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2018年9月28日 (金)

 Wilcoxon-Mann-Whitney検定ってのがありますわね。おさらいしておくと、えーっっっとですね、いわゆる「対応のないt検定」のノンパラ版だって習った気がします。
 群Aと群Bがあるとき(サイズを$n_A, n_B$とする)、群間でのすべての測定値ペア($n_A
\times n_B$個)について、Aの値のほうが大きいペア数$U$を数える。群間にぜんぜん差がなければ、$U$の期待値は(タイになるペアがないとして)$n_A \times n_B / 2$である。というわけで、帰無仮説の下での$U$の分布をどうにかして求めて検定する。$n_A$+$n_B$個の測定値を順位に変換し、群Aの測定値の順位の和を検定統計量にすることもあるが、まあ結局は同じことである。Mann-WhitneyのU検定とか、Wilcoxonの順位和検定ということもある。

 ここでの帰無仮説とはなにか。修士課程ははるか記憶の彼方ですけど(ついでにいうと学部の統計学教育はかなりめちゃくちゃであった。あれはナイよなあ...今でもちょっと可笑しい)、わたしゃ「母集団において二群の中央値が等しい」だと習いましたね、確か。
 手元の本で言うと、森・吉田(編著)「心理学のためのデータ解析テクニカルブック」には、はっきりと「対応のない2条件の中央値の比較」とある(もっとも、先ほどめくってみたところ「比較される代表値が今一つ明確でない、しかし[...]測定値間の大きさの順位を問題にするものであり、このような意味では、各条件の中央値を比較しているといえよう」と微妙に日和った脚注がついているのを発見した)。この定評ある参考書に限らず、たいていの本には「二群の中央値を比較する検定」だと書いてあると思います。

Divine, G.W., Norton, H.J., Baron, A.E., Juarez-Colunga, E. (2018) The Wilcoxon-Mann-Whitney procedure fails as a test of medians. American Statistician, 72, 278-286.
 最近のAmerican StatisticianのTeacher's Cornerの記事らしい。いま必要な内容じゃないんだけど、Mann-Whitneyの検定はたまに使うこともあるし、タイトルに惹かれて目を通してみた次第。

 いわく。
 Wilcoxon-Mann-Whitneyの手続き(以下WMW)は二群の中央値が等しいかどうかの検定だと思っている人が多い。信頼ある教科書にもよくそう書いてある。
 これは誤りである。WMWについてはいろいろ誤解がある。諸君の無知蒙昧を正そう。

 まず、WMWとt検定を比べてみよう。
 t検定、それはパラメトリックな手続きである。各群の分布は$N(\mu_1, \sigma_1^2)$, $N(\mu_2, \sigma_2^2)$に従うと想定する。
 概念上は、$\mu_1$と$\mu_2$が同じかどうかという話をしたい。計算上は、標本平均$\bar{x}_1$と$\bar{x}_2$を比べる。検定統計量は
 $t = (\bar{x}_1 - \bar{x}_2) / se(\bar{x}_1 - \bar{x}_2)$
である。
 いいですか、t検定というのは、概念上は母平均の検定であり、計算上は標本平均を使う。このように、t検定は平均についての検定だといって差支えない。

 WMW検定、それは分布フリーな検定である。
 概念上はどんな検定なのか。一般には、帰無仮説は「分布Fと分布Gが等しい」で、対立仮説は$G(x)=F(x+\delta), \ \ \delta \neq 0$だと考えられることが多い(つまり、分散も歪度もなにもかも同じで位置だけが異なるという対立仮説である)。これを「シフト仮説」と呼ぼう。
 シフト仮説の下では、確かに$\delta$は母中央値の差である。同時に、$\delta$はお好きな分位点の差でもあり、平均の差でもあり、最頻値の差でもある。[←なるほどそりゃそうだ]
 計算上はどんな検定か。正確法と漸近法があるが、ここでは説明の都合上、後者について考えよう。
 測定値の順位を求め、各群の順位和を$R_1$, $R_2$とする。検定統計量は
 $X^2 = [(R_1 - E(R_1)/se(R_1)]^2$
 ちなみにMann-WhitneyのU統計量はちょっと定式化が違うが、
 $U_1=n_1n_2 + n_1(n_1+1)/2 - R_1$
という関係がある。
 いま
 $p^{''} = Pr(X_1 < X_2) + Pr(X_1=X_2)/2$
という母集団特性を考えると、
 $U_1/n_1 n_2 = \hat{p}^{''}$
 $X^2 = [(\hat{p}^{''}-0.5)/se(\hat{p}^{''})]^2$
と書きかえられる。WMW検定の帰無仮説は$p^{''}=0.5$だといえる。
 なお、$p^{''}/(1-p^{''})$を「WMWオッズ」と呼び、これがWMW検定のための理想的な要約統計量だとする主張もある。帰無仮説は「WMWオッズ=1」だというほうが、$p^{''}=0.5$だというよりわかりやすいだろうという主張である。

