x^{lower}, x^{upper}$を定め、これでデータを高中低の3群に分ける。高群と低群の割合はともに$f$とし、$0 \lt f \leq 0.5$とする。変数$z$をつくり、高群を$z=0.5$, 中群を$z=0$, 低群を$z=-0.5$とする。
 で、$\bar{y}_{z=0.5} - \bar{y}_{z=-0.5}$を求める、というのでもよろしいのだが、$\hat{\beta}$と比較できないので、次の指標を考えよう:
 $\displaystyle \hat{\beta}^{simple} = \frac{ \bar{y}_{z=0.5} - \bar{y}_{z=-0.5} }{ \bar{x}_{z=0.5} - \bar{x}_{z=-0.5} } $
 では、分散を比べてみよう。
 $\displaystyle var(\hat{\beta}^{ls}) = \frac{\sigma}{n} \frac{1}{var(x)}$
いっぽう [...途中省略...]
 $\displaystyle var(\hat{\beta}^{simple} ) = \frac{\sigma}{n} \frac{2}{( E(x|x \geq x^{upper}) - E(x| x \leq x^{lower}) )^2f}$
である。
 これを最小化する$f$は [...途中省略...] 結局、以下の方法で数値的に求めることができる。[以下、原文を離れてレシピ風に]

 さて。最適な$f$は$p(x)$次第なのだが、一様分布とか正規分布とか、いろんな実データとかで試してみると、だいたい最適な$f$は0.25とか、0.33とか、まあそのくらいの値になる。つまり、高低の2群に折半して比べるよりも、高中低の3群に分け、中を捨てて高と低を比べるほうが、気が利いているわけだ。

 [以下、話はちょっと駆け足になって...]
 説明変数が離散的な場合でも同様。高い方の1/4~1/3くらいと、低い方の1/4~1/3くらいを取ってきて比べるのがお勧め。
 目的変数が二値の場合でも同様。群間で割合を比較すればよろしい。ただし、ロジスティック回帰係数の分散と群間の割合差の分散を単純に比較するのは難しい。云々。
 順序ロジットの場合はどうか。関係が単調じゃないかもしれないので、順序ロジットを群間比較に置き換えちゃうのはお勧めできない。云々。
 重回帰の場合はどうか。もし説明変数が二つなら、3x3=9群に分けて、片方を固定してもう片方の高群と低群を比較しよう。もっと多かったら、各変数を高中低の3群に分け、0.5, 0, -0.5とコード化して重回帰なさい。
 最後に数値例。冒頭の例を、回帰じゃなくて群間比較で調べ、似たような結果が得られることを示したりしている[略]。

 結論。長い人生、ほんとは回帰のほうがいいんだけど、周りの素人たちのためには群間比較のほうがいい、ってこともあるだろう[←こんな書き方ではないけど、まあそういう意味のことが書いてある]。そのときは、Xで二等分するんじゃなくて、三等分か四等分して両端の群を比較なさい。云々。

 いやー、面白かった!
 この話、どこでどう役立てるかは、ちょっと慎重に考えたほうがいいと思う。実際のデータ解析では、変数間関係の要約のために量的変数を離散化するとき、分布じゃなくて実質的知識に基づいて区切ったほうが良い場合が、非常に多いと思うからだ。卑近な例でいえば、「製品パッケージへの好意度(5件法)と購入意向の関係を知りたい、好意度Top2Boxの対象者とBottom3Boxの対象者のあいだの購入意向の差を調べるのと、好意度TopBoxの対象者とBottom4Boxの対象者のあいだの購入意向の差を調べるのと、どっちがいいでしょうか」と尋ねられたらどうするか。ここで最初の返事は、「Top2Boxの対象者に注目するということのビジネス上の意義は? TopBoxの対象者に注目することの意義は?」でなければいけないと思う。「分布が等分になるようにわけるのがいいんじゃないですか」などと答える人を、私はあまり信用しない。
 でも、いざ分布に基づいて分けるときには、これはもうエイヤッと分けるしかないだろうと思っていた。まさか、群間の差の分散という観点から「High/LowじゃなくてHigh/Middle/Lowにわけましょう」というような示唆が出てくるとは思わなかった。頭がちょっぴり良くなったような気分だ。

論文:データ解析(2015-) - 読了:Gelman & Park (2009) Xで高群と低群に分けてYを比べているあなた、どうせなら高中低の3群に分けなさい

2015年11月24日 (火)

Peters,M., Ye, Y., So, A.M. (2007) Pari-mutuel Markets: Mechanisms and Performance. in "Internet and Network Economics," Proceedings of Third International Workshop, WINE 2007, 82-95.
 後日のためにいちおう記録しておくけれど、これは読了どころか、難しすぎて途中で断念し、論文の筋立てさえわかっていない。後半にはなんかチャートがのっているから、シミュレーションでもしたんですかね、っていう感じ。
 出展もよく分からなくて、ネットに公開されているのを拾ったんだけど、2008年と書いてある。たぶん上記文献の私家改訂版であろう。

 まあとにかく、逐次凸パリ・ミュチュエル・メカニズム(SCPM)を提案した論文らしい。
 こうして落ち着いてめくってみると、この論文の内容についていけなかったのは、数理的最適化についての知識がないからだ。KKT条件とか、双対問題とか、そういう基礎知識がないのでわからないだけだ。そんな知識を俺が持っているわけがないだろう。だからあまり落ち込むことはない。と自分に言い聞かせて、次にいこう、次に。

論文:予測市場 - 読了:Peters, et al. (2007) 逐次凸パリ・ミュチュエル・メカニズム

読んだとは到底いえないが、諦めをつけるために記録しておく。

Agrawal, S., Delage, E., Peters, M., Wang, Z., Ye, Y. (2011) A unified framework for dynamic prediction market design. Operations Research, 59(3), 550-568.
 予測市場、金融市場、賭け市場などなど、「ある出来事が起きたらある金を払う」タイプの市場(contingent claim markets)は数多い。連続的ダブル・オークションとかだと市場が薄いときに流動性がなくなっちゃうので、自動マーケット・メーカが使われることが多い。いろんなメカニズムが提案されている。コール・オークションに由来するメカニズム(SCPM)や、スコアリング・ルールに由来するメカニズム(LMSR)があるが、「敗者が払った金を勝者に分配する」という意味でいずれもパリ・ミュチュエルである。[←他の論文でもそうなんだけど、この著者らはパリ・ミュチュエルという言葉をかなり広い意味で使っているようだ]
 メカニズムを比較する研究はすでにある(Chen & Pennock, 2007; Peters, Ye, & Son, 2007)。本論文は異なるメカニズムを統合するフレームワークを提案します。

 メカニズム概観。以下、「ある出来事が実現したら1ドル払う」という証券について考える。
 その1, マーケット・スコアリング・ルール(MSR)。
 出来事$\omega$の確率推定値を$r = (r_1, r_2, \ldots, r_N)$とする。$\omega$の結果$i$が実現したときに$S=S_i(r)$となるような$S=S_1(r), S_2(r), \ldots, S_N(r)$をスコアリング・ルールという。信念の真実申告を促進するスコアリング・ルールをプロパー・スコアリング・ルールという。
 Hansonの考えたMSRとは、マーケット・メーカ(MM)がまず初期確率推定値$r_0$を持っていて、取引でそれが変わるたびに、その取引を行った投資家にプロパー・スコアリング・ルールで求めたスコアを払わせる、というもの。スコアリング・ルールとしては、
 対数スコアリング・ルール $S_i(r) = b \log (r_i)$
 二次スコアリング・ルール $S_i(r) = 2br_i - b \sum_j r_j^2$
が用いられる。
 MSRは投資家のtruthfulなbidを引き出すことが知られている[←近視眼的な投資家については、ってことなんだろうけど]。

 その2, コスト関数ベースMM (Chen & Pennock, 2007)。
 投資家たちが現在維持している、それぞれの状態についてのクレームの数をベクトル$q \in R^N$とする[←発行株数量のことだろうか?]。全注文$q$の合計コストを、なんらかのコスト関数$C(q)$で決める。さて、ある投資家がある注文を投げたとしよう。この注文を、状態$i$についての彼のクレームを要素$a_i$とするベクトル$a \in R^N$で表す。MMはその投資家に$C(q+a) - C(q)$を課金する。
 ... という枠組みで考えると、HansonのLMSRは
 $ C(q) = b \log (\sum_j \exp(q_j/b))$
として表される。もっと一般的に言うと、所与のスコアリング・ルール$S$によるMSRは、以下の条件を満たすコスト関数ベースMMと等価である。
 すべての$i$について$S_i(p) = q_i - C(q) + k_i$ (k_iは任意の定数)
 $\sum_i p_i = 1$
 すべての$i$について$p_i = \frac{\partial C}{\partial q_i}$

その3, 効用関数ベースMM (これもChen & Pennock, 2007)。
 MMは最終的ペイオフ$x$について効用関数$u(x)$を持ち、市場をやっている間じゅう、主観確率分布$\theta$に基づく期待効用を一定に維持し続ける。
 全状態についてのペイオフをベクトル$m$とする。$x$における$u(\cdot)$の導関数を$u'(x)$とする。状態$i$のリスク中立価格を
 $p_i = \frac{\theta_i u'(m_i)}{\sum_j \theta_j u'(m_j)}$
とすると、効用$\sum_j \theta_j u(m_j)$が定数になる。
 将来のペイオフに関するMMのリスク態度という観点から問題定式化した初めての提案であったが、MMはふつうそれぞれの結果の確率を知らない、という点が問題。

