2019年7月31日 (水)
仕事の関連の資料を読んでいるとき、「アリストテレスいわく」なんていう風に、教養に属するであろう人名がぽろっと出現されたりすると、うんうん知っているよアリストテレスね、と知ったかぶりしながら読み進めつつ、心の奥では泣いていたりするのです。どうせ俺には教養がないよ、と。
特に嫌なのは経済学者の名前が出てくるときである。なんというか、当該分野の方々は、経済学における古典的業績を現代人が持つべき一般常識と捉える傾向がありませんか? 「ケインズいわく」とか「シュンペーターによれば」とか、気軽に云い過ぎじゃありません?
聞くところによれば、著名作家の北方謙三さんは人間ができていて、インタビューを受ける際、多くの小説家はインタビュアーが自分の作品をすでに読んでいることを当然の礼儀と捉えるのに対し、北方さんはむしろ知らないことを前提として丁寧に説明して下さるのだそうだ。人間こうでなくてはいけない。いきなり「ケインズいわく」と書かず、「えー、もしかするとご存知かも、あるいはそうでないかもしれませんが、私が研究しております経済学の分野に、かつてケインズと申しますつまらない者がおりまして」と丁寧に前置きしてほしいものだ。謙虚なのがいちばんです。心理学者をごらんなさい、「ウィリアム・ジェームスいわく」と大上段に述べる際には、脚注に「すいません私は読んでませんけど」って付け加えますよ? (そんなことはない)
...それはともかく、このたびちょっといきさつがあって読んでみた論文。
どういう雑誌なのかわからないけど(CiNiiによれば大学図書館の所蔵館は10)、Google Scholar様的には引用頻度69、そんなに変なのではなかろう。
Pech, W., Milan, M. (2009) Behavioral economics and the economics of Keynes. The Journal of Socio-Economics. 38, 891-902.
いわく、
ケインズは、意思決定において心理的要因が重要であること、彼の経済学的分析には心理的要因が埋め込まれていることを常に強調していた。「確率論」をみよ、「一般理論」をみよ。
このことは前から有名で、アカロフいわく、行動マクロ経済学のルーツはケインズにある。しかし、ケインズの著作と心理学との関係に焦点を当てた論文はみあたらない。その理由はいろいろありそうだが、ケインズの書き方があいまいだったという点もそのひとつだろう。
まず、ケインズの考え方についての解釈と論争について簡単に述べよう。
そもそもケインズの業績をどう解釈するかは常に論争の的である。ケインズ理論を個人の心理学的次元を強調したものとして解釈することにも、当然ながら反論がある。
- ケインズ理論が個人に立脚しているという読み方はなるほど可能である(ケインズの著作には細かい方法論的議論がない)。Carabelli(2003)いわく、ケインズにとって経済学の対象とはエージェントの信念・意見であった。しかし、経済という累積的な行動についての問いの中には、個人の行動の総和へと還元できないものもあるでしょう? ... ごもっともだが、本論文はケインズの業績のなかに個人の行動についての重要な洞察があるのだという分析の第一歩なので、以下ではCarabelliらの立場をとる。
- ケインズによれば、不確実性下のもとでエージェントは行為のガイドとして慣習(convention) を用いる。慣習は不確実性に対する個人の対処をうまく助ける限りにおいて合理的であるとみなされる。ここでいう慣習には、個人の期待を構造化するなにかから、個人のrules of the thumb、信念の収束へと導く集合的rule of the thumbに至るまで、さまざまなものが含まれてしまっている。だから、慣習行動の合理性を擁護するにはさまざまな議論が必要である。[←これが反論になっている理由がいまいちつかめない... 知識不足で文意をとれていないのだと思う]
これも大事な指摘ではあるのだけれど、本論文では個人の行為の記述に焦点を当て、合理性とはなにかという議論には深入りしない。そもそも合理性という概念は経済学においてもいろいろな意味で用いられている。Baddeleyいわく[←心理学のAlan Baddeleyとは別人]、合理性には新古典派経済学でいう合理性(実質的合理性)と実世界で個人が用いる合理性(手続き的合理性)がある。オーソドックスな立場では、合理性という仮定のもとで経済学は心理学から独立すると考えられているけれど、そこでいう合理性とは前者。いっぽう、ケインズが投資における主観的要因を強調したり慣習行動の役割を論じたりするときの合理性は後者だ。この論文では、以下で「合理性」といったら実質的合理性のことである。 - 個人の行動についてのケインズの業績において、心理学が重要であることがあきらかだとは言えないのではないか? ... この反論に対して、以下では次の方法で応えたい。(A)ケインズの著作における心理・行動の問題についてケインズ派の人々がどのようにコメントしているかをみていく。(B)ケインズの著作における心理学的主張について注釈する。(C)ケインズの業績と行動経済学・実験経済学の知見を比べる。
(A) ケインズ派の人々のコメント。[...誰それがどういっているという話。パス]
(B) ケインズの著作について。[... ケインズの本に心理的要因についてのこういうくだりがあるという話。パス]
さて、ここからが本題。(C) 行動経済学における重要概念とケインズとの対応について述べる。
重要概念その1、ヒューリスティクス。
主流派経済学は方法論的な個人主義を採用し、効用関数最大化という観点からの合理的選択を仮定する。そこには認知的制約や自己制御問題や社会的選好が含まれない。その意味で経済学は心理学と独立している。いっぽう、
- 個人の行動のもっと現実的なモデルが必要だという異教徒もいた。
- 50-60年代には合理性の厳密な定義に対する挑戦が現れた。Ellsbergのパラドクスとか[えーと、期待効用理論でいう独立性公理からの逸脱ね]、Allaisのパラドクスとか[確率加重関数が必要だという話だっけ?]。H. Simonの限定合理性というのはこの流れ。
- そしてご存知、Tversky-Kahnemanに代表される「ヒューリスティクスとバイアス」アプローチが登場した。
有名なヒューリスティクスとして以下がある。[00年代のKahnemanさんはヒューリスティクスの列挙をやめて、属性代用による統一的説明を行うんだけど、その話はなしっすか、先生]
- 代表性。つまり、事象の尤度をその事象の(あるクラスの事象における)代表性で判断してしまうこと。その結果、ベースレート無視、サンプルサイズ無視、ランダム性についての誤解、平均への回帰への誤解などのバイアスが生まれる。
- 利用可能性。事象の確率を事例の思い浮かべやすさで判断してしまうこと。
- アンカリングと調整。[メモ省略するけど、アリエリーの社会保障番号をアンカーに使った実験が紹介されている]
さて。ケインズは「一般理論」の中で、人々は問題を解決するために「有用な心的習慣」を使うと述べている。ケインズが挙げている事例は利用可能性やアンカリング・ヒューリスティクスとして解釈できる。また晩年の著作には、進化心理学でいう再認ヒューリスティクスにあたる指摘もある。
重要概念その2、慣習。
ケインズは彼の言う慣習的行動をある種のヒューリスティクスとして捉えていた。すなわち、「未来は現在に似ている」「未来についての予測は現在の価格と数量を反映する」「他者が慣習に従うならば個々人はこうした判断・予測に頼ることができる」というヒューリスティクスである。
行動経済学・心理学はこういう慣習の形成について個人の意思決定と戦略的相互作用の両面から研究していた。
- フォーカル・ポイント。プレイヤーのinterestが一致しているせいでプレイヤーから見てどの均衡に到達しようが到達しさえすれば無差別になっているようなゲームのことを純粋協調ゲームという。この場合、古典的ゲーム理論ではどの均衡に到達するかを予測できない。シェリングは、人々の他者についてのなんらかの期待のせいで、均衡のうちあるひとつに到達しやすくなる(よって協調の失敗が起きにくくなる)と考えた。これをフォーカルポイントという。ケインズにおいては、現在の市場の価格と数量によって表現された平均的な意見・判断が、投資決定という協調問題の解を導くフォーカル・ポイントとなっている。
- 順応性。他者の意見のコピーによる慣習形成という問題は古くから社会心理学のテーマだった。心理学では順応性を情報的順応性(知識が欠けているときに他者を模倣すること)と規範的順応性にわけて考える。ケインズは不確実な状況下での慣習形成のひとつとして他者への順応を挙げているが、これは情報的順応性についての指摘であると解釈できる。[...中略...]
- 美人投票。[ここ、関心があるので細かくメモ]
ケインズは、株式市場におけるプロの投資家の行動について記述する際、美人投票というたとえを使った。[...「一般理論」からの引用...] このくだりでケインズは、人々が3水準以上の推論に到達することもなくはないと、おそらくは皮肉を交えて述べている[誰が美人だと思うかが水準1, みんなは誰が美人だと思うかが水準2, 「みんなは誰が美人だと思うか」という問いに対してみんなはどう思うかが水準3... ということであろう]。人々は実際にこうした多数のレベルの反復を行うか? [...] 実証研究によれば答えはノーだ。[...p-美人投票ゲームの説明...] この実験によって、被験者がいくつのレベルの反復を行っているかを調べることができる。[...理屈の説明...] p-美人投票ゲームの実験結果によれば、被験者の多くは1から3ステップの反復を体系的に用いている。 [ナッシュ均衡解である] 0 を選ぶ人は非常に少ない。第一ラウンドにおいては、pがなんであれ50%がフォーカル・ポイントになるようである。繰り返すと平均は下がっていくが、0にはならない。
他の参加者も限定的推論しかしないという仮定の下では、「0」はむしろ悪い回答になる。Camererいわく「秘訣は平均的なプレイヤーよりも1ステップだけ多く推論すること」である。これぞケインズの言う「合理的な投機」、つまり、他者の非合理な行動を合理的に予測することである。しかし、合理的投機者が多数存在するとはいえないようだ。p-美人投票ゲームの成績は、CEO, 経済学のPh.D, ポートフォリオ・マネージャーであっても、普通の学生と変わらない。このことは、いわゆる「専門家」であっても必ずしも「合理的投機者」ではないということを示唆している。美人投票に類比できるような状況で、誰が勝つかは推論ではなく、むしろ偶然によって決まっているようだ。
重要概念その3、アニマル・スピリット。すなわち、「行動しないことよりも行動することを選ぶ自発的衝動」。ケインズによれば、投資行動を理解するために決定的に重要な概念である。
ケインズ自身はアニマル・スピリットをもたらす要因について分析していないが... [以下、overconfidence, 非現実的楽観性、現状維持バイアス、曖昧性回避について、心理学・行動経済学からのの知見を紹介。メモ省略]
重要概念その4、価格硬直性。[名目賃金の下方硬直性については貨幣錯覚による説明と社会的選好による説明があって...云々。これもめんどくさいからメモは省略するけど、意外に面白そうな話だなあ]
重要概念その5、期待。
ケインズは期待の役割についてきちんとした枠組みを提供していない。ケインズ含め、経済学者はふつう期待をスタティックに捉えてきた。例外はカトーナで... [消費者態度指数に至る研究の紹介。とはいえうまくいったのはマクロ経済的な予測で、個人の行動の予測はうまくいっていない]。
従来の経済学的期待のダイナミクスの説明において心理学のインパクトはきわめて小さい(行動経済学を含めて)。楽観・悲観の波についてのケインズ的見解を完全に理解するには、感情状態と期待形成の関係についてのより完全な研究が必要となろう。
重要概念その5、限界消費性向。
ケインズは、現在の行動研究で幅広く取り上げられており、限界消費性向に重要な影響を与えているはずの2つの要因を考慮していない。すなわち、顕示的消費と双曲割引である[...以下略]。
というわけで、個人の行動についてのケインズの理論は、大筋で行動経済学・実験経済学と整合している。云々。
... 大変つまらない感想で誠に恐縮ですが、この論文の後半のようなスタイル(ケインズの著書をひっくり返して行動経済学に通じる主張を見つけていくスタイル)であれば、行動経済学者アダム・スミスはもとより、行動経済学者マルクス、行動経済学者トマス・アクィナス、行動経済学者ブッダ、なんていうのも書けちゃったりしないんでしょうか... そんなことありませんよね、すいませんすいません。
まあとにかく勉強になりましたです。p-美人投票ゲームの実験研究、きちんと勉強しよう。(Lacombらのアイデア市場のように)ペイオフが外的に決定されていないタイプの予測市場がどういうときにワークするのかという問題を考える際に役立ちそうだし、いま取り組んでいるcitizen/consumer forecastingの個人差とも関係しているかもしれない。ううむ、勉強しないといけないことが多すぎる。
経済学の素養はからきしないけど、ケインズ君にはなんとなく親しみが湧くようになった。もはやマブダチといってもよかろう。これからはジョンと呼ぼう。ようジョン、美人の奥さんを大事にしなよ。
論文:その他 - 読了:Peck & Milan (2009) 行動経済学者ケインズ
2019年7月19日 (金)
Jin, Y., Wang, Sun, Y., Chan, D., Koehler, J. (2017) Bayesian Methods for Media Mix Modeling with Carryover and Shape Effects. Working Paper, Google.