 ちょっと話が逸れるけど...
 タイがある場合について。教科書のなかには「タイがあったら使えない」と書いてあるのもあるけど、これは間違い。順位和で定式化する場合なら、タイには平均順位を与える。ある弱い条件の下で、タイがあるデータでも検定統計量の漸近正規性が成り立つことが示されている。
 t検定の場合、分散が等しくない時、そのことを考慮した分散推定量と自由度を使えばそれでOKなの?という問題が生じる。御存じBehrens-Fisher問題である。WMW検定でも同じことが起きる[←漸近法の場合は、ってことだと思う]。連続データの中央値の比較に関心があるという仮定の下で、分散が異なるときでもうまくいくというFlinger-Policello検定というのが提案されている(SAS/STATのPROC NPAR1WAYに載っている)。ほかにBrunner-Munzelの提案というのもあって、標本サイズが小さい時にはこっちのほうが良いと報告されている。標本サイズが30以下だったり、タイが多かったりする場合には、permutationによる正確法に切り替えたほうが良い。

 さて、このようにですね、WMW検定は$p^{''}=0.5$かどうかの検定であり、中央値の検定ではないのであります。いくつか例を示しましょう。

ご覧のように、WMW検定は標本中央値と対応しない。複数群間で推移律さえ満たさない。この検定は、あくまで分布間の相対的な比較であって、標本の位置を表すなんらかの指標によって決まるような検定ではないのである。

 では、WMW検定は母中央値の検定だといえるだろうか。
 「シフト仮説」の下ではそうだろう。しかし、たいていの場合、「シフト仮説」はナンセンスである。リッカート尺度項目の回答分布を考えてみてほしい。またはなんらかの出来事の回数の分布について考えてほしい。分布が同じで位置だけ変わるってありえないでしょ。

 なぜにWMW検定は中央値の検定だといわれているのか。おそらくこういう事情だろう。

なぜにWMW検定は連続量データを必要とするという誤解が広がっているのか。おそらくこういう事情だろう。

 というわけで、著者らは講義でWMWについて正しく教えてます...[略]
 教えるときにはこういうチャートを使うといいでしょう。全ペアを(群1の値) vs (群2の値)の散布図上に載せたバブルチャート。ペア内の大小を診断と見立ててROC曲線を書くとAUCが$p^{''}$になる[←頭が混乱する...]。ドミナンス・ダイアグラム[←説明を読んでたらわけわかんなくなってきたので省略]。

 ...というわけで、最後のほうは疲れて読み飛ばしちゃったけど、面白い啓蒙論文でありました。
 著者らが力説しているのは「WMWは2群の中央値の検定じゃなくて、2群間のすべてのペアにおいて片方が勝つ確率が0.5かどうかの検定だ」ということであって、「WMWは使うな」と言っているわけではない。でも世の中にはWMWそのものに対して否定的な方もいるわけで(たしかGelmanさんがそうだった)、有識者の方々に、その辺のご意見も聞きたいところである。

論文:データ解析(2018-) - 読了:Divine, et al. (2018) Mann-Whitney検定は中央値の検定ではない

2018年9月19日 (水)

 久々にスキャン・パネル・データについて考える機会があって(生計のためになんでもやるけど、我ながら節操がない)、そういえば前にこんなの読んだな...と頭をよぎるんだけどよく思い出せないということが続き、どんよりした気分になった。頭の整理のため、このブログに記録した範囲で、スキャン・パネル・データを分析している論文のリストをつくってみた。
 そういえば、2011年から2012年にかけては意識してスキャン・パネル・データ関連の奴を読むように心がけていたんだよな... 勤務先が変わったこともあって... あの頃の私は多少は誠実であった... 最近はなんだかもう疲れちゃって...

 分類は適当である。すいません、これほんとに個人的な覚え書きなんです。

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雑記:データ解析 - 覚え書き:スキャン・パネル・データの分析事例

2018年9月18日 (火)

Schindler, R.M. (1992) The Real Lesson of New Coke: The Value of Focus Groups for Predicting the Effects of Social Influence. Marketing Research, 4(4).

 著者は大学の先生で、市場調査実務家向けの読み物。ざっと目を通しただけだけど、面白かった。

 いわく。
 1985年のニュー・コーク事件についてはすでに多くが語られているが、まだ学ぶべき事柄が残されている。
 [まずニュー・コーク事件の経緯を説明して...]
 この事件についてはさまざまな解釈がなされた。
 まずはリサーチの限界説。この事件はマーケティング・リサーチを非難する種として引き合いに出されるようになった。
 次にwrong-question説。失敗の原因は、味覚テストの対象者に「新フレーバーが採用されたら旧フレーバーはもう飲めなくなる」と伝えなかったという点にある。どちらのフレーバーが好きですかと訊くのではなくて、コカコーラの味がこの味に変わったらどう思いますかと訊くべきだったのだ。