 その4, 逐次凸パリ・ミュチュエル・メカニズム(SCPM)。
[このSCPMというモデル、全然理解できない。引用されている Peters, Ye, So (2007) もめくってみたんだけど、とてもじゃないが私の理解が及ぶところではなかった。腹が立つので全訳する]

SCPMは以下のように設計されている。投資家に、次の3つの要素を含む注文を投げるように求める: 指値 $\pi \in R$, 数量上限$l$, 注文を記述するベクトル$\vec{a}$。$a$の各要素は1(その状態を望んでいるというclaim)ないし0(望んでいないというclaim)からなる。指値とは、投資家が1株に対して払いたい最大の量を指す。数量上限とは、投資家が買いたいと思う株の最大数量を表す。マーケット・メーカは、ある新しい注文について、そのうち$x$株を承諾する、そしてそれにいくらいくら課金する、と決める。マーケット・メーカは以下の最適化問題を解くことによってこの決定を行う。
 ${maximize}(x,z,\vec{s}) \ \ \ \pi x - z + \sum_i \beta_i \log(s_i)$
 $s.t. \ \ \ \vec{a}x + \vec{s} + \vec{q} = z \vec{e}, \ \ 0 \leq x \leq l$
パラメータ$\vec{q}$は、この新しい注文$(\pi, l, \vec{a})$が到着する前にthe traders[たぶん投資家サイド全体という意味]が持っていた株の数量を表す。新しい注文が到着するたびに、上記の最適化問題が解かれ、state prices $\vec{p}$が、the optimal-dual variables associated with the first set of constraintsとして定義される。投資家には、state priceのベクトルと実現された注文の内積$\vec{p}^T\vec{a}$が課金される。

[具体例でいこう。巨人阪神戦の賭けで考える。すでに巨人株が3枚, 阪神株が1枚売れている($q = (3,1)^T$)。で、「巨人株くれ、最大で一株あたり0.8ドル出す, 最大で3枚まで買う」という注文が届く。$\pi = 0.8, l = 3, \vec{a} = (1,0)^T$。市場運営者は、全株あわせて各銘柄について最大で$z$枚まで売ろう、と思っている。今回の売り枚数を$x$とすると、それは0以上、3以下。そして
 $1 x + s_1 + 3 = z$
 $0 x + s_2 + 1 = z$
あ、そうか、$s_1, s_2$は「あと何枚売れるか」を表しているのか。
 その上で、以下を最大化する。
 $0.8 x - z + (\beta_1 \log s_1) + (\beta_2 \log s_2)$
 ってことは、$\beta_1, \beta_2$は売り控えを奨励する程度を表す係数だ。で、$0.8x$が今回の売上の最大値。$z$は最悪の場合の支払額だ。仮に$\beta_1 = \beta_2 = 1$とすると、目的変数は
 $0.8 x - z + \log (z-3-x) + \log(z - 1)$
ここからがわかんないんだけど、これが常に解けるんでしょうね、きっと。で、ここからどうにかして$p$が出てくるんでしょうね、きっと。いいよもう、理系の人のいうことを信じるよ]

 その他、Pennockの動的パリ・ミュチュエル市場(DPM)があるけど、最後の注文が来るまで勝ち注文の価値が決まらないという特徴があるので、以下では扱わない。

 以上を統合するフレームワークとして以下を提案する。これはオリジナルのSCPMを一般化したもので、最大化する関数を
 $maximize(x,z,\vec{s}) \ \ \ \pi x - z + v(\vec{s})$
としたもの。以下ではこっちをSCPMと呼ぶ。
 $v(\cdot)$がなんであれ、VCG値付けスキーマの下で、SCPMメカニズムは近視眼的にtruthful biddingを許容することが証明できる。
 [VCGメカニズムって、まずパレート効率的に落札者を決めて、落札者は自分の言い値じゃなくて、Vickreyオークションみたいな謎のルールで決まる謝罪料金みたいなものを払う、ってやつだよね... 駄目だ、私の能力を超えた話になってきた...]

 ... まだ全体の1/3くらいだけど、文字通り力尽きたので、ここからは見出しだけ。
 SCPMをコスト関数ベースMMとしてみたらそのコスト関数はどうなるか。
 SCPMではMMは最悪でいくら損するか。
 SCPMをリスク最小化という観点から定式化するという長い長い話(全然理解できない)。
 既存のメカニズムを片っ端からSCPMの特殊ケースとして位置づける。LMSRは$v(\vec{s})=-b \log (\sum_i \exp(-s_i /b )) $であるSCPMである、とか。
 どんなSCPMだとどういう性質を持つか。たとえば、SCPM+VCG値付けスキーマは、真実申告性、コスト関数ベースMMとの等価性、スコアリングルールとの等価性を持つ、とか。
 SCPMに基づき新たなるメカニズムを考えてみよう、とか。この辺になるともう目を通してもいない。視線がつつつーっと文面をすべっていくような感じ。

 だ・め・だ。降参。これは私には無理だ。。。
 正直、わからなすぎて途中で吐きそうになった。なんでこんなの読もうとしているんだ、という惨めな思いで胸が一杯だ。

論文:予測市場 - 読了:Agrawal et al.(2011) ありとあらゆる自動マーケット・メーカを統一的に説明する枠組み(ま、おまえら素人には百年経ってもわからんだろうがな)

2015年11月19日 (木)

Chen, Y., Dimitrov, S., Sami, R., Reeves, D.M., Pennock, D.M., Hanson, R.D., Fortnow, L., Gonen, R. (2010) Gaming prediction markets: Equilibrium strategies with a market maker. Algorithmica, 58(4), 930-969.
 かなりの時間を費やし、細かくメモをとりながら10頁くらい読んだが、これは私には到底歯がたたない、と云い切れる内容であった。これ以上泥沼をのたうちまわっても時間の無駄なので、涙を飲んで断念。

 理路は全くもって理解できないが、読んだ範囲では、どうやらこういう内容であるらしい。
 LMSRマーケット・メーカを使った予測市場は近視眼的にインセンティブ整合であることがわかっている。つまり短期的にいえば、投資家は予測対象についての自分の真の信念に従って取引するのが最適である。では非近視眼的にみるとどうか。つまり、序盤で自分の信念に反する取引をして他の投資家を騙しておき、あとで食い物にする、というようなことはできるか。
 市場を不完備情報の下での展開型ゲームと捉え、ごにょごにょごにょごにょごにょと、お前ら凡人には死ぬまで理解できないであろう魔術的な分析を行った結果、次のことがわかった。
 みんなが使っているある製品について、その製品の材料が高品質か低品質かを当てる予測市場について考えよう。個々の参加者は製品使用経験というプライベートなシグナルを持っているが、それら「ある製品の材料が高品質か低品質か」という真相の下で条件つき独立だ。こういう風に、投資家が持っているプライベートなシグナルが世界の真の状態のもとで条件つき独立であるような市場であれば、自分の信念に基づく取引が弱完全ベイジアン均衡(WPBE)になる。
 こんどは選挙の予測市場について考えよう。有権者は自分の投票意向というプライベートな情報を持っている。これは互いに独立である。選挙結果は投票で決まる。つまり、世界によってシグナルが決まるわけじゃなくて、シグナルが世界に影響する。このような、投資家のプライベートな情報が独立である市場では、自分の信念を貫く取引はWPBEにならない。
 そこで、新たに「割引LMSR」を提案する。なんだかよくわからんが、対数スコアリング・ルールで求めるスコアにある係数を掛けておき、取引が進むごとにその係数をちょっとずつ増やしていくらしい[ってことは、株価が次第に動かなくなるってこと??]。
 
 せっかく膨大なメモをとったのに... ああ、無性に腹が立つ。死ね、俺より頭のいい奴はみんな死ね。(まずいな、人類滅亡の危機だ)

論文:予測市場 - 読了:Chen, et al.(2010) LMSR予測市場で他人を騙す方法とその防止策 (を考えたが貴様ら凡人にはわかるまい)

2015年11月17日 (火)

 仕事の関連で、最近ちょっと悩んだことがあって... 市場の「流動性」って、いったいなにを指しているんだろう? どうやって測るのが正しいんだろう? 恥ずかしくて人には訊けないし...

黒崎哲夫, 熊野雄介, 岡部恒多, 長野哲平 (2015) 国債市場の流動性:取引データによる検証. 日本銀行ワーキングペーパー.
 というわけで、大慌てで目を通した。
 著者らによると、「流動性」の定義はけっこうばらばらで、「その時々で観察される市場価格に近い価格で、売りたい(買いたい)量を速やかに売れる(買える)」ことを指していたり、「個々の売り買いが市場価格に大きく影響しない」ことを指していたり、価格ボラティリティが小さいこと自体を指していたりする。

 市場流動性をどうやって測るか。Kyle(1985, Econometrica)という古典的研究があって、売値と買値の幅の狭さ(tightness)、市場の厚み(depth)、市場の弾力性(resiliency)といった複数の軸で測ろうと提案している。さらに取引数量という軸もある。
 これは次の2軸で整理できる。横軸に注文数(正が買い、負が売り)をとる。縦軸に指値注文の設定価格をとる(正のみ)。取引が成立する範囲は、このチャートの中央に浮かぶ長方形で表現される。長方形の面積がvolume。その長方形の高さがtightness。縦軸からみた横幅がdepth。この長方形は、右下から上向きに買い注文の圧力、左上から下向きに売り注文の圧力を受けており、この圧力がresiliency。[うーん、わかったような、わからんような...]