仕事の都合で読んだ奴。
泣く子も黙る超巨大最先端企業Google様におかれましては、Google AIというサイトでマーケティング・ミックス・モデリングについてのいくつかのWorking Paperをご発表になられ遊ばされていらっしゃる。目を通してみたんだけど、その内容は意外にもオーソドックスな感じだ。AIとは...。
タイトルそのまま、繰越効果と形状効果を組み込んだMMMモデルをベイズ推定しますという論文である。形状効果(shape effect)というのは、広告-売上関係が曲線的だということ(Tellis(2006)が引用されている)。
1. イントロダクション
[たいしたこと書いてないので省略]
2. モデル
まず繰越効果の表現から。週$t$におけるメディア$m$の支出を$x[t,m]$とする[原文では$x_{t,m}$だが読みにくいので表記を変える]。$w_m$を非負の重み関数として
$\displaystyle adstock(x[t-L+1,m],\ldots,x[t,m];w_m, L) = \frac{\sum_{l=0}^{L-1} w_m(l) x[t-l,m]}{\sum_{l=l}^{L-1} w_m(l)}$
[単なる$L$次直接ラグモデルである。係数を表す関数$w_m(l)$は、いまのところなにも制約してないけど、実際の係数は$L$個の合計が1になるようにするわけね。つまり売上への効果を表す係数は別に設けるわけだ]
簡便のため$L$は全メディアで13とする。[これは実データを見て決めた由。とはいえ、特定のデータのためのモデルってわけでもないわけで、これはつまり、このモデルは3ヶ月を超える長期繰越は考慮しませんという宣言であるといえよう]
$w_m$としてはいろんな関数が使える。
- 幾何減衰
$w^g_m(l; \alpha_m) = \alpha^l_m$
ただし$0 < \alpha_m < 1$。[えーと、要はKoyckモデルだ] - 遅延をいれて
$w^d_m(l; \alpha_m, \theta_m) = \alpha^{{(l-\theta_m)}^2}_m$
ただし$0 < \alpha_m < 1, 0 \leq \theta_m \leq L-1$。$N(\theta_m, -1(2 \log \alpha_m))$と比例する。放射カーネル基底関数ともいう。 - 負の二項分布関数[HPS本が引用されている]。
次に形状効果の表現。薬学で使われているHill関数というのを使う。
$\displaystyle Hill(x[t,m]; K_m, S_m) = \frac{1}{1+\left( \frac{x[t,m]}{K_m} \right)^{-S_m}}$
$S_m > 0$を傾きと呼ぶ。$K_m > 0$は半飽和点、つまり$Hill(K_m) = 1/2$となる点である。
メディアごとの係数$b_m$を掛けて
$\beta_m Hill_m(x[t,m]) = \beta_m - \frac{K^{S_m}_m \beta_m}{x[t,m]^{S_m} + K^{S_m}_m}$
[ちょっと待て!待ちなさい!あんたたち話が早すぎ!添字を端折ると
$\frac{1}{1+\left( \frac{X}{K} \right)^{-S}} =\frac{1}{1+\left( \frac{K}{X} \right)^{S}} = \frac{X^S}{X^S + K^S} =\frac{(X^S + K^S) - K^S}{X^S + K^S} =1 - \frac{K^S}{X^S + K^S}$
ということですね?]
識別が難しいので$S=1$と固定してもよい。
他のアイデアとしては、ロジスティック関数とか、正規累積関数とか、単調回帰スプラインとかがありうる。
繰越効果と形状効果を同時に表す方法は2つある。
- まずメディア支出の時系列をadstockに変換して、次に形状の変換をする。各期のメディア支出がその累積に比べて比較的に小さい場合に向いている(形状効果は各期でははっきりしないが累積でははっきりするから)。
- まず形状の変換をして、次にadstockに変換する。メディア支出が特定の期に固まっている場合に向いている。
ここでは前者をとる。
簡便のため、シナジーは考えない。
というわけで、モデルは以下の通り。時点$t$における売上(ないし売上の対数)を$y[t]$, $c$番目の制御変数を$z[t,c]$として、
$x^{*}[t,m] = adstock(x[t+L+1, m] \ldots x[t,m]; w_m, L)$
$y[t] = \tau + \sum_{m=1}^M \beta_m Hill(x^{*}[t,m]; K_m, S_m) + \sum_c^C \gamma_c z[t,c] + \epsilon[t]$
$\epsilon[t]$はホワイトノイズ。
3. 推定
ベイズ推定です。
モデルのパラメータのベクトルを$\Phi$, 全てのメディア変数を$X$, すべての制御変数を$Z$、反応ベクトルを$y$とする[原文ではみな太字]。もしも最尤推定だったら、対数尤度$L(y|X, \Phi)$を最大にする$\Phi$を$\hat{\Phi}$にするところだが、ベイズ推定だから、事前分布$\pi(\Phi)$を考えて
$p(\Phi | y, X) \propto L(y | X, Z, \Phi) \pi(\Phi)$
とし、この事後分布の中央値だかなんだかを使う。事後分布は、共役分布を使うか、ないしGibbsサンプリングとかHMCとかで推定できる。
この研究では自前でGibbsサンプリングのコードを書いた。ついでにStanでも試したが、そっちのほうがすごく時間がかかった。
各パラメータの事前分布は ... [概要説明。面倒くさいので省略]
4. アトリビューション・メトリクスと最適メディアミックス
MMMモデルってのは、パラメータを推定できれば終わりってものでもない。ユーザは各チャネルの広告支出あたりリターン(ROAS)や周辺ROAS(mROAS)を知りたい。[線形モデルなら偏回帰係数がreturn/spendになるけど、ここでは非線形な関数をかましているから別途求める必要があるという話だろう]
以下では各チャネルの支出を独立に操作できると仮定する。
まず売上予測値の時系列を求める(対数変換してたら戻す)。次に、change periodを決めて(たとえば3か月前までの1年間とか)。その期間のあるチャネルの広告支出を0にしたときの売上予測値の時系列を求める。ふたつの時系列の差の合計を求め(change period以降についても合計する点に注意。だって繰越があるからね)、change periodの広告支出の合計で割る。これがROAS。
いっぽうmROASとは、現支出レベルに1を足した時の売上の増大。change periodの支出を(たとえば)1%増やして売上予測値の時系列を求め、売上予測値の時系列から引き、支出合計の1%で割る。[この1%という増分をどうするかで、結果が変わってくると思うんだけどな...]