 あとで明らかにされたのだが、コカコーラのリサーチ部門はちゃんとフレーバー変化に対する反応を調べていたし、消費者が反発する可能性もFGIで把握していた。その後の定量調査で、消費者の反応は全体としては好意的になると予測したのであり、この予測は市場導入初期については当たっていた。予測できなかったのは、その後に生じた(メディアの報道を含めた)社会的相互作用、それに伴う消費者の態度変容であった。
 後知恵になるけど、最終的な結果(消費者の猛反発)は定量じゃなくてFGIと整合していた。真の教訓は、FGIはただの消費者態度測定ではなく、社会的相互作用下の消費者反応を知るためのユニークな手法だということだ。
 現在、コンセプトテストの妥当性の低さが問題になっているけど、その原因のひとつはFGIの価値の見落としかもしれない。FGIにおける対人相互作用は集団相互作用の効果の指標として優れている。FGIは対象者が他者の見解を予期できない時に特に重要である。

 実務家へのアドバイス。新製品のリサーチでは、FGIを定量前の予備調査として位置付けるのではなく、予備調査の段階で個人と集団の両方を調べなさい。もし結果が違ってたら、実際のマーケティング状況で他者の見解についての認識がどのくらい存在するかを検討しなさい。製品のvisibilityが高い時、製品の重要性が高い時、製品に関する意思決定が困難であるときは特に要注意である。他者の見解についての認識が存在しうる状況ならば、その後の検証的スタディでもその認識を与えたほうが良い。
 というわけで、ニュー・コーク事件の真の教訓、それは新製品開発プロセスにおいて社会的影響を考慮すべきだということだ。FGIの価値を見直し、社会的相互作用を捉える新しい手法を開発しよう。
 云々。

 うーん...このFGI推しっぷりはどうなんでしょうか... ちょっと高く買い過ぎじゃないだろうか。
 でもまあ、リサーチのなかに社会的相互作用を埋め込みたいという発想にはとても共感する。いまなら92年段階とは全然ちがうアプローチが可能だと思う。

論文:マーケティング - 読了:Schindler (1992) ニュー・コーク事件に学べ、フォーカス・グループ・インタビューには価値があるのだ

近藤博之 (2014) ハビトゥス概念を用いた因果の探求. 理論と方法, 29(1), 1-15.
 たまたま見つけて、タイトルがかっこいいので保存してたやつ。整理の都合上目を通した。えーっと、数理社会学会の会長講演だそうです。全くの門外漢なので、ちゃんと読めてないと思うんだけど...

 教育と階層の関連についての研究は、大きく教育達成研究(従属変数は最終学歴や進学確率)と学業成績研究(従属変数は成績)に分かれるが、どちらの系列も「現代社会は完全な機会平等やメリトクラシーにどこまで近づいたか」という関心に基づいており、どちらにおいても答えは「意外にそうでもない」であった。
 いっぽうブルデューさんたちは、大事なのは構造であって、要因の効果なんてえものは切り出しようがねえんだよ、と主張する。これを「構造的因果性」という。
 これと似た考え方に、医療社会学でいう「根本的原因」というのがあって、知識が増えてもリスク統制能力が向上しても、結局健康はSESと関連したままだということが問題になっている。ある要因の効果は多数の要因群の集積であり、時と場所を超えてそれを安定させているメタメカニズムがあるのだ、と考えている人もいる。ブルデューが示したのは、ハビトゥスをこのメタメカニズムとして捉えるアプローチであったといえる。[←へー]
 [「ディスタンクシオン」での分析方法の説明がひとしきりあって...]
 しかし教育と階層についての量的研究の世界では、ハビトゥスについてはほとんど無視されている。主流はBreen & Goldthrope (1997 Rationality&Society)のモデル。彼らにいわせると、階級分化による説明は一時点の階層差は説明できるけど、教育改革とかが展開してるのに階層差がなぜ安定しているかを説明できない。
 でもこの評価はフェアじゃない。[...]たとえば、労働者階級は所得が不安定なので明確な時間展望を持ちにくく、近視眼的な選択に陥りやすいという見方がある。Goldthropeらにいわせればこういう説明は残差を事後的に解釈しているだけである[←よくわかんないけど、きっと合理的選択を仮定したモデルなんだろうな]。でも実際問題として過去経験って選択を左右するじゃないですか。結局これは、ミクロ行為理論として合理的選択をとるかハビトゥスによる選択をとるかのちがいなのだ。つまりサイモンいうところの「経済合理性」と「経営合理性」のちがいなのだ。[←おおお、意外なところにサイモンが。勉強しよう]
 [...] というわけで、ブルデュー理論は計量研究と十分に対話できるのだよ。云々。
 
 最後のところに出てきたんだけど、サンクコストの心理学的研究で、合理的選択という思考それ自体における社会的条件付けの影響を示した研究というのがあるのだそうだ。Arkes & Ayton (1999, Psych.Bull.)。面白そう。

論文:教育 - 読了:近藤(2014) 教育と階層についての因果的探求にハビトゥス概念が役に立つ

2018年9月17日 (月)

Bradlow, E.T. et al. (2005) Spatial Models in Marketing. Marketing Letters, 16, 267-278.
 仕事&学会発表の役に立つかと思って目を通した奴。10名の連名による概説。なにかの会議のメンバーで書いたのだそうだ。そういう論文はあまり面白くないことが多いと思うんだけど、まあ勉強だと思って...
 いくつかメモ:

これからの課題として以下の3点が挙げられている。

論文:マーケティング - 読了:Bradlow, et al. (2015) マーケティングにおける空間モデル

貞包英之(2013) 贈与としての自殺 - 高度成長期以後の生命保険に関わる自殺の歴史社会学. 山形大学紀要(社会科学), 43, 2.
 たまたまみつけて、興味本位で読んだ。
 社会学者だけあって、社会通念上なかなか口にしづらいことをしれっと述べている。たとえばこんな箇所。

もっとも根底的には,生命保険にかかわる自殺の減少がそもそも望ましいとはいえない可能性について考えてみる必要がある。その自殺は企業や家族の成長を可能とする経済的根拠[借金の担保にするってことね]として利用された以外にも,高度成長期以降の社会の急速な発展から取り残された人びとの疎外を償う積極的な社会的機能をはたしてきた。現象的にみれば生命保険にかかわる自殺は,相対的に豊かであるはずの他の被保険者から保険金を合法的に掠めとる戦略的ゲームとして機能する。すなわちその自殺はみずからを残し豊かになりゆく社会に対する命がけの挑戦や復讐の手段として, 社会の発展から取り残された人びとに最後の矜持をあたえる。この意味で性急にその自殺を社会から締めだすことが,ゆたかな社会の実現につながるとはかならずしもいえない。

論文:その他 - 読了:貞包(2013) 贈与としての自殺

Bookcover イタリア広場 [a]
アントニオ タブッキ / 白水社 / 2009-09-01
タブッキの初期作品。覚悟して読み始めたんだけど、意外にもわかりやすい小説であった。

Bookcover ザ・ドロップ [a]
デニス ルヘイン / 早川書房 / 2015-03-05
うーん...ルヘインは大好きなんだど、これは全然覚えていない。ほんとに読んだんだっけ?というレベルである。読んだらすぐに記録せんといかんな。

Bookcover はい、チーズ (河出文庫) [a]
ヴォネガット,カート / 河出書房新社 / 2018-05-08

Bookcover 孤狼の血 (角川文庫) [a]
柚月裕子 / KADOKAWA / 2017-08-25
映画がなかなか面白かったので、つられて原作にも手を伸ばした次第。

Bookcover 高熱隧道 (新潮文庫) [a]
昭, 吉村 / 新潮社 / 1975-07-29

Bookcover オンブレ (新潮文庫) [a]
レナード,エルモア / 新潮社 / 2018-01-27
レナードの初期中編。この村上訳を機に、旧作も再刊されるといいなあ... レナード作品は現在軒並み入手困難なのである。

フィクション - 読了:「オンブレ」「高熱隧道」「イタリア広場」「ザ・ドロップ」「はい、チーズ」「孤狼の血」

Bookcover 人間の条件 (ちくま学芸文庫) [a]
ハンナ アレント / 筑摩書房 / 1994-10-01
正直なところ、後半の「活動」のあたりから全くついていけなくなった。ようやく読み終えてほっとしたけれど、読んだというよりめくったというのが正確なところ。

Bookcover 『碧巌録』を読む (岩波現代文庫) [a]
末木 文美士 / 岩波書店 / 2018-08-18

Bookcover ブッダの生涯 (岩波現代文庫 〈仏典をよむ〉) [a]
中村 元 / 岩波書店 / 2017-12-16

哲学・思想(2011-) - 読了:「人間の条件」「「碧巌録」を読む」「ブッダの生涯」

Bookcover ビジネス・行政のためのGIS (シリーズGIS) [a]
/ 朝倉書店 / 2008-03-01
仕事の役に立つかと思って読んだんだけど...

マーケティング - 読了:「ビジネス・行政のためのGIS」

Bookcover 「知識青年」の1968年――中国の辺境と文化大革命 [a]
楊 海英 / 岩波書店 / 2018-07-14

Bookcover 女性従業員が見た「密室の中の愛」 ラブホテル裏物語 (文春文庫) [a]
大月 京子 / 文藝春秋 / 2010-12-03

Bookcover 藤沢周平が描ききれなかった歴史―『義民が駆ける』を読む [a]
青木 美智男 / 柏書房 / 2009-07

Bookcover 八九六四 「天安門事件」は再び起きるか [a]
安田 峰俊 / KADOKAWA / 2018-05-18

Bookcover 緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」 [a]
解説 上西 充子,解説 田中 信一郎 / 扶桑社 / 2018-08-09

Bookcover インド神話―マハーバーラタの神々 (ちくま学芸文庫) [a]
上村 勝彦 / 筑摩書房 / 2003-01-01

Bookcover ごみ収集という仕事: 清掃車に乗って考えた地方自治 [a]
誠一郎, 藤井 / コモンズ / 2018-06-06

ノンフィクション(2018-) - 読了:「「知識青年」の1968年」「藤沢周平が描き切れなかった歴史」「八九六四」「ラブホテル裏物語:「インド神話」「枝野幸男、魂の3時間大演説 安倍政権が不信任に足る7つの理由」「ごみ収集という仕事」