 では、国債市場の流動性指標をつくりましょう。大阪取引所の取引データを使います。
 なお背景として、2014月末の量的質的金融緩和の拡大よりこのかた、市場関係者の間には「日銀が国債をどかっと買い入れていて流動性が低下している」という実感があるんだそうだ。

 まず、長期国債先物市場について。
 tightnessとしてbid-ask spread、volumeとして日々の出来高に注目。観察すると、2014年秋以降もspreadはずっと小さいし、出来高は高い。tightnessとvolumeだけじゃいかんということですね。
 depthとしてbest ask(bid)の枚数に注目。観察すると、たしかに2014年秋から薄い時間帯が増している。しかし、これだけではまだ足りない。なぜなら、たとえばbest ask枚数が表面上は増加していても、それがなにかのきっかけで急速に減少し、なかなか回復しない(resiliencyが低い)ようであれば、市場参加者にとっては流動性が低いことになる。さらにいえば、実際そうなんじゃないかというふしもある(これまで板を提示していた投資家が、金利変動の拡大とともに金利観を見失って提示を減らしているんじゃないか)。

 では、resiliencyとしてなにに注目するか。伝統的には、日中の値幅を出来高で割った値(値幅出来高比率)をみることが多い。しかし、これは最高値と最安値しかみてないという問題点がある。そこで、日次じゃなくて高頻度取引データを使い、1単位の取引が価格に与える影響(price impact)の推移を推測しよう。
 具体的には、price impactがランダム・ウォークすると仮定して、カルマンフィルタで平滑化する[←おおお、なるほど。価格変化を状態空間で表現しようってわけだ]。5分間の先物価格の変化幅を$\Delta p_t$, 5分間のネット取引金額(買い-売り)を$q_t$として、
 $\Delta p_t = \beta_t q_t + \epsilon_t$
 $\beta_t = \beta_{t-1} + \delta_t$
この$\beta$がprice impact。観察すると、なるほど、2014年秋から高くなっている。

 こんな感じで、現物国債市場についても指標をつくる。略。
 さらに、以下の2つの角度からみた流動性を調べる。

 その1、現物国債と長期国債先物の連関性。これが不安定になると、現物のポジションから発生する金利リスクを先物でヘッジできなくなるので、マーケット・メイクの難しさが増す[←へえええ。いやー、ど素人なので、いちいち面白いわ]
 具体的には、両者の利回り変化幅の相関をとる。これは低くなってない。

 その2、「SCレポ」市場の動向。
 [なんのことだかさっぱりわからなかったのだが、調べたところどうやらこういうことらしい。国債市場のディーラーは、現物国債の取引で売りポジションをとるとき、誰かに担保の資金を差し入れて国債を借りてくる。このとき、ディーラーは貸借料を支払うが、担保として差し入れた資金に対する金利を受け取る。国債の貸し手側は、国債の貸借料の分だけ低利で金を借りていることになるし、ディーラーの側は、国債を担保にとって安全に資金運用しているともいえる。この取引を「SCレポ取引」というのだそうだ。金利から貸借料を引いた値をSCレポレートという由。SCレポレートが大きなマイナスになるということは、ディーラーが売りポジションを取りにくくなるということ、すなわちディーラーが国債市場で取引しにくいということを意味することになる。へえええ]
 [よく理解できない細かい議論があって...] どうやら貸借料は高くなっている模様。

 まとめ。
 2014年秋以降、国債市場の流動性はどう変わったか。先物市場では、tightnessとvolumeは変わらず、depthとresiliencyは低下。現物市場ではdepthが低下。先物の金利ヘッジは維持されているが、SCレポ市場での国債の希少性が増している。要するに、流動性は極端に下がってはいないが、いくつかの指標で下がっているので、今後も要注意。

 難しい話はぜんっぜんわかんないんですけど、要するに、市場の流動性ってのはいろんな角度から捉えられる、ということらしい。そうだったのか。ちょっとほっとした。
 自動マーケット・メーカ方式の予測市場にあてはめて考えると、(A)「その時々で観察される市場価格に近い価格で、売りたい(買いたい)量を速やかに売れる(買える)」ことは常に満たされている。流動性という言葉が使われるとしたら、それは(B)「個々の売り買いが市場価格に大きく影響しない」ことを指しているか、ないし(C)価格ボラティリティそのものを指しているか、であろう。LMSRマーケット・メーカのパラメータは「流動性パラメータ」と呼ばれているけれど、これは(B)の意味だな。

論文:予測市場 - 読了:黒崎ほか(2015) 市場の流動性とはなにか、それをどうやって測るか

2015年11月16日 (月)

 国会前に安保法制反対デモの人々が詰めかけていたとき、参加者は主催者発表で×万人だ、いやそんなに多いわけがない捏造するな... 云々と、なにかと喧しい様子であった。それはまあ置いとくとして、なにかのメディアに、こうした場合の人数の数え方に関する専門家なる方のコメントが載っていて、いわく、香港の研究者でデモの人数を統計的に推測するモデルを作った人もいます、とのこと。ああ、そりゃきっといるよね、と膝を打った。北海道の熊や太平洋のマグロの個体数についてもなんらか推測している人がいるんだから、人間の頭数くらい推測できそうなもんじゃないですか。

 というわけで、数か月前に純粋な好奇心で目を通した論文なのだけど、せっかくなので記録しておく。

Yip, P.S.F., et al. (2010) Estimation of the number of people in a demonstration. Australian & New Zealand Journal of Statistics. 52(1), 17-26.
 著者いわく、群衆のサイズ推定という問題は古くからあり、すでにたくさんのアプローチがあるんだけど、デモのように移動している場合は難しい。本論文は、"double count and spot-check"法を提案します。

 デモを一方向の行進とみなし、そのルートを$[0,1]$とする。デモは地点1の近くにある焦点ポイント$f$に向かって進むものとする。たいてい$f$のそばには広場があって、群衆がそこで広がることができる。
 ある個人は、ルート上の任意の点$u$でデモに参加し、任意の点$v$で離脱するものとする。$0 \leq u \lt 1$, $0 \lt v \leq 1$, ある人について$u \lt v$である。$u \leq u_0$, $v_0 \leq u$を満たす人をデモ参加者とする。
 推定の対象は、指定された時間内にデモに参加した人数$N$である。距離を置いて同行した人は含めない。

 まず従来の方法として、香港大学世論プログラム(HKUPOP)が用いている"count and follow-up"法について説明しよう。
 $f$の手前に調査ポイント$P$を置く。ここを通過した人数を$N_p$とする。観察者がずっとカウントしていたとしよう。このときのカウントを$Y_P$とする。実際にはなんらかの時間間隔をサンプリングして$Y_P$を推定する。この推定値を$\hat{Y}_P$とする。
 ところで、そもそも$N_P$は$N$でない。$P$より手前で離脱した人が入ってないからだ。そこで、あとでランダム電話調査でデモ参加者を探す。みつかった人数を$l$とする。この人たちに$P$を通過したかどうか尋ねる。
 参加者に占める地点$P$通過率$p$の推定値$\hat{p}$が手に入ったとしよう。そのSEは$\sqrt{\hat{p}(1-\hat{p})/l}$である。さて、参加者の推定値は$\hat{N}_1 = \hat{Y}_P / \hat{p}$だ。そのSEは下式となる:
 $se (\hat{N}_1 ) = \sqrt{\frac{var(\hat{Y}_p)}{\hat{p}^2} + \frac{\hat{Y}_P^2 (1-\hat{p})}{l\hat{p}^3}} $
[恥ずかしながら、この式の導出はよくわからないんだけど、ま、信じることにしましょう]

 このやり方にはいろいろと問題点がある。どんなに巨大なデモであろうが、人口に占めるデモ参加者の割合は小さいので、電話調査で捕まえるのはすごく大変だ。無回答のバイアスもあるし、地点$P$通過の有無を正直に答えてくれてるかどうかもわからない。

 さて、提案手法。電話調査はやらない。その代わり、$f$のすぐ手前だけじゃなくて、もっと手前のほうにももうひとつ調査ポイントを置く。手前から順に$A$, $B$としよう。
 $A$と$B$のあいだで参加し、かつあいだで離脱した人は除外して考えよう[←つまり、$A$,$B$がデモ参加者を定義する2地点になるわけね]。$B$通過者における$A$通過率を$\phi$として、
 $\hat{N} = \hat{Y}_A + (1-\hat{\phi}) \hat{Y}_B$
といえる。$\hat{\phi}$は、$B$通過者$m$人をその場で抽出して「あなた$A$を通りましたか」と訊けばかんたんにわかる。そのSEは$\sqrt{\hat{\phi}(1-\hat{\phi})/m}$であり、
 $se (\hat{N}) = \sqrt{\hat{var}(\hat{Y}_A) + (1-\hat{\phi})^2 \hat{var}(\hat{Y}_B) + \hat{Y}^2_B \frac{\hat{\phi}(1-\hat{\phi})}{m}}$
[恥ずかしながら、この式もよう導出せんわ...]
 $se (\hat{N}_1)$と$se (\hat{N})$を比べてみると [....中略...] 前者のほうが大きい。
 そんじゃあ観察地点を3つ以上にすればもっといいんじゃないか、という意見もあるだろうが、それは金もかかるし大変だ。それよか、よい2地点を選んで正確にカウントするほうがよいでしょう。