予測値の時系列を求めかた。頻度主義的には、$\Phi$の最尤推定値をプラグインする。いっぽうベイジアン的には、$\Phi$の事後分布をプラグインしてROAS/mROASの事後分布を出す。$\Phi$の事後分布の統計量(中央値とか)をプラグインするのはお勧めしない。$\Phi$のなかにも相関があるからね。[細かいことだけど、ここもちょっとわからん。$\Phi$のなかの相関を問題にするなら、頻度主義のほうでもちょっと工夫するのが筋だろう。ベイジアン以前のKingらのアプローチだったら、ここは$\Phi$の最尤推定値とその共分散行列を推定し、多変量正規性を仮定してモンテカルロシミュレーションをやるところだと思う]
MMMモデルによるメディアミックス最適化について。
change period $(t_0, t_1)$の全メディア支出の予算を$C$とし、最適支出を$X^o = \{x_o[t,m], t_0 \leq t \leq t_1, 1 \leq m \leq M\}$とすると、問題は以下のように書ける。
maximize
$\sum_{t_0 \leq t \leq t_1+L+1} \hat{Y}[t](x[t-L+1,m], \ldots, x[t,m]; \Phi)$
subject to
$\sum_{t_0 \leq t \leq t_1} \sum_{1 \leq m \leq M} x[t,m] = C$
change periodが長かったりメディアの種類が多かったりする場合、数値的に解けなくなるので、フライトパターンを固定する。たとえば毎月均等に支出するとか、過去の支出時系列に比例させるとか。
ベイジアン的には、細かく言うと次の2つのアプローチがある。
- 目的関数を$\Phi$の事後標本を通じた売上予測の平均にする。$\Phi$のサンプルを$J$個とってきて
$(1/J) \sum_j \sum_{t_0 \leq t \leq t_1+L+1} \hat{Y}[t](x[t-L+1,m], \ldots, x[t,m]; \Phi_j)$
を最大化する。 - $\Phi$のあるサンプル$\Phi_j$について
$\sum_{t_0 \leq t \leq t_1+L+1} \hat{Y}[t](x[t-L+1,m], \ldots, x[t,m]; \Phi_j)$
を最大化し、得られた$X_j$をサンプルを通して平均する。
最適ミックスの推定が安定するのは前者なのだが、後者は最適ミックスの推定の分散がわかる、つまり予算配分のモデルをどのくらい信頼してよいのかがわかる。
5. シミュレートされたデータへの適用
架空データの分析例。2年間の週次データ。メディア支出3つと価格、計4本の時系列を生成し、ここからモデルに従って売上時系列を生成した [読み落としたのでなければ、たぶん撹乱項としてホワイトノイズを使っている。実際の市場反応分析では残差項はたいてい自己相関を持つわけで、ちょっとオプティミスティックなデータ生成である]。
で、モデルをあてはめてパラメータを推定。最後の12週を置いておいて、その前の1年をchange periodとする。
$\Phi$の事後分布からサンプルを取ってきて売上予測時系列、ROAS、mROASを求める。これを繰り返してROASとmROASの事後分布を求める。あらかじめ設定したHills曲線の形状によっては、かなりバイアスが出る。
最後にchange periodのなかの8週間に焦点をあて、2つのメディアについて最適配分を求める。各週の支出は一定とする[そうだろうな、やっぱしこのくらい制約しないと、最適配分問題は解けないだろうな]。2通りの予算について、最適支出の事後分布、ならびに支出-売上期待値の関数を図示する。
[ここのくだり、ベイジアン的なアプローチによるメディア支出最適化って難しいなあ、と考え込んだ。
図6a2には全予算0.5の下でのメディア1の最適支出の事後分布が示されているが、3つの峰を持っている。まず横軸0.2のあたりに峰があり(実はこれが真の最適解に近い)、横軸0のあたりにもっと高い峰がある。つまり、パラメータ推定値によっては、メディア1は捨ててメディア2に全てを投じるのが最適解となるわけだ。
なお、図6b2で示された売上期待値の関数をみたとき、支出0のあたりで売上期待値の事後分布の裾が上に伸びているかというと、これがそうでもない。おそらく「メディア2に全振りしろ」というのは、パラメータ推定値として(売上予測という観点から見て)悲観的な値がサンプリングされたときの最適解なのだと思う。
著者ら曰く、ここでは最適化解の事後分布の分散が大きい、こういうときには最適化解を信じてはいけない、とのこと]
6. 推定の正確性に対する標本サイズのインパクト
[前節と同じ生成モデルから生成したデータでシミュレーション。2年間データと60年間データを繰り返し生成し、パラメータの事後分布中央値の分布、ならびにHills曲線の形状の分布を調べる。実務的には2年間の週次データがあればまあ御の字だと思うんだけど(仮にもっとデータがあっても市場の変化が怖い)、シミュレーションの結果によれば、もう笑っちゃうくらいのバイアスがある。モデルや推定の細部について真剣に考えるのが馬鹿馬鹿しくなるくらい。切ないのう、切ないのう]
7. 事前分布の選択
2年間データでシミュレーション。
$\beta$の事前分布について。half normal(0,1), normal(0,1), uniform(0,3)を比べる。uniformは他の2つの間で大きく異なりバイアスが大きい[そりゃそうだろうな。なお、生成モデルにおける$\beta_m$の真値は順に0.8, 0.6, 0.3]。
Hills曲線のパラメータ$K$の事前分布は...[話がややこしそうなので読み飛ばした]
8. 実データへの適用とモデル選択
あるシャンプーのデータ、週次、2.5年間。変数は、{TV、雑誌、平面、youtube、検索}広告支出、容量あたり平均価格、ACVで重みづけた{配荷、プロモーション}、売上数量の対数。adstockを遅延つきにするかただの幾何減衰にするか、形状を$\beta Hills$にするか$S=1$と制約するか、で計4つのモデルを推定。制御変数は相関が強すぎるので、いったん配荷とプロモーションをそれぞれ価格に回帰させ、残差を使った。Stanで推定、$\hat{R}$で収束判定。BICは幾何減衰・制約ありで最小になった。
ROAS, mROASをみると... [省略するけど、4つのモデルの間で事後分布がかなり違う。辛いのう辛いのう]
BIC最小のモデルでTV支出割合の最適解の事後分布を得ると、支出割合0のあたりと1のあたりの2峰になった。支出割合を変えながら売上期待値の事後分布をみると、とにかく事後分布の分散が大きくて、支出割合をどうしようがたいして変わらない。こういうときは推定結果をあまり信じてはいけない。[おいおい]
形状パラメータについてみると...[読み飛ばした]
残差の自己相関について。パラメータのドローごとに計算して平均する[まじ? 面倒くさいなあ]。自己相関があんまり消えていない。モデルの誤指定の可能性がある。[おいおいおい]
9. 結論
フレキシブルなMMMモデルを紹介したが、ふつうのサンプルサイズだとバイアスが大きいわけで、でかいデータを持ってくるか適切な情報事前分布を使う必要がある。後者についていうと、同一カテゴリの複数ブランドのデータをつかて階層ベイズモデルを組むとか、地域別のデータを持ってきて階層ベイズモデルを組むとか。
云々。
... なんでWhite Paperなんだろうか、論文にするにはちょっと足りないのかな、などと思いながら読んでいたんだが、途中で腑に落ちた。これ、新規性を訴求する研究というより、むしろベイジアンMMMの丁寧な技術解説といった趣の文書でありました。
HPS本の範囲外に出るようなアイデアはなかったけど、Stanコードもついていて、実務的な意味で勉強になりましたです。
いくつか疑問点をメモしておく。
- 著者らも言及しているけど、残差の自己相関について。売上時系列の背後には複雑なメカニズムがあるから、どんな説明変数を使ったところで、残差時系列の自己相関は消えないんじゃなかろうか。この論文では撹乱項がホワイトノイズだと仮定しているけど、むしろ、残差を観察したうえで撹乱項に自己相関をいれたほうがいいのではなかろうか...
- 著者らによれば、メディアミックス最適解の事後分布の分散が大きいときには要注意とのこと。御説ごもっとも。しかし、データが十分であれば最適化解の事後分布は必ず単峰になり分散は小さくなるといえるだろうか? 仮にどのメディアも全く同じ関数を持っていたら、パラメータ推定量の分散がいかに小さくても、メディア支出配分の最適化解の事後分布はフラットになるはずですわね。そのときには意思決定者に「どっちに金を掛けても同じでっせ」という示唆を伝えたい。最適化解の事後分布の分散が大きかったらその結果を疑うという態度だと、本来得られるべき示唆が得られなくなるのではなかろうか。うーむ。
- ついでにメモしておくけど、そもそもの問題として、「メディア支出の最適化解とは売上期待値を最大化する解だ」ってのは自明なのだろうか。たとえばブランドの存続を重んじて、「どんなに運が悪くてもそれなりの売上を立てるには」というような、マキシミン的な基準でみた解を最適とするってのもありなのではないか...
論文:データ解析(2018-) - 読了: Jin, Wang, Sun, Chan, Koehler (2017) これが俺らのマーケティング・ミックス・モデル (lyric by Google AI)
2019年7月16日 (火)
Kawamoto, T., Aoki, T. (2019) Democratic classification of free-format survey responses with a network-based framework. Nature Machine Intelligence, 1, 322-327.
見つけた瞬間にがっくり膝から崩れ落ちた論文。この論文の提案手法、我々が開発した手法(これのpp.54-56)とすごく、ものすごーく似ているもので、感想は山ほど、ほんとに山ほどあるんだけど、とにかく内容のメモのみ記録しておく。
まずOA回答を求める。次に、他の回答者のOAをみせて類似性を訊く。で、回答のネットワークをつくる。ノードが回答で、エッジは類似しているという回答があったかなかった。これをクラスタリングする。ある回答がどのグループに落ちたかを目的変数にした分析ができる。
論文の順序と違うけど、先に分類手法の説明から。
回答数を$N$、グループ数を$q$とし、グループのラベルを$\sigma \in \{1, \ldots, q\}$とする。グループサイズを表す長さ$q$のベクトルを$\gamma$とする。ポジティブエッジによる$q \times q$の類似度(affinity)行列を$\omega^+$, ネガティブエッジによる$q \times q$の類似度行列を$\omega^-$とする。
以上のパラメータを持つランダム・グラフ・モデル(これを確率的ブロックモデルと呼ぶ)が生成モデル。ここからは事例生成の話。
それぞれのノードについて、まず$\gamma$に従ってグループにランダムに割り当てる。次に、すべてのノード間のペアについてエッジを生成する。たとえばふたつのノードがあって、所属グループが1と2だったら、その間にポジティブエッジがある確率は$\omega^{+}_{12}$, ネガティブエッジがある確率は$\omega^{-}_{12}$, つながらない確率は$1-\omega^{-}_{12}-\omega^{+}_{12}$である。エッジの生成がランダムに行われると考えている点に注意。実際のデータ生成は必ずしもそうでなくていいんだけど、そうであるほうがよい[対象者に誰のOAをみせるかはランダムに決まっているほうがよいという意味であろう]。
こうして隣接行列$A$が生成されると考える。
尤度関数はどうなるか。
[原文にはないけど勝手に補記する。ノード$i$の所属グループを$\sigma_i$と書く。ノード$i, j$の間にエッジがないときに1になる変数を$\delta_{A_{ij},0}$, ポジティブエッジがあるときに1になる変数を$\delta_{A_{ij}, +}$, ネガティブエッジがあるときに1になる変数を$\delta_{A_{ij}, -}$と書く。ノード$i, j$の間のノード状態$A_{ij}$の尤度関数は
$g(A_{ij} | \omega^{+}, \omega^{-}) = \left( 1-\omega^{+}_{\sigma_i \sigma_j}-\omega^{-}_{\sigma_i \sigma_j} \right)^{\delta_{A_{ij}, 0}} \left(\omega^{+}_{\sigma_i \sigma_j} \right)^{\delta_{A_{ij}, +}} \left(\omega^{-}_{\sigma_i \sigma_j} \right)^{\delta_{A_{ij}, -}}$
従って尤度関数は...]
$p(A, \sigma|\gamma, \omega^{+}, \omega^{-}) = \prod_{i=1}^{N} \gamma_{\sigma_i} \prod_{i < j} g(A_{ij} | \omega^{+}, \omega^{-})$
このモデルだと、あるグループの全てのノードは等価だと考えていることになるけど、実際には人気の高低があるだろう。そこでハブ構造を持たせる(これを次数調整確率ブロックモデルという)。
尤度関数はこうなる。ノード$i$から伸びているポジティブエッジの本数を$d^{+}_i$, ネガティブエッジの本数を$d^{-}_i$として
$g(A_{ij} | \omega^{+}, \omega^{-}) $
$= \left(1-d^{+}_i \omega^{+}_{\sigma_i \sigma_j} d^{-}_j - d^{+}_i \omega^{-}_{\sigma_i \sigma_j} d^{-}_i \right)^{\delta_{A_{ij}, 0}} $
$\times \left(d^{+}_i \omega^{+}_{\sigma_i \sigma_j} d^{-}_j \right)^{\delta_{A_{ij}, +}}$
$\times \left(d^{+}_i \omega^{-}_{\sigma_i \sigma_j} d^{-}_i \right)^{\delta_{A_{ij}}, -}$
と直せばよい。
この尤度関数を用いて、周辺事後分布$p(\sigma_i|A,\gamma, \omega^{+}, \omega^{-})$を求めれば$\sigma_i$が推定できる。モデルパラメータは周辺尤度$\sum_{\{\sigma_i\}} p(A, \{\sigma_i\}|\gamma, \omega^{+}, \omega^{-})$を最大化すればよろしい。我々はEMアルゴリズムで推定したが、別に他の方法でもよい。
この方法ではなくて、たとえばなんかの目的関数を最大化するような分割アルゴリズムであっても分類できるけど、この方法には利点が3つある。(1)分類の不確実性を、それぞれの回答がグループに落ちる確率として表現できる。(2)確率的ブロックモデルの性質は理論的によく知られていて、効率的なアルゴリズムがある。(3)任意の結合パターンを学習できる。たとえば、仮にネガティブエッジがdisassortativeな構造を持たなくても大丈夫。
なお、エッジがポジティブとネガティブのほかにあっても扱える(グループの同定が難しくなるかもしれないけど)。
本題に戻して...