Bookcover 権力の「背信」 「森友・加計学園問題」スクープの現場 [a]
朝日新聞取材班 / 朝日新聞出版 / 2018-06-12

Bookcover 男たちの絆、アジア映画 ホモソーシャルな欲望 [a]
/ 平凡社 / 2004-04-20

Bookcover 江戸の本屋さん―近世文化史の側面 (平凡社ライブラリー) [a]
今田 洋三 / 平凡社 / 2009-11-01

Bookcover 文部科学省 - 「三流官庁」の知られざる素顔 (中公新書ラクレ) [a]
寺脇 研 / 中央公論新社 / 2013-11-08

Bookcover 労働者階級の反乱 地べたから見た英国EU離脱 (光文社新書) [a]
ブレイディ みかこ / 光文社 / 2017-10-17

Bookcover 王様でたどるイギリス史 (岩波ジュニア新書) [a]
池上 俊一 / 岩波書店 / 2017-02-22

ノンフィクション(2018-) - 読了:「王様でたどるイギリス史」「労働者階級の反乱」「権力の「背信」」「男たちの絆、アジア映画」「江戸の本屋さん」「文部科学省」

Bookcover 大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済 (講談社現代新書) [a]
高槻 泰郎 / 講談社 / 2018-07-19
経済音痴の私にとってさえ、これはとても面白い本であった。

Bookcover 「右翼」の戦後史 (講談社現代新書) [a]
安田 浩一 / 講談社 / 2018-07-19

Bookcover ナポレオン――最後の専制君主,最初の近代政治家 (岩波新書) [a]
杉本 淑彦 / 岩波書店 / 2018-02-21

Bookcover 消費低迷と日本経済 (朝日新書) [a]
小野善康 / 朝日新聞出版 / 2017-11-13

Bookcover テンプル騎士団 (集英社新書) [a]
佐藤 賢一 / 集英社 / 2018-07-13

Bookcover 暴走する能力主義 (ちくま新書) [a]
高康, 中村 / 筑摩書房 / 2018-06-06

Bookcover 私たちはこうして「原発大国」を選んだ - 増補版「核」論 (中公新書ラクレ) [a]
武田 徹 / 中央公論新社 / 2011-05-10

ノンフィクション(2018-) - 読了:「テンプル騎士団」「暴走する能力主義」「私たちはこうして「原発大国」を選んだ」「消費低迷と日本経済」「大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済」「「右翼」の戦後史」「ナポレオン」

Bookcover 夢十夜 [a]
/ 岩波書店 / 2017-01-20
漱石「夢十夜」のマンガ化。原作とはまた異なる怖さがある...

Bookcover 健康で文化的な最低限度の生活 (7) (ビッグコミックス) [a]
柏木 ハルコ / 小学館 / 2018-08-30

Bookcover 血の轍 (3) (ビッグコミックス) [a]
押見 修造 / 小学館 / 2018-04-27

Bookcover BLUE GIANT SUPREME(5) (ビッグコミックススペシャル) [a]
石塚真一 / 小学館 / 2018-06-29

Bookcover ボンクラボンボンハウス 3 (フィールコミックス) [a]
ねむようこ / 祥伝社 / 2018-08-08

Bookcover ビューティフル・エブリデイ 1 (フィールコミックス) [a]
志村貴子 / 祥伝社 / 2018-06-08

Bookcover 深夜食堂 (20) (ビッグコミックススペシャル) [a]
安倍 夜郎 / 小学館 / 2018-06-29

コミックス(2015-) - 読了:「ビューティフル・エブリデイ」「深夜食堂」「健康で文化的な最低限度の生活」「血の轍」「BLUE GIANT SUPREME」「夢十夜」「ボンクラボンボンハウス」

Bookcover セクシー田中さん (1) (フラワーコミックスアルファ) [a]
芦原 妃名子 / 小学館 / 2018-04-10

Bookcover 重版出来! (11) (ビッグコミックス) [a]
松田 奈緒子 / 小学館 / 2018-05-11

Bookcover あさひなぐ (27) (ビッグコミックス) [a]
こざき 亜衣 / 小学館 / 2018-07-30
Bookcover あさひなぐ(26) (ビッグコミックス) [a]
こざき亜衣 / 小学館 / 2018-04-27

Bookcover 赤狩り THE RED RAT IN HOLLYWOOD (2) (ビッグコミックス) [a]
山本 おさむ / 小学館 / 2018-04-27

Bookcover 二月の勝者 ー絶対合格の教室ー (2) (ビッグコミックス) [a]
高瀬 志帆 / 小学館 / 2018-06-12

Bookcover 猫のお寺の知恩さん (7) (ビッグコミックス) [a]
オジロ マコト / 小学館 / 2018-05-30

コミックス(2015-) - 読了:「セクシー田中さん」「重版出来!」「あさひなぐ」「赤狩り」「二月の勝者」「猫のお寺の知恩さん」

Bookcover 私の好きな週末 (ビームコミックス) [a]
三好 銀 / KADOKAWA / 2016-11-25
一昨年に亡くなった寡作のマンガ家・三好銀さんの遺作集。