 後半は、2006年7月1日(香港の返還記念日)のデモへの適用例。ルートは約3.6km。
 地点$A$, $B$におけるカウントは、5分に一回、1分間、複数の観察者が通過人数を数える、というやり方。突き合せてみると結構当たっていた。平均するとおよそ220人/分。 なお、提案手法で一番大事なのは地点$A$で正確に数えることである[なるほど]。地点$B$におけるインタビューの結果は$\hat{p} = 0.91$であった。
 [以下、$\hat{Y}_A, \hat{Y}_B$とそのSEの算出方法が丁寧に書いてあるけど、省略]

 まあそんなこんなで、デモ参加者の人数の推定値は26300名、95%信頼区間は(25300, 27400)となった。
 他の推定値と比べてみよう。日刊紙「明報」はデモの最後の人が出発地点を離れた時点での衛星写真から、参加者を22141名と推定している(これは途中参加者抜き)。HKUPOPは地点$B$の近くでのカウントに基づく"count and follow-up"法で、36000人から43000人と推定している。主催者発表は58000人、警察発表は28000人。完璧な正解はないけれど、このデモに関する限り、主催者発表よりは警察発表があたってんじゃないですかね。云々。

 なるほどね、おもしろいな。でも(←ごろ合わせではない)、一方向に進むデモ行進じゃなくて、国会かなにかを取り囲む人々が三々五々入れ替わる、というような群衆の数え方も知りたいところだ。

論文:データ解析(2015-) - 読了: Yip et al.(2010) デモ行進の人数をどうやって推定するか

2015年11月14日 (土)

 「孫文の義士団」という中国映画がある。先日初めて観たのだが、なかなか面白い映画であった。正確には香港=中国の合作、2009年の作品。いま調べたら、なんと中国側のプロデューサーは、かつて第五世代と称された気鋭の映画監督の一人、「黒砲事件」「輪廻」の黄建新だ...
 この映画は、香港からはジャッキー・チュンにレオン・カーフェイにサイモン・ヤムにドニー・宇宙最強・イェン、本土からは王学圻に范冰冰というオールスター大作なのだけれど、印象的な役どころのひとつを、あんまり女優っぽくない中性的な若い女性が演じている。クリス・リー(李宇春)、中国で大人気のポップ・シンガーである。
 他の国はおろか、日本の人気タレントについても全く理解できないのだけれど(先日は喫茶店のお姉さんに呆れられた。「ずっとCD掛かってるけど、これ誰ですか」「(5秒くらい間があって)嵐っていうんだけど、知りません?」)、このクリス・リーさんについても、歌手としてはどのあたりが魅力なのか、私、よくわかんないんですよね。社会文化的文脈なしで、Youtubeで何本か動画をみても、なぜ人気があるかなんてわかりっこないのである。ましてや活字で説明を読んでも、さらに役に立たないんだろうけど...

金明華(2015) 中国における新女性像の受容をめぐって : 李宇春ファンの活動を手がかりに. お茶の水女子大学人間文化創成科学論叢, 11, 41-50.
 というわけで、ふと見つけて読んだもの。
 えーと、女性たちは大衆文化の消費にあたり、単に男性の視線を内面化し男性の審美基準に従っているのではなく、さまざまな戦略を駆使して主体的に快楽を見出している。中国における女性たちのこうした文化消費が持つ可能性について論じるために、李宇春ファン(女性が圧倒的に多い)の文化実践に注目しましょう。
 ファンがアクセスするサイトで調査協力を求め、中国全土から31名のファンのファンレターを収集。さらに北京の20名のファンに半構造化インタビュー。
 李宇春はTV番組「超級女声」[リアリティ・ショーのようなものらしい]から生まれたスターで、アンチも多い。その歌唱力を疑問視する声も多いが[やっぱそうですよね...]、なにしろ外見が女らしくない(長身のショートカット)。その自由な発言も賛否を呼んでいる。
 熱心なファンたちのなかには、自主的なファン開拓活動や、李宇春さんの組織するボランティア活動に積極的に取り組んでいる人も多い由。彼女たちの活動の原動力は、中国社会における新しい女性像の受容への期待である。女性たちは市場主義のルールを利用して社会に介入し、価値観の多元化を促進しようとしているのである。
 とかなんとか、そういう内容であった。へー。

 ともあれ、「小朋友」という曲のMVでは、リーさんは原宿通りあたりを楽しそうに歩いておられる。次にお越しの際は、表参道通りを渡ってキャットストリート沿いを散策していただければ、私の勤め先に近いのでありがたいです。瑞穂の豆大福とかいかがですかね。

論文:その他 - 読了:金(2015) 現代中国におけるクリス・リーのファンの生活と意見

2015年11月12日 (木)

Brahma, A., Chakraborty, M., Das, S., Lavoie, A., Magdon-Ismail, M. (2012) A Bayesian Market Maker. 13th ACM Conference on Electronic Commerce.
 予測市場のための自動マーケット・メーカの新機軸、BMM(ベイジアン・マーケット・メーカ)を提案するよ! LMSR(対数マーケット・スコアリング・ルール)を超える凄い奴だよ!という論文。
 筆頭著者の所属がQualcommになっているので驚いたが、Rensselaer Polytechnic Institute在学中の研究らしい。

1. イントロダクション。略。

2. マーケット・メイキング
 その1, LMSR。早速ここで躓いた。著者いわく。

価格はパラメータ $b$とマーケット・メーカの現在のインベントリー$q_t$で決まる。ここで$t$とは注文到着時を表すインデクスである。インベントリ―はゼロから始まる、すなわち$q_0$である。これは初期価格$0.5$に対応する。

おおっと。どうやらここで著者は2銘柄しかない市場について考えているわけだ。さらにいわく、

スポット価格は$\rho(q_t)= \exp(q_t/b) / (1+\exp(q_t/b))$である。取引が数量$Q$に達したとして、時点$t+1$における投資家のコストは次の式で与えられる:
 $C(Q; q_t) = \int_{q_t}^{q_t+Q} ds \ \rho(s) $
 $= b \ln (1+\exp( (q_t+Q)/b )) - b \ln (1+\exp( q_t/b )) $

うわあ。著者は2銘柄のうち一方だけが取引されるとみて、取引されないほうについては$\exp(q_t/b)$のかわりに1を置いている。ってことは、一方の銘柄の発行数量が常に0であるような2銘柄の市場について考えているのだ。なぜ? この定式化に基づいて考えた話は、多銘柄を取引する場合にもあてはまるの?

 まあいいや、先を読むと... (以下、引用表記を省略)
 LMSRにはつぎのような問題点がある。取引に参加している多くの人々が、なんらか違う信念を持ち続けているとしよう。さらに、常に何人かの投資家がいて、なんらかの取引をしており、そのサイズを$Q$としよう。時点$t$における株式発行量を$q_t$とする。
 数量$Q$におけるbid-ask spreadについて考えよう。すなわち、$Q$株の買いの平均価格と、$Q$株の売りの平均価格の差である。それは次式となる:
 $\delta (Q) = \frac{b}{Q} \ln( \frac{cosh(q_t/b) + cosh(Q/b) }{2 cosh^2(q_t/2b) } )$
[← $cosh(x) = (\exp(x) + \exp(-x))/2$であろう。この式、他の全銘柄の発行数量が0である市場については確かに成り立つようだ。わざわざスプレッド・シートをつくって確認した。ヒマなのか私は]

 仮に、均衡価格がインベントリー$q_{eq}$に対応しているとしよう。典型的な取引数量が$Q$ならば、この均衡点の周囲におけるスポット価格の変動は強度$sinh(Q/b) / (cosh(q_{eq}/b) + cosh(Q/b))$を持つ。この変動は均衡点について非対称であり持続する。[←このくだり、まったく理解できない...そもそも価格変動の強度ってどのように定義されているの?]