適用例その1。2016 US大統領選の前にデータを集めた。まず "#NeverHillary or #NeverTrump?" と聴取しておいてから(これはネットワークを描くときには使わない)、その理由を聴いた。ネットワーク分類のalluvial図をみると [知らなかったけど、グループ数を増やしていった時の遷移図のこと]、支持をうまく分類している。
適用例その2、ある大学での教育学部[第二著者のご所属から拝察するに香川大教育学部かしらん]の卒業生に、あなたのキャリアは(Q1), それを選んだ理由(Q2)、学生時代のもっとも価値ある経験(Q3)を訊き、それぞれについて分析した。
ネガティブ・エッジはかならずしも非類似性ではなさそうだった[←そうそう、そうだろうなあ... 私のデータでも類似性判断への非反応は必ずしも非類似ではなかった]
Q1, Q2, Q3それぞれによる分類を比べると...[中略]
考察。
この手法は、たくさんの反応に対して扱いやすくスケーラブルなコーディングを提供する。予備調査をやってコーディングフレームを作るよりも簡単だしコードの見落としがない。NLPでもできるだろうけど領域知識が必要だ[実際に試したので付録をみよとのこと]。
さらに、この手法は統計的にprincipledであり、(主観でも客観でもなくて)民主的である。
今後の課題として... まず、対象者負荷とグループ同定のトレードオフ(スパースなほうが難しくなるから)。これはネットワーク理論では検出閾値の問題といわれている[へー。Decelle, et al. (2011 Phys.Rev.E), Moor (2017) というのが挙げられている]。
次に、他の回答者の回答を読むことによるバイアスの問題。しかし、対象者がwell-informedで他者の意見について深く考えるなら、他者の意見を読ませることはむしろ利点かも知れない。
云々。
論文:調査方法論 - 読了:Kawamoto & Aoki (2019) 自由記述の民主的分類
赤池弘次(1980) 統計的推論のパラダイムの変遷について. 統計数理研究所彙報, 27(1), p.5-12.
勉強のつもりで読んだ奴。
いわく、
統計理論における客観主義と主観主義のふたつの立場が、統計理論の発展にどう影響するかを概観する。
フィッシャーの枠組みは3段階からなる。
- (1)specification. 分布の形$f(\cdot|\theta)$を決める。
- (2)estimation. パラメータ推定値$\theta(x)$を得る。
- (3)test. $f(\cdot|\theta(x))$がデータに適合しているかどうかを検定する。だめなら(1)に戻る。よければ$f(\cdot|\theta(x))$が最終結果となる。
この図式は「すぐれた研究者の心理の動きにひとつの客観的な表現を与えようとしたものといえる」。研究者ににとって最も重要な仕事は$f(\cdot|\theta)$の範囲の決定で、ここに主観的要素がはいってくる。
フィッシャーは、先験確率(事前確率)を使って推論することによって生まれる恣意性を避けるために、尤度概念を基礎とした理論を展開した。たしかに、尤度は客観的に理解可能な確率概念(相対頻度の極限)に基づいている。しかし、$f(\cdot|\theta)$の想定には主観が入る。つまり、フィッシャーの理論だって主観を排しているわけではない。フィッシャー自身もこの点について慎重な立場を保っていた。
[対数尤度と熱力学的エントロピーの対応について...カイ二乗検定とは統計モデルのエントロピーの意味での適合度が想定する仮説の制約によってどれだけ下がるかを測っている... フィッシャーは情報量とエントロピーとの対応には気が付いていたが、平均対数尤度とエントロピー(の確率論的表現)との同一性に気が付いていなかった... それが奴の限界だった...云々。中略]
フィッシャーの枠組みでは、入力はデータ$x$で出力は$f(\cdot|\theta(x))$である。分布型は(3)において決まっている。つまり、(3)でやっている検定は、実は分布型の推定を含むより一般的な推定の実現に利用されている。検定はエントロピーの意味で最適な分布型を推定しようとしていると解釈できる。
このように、検定というのは本質的には推定である。フィッシャーはエントロピー概念を欠いていたので、検定と推定を併置してしまい、以後数十年間にわたる統計理論研究の停滞を引き起こすことになった。
さて。
たとえば、多くのパラメータをもつ複雑なモデルを実用化しようとすると、そのぶん標本サイズが足りなくなるので、最尤推定値を使うだけじゃなくて、尤度関数の形全体を推論のために使おうという話になる。
$\theta$が固定されてたらモデルの尤度は$f(x|\theta)$だけど、$\theta$について先験確率$p(\theta)$が与えられてたらその事後分布は
$p(\theta|x) = f(x|\theta) p(\theta) / p(x)$
ただし
$p(x) = \int f(x|\theta) p(\theta) d\theta$
である。ベイジアンの立場とは、「関心のある事象を表現するに必要な$\theta$を考え、その先験分布$p(\theta)$がデータ$x$によって事後分布$p(\theta|x)$に変換されるという形でデータ$x$の与える情報は利用されるべきだというにつきる」。
$\theta$に依存する量$h(\theta)$について、$x$の下での$h(\theta)$の期待値は
$E_x h(\theta) = \int h(\theta) p(\theta|x) d\theta$
だが、これは尤度関数$f(x|\theta)$の全体によって決まるわけで、最尤推定値$\theta(x)$しか使わないというのは尤度関数の局所的な情報しか使ってないことになる。つまり、もし適切な先験分布$p(\theta)$が手に入るんなら(ここが難しいわけだけど)、最尤法よりベイズ法のほうが優れているわけである。
[具体例... 中略]
問題は先験分布の決定である。
よくある説明は、先験分布$p(\theta)$は主観確率で$f(\cdot|\theta)$は客観確率だというものだ。で、このふたつの確率概念を客観確率に統一しようとするのが客観主義者、主観確率に統一しようとするのが主観主義者である。
[ここで主観主義者サベジを批判、ならびに客観主義者も批判。面白いんだけど中略。イアン・ハッキング「確率の出現」を引用している。まだ読んでないけど、あれ、結構古い本だったんだなあ...]
[先験分布は別にimproperでも構わないんだという話。これも中略]
というわけで、主観主義も客観主義もまちがっておる。フィッシャーのいう尤度は実は結構主観的だった。サベジは$f(\cdot|\theta)$の主観性を見落としている。
ベイズ統計の技術的な寄与は、「先験分布という極めて自然な、我々の心理的期待を良く表現する要素を統計的モデル構成の分野に積極的に導入したことである」。$f(\cdot|\theta)$と$p(\theta)$によって与えられるモデルの良さが、モデルの尤度$p(x)$によって客観的に評価される。「こうしてフィッシャー流の方法を、いくつかの$p(\theta)$の集まりによって表現されるモデルの族に対して展開していくことが容易に実現される」。
云々。
論文:データ解析(2018-) - 読了:赤池(1980) 統計的推論のパラダイムの変遷について
2019年7月12日 (金)
わたくし平凡なサラリーマンだもんで...時として、もう正しいことなんてどうでもいい!みんながどうやってんのか知りたい!と思うことがあるのです...(本音ダダ漏れ)
Talbot, D., Massamba, V.K. (2019) A descriptive review of variable selection methods in four epidemiologic journals: There is still room for improvement. European Journal of Epidemiology, 34(8), 725–730.
というわけで、面白そうなので目を通したやつ。ページ数も少ないし。
疫学の論文だけど、マーケティングのデータ解析というのは、時々びっくりするくらいに疫学に似ていることがあるように思うのです。ほら、マーケティングアクションの効果を観察データから推定するとかって、似てませんかね?
疫学の論文において共変量の選択がどのように行われているかを調べる。
先行研究(Walter & Tiemeier, 2009 同誌)を紹介して...
疫学における共変量の選択手法を簡単に概観して... (因果グラフ, disjunctive cause基準, 単相関とかで選択, ステップワイズ選択, モデル投入による推定値の変化, lasso, adaptive lasso, ベイジアンモデル平均)
Am.J.Epidemiology, Epidemiology, Euro.J.Epidemiorogy, Int.J.Epidemiologyの4誌に注目。2015年に載った論文は975本、ここから観察研究の論文292本を選んだ。追試とかRCTとかは除外。また予測を目的とする研究も除外。
共変量選択の方法を分類すると(排他的分類ではないので合計は100%にならない)、
- 先行知識ないし因果グラフ ... 50% (他と重複していないのだけだと40%)
- 推定値の変化 ... 12%
- ステップワイズ ... 5%
- 単相関とか ... 9%
- その他 ... 2% (ベイジアンアプローチ, モデル適合, 統計的有意性, etc.)
- 十分に説明していない ... 37%
先行研究と比べると単相関による選択とステップワイズ選択が減っている。こういう手法は曝露効果を過大評価しちゃうので、喜ばしいことである。
新しい手法を使っている論文が見当たらない。Bayesian Adjustment for Confounding (Rのbacrパッケージ)とか、Bayesian Causal Effect Estimation(BCEEパッケージ)とか、モデルフリーなアルゴリズム(CovSELパッケージ)とか。
本研究はsystematic reviewとはいえない。また、個別の研究についてのcriticalな評価ではない(たとえば、ステップワイズ変数選択は効果を過大評価しちゃうけど、仮説生成の段階ならまあ許せるかもしれない)。
本研究からの示唆:
- 推定量の変化を調べるというアプローチのパフォーマンスについて、もっとシミュレーション研究が必要。
- 研究者の教育が必要。いまだに変数を有意性で選んでいる奴がいる。また最近の手法を使っている人が少ない。そもそもデータドリブンな変数選択手法は必須じゃないし(データが大きければ全部使っちゃうのもありだ)、データドリブンに変数選択したときは、変数を選ばず全部使った時の結果も併記してほしい。
- 変数選択についてのきちんと説明してない奴が1/3以上いる。よくないねえ。
論文:データ解析(2018-) - 読了:Talbot & Massamba (2019) 疫学者はどうやって変数を選択しているか
先月終わったセミナーの準備の際に悩んだあれこれを、いまだ気分的に引きずっているのだが...これもそのときにとったメモ。
うーん、やっぱり基礎教養が足りないのだと思う。辛いなあ。でも、もともと文系だし... 別に意図して選んだ仕事じゃないし... (泣き言)
$L$をラグ演算子とする。一階差分方程式
$(1-\phi L) y_t = w_t$
があるとき、$(1-\phi L)^{-1}$をどう定義すればよいか。
ラグ演算子を含む方程式の操作では、$|\phi| < 1$のとき
$(1-\phi L)^{-1} = 1+\phi L + \phi^2 L^2 \cdots$
だと定義するのが普通である。この話はあっちこっちの参考書に書いてある。
しかしここでは$|\phi| \geq 1$である場合について考えたい。この話、なかなか本に書いてないような気がするのです。
そういう例として...