Bookcover Cl1/菜園モノクローム [a]
水谷 フーカ / 1月と7月 / 2016-12-01

Bookcover 名もなき羊たちの町 -Story of Carocheila- (ハルタコミックス) [a]
笠井 スイ / KADOKAWA / 2018-06-15

Bookcover イムリ 23 (ビームコミックス) [a]
三宅 乱丈 / KADOKAWA / 2018-07-12

Bookcover 月と珈琲、電信柱 シリーズ 小さな喫茶店 (ビームコミックス) [a]
山川 直人 / KADOKAWA / 2018-05-11

Bookcover 北北西に曇と往け 2巻 (ハルタコミックス) [a]
入江 亜季 / KADOKAWA / 2018-03-15
アイスランドを舞台にしたサスペンス、かと思っていたら、2巻は全編とおして観光マンガとなった。自由だなあ...

コミックス(2015-) - 読了:「私の好きな週末」「名もなき羊たちの町」「イムリ」「月と珈琲、電信柱」「北北西に曇と往け」「Cl 1 / 菜園モノクローム」

Bookcover ハモニカ文庫と詩の漫画 (ちくま文庫) [a]
山川 直人 / 筑摩書房 / 2018-09-11

Bookcover バーナード嬢曰く。 (4) (REXコミックス) [a]
施川 ユウキ / 一迅社 / 2018-07-27

Bookcover MUJIN~無尽~ 巻之5 (ヤングキングコミックス) [a]
岡田屋鉄蔵 / 少年画報社 / 2018-06-30

Bookcover ワカコ酒 11 (ゼノンコミックス) [a]
新久千映 / 徳間書店 / 2018-08-20

Bookcover 木根さんの1人でキネマ 5 (ヤングアニマルコミックス) [a]
アサイ / 白泉社 / 2018-07-27

Bookcover サトコとナダ 3 (星海社COMICS) [a]
ユペチカ / 講談社 / 2018-04-28

Bookcover ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 5 (ヤングアニマルコミックス) [a]
武田一義,平塚柾緒(太平洋戦争研究会) / 白泉社 / 2018-07-27

コミックス(2015-) - 読了:「ペリリュー」「ハモニカ文庫と詩の漫画」「バーナード嬢曰く。」「無尽」「ワカコ酒」「木根さんの1人でキネマ」「サチコとナダ」

Bookcover オリンピア・キュクロス 1 (ヤングジャンプコミックス) [a]
ヤマザキ マリ / 集英社 / 2018-07-19
著者自身の大ヒット作「テルマエ・ロマエ」の堂々の二番煎じ。意欲作「ジャコモ・フォスカリ」を中断したまま、なぜこういう連載を...?

Bookcover 闇金ウシジマくん (43) (ビッグコミックス) [a]
真鍋 昌平 / 小学館 / 2018-06-29

Bookcover きのう何食べた?(14) (モーニング KC) [a]
よしなが ふみ / 講談社 / 2018-07-23

Bookcover 僕らはみんな河合荘 10 (ヤングキングコミックス) [a]
宮原るり / 少年画報社 / 2018-06-30
Bookcover 僕らはみんな河合荘 11 (ヤングキングコミックス) [a]
宮原るり / 少年画報社 / 2018-07-30
最終巻。おつかれさまでした。

Bookcover アルテ 9 (ゼノンコミックス) [a]
大久保圭 / 徳間書店 / 2018-07-20

Bookcover めしばな刑事タチバナ 30 (トクマコミックス) [a]
坂戸佐兵衛,旅井とり / 徳間書店 / 2018-06-30

Bookcover ゴールデンカムイ 4 (ヤングジャンプコミックス) [a]
野田 サトル / 集英社 / 2015-08-19
評判の人気作。当面は入手も容易だろうと踏み、ちびちびと読み進めている。

コミックス(2015-) - 読了:「ゴールデンカムイ」「めしばな刑事タチバナ」「僕らはみんな河合荘」「アルテ」「闇金ウシジマくん」「きのう何食べた?」「オリンピア・キュクロス」

Bookcover おもたせしました。3 (BUNCH COMICS) [a]
うめ(小沢高広・妹尾朝子) / 新潮社 / 2018-05-09

Bookcover 極主夫道 1 (BUNCH COMICS) [a]
おおのこうすけ / 新潮社 / 2018-08-09

Bookcover プリニウス7 (バンチコミックス45プレミアム) [a]
ヤマザキマリ,とり・みき / 新潮社 / 2018-07-09

Bookcover 決してマネしないでください。(2) (モーニング KC) [a]
蛇蔵 / 講談社 / 2015-06-23

Bookcover 甘々と稲妻(11) (アフタヌーンKC) [a]
雨隠 ギド / 講談社 / 2018-07-06

Bookcover 妻に恋する66の方法(4) (イブニングコミックス) [a]
福満しげゆき / 講談社 / 2018-05-23

コミックス(2015-) - 読了:「おもたせしました」「極主夫道」「プリニウス」「決してマネしないでください」「甘々と稲妻」「妻に恋する66の方法」

Bookcover 終わった漫画家(1) (ヤンマガKCスペシャル) [a]
福満 しげゆき / 講談社 / 2017-12-06
Bookcover 終わった漫画家(2) (ヤングマガジンコミックス) [a]
福満しげゆき / 講談社 / 2018-08-06
例によって、悲惨な男と肉感的な女が登場するお気楽なコメディなのだけれど、この作者特有の、人間の愚かさに対する冷めた視線が時々垣間見えて、どきっとすることがある。