 そのせいで、質的な確率推定値を抽出するのが困難になる。$b$の選択は重要なオープン・クエスチョンである。小さな$b$は損失の小ささを保証するが、均衡点の周囲での変動が大きい、流動性の低い市場となる。[←ま、この結論は理解できるので、いいか]
 
 その2、流動性敏感なLMSR。LMSRにおいてはある取引数量に対する価格反応は流動性を問わず等しい。つまり、価格を $p_i (q)$ として $p_i (q + \alpha 1) = p_i(q)$である。Othmanらは$b$を市場の数量の関数にして、流動性敏感な価格関数をつくった (先日読んだOthman et al. (2013)のカンファレンスペーパー版)。しかしこの提案では、全銘柄を通した株価の合計が1を超える...云々。 [このくだり、批判してんだか単に紹介してんだかわからない]

 その3、Dasらの情報ベース・マーケット・メーカ(ZPマーケット・メーカ)。
 マーケット・メーカが証券の価値$p_t(v)$についてなんらかの信念(事前確率密度)を持っている。投資家がシグナル$s$を得る。$s$の分散は投資家が持っているシグナルの不確実性を表す。マーケットメーカは事前分布しか情報を持っていないので、ここに情報の非対称性が生じる。この非対称性は投資家の事前信念の分散と投資家の不確実性の比として表現される。
 マーケット・メーカは買値(ask)と売値(bid)を提示する。トレーダーは、$s$がaskより小さければ売るし、bidより大きければ買う。ここでaskとbidを決めるには、利益の期待値が0になる(zero profit, ZP)ことを目指せばよい。すなわち、$ask=E_{p_t(v)}[v | s \gt ask], bid = E_{p_t(v)}[v | s \lt bid]$を解けばよい。
 で、マーケット・メーカは取引を観察して$s$についての情報を手に入れ、$p_t(v)$を$p_{t+1}(v)$に更新する。というモデルである。

 その4、その他にもいろいろある。Pennockの動的パリ・ミュチュエル・マーケット、Hollywood Stock Exchangeのマーケット・メーカ。

 比較しよう。投資家の信念の分布の平均を動かして株価の変動をシミュレーションしてみると、LMSRは適応するが収束せず、情報ベースMMは収束するけど適応が遅い(MMが大損する可能性がある)。流動性敏感LMSRも適応が遅い(MMは損しないけど)。
 思うに、MMは損することなく流動性をつくりだすものであってほしい。また、均衡点に収束するものであってほしい。第三に、真値の変動にすばやく適応してほしい。

3. 市場のミクロ構造
 以下では単一の証券について考える。価格を0から100とする。出来事が起きたかがどうかでペイオフが0ないし100になるのかもしれないし、清算配当が0から100のあいだになるのかもしれない。
 投資家はその証券の取引の履歴と、「現在の株価」をみることができる。投資家は取引数量を選ぶことができ、注文前にその取引価格を知って、注文するかどうか決めることができる。

4. BMMアルゴリズム
 提案手法はDasのZPマーケット・メーカを改善し、適応性を増したものである。以下、その仕組み。
 MMはスポット価格$p_t$を出す。投資家は注文を投げる。注文の数量を$Q$、売買方向を$x_t = \pm 1$とする(正が買い)。マーケット・メーカは、$Q$枚の株のVWAPを示し、ほんとに取引するかどうか尋ね、取引したりしなかったりする。で、MMは現在の信念を更新するわけだ。そのやり方について説明する。以下では買い注文について説明する。

 まず、ZPではどうなっていたか。
 MMは市場の価値についてのガウシアン信念$V: N(\mu_t, \sigma_t^2)$を持っている。スポット価格は$p_t = \mu_t$である。で、投資家の信念は$V$の周りに分散$\sigma_e^2$で正規分布すると仮定し、MMが情報的に不利である程度を$\rho_t = \sigma_t / \sigma_e$とする。売値を以下のように決める。
 $ask = \mu_t + \sigma_e Q(\rho_t) \sqrt{1+\rho_t^2}$
$Q(\rho)$とはDasらが決めた関数。こうして決めた売値の下で、利益の期待値は0になる。ここでは取引数量について考えていないことに注意。
 さて、MMは投資家の信念$s$が取りうる範囲について考える。たとえば投資家が取引に応じたら、$s$はaskより上だ。もしキャンセルしたら、$s$は$\mu_t$と askのあいだだ。[←おおお。注文が入ってから取引価格を示してキャンセルを許容することに積極的な意味があるわけだ。これは面白いな]。そんなこんなで、$s$の上限と下限、$\mu_t$, $\rho_t$, $\sigma_e$の5つを組み合わせて、$\mu_t$と$\sigma^2_{t+1}$を更新する。詳しくはDasの論文を読め。

 これを改善して... [以下、なんだかめんどくさくなっちゃったので略。数量を反映させ、取引履歴を一定の窓でモニタしてMMの信念の不確実性を変えていく、というような話だったような気が]
 シミュレーションすると... [パス]

5. 人間による実験。めんどくさくなって飛ばし読み。
6. エージェントによる実験。一行も読んでない。
7. 結論。BMMは優れてます。ただし、LMSRみたいに組み合わせ市場には拡張しにくい。またMMの損失は小さいけど有界ではない。すでにRPI Instructor Rating Marketsというところで運用実績がある。云々。

 ワクワクしながら読み始めたのだけど、途中で読む気を失くしてしまった。先行するZPマーケットメーカについて知っていないとお話にならない。Das(2005, Quantitative Finance), Das(2008, Proc.AAMAS), Das&Magdon-Ismail(2008, NIPS)というのを読むべきらしい。

論文:予測市場 - 読了:Brahma, et al. (2012) ベイジアン・マーケット・メーカ

2015年11月10日 (火)

 市場メカニズムがどうとかこうとか、最近すっかり消耗しちゃったので、気分転換に読んだ。計量心理系の話って、こうしてみると胸和みますね。お金とか出てこないし。

Asparouhov, T., Muthen, B. (2015) IRT in Mplus. Mplus Technical Notes.
 MplusのIRTモデルを定義するテクニカル・ノート。今週発表されたMplus 7.4のリリースノートで、IRT系新機能の参考文献として挙げられていたので、勉強のために目を通した次第。

項目特性曲線(ICC)
 Mplusは以下の4種類に対応する。以下、潜在クラス$C=k$、共変量$X=x$の下での潜在因子$f$のカテゴリカル指標を$U_i$とする。

 その1、ロジット・リンク、ML/MLR/MLF推定量。カテゴリ $j$が最初のカテゴリだったら
 $P_{ijk} (f) = P(U_i = j | f, C=k, X=x)$
 $= 1 / ( 1 + \exp(-\tau_{ijk} + \lambda_{ik} f +\beta_{ik} x ) )$
もし最後のカテゴリだったら、右辺が
 $1 - 1 / (1 + \exp(\tau_{i,j-1,k} + \lambda_{ik} f + \beta_{ik} x))$
にかわる。じゃあ真ん中のカテゴリだったら? さあ深呼吸!
 $1 / (1 + \exp(-\tau_{ijk} + \lambda_{ik} f + \beta_{ik} x ) - 1 / (1 + \exp(-\tau_{i,j-1,k} + \lambda_{ik} f + \beta_{ik} x ) )$
ですね。

 その2、プロビット・リンク、ML/MLR/MLF推定量。$\psi$を標準正規累積分布関数とします。最初のカテゴリは
 $P_{ijk}(f) = P(U_i = j | f, C=k, X=x)$
 $= \psi (\tau_{ijk} - \lambda_{ik} f - \beta_{ik} x)$
最後のカテゴリだったら右辺が
 $1 - \psi (\tau_{i,j-1,k} - \lambda_{ik} f - \beta_{ik} x)$
にかわり、真ん中のカテゴリだったら
 $\psi (\tau_{ijk} - \lambda_{ik} f - \beta_{ik} x) - \psi (\tau_{i,j-1,k} - \lambda_{ik} f - \beta_{ik} x) $
にかわる。

 その3、プロビット・リンク、WLS/WLSM/WLSMV/ULS推定量。潜在クラスじゃなくて群$G$を導入します。残差$\theta_{ik}$が登場する。カテゴリ$j$を最初のカテゴリとしよう。ICCは、
 $P_{ijk}(f) = P(U_i = j | f, G=k, X=x)$
 $ = \psi ( (\tau_{ijk} - \lambda_{ik} f - \beta_{ik} x) / \sqrt{\theta_{ik}})$
となる。最後のカテゴリだったら、真ん中のカテゴリだったら ... というのは上記と同じなので省略。
 このやりかたはさらに2つに分かれる。
 (1)theta パラメータ化。残差$\theta_{ik}$をパラメータとみる(どこかの群を1にする)。
 (2)delta パラメータ化。$\theta_{ik}$そのものじゃなくて
 $\theta_{ik} = \Delta^{-2}_{ik} - Var(\lambda_{ik} f)$
 とおいた$\Delta_{ik}$をパラメータとみる(どこかの群を1にする)。
 ま、どっちにしろ、Mplusは$\theta_{ik}$を出力する。

項目情報曲線(IIC)
 IICの定義は下式のとおり。
 $I_{ik} (f) = \sum_{r=1}^{l} \frac{({\partial P_{irk}} / {\partial f})^2}{P_{irk}}$
以下、話を簡単にするために、$Q_{i0k}=0, Q_{ilk} = 1$、それ以外の$j$について$Q_{ijk} = \sum_{r=1}^j P_{irk}$とします。

 MplusにおけるIIC $I_{ik} (f) $は、推定量を問わず、
 $\sum_{r=1}^{l} ( (Q_{irk}(1-Q_{irk}) - Q_{i,r-k,l} (1-Q_{i,r-k,l}))^2 ) / P_{irk}$
 になにかを掛けた奴になる。
 ロジット・リンクなら素直に$\lambda_{ik}^2$を掛ける。
 プロビット・リンクのML/MNL/MLR推定量の場合でも、ロジットで近似して、$3.29 \lambda_{ik}^2$を掛ける。$3.29$ってのは$\pi^2/3$から来ている[これ、昔納得した覚えがあるんだけど、全然おもいだせないや]。
 WLS/WLSM/WLSMV/ULS推定量の場合は $3.29 \frac{\lambda_{ik}^2}{\theta_{ik}}$ を掛ける。
 全情報関数は、$f$の分散を$\psi$として
 $I_k (f) = 1/\psi + \sum_i I_{ik} (f)$
 となる。そのSEはどうやって出すかというと...[略]。