時点$t$におけるある株の価格を$P_t$, 配当を$D_t$とする。ある投資家がこの株を$t$において買い$t+1$において売ったら、この投資家は配当から利率$D_t/P_t$を、売買差益から利率$(P_{t+1}-P_t)/P_t$を得る。リターンは
$r_{t+1} = (P_{t+1}-P_t)/P_t + D_t/P_t$
となる。
話をすごく単純にして、リターン$r_{t+1}$がどの時点でも一定の正の値$r$であるとしよう。
$r = (P_{t+1}-P_t)/P_t + D_t/P_t, \ \ r > 0$ ... [リターン公式]
両辺に$P_t$を掛けて移項すると一階の差分方程式になる。
$P_{t+1} = (1+r)P_t - D_t$ ... [株価の差分方程式]
ところで、一階の差分方程式
$y_t = \phi y_{t-1} + w_t$
は、元の式の右辺に$y_{t-1}, y_{t-2}, \ldots$を逐次代入して
$y_t = \phi^{t+1} y_{-1} + \phi^t w_0 + \phi^{t-1} w_1 + \cdots + \phi w_{t-1} + w_t$
と書き換えられる。従って、株価の差分方程式は
$P_{t+1} = (1+r)^{t+1} P_0 - (1+r)^t D_0 - (1-r)^{t-1} D_1 - \cdots - D_t$
と書き換えられる。
配当$\{D_0, D_1, \ldots, D_t\}$と、初期株価$P_0$の両方が決まれば、株価$\{P_1, P_2, \ldots, P_{t+1}\}$も決まる。初期株価$P_0$が未知の場合には、株価は決まらない。
ちょっと話がそれるんだけど、話をさらにものすごく単純にして、リターン$r_t$は常に$r$、配当$D_t$は常に$D$であるとしよう。
$P_{t+1} = (1+r)^{t+1} P_0 - [(1+r)^t + (1-r)^{t-1} + \cdots + 1] D_t$
カメカッコの中身をよくみると等比数列の和になっている。等比数列の総和ってのは、えーと、$c \neq 1$のときに$\sum_{k=1}^n c^{k-1} = (1-c^n)/(1-c)$でしたね(Wikipediaをみながら書きました)。よって
$P_{t+1} = (1+r)^{t+1} P_0 - \frac{1-(1+r)^{t+1}}{1-(1+r)} D$
分母が$r$になるので、結局こうなる。
$P_{t+1} = (1+r)^{t+1} [P_0 - (D/r)] + (D/r)$
ここでも、初期株価$P_0$が決まらないと株価は決まらない。
- 初期株価が$P_0 = D/r$だったらどうなるか。第1項が消えるので、株価は常に$P_t = D/r$となる。売買差益はゼロになり、全収益は株価に対する配当の比$r = D/P$となる。
- 初期株価が$P_0 > D/r$だったらどうなるか。投資家たちがその株に、配当を超えた価値を見出している場合である。このとき、株価$P_{t+1}$は上がり続ける。バブルみたいな感じですね。
本題に戻して...
話をもうちょっと現実的にする。配当$D_t$は変化する、しかし有界である、としよう。
話をリターン公式
$r = (P_{t+1}-P_t)/P_t + D_t/P_t, \ \ r > 0$
に巻き戻す。両辺に$P_t$を掛けて移項すると
$P_t = \frac{1}{1+r} [P_{t+1} + D_t]$
以下、$R = \frac{1}{1+r}$と略記する。
これに
$P_{t+1} = R [P_{t+2} + D_{t+1}]$
を代入して、さらに$P_{t+2}$を代入して...という風に、時点$T$まで前向きに逐次代入していくと、
$P_t = R^T P_{t+T} + R^T D_{t+T-1} + R^{T-1} D_{t+T-2} + \cdots + R D_t$ ... [★]
となる。
株価$P_t$が有界であれば、第一項の極限は
$\lim_{T \rightarrow \infty} R^T P_{t+T} = 0$
だし、配当$D_t$が有界であれば、第二項以降の和には極限
$\lim_{T \rightarrow \infty} \sum_{j=0}^{T} R^{j+1} D_{t+j}$
が存在する。というわけで、株価と配当が有界であれば、株価は第二項以降の和
$P_t = \sum_{j=0}^{\infty} R^{j+1} D_{t+j}$ ...[ファンダメンタル解]
となる。
ここでは、初期株価$P_0$も上の式で決まるという点にご注目。$D_t=D$としても決まらなかった$P_0$だが、$D_t$が有界だと仮定すれば決まるようになるわけだ。
ずいぶん前置きが長かったが... ここからはラグ演算子$L$をつかってやりなおす。
リターン公式
$r = (P_{t+1}-P_t)/P_t + D_t/P_t \ \ r > 0$
の両辺に$P_t$を掛けて移項して、一階の差分方程式をつくり
$P_{t+1} = (1+r)P_t - D_t$
これをラグ演算子を使って書き換える。
$[1-(1+r) L] P_{t+1} = - D_t$
以下、$\phi = 1+r$と略記する。
さあ、$P_{t+1}$はどうなるか。ここで$\phi > 1$だという点がこの話のミソである。
まず、ラグ演算子そのものの逆数を定義しておく。
$L^{-1} w_t = w_{t+1}$
まず、両辺に$-\phi^{-1} L^{-1}$をかける。左辺は
$[-\phi^{-1} L^{-1}] [1-\phi L] P_{t+1} = [1 - \phi^{-1} L^{-1}] P_{t+1}$
右辺は
$\phi^{-1} D_{t+1}$
となりますね。
さらに、両辺に$1+\phi^{-1} L^{-1} + \phi^{-2} L^{-2} + \cdots +\phi^{-(T-1)} L^{-(T-1)}$を掛ける。左辺はうまいこと整理されて
$P_{t+1} - \phi^{-T} P_{t+T+1}$
となる。右辺は
$\phi^{-1} D_{t+1} + \phi^{-2} D_{t+2} + \cdots +\phi^{-T} D_{t+T}$
となる。つないで移項すると
$P_{t+1} = \phi^{-T} P_{t+T+1} + \phi^{-1} D_{t+1} + \phi^{-2} D_{t+2} + \cdots +\phi^{-T} D_{t+T}$
よくよくみると、★式を1期ずらした式になっていますね。
$r >0$で、株価$P_t$が有界であれば、$T$が十分に大きい時、左辺から移行した第1項$\phi^{-T} P_{t+T+1}$は無視できる。従って、$r >0$で$P_t$と$D_t$が有界であれば、両辺に$-\phi^{-1} L^{-1} [1+\phi^{-1} L^{-1} + \phi^{-2} L^{-2} + \cdots +\phi^{-(T-1)} L^{-(T-1)}]$を掛けるという演算子は、その極限において、演算子$(1-\phi L)$の逆数だとみることができる。
というわけで、$(1-\phi L)$の逆数は、$|\phi| < 1$のとき
$(1-\phi L)^{-1} = 1 + \phi L + \phi^2 L^2 + \phi^3 L^3 + \cdots$
$|\phi| > 1$のとき
$(1-\phi L) ^{-1} = -\phi^{-1} L^{-1} \left[ 1 + \phi^{-1} L^{-1} + \phi^{-2} L^{-2} + \cdots \right]$
と定義できる。
ただし、いずれの場合も、$y_t$, $w_t$が有界であるという暗黙の仮定があることに注意すべし。
... 以上、Hamilton(1994) の2.5節からメモ。
ううう、わからん...
この本の2.2節には、$|\phi| < 1$のときの$(1- \phi L)$の性質についての説明があり、末尾に「$|\phi| \geq 1$のときの$[1-\phi L] ^{-1}$の性質については2.5節をみよ」と書いてある。ハミルトン先生、$|\phi| > 1$についてはわかりました。では、$|\phi| = 1$のときの$[1-\phi L] ^{-1}$はどう定義すればよろしいのでしょうか。
愚かな私の考えるところによれば、差分方程式
$y_{t} = y_{t-1} + w_t$
$(1-L) y_t = w_t$
において、$w_t$が有界でも$y_t$は有界じゃないし、仮に$y_t$が有界だと仮定したところで、$w_t$が与えられても$y_t$はなお未知だから、$(1-L)^{-1}$は定義できないように思うのですが、正しいでしょうか?
それとも、$(1-L)^{-1}$とは
$(1-L)^{-1} w_t = y_t = y_0 + \sum_{t=1}^{t} w_t$
となる演算子、つまり「演算子の左に書いてある奴をt=1から累積して初期値を足せ」という奇妙な演算子だと考えるべきなのでありましょうか???まさかねえ...
雑記:データ解析 - 覚え書き:(1-ΦL)で割るとはどういうことか
2019年7月10日 (水)
Pattee, H. (1987) Simulations, Realizations, and Theories of Life. in Langton, C.G. (ed.) "Artificial Life: The proceedings of an interdisiplinary workshop on the synthesis and simulation of living systems."
先日出席した研究会で「創発とはなにか」というような話題になったとき、Patteeという人を挙げておられた先生がいたので、お話伺いながらこっそり探してみたらヒットしたPDF。この論文であっているのかどうかはわからない。著者は生物学者だそうです。
これからの人工生命研究が、過去のAI研究における哲学的議論から学ぶべき教訓はなにか、というようなエッセイ。
整理の都合上、ざーっと目を通してみたんだけど... 創発には3つのタイプがある、(1)システムの働きについての我々の無知のせいでいま知覚されているイリュージョン、(2)いわゆる創造性、(3)生体が行う外界の測定そのもの... というようなことが書いてあって[きっと誤解してるんだと思います]、正直、途方にくれました。うーん。創造性とは何かというような話が読めるのかと思ったのに...
そんなこんなで、残念ながら私には難しくてよくわからんかったが、まあいいや、次に行こう次に!
論文:その他 - 読了:Pattee (1988) 人工生命における創発とはなにか
高田敦史, 田中洋(2016) 自動車業界におけるラグジュアリーブランド戦略. マーケティングジャーナル, 36(3), 52-70.
レクサスのケーススタディ。第一著者はレクサスのブランドマネジメント部長を経て独立された方で、いわばレクサスの「中の人」であろう。第二著者はいわずとしれた、ブランド論の著名な研究者。
いわく。
現代のラグジュアリーブランドは、プレステージを低下させることなく認知と売上を高めるという矛盾した課題を達成するため、伝統的なラグジュアリー戦略(高価格・高コスト・生産投資抑制・流通の限定)と現代的ビジネスを両立させなけばならない。Duboisという人はこれを「ラグジュアリーブランドのパラドクス」と呼んでおる。
さてラグジュアリーブランドとは...[定義についての議論。メモは省略するけど、やっぱりKapfere & Bastien (2009)「ラグジュアリー戦略」を読むのがよさそう]
カプフェレらの見方によれば、レクサスは機能価値を超えた神話を持っていないからラグジュアリーブランドじゃない。でもレクサスってベンツ, BMWと競合して短期間で成功しましたよね。というわけで、レクサスの位置づけについて考えます。
1989年のUSにおける導入について。レクサスは、機能性重視の世代といわれるベビーブーマー世代の高級車購入者層をターゲットにした。高品質、キャデラック・リンカーンとベンツ・BMWの中間あたりの価格設定(ほぼ値引きなし)、ディーラーを新規募集し、サービス業のノウハウを取り入れて徹底的に指導。おかげさまで成功した。
2005年の日本導入について。新規ディーラーというわけではなくて既存のトヨタ系販社が扱ったんだけど、店舗デザインを細かく規定しスタッフを教育、値引きなし・受注生産。
本題に戻ると、ラグジュアリーブランドの特徴のうち、レクサスは高品質と文化(クラフトマンシップとか)はあてはまるが、あとはあんまりあてはまらない。歴史はないし希少性はないし富を象徴しているわけでもない。
これは伝統的ラグジュアリーブランドとは異なる新しい位置づけ、いわば「スマートラグジュアリー」ではないか。その特徴は高品質とホスピタリティだ。
云々。
論文:マーケティング - 読了:高田・田中(2016) レクサスはラグジュアリーブランドだったのか?