Bookcover ひさかたのおと(2) (アフタヌーンKC) [a]
石井 明日香 / 講談社 / 2018-07-06
Bookcover ひさかたのおと(1) (アフタヌーンKC) [a]
石井 明日香 / 講談社 / 2018-01-05
主人公が赴任した離島には心美しい人々と人智を超えた大自然があって...というファンタジー。私の好みではないが、お好きな方にはたまらないだろう。

Bookcover 聖☆おにいさん(15) (モーニング KC) [a]
中村 光 / 講談社 / 2018-06-22

Bookcover テセウスの船(1) (モーニングコミックス) [a]
東元俊哉 / 講談社 / 2017-09-22

Bookcover ヴィンランド・サガ(21) (アフタヌーンKC) [a]
幸村 誠 / 講談社 / 2018-08-23

Bookcover 7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT(6) (ヤンマガKCスペシャル) [a]
ハロルド 作石 / 講談社 / 2018-09-06

Bookcover 惑わない星(3) (モーニング KC) [a]
石川 雅之 / 講談社 / 2018-04-23

コミックス(2015-) - 読了:「聖☆おにいさん」「テセウスの船」「ひさかたのおと」「ヴィンランド・サガ」「終わった漫画家」「7人のシェイクスピア」「惑わない星」

いいかげん仕事に飽き飽きしてきたので、最近読んだ本を記録しておく。

Bookcover 天地創造デザイン部(1) (モーニング KC) [a]
たら子 / 講談社 / 2017-11-22
Bookcover 天地創造デザイン部(2) (モーニング KC) [a]
たら子 / 講談社 / 2018-06-22
天地創造にあたって、神様は生きとし生けるものデザインをデザイン会社に外注した...という秀逸な設定の下、実在の生物についての豆知識を織り込んだギャグマンガ。面白い。

Bookcover ハコヅメ~交番女子の逆襲~(1) (モーニング KC) [a]
泰 三子 / 講談社 / 2018-04-23
Bookcover ハコヅメ~交番女子の逆襲~(2) (モーニングコミックス) [a]
泰三子 / 講談社 / 2018-06-22
女性警官たちを主人公にしたコメディ。作者は元警官なのだそうだ。

Bookcover ゴールデンゴールド(4) (モーニング KC) [a]
堀尾 省太 / 講談社 / 2018-05-23

Bookcover めしにしましょう(5) (イブニングKC) [a]
小林 銅蟲 / 講談社 / 2018-05-23

Bookcover アレンとドラン(2) (KC KISS) [a]
麻生 みこと / 講談社 / 2018-08-09

Bookcover 天国大魔境(1) (アフタヌーンKC) [a]
石黒 正数 / 講談社 / 2018-07-23

コミックス(2015-) - 読了:「ゴールデンゴールド」「めしにしましょう」「天地創造デザイン部」「ハコヅメ」「アレンとドラン」「天国大魔境」

2018年9月10日 (月)

 地球統計学モデルによる空間的推測をやってるとき、コバリオグラムとバリオグラムのちがいについてたびたび混乱したので、メモをとった。というか、ふだん頼りにしているDiggle&Ribeiro(2010)って、このくだりについては結構わかりにくいような気がするのである。(←理解力の低さをさりげなく他人のせいにする)
 瀬谷・堤「空間統計学」5.2節のメモ。話がややこしくなるので異方性の話は省略する。

 観測地点$\mathbf{s}_i$($i=1,\ldots,n$)における観測値を$y(\mathbf{s}_i)$とし、
 $y(\mathbf{s}_i) = Y(\mathbf{s}_i) + \epsilon(\mathbf{s}_i)$
$\epsilon(\mathbf{s}_i)$は平均0, 分散$\sigma_\epsilon^2$, iidとする。

 ついでに共分散関数を定義しておこう。任意の$\mathbf{s}, \mathbf{h}$について、
 $C(\mathbf{s}, \mathbf{h})$
 $= Cov[Y(\mathbf{s}), Y(\mathbf{s}+\mathbf{h})]$
 $= E[\{Y(\mathbf{s}) - m(\mathbf{s})\}\{ Y(\mathbf{s}+\mathbf{h}) - m(\mathbf{s}+\mathbf{h}) \}$
 ここで$m(\mathbf{s})$は空間過程の期待値である。

 さて、空間過程が強定常であるとは、確率変数$\{Y(\mathbf{s}_1), \cdots, Y(\mathbf{s}_n)\}$によって構成される多変量分布の分布関数が、任意の移動に関して不変であるということである。
 強定常性は強すぎる仮定なので緩和し、1次モーメントと2次モーメントの定常性だけを仮定することにしたい。そこでふたつのアプローチが生じる。