IRTパラメータ化
 1因子・2値項目の場合、Mplusは伝統的なIRTの形でもパラメータを出力する。因子の平均を$\alpha$, 分散を$\psi$とする。因子$f$と、IRTでいう$\theta$(平均0, 分散1)との間には $f = \alpha + \sqrt{\psi} \theta$という関係がある。IRTでいう弁別力と困難度は
 $a_{ik} = \lambda_{ik} \sqrt{\psi}$
 $b_{ik} = (\tau_{ik} - \lambda_{ik} \alpha) / (\lambda_{ik} \sqrt{\psi})$
となる。ただし、WLS/WSLM/WLSMV/ULS推定量の場合は、thetaパラメータ化なら
 $a_{ik} = (\lambda_{ik} \sqrt{\psi}) / \sqrt{\theta_{ik}}$
deltaパラメータ化だと
 $a_{ik} = 1 / \sqrt{\Delta_{ik}^{-2} \lambda_{ik}^{-2} \psi^{-1} - 1}$
となる。[あれ?なんでだろう... ま、よっぽどヒマになったら考えよう]

 この辺から新機能の話だと思う。

Partial Credit Model
 $U$がカテゴリ数$m$の順序カテゴリカル変数、$X$がその予測子のベクトルだとしよう(潜在・観察は問わない)。Partial Credit Modelとは、
 $P (U = k | X) = \exp (\sum_{i=0}^{k} (\beta X - \tau_i)) / hogehoge$
というモデルで、めんどくさくなってhogehogeと書いたが、分母は全カテゴリを通した分子の合計である。識別のために最初の閾値は$\tau_0 = 0$とする。
 なにこれ多項回帰じゃん、と思った人[→はいはい!俺思った思った!]、あなたは正しい。ここまでに出てきたモデルとこのPCMモデルとの違いは、PCMでは対数オッズが$X$の線形関数になるという点である。ロジットがいいか、プロビットがいいか、PCMがいいか、決めたいときはBICを使いなさい。
 1因子のときには伝統的なIRTパラメータも出力する。[... 関心がなくなってきたのでこの項省略]

Guessingモデル(3PL), 上界漸近線ありのGuessingモデル(4PL)
 [うわー、3PLや4PLも推定できるんだ。すげー。でもたぶん一生使わないので省略]

 ... というわけで、よくよく考えてみたらMplus 7.4のIRT系新機能は私とはちょっと縁がなさそうなので、後半から飛ばし読みになってしまった。でも、まあ、なけなしの知識の再活性化ということで。
 それにしても、なぜIRTをもっときちんと勉強しておかなかったかなあ。短い間ではあったが、世界にも類を見ない巨大テスト・サービス機関(ほんとう)で、データ解析をやらせていただいてたのに。もったいないことをした、と悔やまれる。

論文:データ解析(2015-) - 読了:Asparouhov & Muthen (2015) Mplusで項目反応モデル

2015年11月 9日 (月)

 仕事の都合で大急ぎで読んだ奴。読了というのも憚られるが、いちおう記録しておこう。

Othman, A., Pennock, D.M., Reeves, D.M., Sandholm, T. (2013) A practical Liquidity-Sensitive Automated Market Maker. ACM Transaction on Economics and Computation (TEAC), 1(3), Article 14.
 予測市場におけるマッチング・メカニズムの一方の雄、Hansonの対数マーケット・スコアリング・ルール(LMSR)にケチをつけて改善する、という論文。第一著者はCMUの人で、Gates-Hillman予測市場という面白い研究をやった人。いまはAugurに関与しているんじゃないかな...

1. イントロダクション
 新しい自動マーケット・メーカ(MM)をご提案します。予測市場はもちろんのこと、天気の保険だろうがスポーツ賭けだろうがクレジット・スプレッドだろうが、とにかくペイオフが二値である(つまり、未来が有限の状態に分割されそのひとつが実現する)いかなる証券に対しても適切です。
 先行する提案にHansonのLMSRがある。LMSRでは流動性パラメータを事前に決める。この決め方が結構難しい。僕らもそこでしくじりました(Gates-Hillman予測市場のこと。Othman & Sandholm, 2010)。パラメータを下げ過ぎちゃうと取引のたびに価格が変動しすぎてしまう。LMSRではある固定されたbetに対する価格変動が定数なので余計問題である(普通の市場なら、人気のあるエクイティはスプレッドが小さくなり、大きなポジションをとっても価格はあまり動かない)。また、流動性は投資家には嬉しいけど、MMからみると最悪の場合の損失が大きくなる。
 本提案はLMSRの変種で、現金の流入が多いとき価格弾力性を下げる。また、LMSRでは銘柄を通した株価の合計を1ドルに固定するけど、本提案では1ドルより大きくしてMMの損失を抑える。さらにLMSRと同じくらい簡単。
 [ここ、大事だと思うので1パラグラフ全訳]

取引の増大とともにmarket depth[一単位の価格変動を引き起こすのに必要な取引サイズのことであろう]を増大させるのは、どんな場面でも適切だとはいえない。資産に制約のある投資家の市場で、世界の真の状態が頻繁に変動している場合について考えてみよう。この場面では、market depthが一定で浅いと、トレーダーたちは世界の真の状態に素早く到達できるようになる。これに対し、こうした場面で取引量とともにmarket depthを増やしてしまうと、価格は「粘着する」ようになり、正しい値に到達できなくなる。しかし、世界の真の状態が変動しているということは、我々の新しいマーケット・メーカにとっては必ずしも問題にはならない。もし取引している人々が資産の制約を受けていなかったら、価格は依然として変化し、想定される適切な値を反映するようになりうる。だから、新しい情報が生じない場面、情報が穏やかにしかあきらかにならない場面、取引機会が生じるのを「傍観者として」待っている資本が十分にある場面では、我々のマーケット・メーカは、LMSRにおける流動性パラメータを正しく選択するという必要を、不要なものにしてくれる。

2.価格ルール
 出来事の空間を$n$個の相互排他的な出来事に分割しよう。生じるのはどれか1個である。市場の状態をベクトル$q$で表す。$i$番目の要素は、$i$番目の出来事が生じた場合に投資家たちに払わないといけない支払額である。MMが提示する周辺価格[marginal price]は$q$の関数となる。$q$を価格ベクトルにマップする微分可能な関数を価格ルールと呼ぶ。
 価格ルールが持つべき特性として、convex pre-imageであることが挙げられる。convexityは、投資家が自分のポートフォリオの任意の部分を売り戻したとき、その残りにもなお値がつくことを保証する。 [すでにここで躓きつつあるが... まあいいや]

 さらに、価格ルールは以下の3つの特性を持つことが望ましい。

さて、この3つの性質をすべて満たすMMは存在しない。経路独立性と翻訳不変性の両方を満たすMMをHanson MMと呼ぼう。Hansonの文脈では流動性敏感性には到達できない[証明が書いてあるけど、理解できそうにないのでパス]。

3.我々のMMの紹介
 Hansonのルールをより実用的にしようとする提案としては、まず、取引に手数料を課す、というのがある。MMは儲けることが可能になる。でも流動性敏感にはならない。[この方向のもっとややこしい改善案についても批判している。パス]。
 流動性敏感性を確保するために翻訳不変性を緩和するという手もある。$q$の下での各出来事の価格の合計を1以上とする。ただし、投資家がMM相手に鞘取りできることになる[全銘柄を1枚売れば、価格1ドルが保証された株を1ドル以上で売りつけたことになる、という意味であろう]。これを防ぐためには、MMに契約空間を前進させればよい[←はぁ...?]。2つの方法がある。

どっちのスキーマがよいかは場合による。投資家があんまし賢くなかったら、買いがキャンセルできるという点で(2)のほうがよい。なお、HansonのMMならどちらを採用しても両方採用しなくてもコストは同じ。

 さて、ご存じLMSRは、
 コスト関数 $C(q) = b \log (\sum_i \exp(q_i / b))$
 価格 $p_i (q) = \exp(q_i/b) / ( \sum_j \exp(q_j /b))$
 でございます。MMの最悪の損失は$b \log n$です。

 お待たせしました、我々の提案です。
 コスト関数 $C(q) = b(q) \log (\sum_i \exp(q_i / b(q)))$
 流動性 $b(q) = \alpha \sum_i q_i, \ \ \ \alpha >0 $
 MMは契約空間を前進する(上記のNo sellingスキーマかCovered Short Sellingスキーマを採用する)。

4.我々のMMの性質
 まずは価格について。LMSRよりかなりややこしくなって、
 $p_i (q) = \alpha \log(\sum_j \exp(q_j/b(q))) + \frac{\sum_j q_j \exp(q_i/b(q)) - \sum_j q_j \exp(q_j / b(q))}{\sum_j q_j \sum_j \exp(q_j / b(q)) }$
他の銘柄の発行枚数が多いと、ある銘柄への投資に対する価格の変化は小さくなる。$q$の下での価格の合計は1にならないけど、厳しい制約がかかる[長くて面倒くさいのでパス]。
 このMMでは、$b$のかわりに$\alpha$をアプリオリに決めないといけない。$\alpha$はMMのコミッションに相当している。たいていのMMは2~20%くらいのコミッションをとっている。これを$v$として、$\alpha = v / (n \log n)$と置くとよい($n$は出来事の数)。なお、$\alpha$の増大に対してコスト関数は非減少である[証明略]。
 このMMの損失の範囲はどうなるか、利得の範囲はどうなるか...[略]
 このMMのコスト関数は一次の正の同次関数(homogeneous function)になっていて... これはつまり価格が比例尺度になっていると言うことで... [力尽きました。略]