今井徹(2016) MMM(マーケティング・ミックス・モデル)による広告効果測定の課題および今後の展望. 品質, 46(4), 381-386.
セミナーの準備でチェックしていて、読み損ねていた論文。著者について確認していなかったのだが、よく見たらご所属はALBERT、学会などで存じ上げている方だ...
よく整理され、図表が豊富で、わかりやすい解説であった。いくつかメモしておくと、
- MMMとアトリビューション分析を比べると、後者は広告接触がない状態での売上を0と仮定するので効果を過大評価し、また季節性を無視する、とのこと。そうなんですか...
- 著者によれば、広告の残存効果を長くしたMMMモデルはover-fittingでうまくいかない、MMMでは短期的な効果だけを評価し、長期効果はパネル時系列で推定するのがひとつの解決策だ、とのこと。ここ数ヶ月にわたってHanssens-Parsons-Schultz本を頼りに、時系列モデルで長期効果をどうやって推定するかという問題を延々考えていたので、彼我のニュアンスの違いにびっくりしたが、このへんは、実務家としての実感がこもっているのだろう。
論文:マーケティング - 読了:今井(2016) マーケティングミックスモデル・レビュー
2019年7月 9日 (火)
ビッグデータ統計解析入門 経済学部/経営学部で学ばない統計学
[a]
照井 伸彦 / 日本評論社 / 2018-12-12
著者はマーケティング・サイエンスの有名な先生。副題に「経済学部/経営学部で学ばない統計学」とある。「経済セミナー」誌での連載の書籍化である由。
ちゃんと読んだわけじゃないけど(すいません)、今後必要な時に参照できるように、何が書いてあったかだけメモしておく。
- 1章: イントロ。ビッグデータとはなにか、頻度主義統計学の限界、etc.
- 2章: ベイズ統計の基本。事後分布の評価としてまず共役事後分布について説明し、モンテカルロ積分、解析的近似(変分ベイズ)についてちらっと紹介。
- 3章: 前半はナイーブベイズによる分類。後半はベイジアン・ネットワークのかんたんな紹介。
- 4章: 階層的クラスタリング、k-means法、アソシエーションルール、CART、バギング、ランダムフォレスト、ブースティングについて、それぞれ簡単に紹介。
- 5章: まず線形判別の紹介。実例とともに、感度、ROC曲線、class imbalanceを紹介。ロジスティック回帰の紹介。最後に、SVMの紹介が4p(これは...はじめて読んだ人は狐につままれたような気分になるだろうな...)、計算例。
- 6章: PCAとEFAの紹介(回転についての説明はしてないみたいだ)、主成分回帰とPLS回帰の紹介(へええ... PLS回帰の説明はこの厚さの本にしてはちょっとレアかも)、リッジ回帰とLASSO。最後の実例のところでクロスバリデーションが出てくる。
- 7章: テキスト解析の章。まずワードクラウドを紹介。で、LDAについての説明が実習込みで9p、ここは力が入っている感じ。
- 8章: NNの章。シグモイド関数とsoftmaxを紹介し、多値選択問題を3層NNでモデル化する実習。で、ディープラーニングについてほんのちらっと紹介(1pとちょっと)。
財務諸表から倒産確率を線形判別するモデルをアルトマンモデルというのだそうだ。知らなかった。
電子書籍で読んだマンガ。
はたらくすすむ(1) (ヤンマガKCスペシャル)
[a]
安堂 ミキオ / 講談社 / 2019-04-18
LOST DRIVE (全1巻) (ヤングキングコミックス)
[a]
コウノ コウジ / 少年画報社 / 2019-01-30
天国ニョーボ (4) (ビッグコミックス)
[a]
須賀原 洋行 / 小学館 / 2017-10-30
むしろウツなので結婚かと 解説付き
[a]
菊池 直恵,城伊 景季 / 講談社 / 2019-05-25
コミックス(2015-) - 読了:「はたらくすすむ」「LOST DRIVE」「天国ニョーボ」「むしろウツなので結婚かと」
かなり前に図書館で借りて読んだ本。
JODK消えたコールサイン
[a]
津川 泉 / 白水社 / 1993-07
金文輯(キム・ムンジップ)という人のエピソードが興味深かった。
1909年に大邱に生まれ、早稲田中学、旧姓松山高を経て横光利一に師事、1935年に朝鮮に帰国。1938年に日本語の小説「ありらん峠」を書く(これは戦後に再刊された模様で、検索するとあちこちで古書を売っている)。日本の内鮮一体化政策を支持する批評家として、創氏改名に真っ先に名乗りを上げるが、改名した名前は「大江龍無酒之助」という実に人を食ったものであった。
で、当時の新聞によれば、数々の破廉恥行為を働いた廉で検挙(別に濡れ衣というわけでもないらしい)。執行猶予となって日本に渡り、福岡日々新聞社に入社。1960年の時点で「財団法人国際文化学会」の理事長として、会報誌に「朝鮮!それは[...]朝鮮民主主義人民共和国の旗の下においてのみ自らを育成しうる単一民族国家である」という一文を寄せている由 (おそらく これのことだろう)。この人もまた、歴史に翻弄された人だったのだろう...
ノンフィクション(2018-) - 読了:「JODK 消えたコールサイン」
Amrhein, V., Greenland, S., McShane, B. (2019) Retire statistical significance. Nature, 567, 305-307.
最近のNatureに載った仮説検定批判のコメンタリー。話題になっているし、たった3pだし、著者にGreenlandさんがいるので、パラパラめくってみた。
いわく...
有意差がないことをもって差がないと解釈する誤りが世に溢れておる。嘆かわしい。5つのジャーナルから集めた791本の論文のうち、有意差がないことを正しく解しておる論文は49%であった。けしからん。
2016年にはASAの声明がありAmerican Statisticianの特集号があった。Hurlbert, Levine, & Utts (2019, J.Am.Stat.)も「統計的に有意」という表現を廃止しようと主張して署名を集めた。
我々もまた主張する。統計的有意性という概念そのものを捨てるべきだ。というわけで、南極大陸を除く全大陸から署名を集めたぞ。[854人の署名を集めたそうだ]
P値を禁止しようというわけではない。たとえば生産プロセスがなんらかの品質基準に合致しているかどうかを決めるというような、その場面に特化した意思決定基準を使うということに反対しているわけでもない。弱い証拠も信頼すべきだと主張しているわけでもない。我々はですね、ある科学的仮説を支持するかどうかを決めるために、二値的なやり方でP値を使うことをやめようと云うとるんです。
問題は統計学というよりも人間の認知の側にある。二分法的な統計手法であれば、頻度主義だろうがベイジアンだろうがなんだろうが同じ問題が起きる。
事前の登録と出版へのコミットによって事態は少しはましになるだろうけど、事前登録研究だって、分析計画で決められていなかった決定によってバイアスを受けうる。悪気があろうがなかろうが。[ああそうか、事前登録すりゃいいってもんでもないわけね。Gelman & Loken (2014 Am.Sci.)というのが挙げられている]
「二分法マニア」を避けるべき理由の一つは、P値であれ信頼区間であれ、研究によってびっくりするぐらい変動するのが自然だからだ。[簡単な例が挙げられている]
我々は不確実性を抱きしめる(embrace)することを学ばなければならない。そのひとつの方法は、信頼区間を「compatibility区間」と呼び換えることだ。著者の皆さんには、区間の内側にあるすべての値について、その実務的示唆を述べていただきたい。さすれば、どの値もデータとcompatibleであることを否応なしに思い起こすことになろう。大事なのは、区間に0が入っているかどうかじゃなくて、すべての値が実務的にみて重要でないといえるかどうかなのだ。
この「compatibility区間」について語る際の注意点が4つある。
(1)区間の外側の値がimcompatibleだとはいえない。単にless compatibleなのだ。
(2)区間の内側が等しくcompatibleなわけじゃない。点推定値の解釈が大事。
(3)95%というレベルにも意味がない。他のレベルでもよい。
(4)謙虚であれ。compatibilityの評価は背後にある統計的仮説の正しさに依存しており、それらの仮説にもまた不確実性がある。仮説を明示し、可能な限り検証せよ。
想像してみよう、統計的有意性が退場した世界を。論文の「手法」の章とデータの表はもっと詳細になる。著者は自分の推定値の不確実性をより強調するようになる。P値はP<.05じゃなくてP=0.13という風に書かれる。もはやホシはつかない。人々は統計ソフトとともに過ごす時間を減らし、その分もっとよく考えるようになるだろう。[←このあたり、ジョン・レノンのイマジンが頭をよぎりますね...]
云々。
論文:データ解析(2018-) - 読了:Amrhein, Greenland, McShane (2019) 仮説検定よ退場せよ in 2019
Rによる実証分析 ―回帰分析から因果分析へ―
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星野匡郎,田中久稔 / オーム社 / 2016-10-26
刊行時に買ったまま本棚で眠っていたのだけれど、3-6月のセミナーの準備の際に引っ張り出して机の横に積み上げ、しかし残念ながら時間切れで手に取れなかった。本棚に戻す前に、何が書いてあるのかざーっとめくってみた。
前半のうち1-5章は「基礎編」と題して、推測統計学の基礎的な概念の説明をR入門と並行して進める。母集団と標本、記述統計量、確率の基礎、中心極限定理、単回帰と重回帰(まず離散変数のXで層別したYの期待値のプロットを出してこれを「ノンパラ回帰」と呼び、これを線形回帰の導入にする)、仮説検定(μ=0の検定をやったあとでいきなり回帰係数の検定になる。差の検定はやらない)。
6章では、相関と因果は違うんだよという話を枕にして、ルービン的な枠組みを導入して(いきなりトリートメントっていわれて面食らわないかしらん)、ATEを紹介。
7章では内生性について触れ、内生性が生じる原因について、省略変数(omitted variableのこと)、推定誤差、同時性の3つを挙げる。実例として、うまいこと自然実験の形になっていて内生性を克服できた例(Boes & Nuesch, 2001 J.UrbanEcon.), 出生時体重が教育年数に与える効果を一卵性双生児データで推定した例(Behrman & Rosenzweig, 2004 Rev.Econ.Stats.)。
[Boes & Neuschというのはセミナーで使えたな...やっぱり先に読んでおくべきだった...]
後半がこの本のウリだと思う。Angrist-Pischke本のそのまた入門編という感じ。
8章は選択バイアスとランダム化実験。研究例としてテネシー州のProject STARを紹介。[こういうときに教育研究が出てくるというのは、私が院生のころには比較的レアだったような気がする。時代は少しずつ変わっている]
9章はマッチング法。NNマッチング、k-NNマッチング, caliperマッチング, 傾向スコアマッチングもちらっと紹介される。実例はアメリカの絶滅危惧種保護法の効果推定で、野生動物の個体をマッチングする[これおもしろいなあ。Ferraro, McIntosh, Ospina(2007, J.Env.Eco.Mgmt)という論文だそうだ]。
10章はRDD。局所回帰・局所線形回帰で推定する実習。実例はFerreira & Gyourko (2009)という政治学の研究。
11章は操作変数法。2段階最小二乗法をlm()でやる実習(いったんざーっと説明しておいて、あとでRubinの枠組みと結びつけるという順序で進む)。実例はLevitt(1997)という、警察の規模が犯罪件数に与える効果を選挙のタイミングを操作変数にして推定する話であった。
この本が扱う内容とRの基礎トレーニングとは本来全然関係がないので、話を並行して進めるのはちょっと読みづらいんだけど、いろんな制約があるんでしょうね... たぶん学部の講義の教科書として使うことを想定しているのだろう。
後半の各章の末尾にいちいち魅力的な研究例が紹介されているところが勉強になった。毎回うまい例をひっぱってくるのって、なかなか難しいものだと思う。さすがにプロの研究者である。
渡辺勲・伊藤彌彦(2011) 矢野鶴子さんに聞く-蘆花夫妻の思い出. 同志社談叢, 31, 30-140.