 その1、弱定常性(二次定常性)。
 任意の$\mathbf{s}, \mathbf{h}$について以下が成り立つと仮定する。
 $E[Y(\mathbf{s})] = m(\mathbf{s}) = \bar{m}$
 $Cov[Y(\mathbf{s}), Y(\mathbf{s}+\mathbf{h})] = C(\mathbf{h})$
 $Cov[Y(\mathbf{s}), Y(\mathbf{s}+\mathbf{0})] = Var[Y(\mathbf{s})] = C(\mathbf{0})$
つまり、2地点間の共分散が$\mathbf{h}$の関数だと捉えているわけである。いいかえると、変数の一次モーメントと二次モーメントが定常だと考えている。

 その2、固有定常性。
 任意の$\mathbf{s}, \mathbf{h}$について以下が成り立つと仮定する。
 $E[Y(\mathbf{s}+\mathbf{h}) - Y(\mathbf{s})] = \mathbf{0}$ [あれ?右辺はなぜ太字なの?]
 $Var[Y(\mathbf{s}+\mathbf{h})-Y(\mathbf{s})] = 2\gamma(\mathbf{h})$
つまり、2地点の差の分散が$\mathbf{h}$の関数だと捉えているわけである。いいかえると、変数の差の一次モーメントと二次モーメントが定常だと考えている。

 [ここでいつも混乱するのだが... 二次定常であれば固有定常だが、逆は成り立たない。つまり、二次定常性のほうが強い仮定である。ってことで合ってますかね?]

 さて。
 $C(\mathbf{h})$を二次定常共分散関数、またはコバリオグラムという。次の性質を持つ。
 有界である: $|C(\mathbf{h})| \leq C(\mathbf{0})$
 対称である: $C(-\mathbf{h}) = C(\mathbf{h})$
 分散は非負である: $C(\mathbf{0}) \geq 0$

 $2\gamma(\mathbf{h})$をバリオグラム、$\gamma(\mathbf{h})$をセミバリオグラムという。えーと、バリオグラムってのは差の分散だが、差の期待値は0だと思ってんだから、差の二乗の期待値だと言い換えてもいいわね。
 次の性質を持つ。
 $\gamma(\mathbf{0}) = 0$
 $\gamma(\mathbf{h}) \geq 0$ [原文に誤植があると思うので勝手に直した]
 $\gamma(-\mathbf{h}) = \gamma(\mathbf{h})$
固有定常性の下では、バリオグラムは有界ではないかもしれないという点に注意。

 二次定常性が満たされていれば、共分散関数とバリオグラムとの間には
 $\gamma(\mathbf{h}) = C(\mathbf{0}) - C(\mathbf{h})$
という関係が成り立つ。

 空間予測を可能にするためには、共分散関数は非負定値性、バリオグラムは条件付き非正定値性を満たさなければならないんだけど、ややこしいので省略して...

 バリオグラムの形状は、ナゲット、シル、レンジの3つで規定される。ナゲットは切片(正確に言うと、$\mathbf{h}$を$0$に近づけた時の極限値)、シルは空間過程の分散、レンジは$Y(\mathbf{s})$と$Y(\mathbf{s}+\mathbf{h})$が相関を持たなくなる最小の$\mathbf{h}$である。

 具体例を挙げよう。

 例1、線形バリオグラム。
 $||h||=0$のとき $\gamma(\mathbf{h}) = 0$
 $||h||>0$のとき $\gamma(\mathbf{h}) = \tau^2 + \sigma^2 ||\mathbf{h}||$
$\tau^2$がナゲットで、シルとレンジは無限大。
 共分散関数は存在しない。このように、バリオグラム・モデルというのは文字通りバリオグラムのモデルなのであって、共分散のモデルではない。ああそうか、ここで私は混乱していた...

 例2、指数型バリオグラム。
 $||h||=0$のとき $\gamma(\mathbf{h}) = 0$
 $||h||>0$のとき $\gamma(\mathbf{h}) = \tau^2 + \sigma^2[1-\exp(-\phi ||\mathbf{h}||)]$
$\tau^2$がナゲット。シル$\tau^2 + \sigma^2$は漸近的にしか到達できず、レンジは無限大なので、セミバリオグラムがシルの95%を達成する距離$3/\phi$のことを有効レンジと呼ぶ。
 共分散関数は、
 $||h||=0$のとき $C(\mathbf{h}) = \tau^2+\sigma^2$
 $||h||>0$のとき $C(\mathbf{h}) = \sigma^2 \exp(-\phi^2||\mathbf{h}||^2)$
となる。

 ...ってな感じですね。端的にいっちゃうと、セミバリオグラム$\gamma(\mathbf{h})$は$\mathbf{h}$とともに上がっていく関数、コバリオグラム$C(\mathbf{h})$は下がっていく関数である。いまのどっちの話をしてんだか、注意せんといかん。

雑記:データ解析 - 覚え書き:コバリオグラムとバリオグラムはちがうのだ

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