5. 考察
 我々の提案する新しい自動MMは、LMSRの二つの限界を乗り越えている。(1)流動性水準$b$をマニュアルで設定しなければならず、変えられない。(2)MMは$b$に比例した損失を負うと期待される。
 我々の提案には翻訳可能性がない、つまり、価格と確率が対応しない。でも、価格は確率の範囲と対応している。たとえば$q = k1$のとき、その価格には$1/n-\alpha (n-1) \log n$から$1/n+\alpha(n-1) \log n$の範囲の確率が対応する。ふつう$\alpha$は小さいので、この幅は狭い。要するに、価格を価格合計で割って確率だと思えばいいんじゃないですか。[←結局そうなるのか]
 云々。

 ううう。私にはあまりに難解で、実質的に半分くらいしか読めてないんだけど、きりが無いので読了にしておく。
 要するに、LMSRの流動性パラメータ$b$を発行済株数の合計に比例させるというアイデアである。イントロのところで著者らも触れているけれど、「一株の取引での価格変化」が発行済株数の増大によって変わることと変わらないことには、それぞれ長所と短所があり、市場の所与の条件と目的によって決めるべきことだろうと思う次第である。そこんところを詳しく知りたいなあ。

論文:予測市場 - 読了:Othman, et al. (2013) LMSRマーケット・メーカの流動性を自動調整する

2015年11月 2日 (月)

かなり前に読んで、記録するのを忘れていたマンガ。

Bookcover たそがれたかこ(4) (KCデラックス BE LOVE) [a]
入江 喜和 / 講談社 / 2015-03-13

Bookcover 高台家の人々 1 (マーガレットコミックス) [a]
森本 梢子 / 集英社 / 2013-09-25
Bookcover 高台家の人々 2 (マーガレットコミックス) [a]
森本 梢子 / 集英社 / 2014-05-23
Bookcover 高台家の人々 3 (マーガレットコミックス) [a]
森本 梢子 / 集英社 / 2015-01-23
Bookcover 高台家の人々 4 (マーガレットコミックス) [a]
森本 梢子 / 集英社 / 2015-09-25

コミックス(2015-) - 読了:「たそがれたかこ」「高台家の人々」

Bookcover カルマンフィルタの基礎 [a]
足立修一,丸田一郎 / 東京電機大学出版局 / 2012-10-10
これもかなり前に読んで、記録していなかった本。単にめくっただけで、理解できていないような気もするが。

データ解析 - 読了:「カルマンフィルタの基礎」

 読んだ本をそのままため込んでいると記憶が薄れてしまう。これは少し前に読んだ本だけど、忘れないうちにメモしておこう。
Bookcover シネマの極道: 映画プロデューサー一代 (新潮文庫) [a]
日下部 五朗 / 新潮社 / 2015-10-28
往年の東映プロデューサーによる自伝。
 一番面白かったのは、東映任侠映画で一時代を画した大プロデューサー、俊藤浩滋についての人物評。ヤクザの世界に詳しいどころか、元はその筋であったといわれる人である。えーと、富司純子のお父さん、寺島しのぶのお祖父さんですね。

 わたしたちは職掌柄、やくざの親分さんのところへ挨拶や取材に出かけることが時折あるが、親分さんというのは人生訓話の好きな方が多い。ある日、俊藤さんと挨拶に伺った親分さんもおのれの人生訓を滔々と語って倦まなかった。わたしは御説ごもっとも拝聴しているだけだったが、ふと変な気配に気づいて横を見ると、俊藤さんが感極まって涙を流している。帰りの車の中でも、
 「日下部、おやっさんの話、ホンマええ話やったなあ!」
 まだ目を潤ませていた。わたしは吃驚したが、つまり、俊藤さんは本当の意味で庶民なのだ。だから、ある時期の俊藤プロデューサーは、庶民の期待する映画を何の衒いも躊躇いも気負いもなく、スッと差し出せたのだと思う。

この語り手・日下部五朗さんが、後に「仁義なき戦い」を制作し、俊藤浩滋と任侠映画の時代を終わらせることになる。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「シネマの極道」

2015年11月 1日 (日)

Bookcover 特攻――戦争と日本人 (中公新書) [a]
栗原 俊雄 / 中央公論新社 / 2015-08-24

Bookcover 昭和天皇―「理性の君主」の孤独 (中公新書) [a]
古川 隆久 / 中央公論新社 / 2011-04

日本近現代史 - 読了:「特攻 戦争と日本人」「昭和天皇 『理性の君主』の孤独」

Bookcover とにかくうちに帰ります (新潮文庫) [a]
津村 記久子 / 新潮社 / 2015-09-27
忙しさもピーク、しばらく布団で寝ていないという日に、客先への移動中にふらっと入った本屋で、書名に惹かれて買った本。ははは。面白い小説であった。

Bookcover 杳子・妻隠(つまごみ) (新潮文庫) [a]
古井 由吉 / 新潮社 / 1979-12

フィクション - 読了:「とにかくうちに帰ります」「杳子・妻隠」

Bookcover 安倍政権の裏の顔 「攻防 集団的自衛権」ドキュメント [a]
朝日新聞政治部取材班 / 講談社 / 2015-09-16

Bookcover 「中国共産党」論―習近平の野望と民主化のシナリオ (NHK出版新書 468) [a]
天児 慧 / NHK出版 / 2015-09-09

Bookcover チャイルド・プア~社会を蝕む子どもの貧困~ [a]
新井直之(NHKディレクター) / ティー・オーエンタテインメント / 2014-03-15

Bookcover 仁義なき宅配: ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン [a]
横田 増生 / 小学館 / 2015-09-02

Bookcover 岩波科学ライブラリー ハトはなぜ首を振って歩くのか [a]
藤田 祐樹 / 岩波書店 / 2015-04-18

ノンフィクション(2011-) - 読了:「安倍政権の裏の顔」「『中国共産党』論」「チャイルド・プア」「仁義なき宅配」「ハトはなぜ首を振って歩くのか」

Bookcover 集合知とは何か - ネット時代の「知」のゆくえ (中公新書) [a]
西垣 通 / 中央公論新社 / 2013-02-22
残念、この本は内容がうまく頭に入らなかった。このような、わざわざ「柔らかく」書いている文章は、かえって苦手なのかもしれない。著者の別の本を読もう。

Bookcover 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書) [a]
エマニュエル・トッド / 文藝春秋 / 2015-05-20

Bookcover 「個人主義」大国イラン: 群れない社会の社交的なひとびと (平凡社新書) [a]
岩崎 葉子 / 平凡社 / 2015-09-17

Bookcover イスラーム圏で働く――暮らしとビジネスのヒント (岩波新書) [a]
/ 岩波書店 / 2015-09-19

ノンフィクション(2011-) - 読了:「イスラーム圏で働く」「『個人主義』大国イラン」「『ドイツ帝国』が世界を破滅させる」「集合知とはなにか」

Bookcover 督促OL 奮闘日記 ちょっとためになるお金の話 (文春文庫 え 14-2) [a]
榎本 まみ / 文藝春秋 / 2015-10-09

Bookcover 山口組動乱!! 日本最大の暴力団ドキュメント 2008~2015 (講談社+α文庫) [a]
溝口 敦 / 講談社 / 2015-10-21

Bookcover 財務省と政治 - 「最強官庁」の虚像と実像 (中公新書 2338) [a]
清水 真人 / 中央公論新社 / 2015-09-24

Bookcover ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書) [a]
石田 勇治 / 講談社 / 2015-06-18

Bookcover 生身の暴力論 (講談社現代新書) [a]
久田 将義 / 講談社 / 2015-09-17

Bookcover ファシズム (岩波現代文庫) [a]
山口 定 / 岩波書店 / 2006-03-16

ノンフィクション(2011-) - 読了:「ファシズム」「財務省と政治」「山口組動乱」「督促OL奮闘日記」「ヒトラーとナチ・ドイツ」「生身の暴力論」

Bookcover 私を連れて逃げて、お願い。2 (ビームコミックス) [a]
松田 洋子 / KADOKAWA/エンターブレイン / 2015-08-24

Bookcover わたしの日々 (ビッグコミックススペシャル) [a]
水木 しげる / 小学館 / 2015-07-30

Bookcover たそがれたかこ(5) (KCデラックス BE LOVE) [a]
入江 喜和 / 講談社 / 2015-07-13

Bookcover あとかたの街(4) (KCデラックス BE LOVE) [a]
おざわ ゆき / 講談社 / 2015-07-27

コミックス(2015-) - 読了:「私を連れて逃げて、お願い。」「わたしの日々」「たそがれたかこ」「あとかたの街」

Bookcover リューシカ・リューシカ(10)(完) (ガンガンコミックスONLINE) [a]
安倍 吉俊 / スクウェア・エニックス / 2015-08-22
幼年期の視点からみた世界の不思議をオールカラーでコミカルに描くシリーズ、完結巻。このマンガ、運悪くあずまきよひこ「よつばと!」と重なったせいで、かなり損をしたのではないかと思う。お疲れさまでした。

Bookcover 天国ニョーボ 1 (ビッグコミックス) [a]
須賀原 洋行 / 小学館 / 2015-08-28
著者デビュー以来この著者のマンガの主役でありつづけた、亡くなった奥様を主人公に描くギャグマンガ。ううむ...