明治大正期の作家・徳冨蘆花について読んでいると、兄・蘇峰から幼い娘を養子として貰い受けるものの、兄との絶縁に伴い娘も返してしまう、というなんだかよくわからないエピソードが出てくる。あのねえ蘆花先生、犬や猫じゃないんだから...
その娘さん(鶴子さん)ってその後どうされたんだろうか、とふと検索しみたら、なんと2007年までご存命だった由(101歳にて没)。しかも、1999年から2003年にかけての24回にわたるインタビュー記録というのが、同志社大の紀要に載っていた。びっくり。
晩年の鶴子さんは南青山第一マンションにお住まいで(ありますね、表参道駅の上に。最近は建替で揉めていると週刊誌で読んだ)、聞き書きを読む限り、非常にしっかりとした受け答えをしておられる。そもそもあのマンションは蘇峰の自宅があった場所なのだそうだ。へえええ!
徳冨蘆花についてはほとんど何も知らないんだけど、世田谷・芦花恒春園の展示からは想像できない蘆花夫妻の姿が語られていて、非常に面白かった。鶴子さんいわく、夫妻は「子育てごっこ」をしていたのだ、とのこと。「貴方は『愛子夫人は良妻賢母である』と書いておりますが、愛子叔母は、良妻でも賢母でもなんでもありません。私の記憶では、毎日毎日、朝から晩まで喧嘩、夫婦喧嘩の明け暮れでしたね」へへぇーー(平伏)。
聞き手の渡辺勲さんという方、蘆花の研究家だそうで、「恒春園離騒―蘆花と蘇峰の相克」「二人の父・蘆花と蘇峰」という著書がある模様。ちょっと検索してみたところ、世田谷の小学校で校長をされていた方のようだ。この方の本も読んでみたいけど、部屋に積んである蘆花の「みみずのたはこと」を先にしたようがよさそうだな...
論文:その他 - 読了:渡辺・伊藤(2011) 徳冨蘆花に養子に貰われたけどまた返された徳富蘇峰の娘さんが語る追憶の世田谷ライフ
中田寛(2016) ラグジュアリーにおけるブランディングの民主化-英国ブランドBueberryの事例-. 経営と制度, 14, 29-46.
バーバリーを事例としてブランディングの民主化について論じるというもの。著者は都立大の院生の方だと思う。
バーバリーは早くからネット対応に積極的で、2014年のCEOのインタビューでは次の3つの取り組みを挙げているのだそうだ。(1)バーバリーのトレンチコードを着た人が自分の一押し写真を投稿できるサイト。自由なカスタマイズを奨励するとともに製品使用の文脈・行動を把握できる。(2)ファッションショーのライブ配信。(3)トレンチコートのカスタムメードサイト。良く考えてみるとこれはマス・カスタマイゼーションであって純粋な一品受注生産じゃないんだけど、経験価値の共創を実現する。
こういうのが、著者いうところの「ブランディングの民主化」、つまり、名声やプレステージ性の共創。
もともとラグジュアリーとは「民主主義が追いやった社会階層を創りなおすための」手段でいう面があって、ブランディングの民主化は希少性や審美性に危険をもたらすんだけど、バッグや時計と違って、バーバリー(どのみち年2回新製品が出る)では内的な価値(愛着やこだわり)のほうが大事なもんで、価値創造プロセスを開放しちゃったほうがよかったわけだ。
云々。
やっぱし和田「ブランド価値共創」という本は読んどいたほうがよさそうだな。
Tynan, Mckechnie &l Chhuon (2010 J.BusinessRes.) というのがあって、ラグジュアリーの価値を有益性、象徴・表現、経験・快楽、関係性、費用・犠牲の5つに整理したうえで、価値共創について論じているのだそうだ。あ、これ、面白そう。
ラグジュアリー・ブランドの話は、一消費人としての私自身にはまったく理解できない部分が多く、なんだか社会人類学の昔の本(「悲しき南回帰線」とか)を読んでいるような気持ちになる。遠い部族の異様な習俗に垣間見る人類の見知らぬ可能性、というか。そんなことでは仕事に差し支えるだろうというご意見もあろうが、ま、こういう立場でないと見えないものもきっとあるよな、と思うことにしている。
論文:マーケティング - 読了:中田(2016) バーバリーにみる価値共創
石塚千賀子(2018) ラグジュアリー製品とはなにか-その製品とブランドの識別に向けて-. 現代社会文化研究, 66.
なにをもってラグジュアリー製品と呼ぶのかを概念的に整理しますという論文。掲載誌は新潟大の紀要、著者はそこの助教の方らしい。
著者いわく、先行する「ラグジュアリー」概念を整理すると2つの判断基準がある。個人の内的な判断基準と、社会的地位・富を象徴するかという外的な判断基準である。また価値の種類も2つある。感情的な価値と審美性である。
でもって、著者いわく、内的判断においては感情的価値が重視され、外的判断においては高い地位の表層を有するものがラグジュアリー製品なのだそうである。というわけで、企業が自らをラグジュアリー・ブランドと呼んでもだめで、感情的価値を見出してもらわないといけない。云々。
...ふうん。
ま、とにかく、Kapferer & Bastien(2009a)「ラグジュアリー戦略」という本を読むといいらしい。カプフェレって... 法政大出版局の「うわさ」を書いた人ですよね...
この論文を読んだきっかけは、先日の国際学会でラグジュアリーブランドの話を聴いてたらWeidmannの理論というのが出てきて、それなに、と思って検索したら引っかかった、という次第。Widemann, Henning, Siebes(2009 Psych.Mktg.)というのを読むといいらしい。これはちょっと面白そう。
論文:マーケティング - 読了:石塚(2018) なにをもってラグジュアリー製品と呼ぶか
2019年7月 1日 (月)
李陵・山月記
[a]
中島敦 / 新潮社 / 1969-09-23
近所の書店を応援するつもりで買った本。これを読んだのは高校生以来だろうか。
シェイクスピア全集30 ヘンリー五世 (ちくま文庫)
[a]
シェイクスピア,W. / 筑摩書房 / 2019-01-10
さいたま芸術劇場での上演にあわせて出た新訳。上演のほうは、かのアジンコート演説を大幅カットするという大胆なものであった(吉田鋼太郎演出)。あの名演説があるとどうしても観客の気分がナショナリスティックな方向に高揚して、戦いの悲惨さに焦点があわなくなる、という判断だろうか...
クリスマスに少女は還る (創元推理文庫)
[a]
キャロル オコンネル / 東京創元社 / 1999-09-23
海外ミステリは自制してるんだけど、これはなぜ読んだんだっけ? ま、面白かったです。
フィクション - 読了:「李陵・山月記」「ヘンリー五世」「クリスマスに少女は還る」
小林勇「人はさびしき」 昭和48年、文藝春秋。
近所の古本屋さんで買った。著者は岩波の大番頭、のちの社長だが、晩年はエッセイストとしても知られたらしい。斎藤茂吉、長谷川如是閑といった、岩波と縁のある人々をめぐる回想録。
百姓一揆 (岩波新書)
[a]
若尾 政希 / 岩波書店 / 2018-11-20
ノンフィクション(2018-) - 読了:「人はさびしき」「百姓一揆」
ギリシア・ローマ-ストア派の哲人たち-セネカ、エピクテトス、マルクス・アウレリウス
[a]
國方 栄二 / 中央公論新社 / 2019-01-09
最後の資本主義
[a]
ライシュ,ロバート・B. / 東洋経済新報社 / 2016-12-02
永遠のファシズム (岩波現代文庫)
[a]
ウンベルト・エーコ / 岩波書店 / 2018-08-18
生きづらい明治社会――不安と競争の時代 (岩波ジュニア新書)
[a]
松沢 裕作 / 岩波書店 / 2018-09-21
情熱でたどるスペイン史 (岩波ジュニア新書)
[a]
俊一, 池上 / 岩波書店 / 2019-01-23
ヨーロッパ近代史 (ちくま新書)
[a]
直隆, 君塚 / 筑摩書房 / 2019-01-08
百代の過客 日記にみる日本人 (講談社学術文庫)
[a]
ドナルド・キーン / 講談社 / 2011-10-13
負動産時代 マイナス価格となる家と土地 (朝日新書)
[a]
朝日新聞取材班 / 朝日新聞出版 / 2019-02-13
ノンフィクション(2018-) - 読了:「負動産時代」「百代の過客」「ヨーロッパ近代史」「情熱でたどるスペイン史」「生きづらい明治社会」「永遠のファシズム」「最後の資本主義」
丸刈りにされた女たち――「ドイツ兵の恋人」の戦後を辿る旅 (岩波現代全書)
[a]
藤森 晶子 / 岩波書店 / 2016-08-25
東横線自由が丘駅前の書店で購入。学生時代に毎日のように通った本屋さんに少しでも長く営業を続けて欲しいものだから、通りかかるたび、できればハードカバーを買うようにしている。先日はどうも買いたいものが見当たらず、思い切って適当に手に取った本をレジに持っていったのだけれど、これがとても興味深い本であった。本との出会いというのはわからないものである。
宣教のヨーロッパ-大航海時代のイエズス会と托鉢修道会 (中公新書)
[a]
佐藤 彰一 / 中央公論新社 / 2018-11-17
火付盗賊改-鬼と呼ばれた江戸の「特別捜査官」 (中公新書)
[a]
高橋 義夫 / 中央公論新社 / 2019-02-20
林彪事件と習近平 (筑摩選書)
[a]
浩一, 古谷 / 筑摩書房 / 2019-05-14
トッカイ バブルの怪人を追いつめた男たち
[a]
清武 英利 / 講談社 / 2019-04-24
イタリア史10講 (岩波新書)
[a]
暁夫, 北村 / 岩波書店 / 2019-03-21
いちおうイタリア通史なんだけど、近現代史がやたらに充実しているところが特徴的であった。著者の先生のご専門なのだそうだ。
ノンフィクション(2018-) - 読了:「イタリア史10講」「林彪事件と習近平」「丸刈りにされた女たち」「火付盗賊改」「宣教のヨーロッパ」「トッカイ」
リーダブルコード ―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック (Theory in practice)
[a]
Dustin Boswell,Trevor Foucher / オライリージャパン / 2012-06-23
この本、ずっと前から本棚にあって、仕事に気が乗らないときにぱらぱらめくっていたのだけれど(なぜかちょっとだけやる気が出てくる)、このたびついに読み終えてしまった。
邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん Season2 (ホーム社書籍扱コミックス)
[a]
服部 昇大 / ホーム社 / 2019-04-25
実在するB級日本映画を紹介するギャグマンガなのだが、番外編として中国映画興行記録を塗り替えた呉京監督主演「戦狼II」を紹介していて、喜ばしい限りである。あの映画を一人でも多くの人に観て欲しい... そしてびっくりしてほしい...
いつも月夜に米の飯(1) (モーニング KC)
[a]
小森 江莉 / 講談社 / 2019-01-23
コミックス(2015-) - 読了:「邦キチ!映子さん」「いつも月夜に米の飯」
百鬼夜行抄 27 (Nemuki+コミックス)
[a]
今 市子 / 朝日新聞出版 / 2019-03-20
メタモルフォーゼの縁側(2) (単行本コミックス)
[a]
鶴谷 香央理 / KADOKAWA / 2018-11-08
メタモルフォーゼの縁側(3) (単行本コミックス)
[a]
鶴谷 香央理 / KADOKAWA / 2019-06-08
漫画家さんのおいしいさしいれ (ホーム社書籍扱コミックス)
[a]
いくえみ 綾 ほか / ホーム社 / 2019-01-25
深夜食堂 (21) (ビッグコミックススペシャル)
[a]
安倍 夜郎 / 小学館 / 2019-02-28
今日の早川さん4
[a]
coco / 早川書房 / 2019-01-22
おかあさんの扉8 八歳児は手八丁口八丁 (オレンジページムック)
[a]
伊藤 理佐 / オレンジページ / 2019-02-04
おひとり様物語(8) (ワイドKC)
[a]
谷川 史子 / 講談社 / 2019-02-13
コミックス(2015-) - 読了:「おかあさんの扉」「深夜食堂」「今日の早川さん」「百鬼夜行抄」「メタモルフォーゼの縁側」「漫画家さんのおいしいさしいれ」
たかが黄昏れ (1) (ビッグコミックススペシャル)
[a]
花沢 健吾 / 小学館 / 2019-02-06
赤狩り THE RED RAT IN HOLLYWOOD (4) (ビッグコミックス)
[a]
山本 おさむ / 小学館 / 2019-02-28
銃座のウルナ 7 (ビームコミックス)
[a]
伊図透 / KADOKAWA / 2019-03-11
この作者の過去作には、大変魅力的な風呂敷を拡げておいて畳んでくれない...というモヤモヤがつきまとっていたように思うんだけど、本作に至ってようやく、良いマンガを読んだなあという感想を持った。
いちげき (4) (SPコミックス)
[a]
松本次郎,永井義男 / リイド社 / 2018-12-27
一日三食絶対食べたい(1) (アフタヌーンKC)
[a]
久野田 ショウ / 講談社 / 2019-02-13
イムリ 24 (ビームコミックス)
[a]
三宅 乱丈 / KADOKAWA / 2019-02-12
MUJIN -無尽- 6 (6巻) (ヤングキングコミックス)
[a]
岡田屋 鉄蔵 / 少年画報社 / 2019-02-27
コミックス(2015-) - 読了:「たかが黄昏れ」「赤狩り」「銃座のウルナ」「いちげき」「MUJIN」「イムリ」「一日三食絶対食べたい」
めしにしましょう(7) (イブニングKC)
[a]
小林 銅蟲 / 講談社 / 2019-03-22
ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 6 (ヤングアニマルコミックス)
[a]
武田一義,平塚柾緒(太平洋戦争研究会) / 白泉社 / 2019-01-29
へんなものみっけ! (1) (ビッグコミックス)
[a]
早良 朋 / 小学館 / 2017-07-12
レイリ(6)(少年チャンピオン・コミックス・エクストラ)
[a]
岩明 均,室井 大資 / 秋田書店 / 2019-05-08
私の少年(6) (ヤングマガジンコミックス)
[a]
高野ひと深 / 講談社 / 2019-05-07
アガペー (ビッグコミックス)
[a]
真鍋 昌平 / 小学館 / 2019-05-30
極楽長屋 新装版 (乱コミックス)
[a]
崗田屋 愉一 / リイド社 / 2019-05-31
コミックス(2015-) - 読了:「極楽長屋」「アガペー」「私の少年」「レイリ」「へんなものみっけ!」「ペリリュー」「めしにしましょう」
はじめてのひと 4 (マーガレットコミックス)
[a]
谷川 史子 / 集英社 / 2019-03-25
ランド(8) (モーニングコミックス)
[a]
山下和美 / 講談社 / 2019-03-22
淡島百景3
[a]
志村 貴子 / 太田出版 / 2019-03-14
独身OLのすべて(9) (KCデラックス)
[a]
まずりん / 講談社 / 2019-04-23
めしばな刑事タチバナ 33 (トクマコミックス)
[a]
坂戸佐兵衛,旅井とり / 徳間書店 / 2019-03-30
プリニウス 8 (バンチコミックス45プレミアム)
[a]
ヤマザキマリ,とり・みき / 新潮社 / 2019-04-09
7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT(8) (ヤンマガKCスペシャル)
[a]
ハロルド 作石 / 講談社 / 2019-04-05
コミックス(2015-) - 読了:「はじめてのひと」「ランド」「淡島百景」「独身OLのすべて」「めしばな刑事タチバナ」「プリニウス」「7人のシェイクスピア」
タイムスリップオタガール(4) (ポラリスCOMICS)
[a]
佐々木 陽子 / フレックスコミックス / 2019-02-14
二月の勝者 ー絶対合格の教室ー (4) (ビッグコミックス)
[a]
高瀬 志帆 / 小学館 / 2019-02-12
ガイコツ書店員 本田さん 4 (ジーンピクシブシリーズ)
[a]
本田 / KADOKAWA / 2019-03-28
団地ともお (33) (ビッグコミックス)
[a]
小田 扉 / 小学館 / 2019-03-29
完結巻。お疲れ様でした。
ダンジョン飯 7巻 (ハルタコミックス)
[a]
九井 諒子 / KADOKAWA / 2019-04-12
終わった漫画家(3) (ヤングマガジンコミックス)
[a]
福満しげゆき / 講談社 / 2019-03-06
鬱ごはん(3) (ヤングチャンピオン烈コミックス)
[a]
施川ユウキ / 秋田書店 / 2019-03-19
コミックス(2015-) - 読了:「鬱ごはん」「ダンジョン飯」「団地ともお」「ガイコツ書店員本田さん」「二月の勝者」「タイムスリップオタガール」
ワカコ酒 12 (ゼノンコミックス)
[a]
新久千映 / 徳間書店 / 2019-02-20
中間管理録トネガワ(8) (ヤンマガKCスペシャル)
[a]
福本 伸行,三好 智樹,橋本 智広 / 講談社 / 2019-02-13
アンダーニンジャ(1) (ヤンマガKCスペシャル)
[a]
花沢 健吾 / 講談社 / 2019-02-06
木根さんの1人でキネマ 6 (ヤングアニマルコミックス)
[a]
アサイ / 白泉社 / 2019-04-26
闇金ウシジマくん(45) (ビッグコミックス)
[a]
真鍋昌平 / 小学館 / 2019-02-28
闇金ウシジマくん (46) (ビッグコミックス)
[a]
真鍋 昌平 / 小学館 / 2019-05-30
たびたび映像化された人気作品、ついに最終巻。見事な結末であった。
重版出来! (13) (ビッグコミックス)
[a]
松田 奈緒子 / 小学館 / 2019-06-12
ヨシノズイカラ(1) (ガンガンコミックス)
[a]
ヨシノサツキ / スクウェア・エニックス / 2019-05-11
コミックス(2015-) - 読了:「重番出来」「ヨシノズイカラ」「闇金ウシジマくん」「木根さんの一人でキネマ」「アンダーニンジャ」「中間管理録トネガワ」「ワカコ酒」
あさひなぐ (29) (ビッグコミックス)
[a]
こざき 亜衣 / 小学館 / 2019-02-28
あさひなぐ (30) (ビッグコミックス)
[a]
こざき 亜衣 / 小学館 / 2019-05-30
健康で文化的な最低限度の生活 (8) (ビッグコミックス)
[a]
柏木 ハルコ / 小学館 / 2019-06-28
君のくれるまずい飴 冬虫カイコ作品集 (ビームコミックス)
[a]
冬虫 カイコ / KADOKAWA / 2019-04-12
リバースエッジ 大川端探偵社 (10) (ニチブンコミックス)
[a]
ひじかた 憂峰 / 日本文芸社 / 2019-04-27
イノサン Rouge ルージュ 10 (ヤングジャンプコミックス)
[a]
坂本 眞一 / 集英社 / 2019-05-17
春とみどり(1) (メテオCOMICS)
[a]
深海紺 / フレックスコミックス / 2019-04-11
棚の上のなにか (ハルタコミックス)
[a]
百名 哲 / KADOKAWA / 2019-01-15
コミックス(2015-) - 読了:「棚の上のなにか」「春とみどり」「あさひなぐ」「健康で文化的な最低限度の生活」「君のくれるまずい飴」「リバーズエッジ 大川端探偵社」「イノサン」
長期休暇の終了を記念して、最近読んだ本を記録しておく。まずはコミックスから。
ハコヅメ~交番女子の逆襲~(3) (モーニング KC)
[a]
泰 三子 / 講談社 / 2018-08-23
ハコヅメ~交番女子の逆襲~(4) (モーニングコミックス)
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泰三子 / 講談社 / 2018-10-23
ハコヅメ~交番女子の逆襲~(5) (モーニング KC)
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泰 三子 / 講談社 / 2019-01-23
ハコヅメ~交番女子の逆襲~(6) (モーニング KC)
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泰 三子 / 講談社 / 2019-03-22
ハコヅメ~交番女子の逆襲~(7) (モーニング KC)
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泰 三子 / 講談社 / 2019-05-23
4巻は電子書籍で読んだ。
交番勤務の女性警察官を主人公にしたコメディ。講談社モーニング誌らしいお仕事マンガなのだけれど、これがめっぽう面白い。作者はもと警察官とのこと、正直なところマンガとしては稚拙だなあと思ってたんだけど、ここまでディテールが面白いと説得されてしまう。「ナニワ金融道」連載開始時を思い出す。
僕だけに優しい君に (MeDu COMICS)
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浦部はいむ / ジーオーティー / 2019-06-28
その女、ジルバ (1) (ビッグコミックス)
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有間 しのぶ / 小学館 / 2013-02-28
作者は大昔に講談社でどうでもいいようなギャグマンガを描いていた方と記憶していて(すいません)、この連載が評判を読んでからも手に取る気になれず、大きな賞をとってから慌てて読むというていたらくである。まだ1巻しか読んでないけど、なるほど、これは面白いなあ...
チェーザレ 破壊の創造者(12) (KCデラックス)
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惣領 冬実 / 講談社 / 2019-06-21
本日書店で平積みにされているのを見つけてびっくり。もう続きは読めないのかと思っていた。この新刊は、インノケンティウス八世死去後のコンクラーベをサスペンスフルに描くという実にマニアックなストーリーで、暗い密室での陰湿な会話劇をマンガとして成立させるべく、ベテラン作家の秘術が凝らされている。
BLUE GIANT SUPREME (7) (ビッグコミックススペシャル)
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石塚 真一 / 小学館 / 2019-02-28
BLUE GIANT SUPREME (8) (ビッグコミックススペシャル)
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石塚 真一 / 小学館 / 2019-06-28
コミックス(2015-) - 読了:「ハコヅメ」「チェーザレ」「その女、ジルバ」「僕だけに優しい君に」「BLUE GIANT SUPREME」