Bookcover 甘々と稲妻(5) (アフタヌーンKC) [a]
雨隠 ギド / 講談社 / 2015-09-07

Bookcover ヒナまつり 9 (ビームコミックス) [a]
大武政夫 / KADOKAWA/エンターブレイン / 2015-09-14

Bookcover プリニウス3(バンチコミックス45プレミアム) [a]
ヤマザキマリ,とり・みき / 新潮社 / 2015-09-09

Bookcover ギフト±(1) (ニチブンコミックス) [a]
ナガテ ユカ / 日本文芸社 / 2015-07-18

コミックス(2015-) - 読了:「リューシカ・リューシカ」「天国ニョーボ」「甘々と稲妻」「ヒナまつり」「プリニウス」「ギフト±」

Bookcover ちおちゃんの通学路 (3) (MFコミックス フラッパーシリーズ) [a]
川崎 直孝 / KADOKAWA/メディアファクトリー / 2015-09-19

Bookcover 深夜食堂 15 (ビッグコミックススペシャル) [a]
安倍 夜郎 / 小学館 / 2015-09-30

Bookcover 娘の家出 3 (ヤングジャンプコミックス) [a]
志村 貴子 / 集英社 / 2015-08-19

Bookcover 猫の草子 (ビームコミックス) [a]
近藤 ようこ / KADOKAWA/エンターブレイン / 2015-08-24

Bookcover 87CLOCKERS 7 (ヤングジャンプコミックス) [a]
二ノ宮 知子 / 集英社 / 2015-08-19

Bookcover 富士山さんは思春期(7) (アクションコミックス) [a]
オジロマコト / 双葉社 / 2015-08-28

Bookcover あさひなぐ 16 (ビッグコミックス) [a]
こざき 亜衣 / 小学館 / 2015-08-28

コミックス(2015-) - 読了:「ちおちゃんの通学路」「深夜食堂」「娘の家出」「猫の草子」「87CLOCKERS」「富士山さんは思春期」「あさひなぐ」

Bookcover ハナヨメ未満(1) (KCx) [a]
ウラモト ユウコ / 講談社 / 2015-09-07
こういっちゃ失礼だけど、これが意外な拾い物であった。婚約者の実家の不幸を聞いてはじめて瀬戸内海の島に訪れた娘を、島の人々が「手放すまい」と画策し、帰宅をあれこれと妨害する。冒頭のこのくだり、木下恵介みたいだなあ。

Bookcover コトノバドライブ(2) (アフタヌーンKC) [a]
芦奈野 ひとし / 講談社 / 2015-09-23

Bookcover 一杯の珈琲から シリーズ小さな喫茶店 (ビームコミックス) [a]
山川 直人 / KADOKAWA/エンターブレイン / 2015-09-26

Bookcover 3月のライオン 11 (ジェッツコミックス) [a]
羽海野チカ / 白泉社 / 2015-09-25

Bookcover スティーブ・ジョブズ(4) (KCデラックス Kiss) [a]
ヤマザキ マリ / 講談社 / 2015-09-11

Bookcover そうは言うけど あかりさんちの実験婚 1 (ゼノンコミックス) [a]
本庄みのり / 徳間書店 / 2015-07-18

コミックス(2015-) - 読了:「ハナヨメ未満」「コトノバドライブ」「一杯の珈琲から」「3月のライオン」「スティーブ・ジョブズ」「そうは言うけど」

Bookcover 犬神姫にくちづけ 6巻 (ビームコミックス) [a]
宮田 紘次 / KADOKAWA/エンターブレイン / 2015-09-14
シリーズ最終巻。ごくごくたわいないコメディだけど、生き生きした絵柄に魅力があって、最後まで読み続けた。
 デビューして間もないころだと思うのだけど、この漫画家さんが音楽を題材にした連作を描いていて(「ききみみ図鑑」)、才がほとばしる作風というのだろうか、すごく魅力的ではあるけれど、読者はマンガ好きにとどまるんじゃないかな、と思った覚えがある。その後はじまったこの連載(おそらく著者としては最長期連載)は、筋立てが思い切りわかりやすくなっており、より幅広い読書層を目指して悪戦苦闘しているんだろうな、と想像していた。
 先々週、急逝された由。34歳だったそうだ。

Bookcover おひとりさま出産 2 (集英社クリエイティブコミックス) [a]
七尾 ゆず / 集英社クリエイティブ / 2015-09-25

Bookcover 忘却のサチコ 1 (ビッグコミックス) [a]
阿部 潤 / 小学館 / 2014-12-26

Bookcover ふつつか者の兄ですが(1) (モーニング KC) [a]
日暮 キノコ / 講談社 / 2015-09-23

Bookcover 秋津 2巻 (ビームコミックス) [a]
室井 大資 / KADOKAWA/エンターブレイン / 2015-10-15

Bookcover 孤独のグルメ2 [a]
久住 昌之 / 扶桑社 / 2015-09-27

コミックス(2015-) - 読了:「犬神姫にくちづけ」「おひとりさま出産」「忘却のサチコ」「ふつつか者の兄ですが」「孤独のグルメ2」「秋津」

Bookcover ドロヘドロ 20 (BIC COMICS IKKI) [a]
林田 球 / 小学館 / 2015-09-30
こみいった設定のダーク・ファンタジー。もはや筋は全く理解不能になっているのだけれど、奇想天外な絵柄が楽しみで読んでいる。20巻ですか...

Bookcover 独身OLのすべて(3) (KCデラックス モーニング) [a]
まずりん / 講談社 / 2015-09-23

Bookcover 敗戦悲劇 [a]
のぞゑのぶひさ / 太田出版 / 2015-08-04

Bookcover 三代目薬屋久兵衛 2 (フィールコミックス) [a]
ねむ ようこ / 祥伝社 / 2015-09-08

Bookcover スズキさんはただ静かに暮らしたい 2 (ゼノンコミックス) [a]
佐藤洋寿 / 徳間書店 / 2015-09-19

コミックス(2015-) - 読了:「独身OLのすべて」「ドロヘドロ」「敗戦悲劇」「三代目薬屋久兵衛」「スズキさんはただ静かに暮らしたい」

Bookcover 恋は雨上がりのように 3 (ビッグコミックス) [a]
眉月 じゅん / 小学館 / 2015-09-11
ごくごく平凡な中年男に、クールで美しい女子高生が突然恋しちゃったらなにがどうなるか。手のひらで転がされていることはわかっているのですが、いま一番気になるマンガのひとつです。

Bookcover あたしンち 21 [a]
けら えいこ / KADOKAWA/メディアファクトリー / 2015-10-02

Bookcover 重版出来! 6 (ビッグコミックス) [a]
松田 奈緒子 / 小学館 / 2015-10-09

Bookcover ブルーサーマル-青凪大学体育会航空部- 1 (BUNCH COMICS) [a]
小沢 かな / 新潮社 / 2015-09-09

Bookcover 火の鳥(1) (手塚治虫文庫全集) [a]
手塚 治虫 / 講談社 / 2011-10-12
Bookcover 火の鳥(2) (手塚治虫文庫全集) [a]
手塚 治虫 / 講談社 / 2011-10-12
Bookcover 火の鳥(3) (手塚治虫文庫全集) [a]
手塚 治虫 / 講談社 / 2011-11-11
突然に手塚再読ブームがやってきた... 面白すぎて仕事が手につかないので、ただいま中断中。

コミックス(2015-) - 読了:「あたしンち」「重版出来」「火の鳥」「恋は雨上がりのように」「ブルーサーマル」

記録をつけるのをずいぶんさぼっていて、既読本が溜まってしまった。こうしてみると、ほんとに、最近はマンガしか読んでない...

Bookcover なぎさにて 1 (ビッグコミックス) [a]
新井 英樹 / 小学館 / 2015-09-30
きわめて男臭いというか泥臭いというか、そういう独特の作風の作家なのに、この最新作の表紙の主人公はいま主流の萌え系少女に見まがうばかり。どうなさったんですか、と驚いたが、中身は破滅に瀕した人間の自由と希望について中年男が沈思黙考する話であった。そうこなくっちゃ。

Bookcover めしばな刑事タチバナ 19 (トクマコミックス) [a]
坂戸佐兵衛,旅井とり / 徳間書店 / 2015-10-30

Bookcover Sunny 6 (IKKI COMIX) [a]
松本 大洋 / 小学館 / 2015-10-30

Bookcover イノサン Rouge ルージュ 1 (ヤングジャンプコミックス) [a]
坂本 眞一 / 集英社 / 2015-10-19

Bookcover 五大湖フルバースト 大相撲SF超伝奇 下 (シリウスKC) [a]
西野 マルタ / 講談社 / 2012-02-09

Bookcover 五大湖フルバースト 大相撲SF超伝奇 上 (シリウスKC) [a]
西野 マルタ / 講談社 / 2012-02-09

Bookcover 僕らはみんな河合荘 7巻 (コミック(YKコミックス)) [a]
宮原るり / 少年画報社 / 2015-09-30

コミックス(2015-) - 読了:「めしばな刑事タチバナ」「Sunny」「なぎさにて」「イノサン Rouge」「五大湖フルバースト」「僕らはみんな河合荘」

« 2015年10月 | メイン | 2015年12月 »

rebuilt: 2020年11月16日 22:41
validate this page